イエス・キリストが考えていた神とは
高校時代に遠藤周作さんにハマった事を思い出し、当時未読の「イエスの生涯」、この作者は「沈黙」という、神の存在そのものを踏み込んで問うドラマチックな作品を書いていてそこにも通じる、キリスト教の信者の作者が聖書から読み解く、非科学的な奇跡を起こす教祖ではなく人間としてありのままのキリストを追いかけようとしているものです。人類史上1番の有名人、かつ多大な学者達の弛まぬ研究対象でもあるイエス・キリストとは言え、2,000年も前の生きた生の足跡を、宗教的な創作を排除して事実を捉えるのは限度もあって、当然作者の想像や推測も多分に含まれていますが、単純に読んでいて面白い、作家としての力量ともちろんモチーフの力もあるんでしょう。私は信者ではなく詳しくもないけれど、この本で描かれているイエスが考えていた神様って言うのはどういうものなのかなぁというのが読後の素朴な疑問、この本に登場する誰しもが現世での救い、自分に利することを求めるのは自然で、でもイエスの神はそういう意味では何もしてくれないし無力です。本当の最初、2,000年前の始まりは意外に究極的に素朴で、その後、世界最大レベルの権威化・組織化がされて、教義が確立され、多くの人を救って来た反面、戦争までも起こしてきた訳ですが、イエスは自身の教えの未来はどうなると予測していたんだろうとか、思ってしまいます。