共同体感覚を下げて
困難を克服しようとすることを
「人生のダークサイドに堕ちる」
なんて言われたりします。



自分の所属する共同体の利益より
自分だけの利益を優先する方法を
選ぶと、共同体感覚は下がります。

共同体感覚が下がると
感じるしあわせが減ります。

自分や相手が信じられず
疑う気持ちが大きくなり、
共同体へ所属している感覚が減って
孤立感が増えます。

犯罪はその典型ですが
共同体感覚が下がる方法で
困難を克服してみても、
感じるしあわせは
一時的に大きくても
その後に増えることは
ありません。



自分に都合が悪いことでも
所属する共同体の利益を
実現するためなら
自分に都合が悪いことを
受け入れる、と決める。

これが勇気です。

例えば
今日は疲れたから
帰ってすぐ風呂入って寝たい。

でも、
帰って食事の支度をすると、
家族と約束をしている。

支度しないと
家族が困ってしまう。

こんなとき。



自分の利益を
優先する方法を選ぶなら
「ごめん、疲れたから寝る。
食事は自分でなんとかして。」
と言って、
とっとと風呂入って寝れば
気持ちよさそうです。

相手はどんな負担するのか
知りませんが
自分の負担は激減します。

しかし
家族という共同体の利益は
考慮されていないため
「共同体への所属感」や
「約束を守れる自分という自信」は
減ります。

そう言われた家族は
仕方なく自分でなんとか
するでしょうけど、
自分への信頼は
減ってしまいますね。

翌日以降も
自分と家族の間に
溝が残る感じです。



・自己信頼
・他者信頼
・所属感
これら共同体感覚を
形成する要素すべてが
下がってしまいます。

これらを減らさずに
「疲れてる中での食事の支度」
という困難を克服する、
と決めたなら、
それは勇気です。

「約束したから、がんばろう」

「疲れても食事の支度が
できる自分は、すてきな自分」

「家族の笑顔が見たいから、
よし、食事の支度しよう!」

「本当に疲れたから
30分くらい休ませて欲しいと
家族に相談してみよう」

「本当にヤバいから
今日の支度は代わってもらうか
出前にしてもらえないか
相談してみよう...」

こんな感じで
共同体感覚を下げないように
行動しようとすれば
互いに話ができる限りは
ひどい結末にはなりません。

やりとりの仕方によっては
共同体感覚を高めることも
できます。



私は高校生の頃に
タクシー運転手が落とした財布を
拾ったことがあります。

拾った時、
落とし主は困ってると思うと
財布が持ち主の手に
早く戻ることが最善と信じて
すぐに交番へ届け出ました。

中には一万円札が何枚か
入っていました。
高校生の私には大金です。

そのお金があったら
いろんなことができたでしょう。

一緒に居合わせた友人には
「やったじゃん、大儲けだね」
なんて言われて、
「このまま持ち去っても
バレることはないから、
持って行っちゃえば
いろいろできる」などと
頭に浮かびました。

でも、
盗んだみたいに得たお金で
いくら楽しくなっても
その後ずっと
「拾った財布の金で遊んだ」
という事実を
背負って生きていくなんて
イヤだ。

だから交番へ届け出よう、と
決めた。

振り返れば、これって
勇気です。



この件で
共同体感覚が下がる感じは
まったくありません。

むしろ高まっています。

財布落としたタクシー運転手も
手元に戻った財布を見ながら
世の中まんざらでもないと
共同体感覚が高まったかも
しれませんね。



共同体感覚を下げる方法で
困難を克服しようとするのは
一見、自分の負担が軽く、
そのわりに成果物が大きくて
魅力的に見えます。

しかし、それは
自分の血液を売る商売みたいに
自分の大切なものが
犠牲となる方法です。



アルフレッド・アドラーは

「しあわせになる唯一の方法は
共同体感覚を高めることだ」と

言うくらいに
共同体感覚は生きる上で
大切なものです。

困難に直面したときには
共同体感覚を下げずに克服すると
決める気持ち、
すなわち「勇気」を
迷わず使いたいですね。




お読みいただき、
ありがとうございます。

プロコーチ8年目、常楽でした。


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