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Kierkegaard
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キョーコの体が透明に透けて、消えようとする瞬間に、教会の扉が乱暴に開け放たれ、いそぎキョーコに駆け寄り、腕を掴み抱き寄せた誰かがいた。

「つ、お前ら、何つったて見てんだ」

「・・・尚、お前か、どうしてここに」

「こいつが森の奥へ行くのが見えた、妙な胸騒ぎがしたから部活さぼって追いかけたんだ」

「お前のおかげで、どうやら、結界の綻びが早くなったようだ」

「何だよそれ」

ギーと建物が軋む音がする、ずんと地から響く音、建築士が施した堅牢な結界が壊れるようとしている。

「先輩、どうするんですか?」

「サクリファイスの儀式は中断された、どうにもできない」

「サクリファイスってなんだよ」

「犠牲という意味だよ、結界を保持するために、彼女が必要だった」

「何だと、こらあ」

尚は蓮に殴りかかるが、ひょいと避けて、倒れているキョーコを抱き上げ、すたすたと教会の奥へ進む。

「待て」

レイノと尚が蓮のあとをついていく、やがて教会の最奥に隠された扉の前に全員が揃う。

先ほどの光と同じものが全員を包んだ、彼らは消えた。

尚が目を開いたとき、目の前に映ったのは、蒼と白の世界だった。

「ここはどこだ?」

「さあ、別の世界としかいいようがない」

ぱたぱた、少女が駆け寄ってくる。

「お兄様」

「マリアちゃん、こんにちは」

少女が蓮に抱きつこうとしたとき、胸に抱かれているキョーコを見とめた。

「お兄様、この方は?」

「君にとても逢いたがっていた、倖一を覚えている?」

「ええ」

「彼女は、その妹だ」

「倖一兄様の妹さん」

キョーコの瞼が震え、目覚めた。

「キョーコちゃん、マリアちゃんだ。君の兄さんが大事にしていた少女だ」

「私は、キョーコです。よろしくね」

キョーコがにっこり笑うと、少女もにっこり笑った。

建築士が作り上げた堅牢な結界、さらに堅牢にするために、光が欲しかった。

彼の一族の血を引く少女のマリアを・・・

光は一つだけでいい、二つはいらない

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