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その前の話 その1 その2 その3 その4 その5 その6
その7 その8 その9 その10 その11 その12
キョーコの体が透明に透けて、消えようとする瞬間に、教会の扉が乱暴に開け放たれ、いそぎキョーコに駆け寄り、腕を掴み抱き寄せた誰かがいた。
「つ、お前ら、何つったて見てんだ」
「・・・尚、お前か、どうしてここに」
「こいつが森の奥へ行くのが見えた、妙な胸騒ぎがしたから部活さぼって追いかけたんだ」
「お前のおかげで、どうやら、結界の綻びが早くなったようだ」
「何だよそれ」
ギーと建物が軋む音がする、ずんと地から響く音、建築士が施した堅牢な結界が壊れるようとしている。
「先輩、どうするんですか?」
「サクリファイスの儀式は中断された、どうにもできない」
「サクリファイスってなんだよ」
「犠牲という意味だよ、結界を保持するために、彼女が必要だった」
「何だと、こらあ」
尚は蓮に殴りかかるが、ひょいと避けて、倒れているキョーコを抱き上げ、すたすたと教会の奥へ進む。
「待て」
レイノと尚が蓮のあとをついていく、やがて教会の最奥に隠された扉の前に全員が揃う。
先ほどの光と同じものが全員を包んだ、彼らは消えた。
尚が目を開いたとき、目の前に映ったのは、蒼と白の世界だった。
「ここはどこだ?」
「さあ、別の世界としかいいようがない」
ぱたぱた、少女が駆け寄ってくる。
「お兄様」
「マリアちゃん、こんにちは」
少女が蓮に抱きつこうとしたとき、胸に抱かれているキョーコを見とめた。
「お兄様、この方は?」
「君にとても逢いたがっていた、倖一を覚えている?」
「ええ」
「彼女は、その妹だ」
「倖一兄様の妹さん」
キョーコの瞼が震え、目覚めた。
「キョーコちゃん、マリアちゃんだ。君の兄さんが大事にしていた少女だ」
「私は、キョーコです。よろしくね」
キョーコがにっこり笑うと、少女もにっこり笑った。
建築士が作り上げた堅牢な結界、さらに堅牢にするために、光が欲しかった。
彼の一族の血を引く少女のマリアを・・・
光は一つだけでいい、二つはいらない
つづく その14 へ
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ギーと建物が軋む音がする、ずんと地から響く音、建築士が施した堅牢な結界が壊れるようとしている。
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「サクリファイスの儀式は中断された、どうにもできない」
「サクリファイスってなんだよ」
「犠牲という意味だよ、結界を保持するために、彼女が必要だった」
「何だと、こらあ」
尚は蓮に殴りかかるが、ひょいと避けて、倒れているキョーコを抱き上げ、すたすたと教会の奥へ進む。
「待て」
レイノと尚が蓮のあとをついていく、やがて教会の最奥に隠された扉の前に全員が揃う。
先ほどの光と同じものが全員を包んだ、彼らは消えた。
尚が目を開いたとき、目の前に映ったのは、蒼と白の世界だった。
「ここはどこだ?」
「さあ、別の世界としかいいようがない」
ぱたぱた、少女が駆け寄ってくる。
「お兄様」
「マリアちゃん、こんにちは」
少女が蓮に抱きつこうとしたとき、胸に抱かれているキョーコを見とめた。
「お兄様、この方は?」
「君にとても逢いたがっていた、倖一を覚えている?」
「ええ」
「彼女は、その妹だ」
「倖一兄様の妹さん」
キョーコの瞼が震え、目覚めた。
「キョーコちゃん、マリアちゃんだ。君の兄さんが大事にしていた少女だ」
「私は、キョーコです。よろしくね」
キョーコがにっこり笑うと、少女もにっこり笑った。
建築士が作り上げた堅牢な結界、さらに堅牢にするために、光が欲しかった。
彼の一族の血を引く少女のマリアを・・・
光は一つだけでいい、二つはいらない
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