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「あなた名前は?」
「倖一(ゆきひと)」
「私は、マリアよ」
蒼い蒼い目をした少女の世界と、俺の世界は重なることはないはずなのに・・・
少女はくるくろと回る、俺は、妹を思い出した。
澄んだ瞳が、色は違えど似ている、俺の倦んだ心が軽くなる。
まっすぐな目をして俺を見つめたあの少年は、俺に自分を重ねて倦んでいただけだ。
少女は何故いつまでこの世界に囚われているのだろう?
この建物はどんな呪がかかっているのだろう?
***
「あのレイノさん?」
「・・・ああ、ごめん。ちょっとね考え事をしてた」
「だれですか?教えてください」
「君の兄さんが残した言葉は俺が受け取った。君は、この学園を去った方がいい」
「嫌です、兄の、最期の言葉を伝えるのは妹の私です」
「キョーコちゃん、君も取り込まれる、君は似すぎている」
「兄にですか」
「いや、マリアにだ」
「蒼い目をした少女ですね、私も少女の声を聞きました。彼女が根元なのですか?」
「違う、家だ、この学園の古い建築物全てが根元だ」
「どうして・・・」
トントン、部屋をノックする音が響く
「レイノ、俺だ、中に入れないと扉を蹴破る」
「はいはい、敦賀先輩、どうぞ」
レイノが鍵を開け、蓮を部屋の中に招き入れる。
「先生!」
「キョーコちゃん大丈夫?この悪魔に何かされなかった?」
「先輩、悪魔はないでしょう」
「よく言うよ、君にちょっかい、悪さを懸けた人間がどうなったか俺はよく知っている」
「先輩には、何もしてないでしょう」
キョーコは、そのとき霊気のぶつかり合いが確かに見えたと思った。
「キョーコ、尚が部屋で心配している、すぐ戻ってあげなさい」
「でも、先生、まだ、話が済んでません、レイノさんは何か知っている」
「俺が聞き出しといてやるから、帰るよね、キョーコちゃん」
「・・・はい」
キョーコが去り、蓮とレイノが対峙する。
「どっちにしろ終わりにしないといけない、彼女は必要だ」
「あなたは、彼女を可愛いとおもっているわりには、残酷ですね」
「俺もマリアちゃんを知っているからね」
「だからといって、・・・」
「昨年の5月の事故、あれも取り込まれたのだろう?もう犠牲者を出してはいけないんだ。そのためには、キョーコが必要だということだ」
「残酷な人だ」
「俺がいる、そして君も、彼女は決して取り込まれない」
レイノは、窓辺に立ち、昏く見えないが、教会の十字架の方角に目をやった。
「わかりました」
レイノは是と答えた。
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