新聞小説「ドリトル先生 ガラパゴスを救う」(8) 作:福岡伸一 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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朝日 新聞小説「ドリトル先生 ガラパゴスを救う」(8)
1/30(221)~2/20(238)
作:福岡伸一 絵:岩渕真理

超あらすじ
ゾウガメが話す溶岩トンネルの、先祖からの「におい」の記憶。
それがイギリスの鍾乳洞の希ガスと同じものだとの推定から、このガラパゴスと繋がっているとの仮説が。

計算では自由落下でイギリスまで40分。
希ガスの出るナルボロー島で、岩にメッセージを書き溶岩穴に放り込むドリトル先生。

地球半径の違いにより、先方からの返信が不可能と知る先生。
イギリス側では届いた石に大騒ぎ。コウモリのリーダー、サフィのお母さんのアドバイスによりドリトル先生からのメッセージだと確信。
返信を追記して送るも、それは戻って来た。

感想
ビーグル号より先にガラパゴス諸島に着き、エクアドルによる統治にも成功したドリトル先生。あとは帰還するだけだが、地球に開いたトンネルを通って戻るというアイデア!
マントルそのものはドロドロなのでこれはもう「ファンタジー」
えー、最後にこんなのに付き合わされるのかー、とちょっと萎えるが。
まあこれも少年少女の夢のためか。
このレビュー時期のちょっとあと(2/28)に、本連載が3月末で終了するとの予告あり。

あらすじ
ハイパーループ(221~229)
先生は続けます。調査も一通り終え、そろそろ我々も一段落してこの研究成果をまとめなくてはならない。

それを聞いて先生が帰りの事をお考えだと分かりました。
ある日ゾウガメのジョージが、島の溶岩トンネルからのにおいが百万年前に起きた噴火の時と同じだと仲間から聞いたと言います。実際の経験ではなくにおいの記憶が世代を超えて受け継がれたとの事。

どうやってにおいの記憶が受け継がれるのかジョージに尋ねる先生。
メカニズムは不明ですが、においは爬虫類が環境を知るための重要な手がかり。経験から学ぶもの以外に生まれつき知っているものもあります。生きるために重要なにおいの記憶は強化され、継承されます。

それは遺伝子というもの?と聞く先生。
はい、ともいいえとも言えます、とジョージ。遺伝子として伝わっている以外に特定のにおいに反応する特別な仕組みが遺伝子の外側にあり、継承されているように思えます。

ジョージはにおいの記憶を音楽の楽譜に例えました。海賊たちですらボロボロの楽譜を見て笛が吹ける、遺伝子とはそんなもの。

基本はめったな事ではずれない。でも細かい点でどう吹くかの注釈が遺伝子の外側にある。先生は感心して納得しました。

先生は百万年前の火山のにおいの話を戻しました。ジョージは仲間が嗅いだその風を吸って吐いたら声がヘンテコになったと言います。
「それは希ガスに違いない!」私も気球が作れてそれで帰れると思いましたが、同時にその旅の恐怖も思い出しました。

ポリネシアも同意見。

気球の話を私から聞いていたジョージが、希ガスが貴重なものならガラパゴス諸島の穴とイギリスの穴とどこかでつながっていませんか?と先生に聞きました。その可能性は十分に考えられる、と先生。
こちらの穴から物を落とせば引力で穴の底に向かって落ちて行く。


そして中心まで行くと向こう側の穴を逆に昇って行くことになり、向こう側の出口で速度がゼロになる。実際には空気の抵抗や壁にぶつかる摩擦でそこまでは行かず、振れ幅が小さくなって地球の中心で止まる・・・
ジョージは、何百万年も前に自分の先祖のカメがその穴に飛び込んだのではないのでしょうかと言いました。

穴から吹き上げる風の香りに希望を感じて飛び込んだ。

その彼(もしくは彼女)はすごく爽快なスピード感を味わったでしょう。
それが途中で弱まって首を出してみたら砂地の上におっこちた。

それがガラパゴス諸島。
この新天地は天敵がいないのでのんびり過ごせた。
そして異性のリクガメと出会ったのです。カメは割と勇気がある生物。

これが、私たちがここガラパゴスにだけいる理由だと思うと話すジョージ。先生は私に、どれぐらい息を止めて高温を我慢すればいいか計算できるか聞きました。
地球トンネルを落下する速度は、重力の作用で9.8メートル/秒ずつ加算されます。よって1秒目9.8、2秒目は19.6、3秒目は29.4メートルとなり距離は58.8メートル。


これを積み重ねて地球の中心までの約6,400キロとなるまでの時間を求めればいい。
順に足すより微分積分を使っての計算が速い。

概算で1,200秒弱。19分ほどです。
この時の速さもすごい。秒速1万メートル以上。中心を過ぎると速度は減りますが両方合わせてたった38分。改めて驚く私。こればかりは実行してみないと分からない、と先生。

ナルボロー島の地球トンネル(230~238)
なんてすごい速さ。高速蒸気船だって20日はかかります。
とにかく一度、その地球トンネルを探してみよう、とドリトル先生は言いました。
私たちは翌日小舟でナルボロー島に向かいました。私はこの旅が片道旅行の様な気がしてこれまでの記録ノートを全て持参しました。
ナルボロー島とアルベマール島との海峡に向かいます。

ナルボロー島の火山に上がる噴煙。

赤道を越え、さらに海峡を進みます。その後ナルボロー島に着き上陸。
ジョージの先導で山を登ります。

途中で会う仲間のゾウガメがジョージの帰還を喜びます。
島のリーダー、シーリーを紹介するジョージ。彼がトンネルの入り口を見つけ、例の風のにおいを嗅いだ本人とのこと。

シーリーの道案内で山道を進みます。
岩だらけの場所に出た時、さしわたし3メートルほどの穴が口を開けていました。とてつもなく深そうです。

風が吹き上げて来ますが、何のにおいも感じません。

もしこの穴が地球の中心に続いていて、更に世界の別の場所に繋がっていたら?と先生。メッセージを出してみたら?と言う私。

例えば岩にひっかいて、と試してみる先生。

文面についての私の提案を喜んでくれました。

メッセージの実現性について考えます。
赤道直下のここは遠心力で地球の中心までの半径が他より長く、落下の加速度も大きい。

中心から反対側に向かう時、曲がってイギリスに向かえば半径は短くなるので、落下物は抜こう側に飛び出します。

もし入り組んでいれば当たって大きな音を出し気付かれます。
先生は岩にメッセージを刻み、穴に落としました。

後は待つだけ。私たちは一休み。
その間に水を飲んだり軽食を摂ったり。

そうこうしているうちに38分が立ちました。
ただ、それが届いても見た人が意味を理解するのにしばらくかかる・・・
そこで先生は「これはしたり!」と声を上げました。

私の説明では地球の中心までは半径が長い分速くなるからイギリス側へ飛び出しますが、逆にイギリスから返送する場合には速度が足りずにこちらまで届かないと言う先生。
それは一方通行のラブレター・・・
その頃、イギリスの鍾乳洞(私たちが希ガスを集めた)では騒ぎが起きていました。

コウモリたちが天井からぶら下がって休む洞窟にガーン、ガーンという大音響。コウモリたちはその能力から音源が来た方向を推定。

希ガスの穴から飛び出して、蓋のスイカ石を押しのけ右に飛んで行った。その後何度も天井、壁にぶつかって地面に落ちた。
落ちた石を見に行こうと言うリーダーのサフィ。

石に近づくコウモリたち。力のある者がそれを明るい所まで移動させました。表面に引っかいたような絵が描いてあります。

人が二人と鳥一羽、島影に穴あきの球。
サフィのお母さんコウモリが、これはドリトル先生とスタンピンズ君、オウムのポリネシアの事だと言い出しました。

みんなの絵解きは続きます。若いコウモリが発言。
この穴は希ガスの穴、それがずっと続いて反対側に出るとガラパゴスに繋がっている・・・

向こう側のドリトル先生は返事を待っている。手っ取り早いのはこの石に新しい何かを書き込んで送り返す。

サフィが余白にコウモリマークを爪で描き込みました。
そして皆でその石そ希ガスの穴に放り込みました。
コウモリたちは再び天井にぶら下がって睡眠の続きです。

皆が眠りに落ちかけたときカン!、カン!と大きな音。石がまた飛んで来ました。
それを見ると描き加えたコウモリが。さっき送った石です。どこかで勢いを失って戻ったのかも知れない、と若いコウモリ。

理由はともあれこっちから向こうへ送れない事が分かった・・・


福岡伸一のドリトル的平衡(2/28)
スタンピンズ君が地球トンネルの通過時間について訂正(読者の指摘) 地球の中心に向かう時重力加速度は次第に弱くなる筈。
高度な計算が必要になる。
たくさんの読者が冒険を見守ってくれるのは心強い、と先生。
連載がH3月末で終了すると予告する先生。
「終わることから始まることもあるよ」