鈴木貫太郎内閣 一番後ろに阿南陸軍大臣


現在公開中の「日本の一番長い日」には、自決前の阿南惟幾陸軍大臣が、鈴木貫太郎首相のもとに暇乞いに訪れるシーンがあります。


このシーンは、サラッとしたものとなっていましたが、実際は違っていたようです。


以下は、『宮中祭祀 連綿と続く天皇の祈り』(中澤伸弘著、展転社発行)の「はじめに」からの抜粋です。


『宮中祭祀 連綿と続く天皇の祈り』
はじめに

昭和二十年八月十四日、阿南惟幾陸軍大臣は終戦にあたり、その責任を負ひ自決を覚悟し、鈴木貫太郎首相のもとを暇乞ひに訪ひました。日本の今後について心配で、悲愴な顔つきの阿南に対し、鈴木は「陛下がお祭りをなさつている以上、日本は滅びませんよ」と話したといひます。鈴木は昭和天皇の侍従を努めたこともあり、宮中祭祀に表はれる天皇の御本質をよく理解しての発言でありました。果たして鈴木の言は当たり、日本は滅びるどころか、見事に復興を遂げ、世界に誇る経済発展を遂げました。その繁栄の蔭に昭和天皇の祭祀に臨まれる真摯な御姿があつたのですが、国民はそのことをあまり知らされないで来ました。

天皇の御本質は祭祀王であることです。それは祭りをされ、祈られることにあります。今上天皇を始め御歴代の天皇は、国家、国民はいふに及ばず全世界の平和を、常にご先祖の神々に祈られて来たのであり、そしてそれは今後も天皇とともに永続して行くのです。世界の国々の中で斬様な祭祀王を元首に頂く国は稀であります。また日本の神話は、単なる昔話ではなく、祭祀といふ形で今日も生きてゐるのです。宮中や諸神社の祭祀は神話と密接な関係があり、それゆゑ我が国の神話は平成の今日も生きてゐると言へるのです。「神代在今」といふ言葉がありますが、まさにその通りなのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一部略

昭和天皇の御時もさうでしたが、近年、陛下のご高齢化に伴ひ、その玉体を案じ奉つての諸事簡略化がなされるなかで、この宮中祭祀にも簡略化の波が押し寄せてゐます。これは致し方のないものではありますが、この機に乗じて宮中祭祀の実際を知らずに、祭祀に溶喙(ようかい)し、または廃止して仕舞へとの暴論を軽々しく言ひ立てる人が出てきてゐます。

このやうな時こそ、宮中祭祀の実際を知り、そのあり方を考へ、今日なほ厳修される祭りの意義や天皇の御本質について学ぶ必要がありませう。小著がその為に聊かなりともお役にたつなら幸ひこれに過ぎるものはありません。

抜粋以上。


映画の中でも語られていましたが、阿南陸軍大臣は昭和四年(1929)8月1日~昭和8年(1933)8月1日まで侍従武官を務めており、その時の侍従長が海軍出身の鈴木貫太郎でした。この時、二人の間に深い信頼関係が出来たようですが、これは陸軍と海軍で仲の悪かった当時、後の終戦に向けての礎になったものでした。その関係が出来たのが宮中だったというのは不思議な力が感じられます。


宮中祭祀との関連性から、上記抜粋で引用しましたが、ウイキペディアの鈴木貫太郎のページにはより詳しく載っています。↓

1945年8月14日の御前会議終了後、阿南陸相は紙に包んだ葉巻の束を手に「終戦についての議論が起こりまして以来、私は陸軍の意見を代表し強硬な意見ばかりいい、お助けしなければならないはずの総理に対し、いろいろご迷惑をかけてしまいました。ここに慎んでお詫びいたします。ですがこれも国と陛下を思ってのことで、他意はございませんことをご理解ください。この葉巻は前線から届いたものであります。私は嗜みませんので、閣下がお好きと聞き持参いたしました」と挨拶にきた。鈴木は「阿南さんのお気持ちは最初からわかっていました。それもこれも、みんな国を思う情熱から出てきたことです。しかし阿南さん、私はこの国と皇室の未来に対し、それほどの悲観はしておりません。わが国は復興し、皇室はきっと護持されます。陛下は常に神をお祭りしていますからね。日本はかならず再建に成功します」と告げた。阿南は静かにうなずいて「私も、そう思います」と言って辞去した。鈴木は迫水久常に「阿南君は暇乞いにきたのだね」とつぶやいた。その数時間後、阿南は割腹自決した。
鈴木貫太郎


戦中世代の俳優が数多く出演した「日本の一番長い日」阿南陸軍大臣役は三船敏郎

戦後70年が経ちました。宮中祭祀について、日本人なら学びなおしてもいい時期だと思います。昭和天皇は東京が空襲の危険にさらされている最中も宮中祭祀を続けようと努力されたと聞いていますが、宮中祭祀こそは日本が守るべきことの一つだと思います。


日本の一番長い日 本編映像(昭和天皇の御聖断シーン)本木雅弘さんが昭和天皇を演じると聞いてから、その描写に不安を感じていましたが、この映画の昭和天皇は、過去に描かれたどの歴代天皇よりも素晴らしいものと思います。


宮中祭祀 連綿と続く天皇の祈り』「はじめに」の全文は以下を参照ください↓
神代在今の国  


☆宮中祭祀については、以下をご参照ください

神代在今の国
年間102日あります

宮中祭祀 新嘗祭①
宮中祭祀 新嘗祭②
宮中祭祀 新嘗祭③
豊明節会、新米解禁!

としごひのまつり
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紀元祭の祭典で気づいたこと
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