新聞小説「ドリトル先生 ガラパゴスを救う」(4) 作:福岡伸一 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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朝日 新聞小説「ドリトル先生 ガラパゴスを救う」

(4)7/12(80~8/30(112)   作:福岡伸一 絵:岩渕真理

登場人物
‎ジョン・ドリトル     博物学者・医学博士
トミー・スタビンズ  助手
ポリネシア      オウム

超あらすじ(最初から)
(1) 4/1(1)~5/2(25)
博物学者 ドリトル先生の下で助手として働くスタンピンズ少年。
ある時ドリトル先生は、鳥たちの情報で軍艦イーグル号がガラパゴス諸島へ領土を求めて出航する事を知る。
自然の宝庫が荒らされる事を危惧するドリトル先生。
(2) 5/3(26) ~ 6/18(61)
洞窟から吹き出す軽い気体「希ガス」を気球に詰めてゴンドラを取付け、空の旅で先回りを考えるドリトル先生たち。
気球、ゴンドラ、希ガス取込み用のホースを作り洞窟に向かって出発。
そして希ガスが詰められ、旅の準備は整った。
(3) 6/20(62~7/11(79)
気球は浮かびドリトル先生、スタンピンズ君、オウムのポリネシアの旅が始まる。途中カツオドリの助けも借りながら順調に旅は続くが、嵐に巻き込まれて遭難してしまう。

感想
一人ぼっちになってしまったスタンピンズのサバイバル行動が始まる。
一応昆虫知識を総動員して、メス蛾のフェロモンにオスが惹かれる行動を利用する。やや強引だがこれもまたご愛敬。
そして出会ったゾウガメのジョージがガラパゴス出身だった事から、この国エクアドルの歴史が語られる。

教育的側面も期待して地理、歴史情報をぶっ込んで来るから、何か説教臭い感じがする。ただエクアドルが南米大陸左上方の角にあり、その真西にガラパゴス諸島があるという事はキッチリ覚えた。

そして次章で何とかドリトル先生に再会するスタンピンズ君。

あらすじ
ジャングル(80~83)
恐ろしい速度で落下を始め、そのまま気を失ってしまった私。
次に目覚めた時、私はゴンドラのカゴの中の倒れていました。
ゴンドラは木に引っかかって傾き、気球はちぎれてなくなっていました。
ゴンドラの中の荷物はなく、ドリトル先生とポリネシアもいません!
「ドリトルせんせーい!」叫んでも静まりかえったまま。

ゴンドラは高い木の枝に嵌っており、私はロープで何とか地上に下りました。そこはジャングルのど真ん中。ドリトル先生の姿はどこにも見えず、木の上のゴンドラには布きれ一枚もくっついていません。


ドリトル先生やポリネシアは無事だと思う一方で、大きな不安。
私は先生の教えに従い、まずよきことのリストアップをしました。
自分のリュックサックを抱いていたため最低限のものはあります。
<よきこと>・生きている ・怪我もしていない ・暑くも寒くもない ・手持ちのもの:ノート、筆記用具、実験器具など。そしてロープ一本。
・希望(先生は生きている)


次いで<すべきこと> ・水、食料確保 ・現在地確認 ・先生を捜し出す ・助けてくれる人を探す ・人里に辿り着く
先生の教え:現在地を書き込む。ノートに地図を作り、まず太陽の動く方向で東西を知り、そして南北を知りました。
そのとき、鳥のさえずりが聞こえて来ました。

どんなときでも、どんなことにも、解決の方法はある(84~86)
そうだ!鳥さんに聞こう。私は鳥たちの公用語でドリトル先生を見かけなかったか聞いてみました。でも通じない様で、返事はありません。
気をとりなおして地図作りを進めます。
また柔かそうな葉を食べてみて食用になるか試しました。

水を探さなくてはなりません。私は木に登り、あたりを見回しましたが、見渡す限り森です。でも北は山のため、南に向かうことにしました。
その間にも鳥に声をかけましたが、通じません。
きっとドリトル先生も私のことを捜してくれている・・・
でも今のところ何の手がかりもありません。

助けが必要なのはドリトル先生かもしれない。しっかりしなくては。
水場を求めてかなり歩きましたが、見つかりません。
小鳥たちの鳴き声に近づくと逃げられてしまいましたが、そこは野イチゴの茂み。夢中になって私は食べ、水分と糖分の補給が出来ました。

ナンベイオオヤガを捕まえる(87~89)
そのまま進むと、突然大きなものが飛ぶのが見えました。それは30センチはありそうな蛾。ドリトル先生の図鑑にあったナンベイオオヤガの事を思い出しました。ここは恐らく南米のジャングル。
蛾のメスは誘引物質を体から出し、オスを引き寄せる。

ドリトル先生と生物の不思議について語り合ったものでした。

もし先生が怪我などで動けず、自分の場所を私に知らせようとしたら。
ポリネシアに頼んで蛾のメスを生け捕りにし、誘引物質を撒かせたら。
これはドリトル先生と私が同じことを考えていたらの話ですが。
その可能性にかけ、私はオオヤガのオスを見つけあとを追いました。

蛾を追いかけるうちに日暮れが近づき、このままでは見失いそうです。
リュックの中の補虫網を出して、その蛾を捕まえました。

一緒に一晩を過ごして、明日また探索です。
泊まれそうな場所を見つけて身体を横にします。
一人でいるのがこんなに心細いとは思いませんでした。


そこにいるのは、誰ですか!(90~92) 
少し眠った後、がさりという物音が聞こえました。逃げるか、戦うか。
「そこにいるのは、誰ですか!」でも言葉が通じる筈もありません。
あたりがほんのり明るくなる中、音の主がゆっくり現れました。
それはゾウガメ。1メートルはありそうです。
その目を見て、私は逃げるべきでも、戦うべきでもないと悟りました。

こんなに大きなゾウガメはガラパゴスにしかいないがそんな筈はない。
「こんにちは」と犬語で話しかけても返事はありません。ブタ語もダメ。
最後に、鳥の公用語で「カメさん、こんにちは」と呼んだ時、カメはすーっと長い息を吐きました。そして不思議なことが起こりました。

「こ・ん・に・・ち・・は」頭の中に鳥の声がしました。

ゾウガメは息の響きを使って鳥語で話してくれました。
100年以上鳥たちとガラパゴスで暮らしていたからだと言いました。
声を持たないゾウガメは息の振動で声を出します。
ここはエクアドル、南米の国だそうです。
私はドリトル先生を見なかったか聞きました。先生の名は知っているが見ていないとの事。私は今までの経緯をかいつまんで話しました。


ジョージの話(93~97)
私は、ジョージと呼ばれるそのゾウガメが、どうしてここに居るのかを聞きました。彼の話が始まりました。
技術などの行き詰まりを「ガラパゴス化」などと言うのは間違い。
そもそもガラパゴスの成り立ちは新しく、数百万年前に出来たもの。

海底火山が爆発していくつかの島が出来、冷えて固まった溶岩台地に初めてやって来たのは植物の種。植物が繁茂し、それを分解する微生物も育ち、少しづつ土が出来ました。

土は微生物が作り出す有機物の粒子です。
微生物は空気中の窒素をアンモニアに変え、アンモニアからアミノ酸、たんぱく質ができます。

微生物が土を豊かにし、植物も育ちます。そして彼らは自分たちが生きるだけでなく多めに作った栄養分を他の生物に与えてくれました。
それゆえに、増えた植物を求めて生物が集まるようになりました。その後ようやく私たちがやって来ました。

学者たちがガラパゴスの生態について唱えるのは「天然のいかだ」説。
私たちの祖先のリクガメは南米のあちこちにいる30センチぐらいのカメです。大雨と大風の日、卵の穴が丸ごと流され、それが枝やゴミが絡んだものに乗って運ばれました。


南米大陸からの南赤道海流に乗って天然のいかだは運ばれました。
リクガメは草食で、幸い天敵がおらず、だんだん大きくなりました。
同じように、トカゲやイグアナなどもたどり着きました。

それはみな硬い殻を持ち、乾燥に強い爬虫類の卵。

海賊たちの隠れ家(98~101)
ゾウガメ、イグアナ、トカゲ、鳥たち。

こうしてガラパゴス諸島の不思議なメンバーが出来上がったのです。
しかし、平和な生活が脅かされる時が来ました。
南米の原住民、インカ帝国や、スペイン・ポルトガルの宣教師も漂着しました。でも水や食料がないので興味は引かれません。
興味を示したのは海賊たち。入り江に船を隠して船を襲撃します。
そして彼らは私たちゾウガメが食料になる事に気付きました。

海賊たちはゾウガメをたやすく捕え、航海に連れて行きました。

長期間飲まず食わずでも生きられるので、都合のいい食料。
私たちはできるだけ山に逃げました。でも食料がなく、いつかは食べに行かなくてはなりません。交代でエサを取りに行きました。

どうしようもない時は、年寄りが前に出て身を挺する。これも利他行為。互いに他を助ける。エサ枯渇への対応。食われる事でのバランス。
ある日エサ取りに草地へ下りた時、海賊に遭遇。

年寄りのオスガメはメスや子供を奥地に引き返させました。


そして私たち五頭が海賊に捕まりました。太平洋側はリマ市から出港した船がガラパゴス諸島沖を通りメキシコへ行く定期航路があります。
海賊たちは彼らに襲撃をかけるのです。悲惨な流血が起きます。

ロドリゲスに会う(102~105)
海賊船は獲物の船舶を求めて待機。それで私たちも放置されました。
とうとう現れた餌食の商船 マーベル号。乗員はせいぜい十人。
かたや海賊側は札付きの悪党が三十人。攻撃されれば全滅です。

いつもの様に攻撃を仕掛ける海賊。でもマーベル号は武器と用心棒を備えていました。準備していた船長のロドリゲス。
用心棒たちは海賊を返り討ちにして捕えました。

そしてロドリゲスは私たちに興味を持ちました。
グアヤキルの港に着くと海賊は警察にしょっぴかれ、一方商売人のロドリゲスは私たちが動物園や研究所に高く売れると知っていました。

仲間は動物園や研究所に引き取られ、最後に残った私はロドリゲスの家に連れて行かれました。そこは豪華な広い邸宅。
池には鯉、鳥小屋には孔雀。彼は珍しい生き物が好きな様でした。
私は池のそばに住まいをもらいました。じめじめで居心地は悪いです。
彼にはきれいな奥さんと娘さんがおり、私に興味津々。果物、野菜などをくれました。

南米の歴史(106~112)
私たちはガラパゴスでは硬い木の実など食べていたので、みなごちそうでした。それを喜んで奥さんや娘さんはたくさんくれました。
おしゃべりが過ぎてしまったと言うジョージに、私は水場がないか聴きました。ここからジョージの足で二日ほどのところにある様です。
私がナンベイオオヤガを放すと、ひらひら舞い上がりました。

私とゾウガメのジョージは蛾を追いながら進みました。その間に、今南米が大変な時期だと聞かされ驚きました。今まではスペインとポルトガルに支配されていたのが、フランスとのいがみ合いでスペインが騒乱となり、植民地まで手が回らない。それが南米独立の機運に火をつけました。

進んで行くと、何となく水の匂いがして来ました。ジョージの話は続きます。南米の中にも多少の自治性があり地域のリーダーがいました。その一人ボリバル将軍が、統一国家を作ろうと奔走していました。そういう動きの中でロドリゲスはうまく立ち回り、商売を有利に進めていたのです。政治家たちも彼を頼りにしました。

ロドリゲスは、南米の独立には賛成でしたが、自身に不利になることを嫌い、ボリバル将軍の側近二名に目を付けました。スークレとフロリアン。
スークレは理想に燃えた美男子。フロリアンは策士で強欲。
ロドリゲスはフロリアンを度々邸宅に招待し、美女を侍らせました。
フロリアンを大統領にして、自分は財務を見る大臣にとの皮算用。

ロドリゲスの屋敷にはフロリアンのライバル、スークレが立ち寄ることもありました。私の甲羅を見て百年先に思いを馳せたようでした。
ボリバル将軍とスークレは各地の勢力を団結させ、統一国家樹立を夢見ていましたが、仲間うちのいさかいが顕在化して来ました。


スークレやフロリアンは各地でスペイン軍を撃退しましたが統一は困難で、エクアドルの独立だけでも、とボリバル将軍はスークレに後を託しました。その後スークレの活躍で1830年5月に新生エクアドル誕生。
でもその翌月、スークレは暗殺されてしまいました。失意の将軍はその後病死。代わりに大統領になったのがフロリアン。裏には彼が絡んでいると言うジョージ。エクアドルが出来たての国なのにびっくりの私。

スークレが暗殺された時、フロリアンは、無関係を装ってロドリゲスの屋敷に隠れていました。だが事件が起きて民衆はすぐにスークレの仕業だと見抜き、隠れ家も突き止められました。

それを察知してロドリゲスとスークレは脱出。押しかけた群衆はカラの屋敷を破壊し、その時にジョージの囲いも壊されました。

それで彼も屋敷から脱出。

 

 

 

福岡伸一のドリトル的平衡(7/30掲載)
スタンピンズとドリトル先生の言葉を借りて、ガラパゴス諸島の成り立ちが語られる。
そもそもガラパゴスは地球の歴史の中でも新しい

(「ガラパゴス化」は誤用)

 

福岡伸一のドリトル的平衡(8/31掲載)
スタンピンズとドリトル先生の会話。

今回は虫について。虫の一番の特性は硬いこと(外骨格)大型化は出来ないが、内部を軽く出来ることで鳥よりも早く空を制した。
棲家も高山から水中まで進出。地球上の生物の半分は昆虫。

生きて存在する事自体が重要。互いに支え合う「相補性」