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Kierkegaard

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手を伸ばせば届いた僕の世界・・・

あなたは、僕の想いを拒絶したのに、それでも変わらず笑むのですね・・・

気づいた本音に倦んだ俺は、天使と出会った。

天使のことをもっと知りたくなった、そしてこの建築物に隠された謎を解きたくなった。

くすくす天使が笑う

図書館で美術書の頁を手繰る、ピエタの像が俺を捉えて離さない。

天使の名前はマリアだった。

***

夕食を終え自室に戻り、明日の予習を真面目にする京だった。

内心はストームなるものに、びくびくで、消灯の時間が近くなり、京はベッドにもぐりこんだ。

いつしか眠りについて、大きな声で飛び起きた。

「来たぞ!」

「え、え、え」

「新入りがいる部屋はここだな、ものども襲え、無礼講だ」

ドーン、ドーン、太鼓が鳴り響く、受験勉強の最後の息抜きだろうか?最上級生の目が血走っている、男の子というものは、いろいろたまっているのだ、ガス抜きは必要である、どんちゃん騒ぎがしたいだけだ、ある部屋では説教が始まっていた、また、ある部屋では援歌の大合唱だし、あ、エロ本が舞っている、寮内における明るい親睦を是とするどんちゃん騒ぎである。

京の部屋に乱入してきたのは、寮長たちだった。

京の眠るベッドにレイノが飛び乗って、びっくりした京は、目をぐるぐるさせて、レイノを見つめた。

レイノの唇が京に耳もとで

「キョーコちゃんだね、・・・の妹の」と囁いた。

「ど、どうして・・・」京はかすれた声で小さく答えた。

「黙って、君に話があるからつれて行くね」

「え」

レイノは、京を抱きかかえて、部屋を出て行った。

「新入りくんは連れて行くよ」

「待てよ、置いてけ」

尚が叫ぶが、二人の先輩にスクラムされて動けない、京は騒乱の寮の中を抱きかかえられて、レイノの部屋の中に、中に入りレイノは鍵をかけた。

「レイノさん」

「君の兄さんとは、わりと親しくしてもらっていてね、君のことも知っている」

「聞きたいことがあるんです」

「君の探している相手は、俺だよ」

「あなたが、兄さんの・・・」

「あのねキョーコちゃん、君、いま変なこと想像したでしょう」

「え」

キョーコの顔は真っ赤だ。

「君の兄さんは、ノーマルだから安心して」

「へ、はあ」

「それより君の兄さんは、君に何を託したの?」

「謝ってほしいと、間違っていたのは自分だと、そして解放してくれと」

「・・・そう」

レイノは瞼を閉じて、瞑目する。短い時間の筈なのに、キョーコにはとても長く感じた。

つづく その10  へ

***