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Kierkegaard

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私たちは知っている、世界が多重だということを・・・

遺伝子レベルでその記憶は刻まれ次代へ続くということを・・・

宇宙(そら)に抱(いだ)かれ僕は生きる・・・

***

蓮とキョーコは約束の場所へ急ぐのだ、

燔祭の羊はキョーコ・・・

「ここが・・・」

「そうここが結界の中心、この世界の中心・・・」

蒼と白の世界、そびえる塔、・・・そして浮かぶ宇宙船(ふね)

チグリス、ユーフラテス、バビロン・・・いやキョーコが、蓮が存在した世界の各地の残る古の文明の源、人の源を乗せた宇宙船・・・

でもそれは・・・

「君も、俺も表層をなす記憶からは消された想いが残照としてここに存在している」

「つ、敦賀さん?」

「壊すべきなんだ、この世界は・・・」

***

レイノと尚は、図書館の最上階へ駆け上る、かって蓮が、倖人が、レイノが、あの少年が重なるはずのない世界を見た場所、知識の源、過去の記憶が眠る場所へ・・・

最上階には、誰もいなかった、隠された扉をレイノは見つけた・・・

その扉の向こうに二人はいる、レイノは確信している、教会のステンドグラスに描かれた、隠された物語の世界が・・・

レイノと尚は互いの視線を交錯させる

「いくぞ」

「ああ」

二人は蓮とキョーコの待つ場所へ

「遅かったね」

「これでも急いだ」

レイノが石を蓮に手渡そうしたが、躊躇い聞く

「俺は、お前を信じていいのか?」

「何故?」

蓮は、透明で無機質な顔をレイノに向けた。

「何故と問い返すか?どうして、こっちが聞いている、知りすぎているお前を警戒して何が悪い・・・」

「レイノさん?」

「・・・俺は壊したいと言ったろう、・・・うんざりなんだ、番人でいることにね」

「番人?」

「俺は、この世界の守り人だ・・・」

「石を壊し、この世界が無くなったらどうなるんだ?」

「君たちの世界はそのままだ、だが、この世界が無くなったことで多少人の意識は変わるかもしれないし、変わらないかもしれない・・・」

「何だと」

レイノが蓮の胸倉を掴もうとしたがあっさりと逆に拘束され、石は蓮の手の中に堕ちた。

「レイノさん」

「キョーコちゃん、さっきのを聞いたろう?それでも君は、この世界を壊すことに躊躇いはないの?」

「レイノさん、私はマリアちゃんとヴイジョンを見たの。私たちは、囚われちゃだめなの、過去の残照をいつまでも引き摺っていては、宇宙(そら)へ行けない・・・」

「キョーコちゃん」

キョーコは蓮の元へ駆け寄る、蓮はキョーコの額に石を置いた。

そして光の柱がこの世界にないはずの天から落ち、石は砕かれ、そしてこの世界は崩壊する。

「レイノ、尚、キョーコちゃん、飛ぶよ」

蓮の掛け声で崩れる大地から空へ飛んだ、彼らの背に見えない羽が生えたようだ、蓮が目で合図し、一点を目指した、そこが僕らの世界だから。

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