かなり強烈な表題で、読みながらずっと、魔王とは何を指しているんだろうかというのが、頭の中に残り続けます。


まず想起するのは中学生の頃に音楽の授業で聞いた、シューベルトの歌曲「魔王」、いかにも恐ろし気な緊迫感のあるピアノ演奏とテノールが、中学生にとってはインパクトありましたけど、この物語はそんなドラマティックな大仰な悲劇はないと言えばない、悪魔そのものみたいな直接的な描写もないです。


魔王っぽいものとしてまず思うのは、強烈な吸引力を持つ国会議員、そして彼を触媒にして社会に大きなうねりが起きていくわけですが、そのムーブメント自体、個人では抗しがたい力を持って、群衆を異常行動に持っていく怖さがあり、そういうもの全体を示しているのかなとも思う。


だけど通して読むと主人公もなかなかです。


生前は自分の身の回りにいる全くの他者に、そして死後、こちらが気持ち悪いんですが、生死の壁を越えて生きている者に何らかの働きかけをしている、特に何か凶悪な事件を起こすわけでもないし、そんな力も持っていないんですけど。


歴史的に大なり小なりそういうことはあったわけで、特に今はネットで拡散(も、飽きられて収束されるのも)のスピード、もしかすると影響力の伝達速度が速くなってるのかもです、今はネットが魔王なのかも知れないです。