先日の記事で、
『舟を編む』の英語オーディオブックを
聞きましたという話をしたのですが。
小説『舟を編む』は
英語翻訳をされて
海外でもたくさん読まれている様子。
英語版は
レビューが2000以上もついています。
(amazonの評価は4.2)
「辞書作り」という地味なお話なのに、
海外でめちゃくちゃ読まれてる・・・
そして高く評価されてる・・・!!
詳しくは、
上記の過去記事を読んでいただきたいのですが、
この小説は、辞書編集部で展開します。
<あらすじ>
出版社の営業部員・馬締光也(まじめみつや)は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書「大渡海(だいとかい)」の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ。
小説では、
辞書編集部のメンバーたちが
日常のあらゆる場面で言葉を集めて
その定義を練りに練ります。
たとえば、
「北」
という言葉をどう定義するか?
とか。
そうやって
言葉のひとつひとつを突き詰めて
こだわっていく姿は、
翻訳の仕事にも通じるところがあって、
私はすごく共感しました。
今年の3月に82歳でお亡くなりになった
私の英語道の師匠、松本道弘先生は
常に、
「この日本語は英語に訳すとどうなるか?」
と考えていらっしゃいました。
【関連記事】
毎日、私や
大学受験生たちと雑談をしながら、
私たちの使う何でもない言葉に反応して
「お、その日本語はおもしろい!
英語にするなら、何がいいかな・・・」
と考えはじめるのが、日常茶飯事。
いやいや、ただの雑談なのに
先生をそんなに悩ませて、申し訳ない・・・
と、私はいつも思っていました
たとえば、
「空気を読む」
とか。
空気って
airじゃない・・・よね?
そして、読むも
readじゃないし・・・
って思うじゃないですか。
でも、松本先生は
そもそも
「空気」とか「読む」とかを
英語にしようとしないんです。
その表現全体の
それこそ「空気感」を
まるっと訳す、達人でした。
「彼女は空気が読めない」
という日本語の
松本道弘訳は、こうです。
She just doesn't get it.
この"get it"は、
すごくよく使われる
口語表現です。
getは、
理解する、把握する、ということ。
そして、itが
その場の「空気」を漠然と指します。
こんな感じで、松本先生は
日々、まだ英語にしたことのない
日本語をひとつひとつ集めて、
英語という
果てしない大海原を渡るための
英語道の「舟」を、
その人生の最後まで編んでいらっしゃいました。
そして、
松本道弘先生が
英語道に生涯を捧げたように、
この小説『舟を編む』に出てくる、
日本語を探求しつづけ、毎日新しい言葉を集め続け
辞書作りに生涯を捧げた日本語学者が、
なんと、
「松本先生」という名前なのです。
↑映画の、加藤剛さん演じる松本先生。
オーディオブックを聞きながら、
松本道弘先生のお顔が何度も頭に浮かびました。
以下、ネタバレになってしまうのですが、
(すみません・・・でも、ネタバレしても
素晴らしい小説&映画なので、超お勧めです!!)
『舟を編む』の松本先生は
国語辞典「大渡海」の編纂に
人生最後の年月を費やし、
最後に、その生涯を閉じます。
その姿が、
松本道弘先生と重なりました。
最後の最後まで
道を追い求め続けた、
2人の「松本先生」。
『舟を編む』では
松本先生の遺志を受け継いで
部下の辞書編集者たちが
「大渡海」を完成させます。
そして、私も、仲間たちと
松本道弘先生の遺志を受け継いで
英語教材を作成中で、
それが、ようやく完成間近です。
教材完成直前の、この時に
この『舟を編む』に
出会ってしまったものだから、
もう、運命としか思えなくて・・・
詳細はまた後日お話ししますが、
松本道弘先生の英語速読のエッセンスを詰め込んだ
渾身の英語教材になりました。
今は、毎日毎日、
膨大な量の原稿の最終チェックをしています。
松本先生なら、
本当にこんな言い方をされるだろうか?
この表現で、
松本先生はOKをくださるだろうか?
そう、毎日考えながら、
頭の中で松本先生と対話しながら、
原稿を練り続けています。
もうすぐ、発表できる予定なので
ご興味があったら、このブログを
引き続き気にしておいていただけるとうれしいです。
関連記事
・「GoToトラベルキャンペーン」を英語歴70年の達人が翻訳したら
・米国インテリ層の2倍以上のスピードで英語が読める日本人(驚)