新聞小説「ドリトル先生 ガラパゴスを救う」(5) 作:福岡伸一 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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朝日 新聞小説「ドリトル先生 ガラパゴスを救う」(5)
9/1 (113) ~ 10/6 (141)
作:福岡伸一 絵:岩渕真理

登場人物
‎ジョン・ドリトル    博物学者・医学博士
トミー・スタビンズ  助手
ポリネシア      オウム
ジョージ        ガラパゴス出身のゾウガメ

超あらすじ 注、最初からは()を参照
気球が吹き飛ばされたゴンドラで目覚めたスタンピンズは、ナチュラリストの知識でガを使って先生の居場所を探すが、その先で出会ったゾウガメのジョージに、ここが南米のエクアドルだと知らされる。
ガラパゴス島から海賊にさらわれたジョージは、それを更に撃退したロドリゲスにエクアドルまで連れて来られた。エクアドル独立運動の激化により、ロドリゲスの屋敷が襲われたことで囲いから脱出したジョージ。

感想
スタンピンズとゾウガメのジョージが、何とかドリトル先生とポリネシアに合流。(3)の終盤で「それがドリトル先生との最後の会話になりました」なんてあったから、また出会えたのにホッとした。
親切な農家で食事を提供された一行が、次に向かった町「グアヤキル」でジョージを使ったまさかの「開運興行」

元のアイデアはポリネシアの様だが、お供えのバナナの使い回しなんて、子供の読者に悪影響アリアリだろ!
この稼ぎで何とか滞在費用は賄えるが、宝物庫にある巨大真珠「アタワルパの涙」を使って先生に腹案がある様子。
なんか犯罪の香りがするんよね・・・・

あらすじ
ドリトル先生との再会(113~120)
数週間歩き通してジャングルに入り、ジョージは自由の身になりました。鳥たちの噂ではフロリアンが大統領になったとの事。

この辺りはエクアドルの東、アマゾン川上流で隣国のペルーがこの辺りの領有をねらっている様です。
蛾を追いながらジョージと行くと谷に出ました。この谷底に水源地があるとの事。私は滑らないよう三点確保しながら降りて行きました。
これもドリトル先生から教えられたナチュラリストの技。ジョージもがっちり地面をつかんで下ります。その時、ジョージが声を上げました。
見ると気球の黄色い布が木にまとわりついています。
「ドリトルせんせーい!」と呼びますが返事はありません。
でも先生がこの近くにいることは間違いありません。

私たちは谷を下りました。

空が広く見えるところに出た時、ぐんぐん近づく赤い点。「ポリネシア!」
飛んで来たポリネシアは私の肩に止まりました。ドリトル先生も無事ですが、足を怪我して動けないとのこと。私はジョージを紹介しました。

ポリネシアは、この辺りの鳥たちの訛りがひどくて苦労した様でした。
谷底まで下りると、あとはポリネシアの先導で森を歩きます。
岩の向こうに行くとドリトル先生の姿が。横になられています。


お互いの無事を祝いました。先生は気球にしがみついていたのが、下りる時に足を怪我したとのこと。

私たちを案内してくれたオオヤガが回りを飛んでいました。

ドリトル先生のシルクハットの中にはナンベイオオヤガのメスが。
先生も同じ事を考えていたのです。

ゾウガメのジョージを紹介し、お互いの情報交換ができました。

我々はちゃんとガラパゴスに近づいている。
私は先生に提案したい事を話しました。

ガラパゴスに一番近い南米大陸の国はここ、新生エクアドルです。

赤道を串刺しにして地理上も一体とみなせます。


フロリアン大統領は悪党ですが、国として熱気にあふれています。
そこでフロリアン大統領に、ガラパゴスがエクアドルの持ち物であると宣言させるのです。他国に勝手に開発されるよりずっといい。
ドリトル先生もその考えに賛成してくれました。

ビーグル号が到着した時に誰の持ち物でもなければユニオンジャックの旗が立てられてしまう。その時ポリネシアが聞きます。

「どうやって大統領をその気にさせます?」

そして、ガラパゴス諸島には価値の高い資産がないと言いました。
そんな島を大統領が欲しがるでしょうか。私はなんだかがっかり。
でも、大統領をその気にさせる方法はあるかも知れません、と言うポリネシア。人間が持っている想像力を利用する。。
「ガラパゴスを所有しておけば大儲けできると思わせればいい」
お金以外でエクアドルの民が、あればいいと思うもの・・・と聞かれてジョージも考えます。しばらくして何かにひらめきました。

アタワルパの涙(121~126)
それはインカ帝国最後の皇帝アタワルパの”涙”。スペインのピサロに攻められ、処刑された皇帝が身につけていた涙形の美しい真珠。
それを持つ者は怨念により災いを受けるとの予言通り、ピサロは暗殺されました。その後持ち主は転々。

アタワルパの死後299年で呪いが解けると、持ち主は万能の力を得ると言われる。呪いが解けるのは1832年。
ロドリゲスは、あの宝石があれば国が丸ごと買えると言ったとのこと。

アタワルパの涙は今エクアドル国の宝物庫にあります、とジョージ。
そして先生は涙形の真珠の話はヨーロッパにもあると話し始めました。
17世紀のオランダ、デフルトという街に住んでいた画家のヨハネス・フェルメールとアマチュア学者アントニ・レーウェンフック。

片や画業、他方は顕微鏡の研究に邁進したが、二人は友人として近い関係にあった。
フェルメールは同じ構図で多くの絵を描いた。画家というより科学者。

 

それで光の動きを変えて再現できるかを研究した。
そのために使ったのがカメラ(カメラ・オプスキュラ)
それを教えたのがレーウェンフック。
何枚か見せてもらったフェルメールの絵で関心を持ったのは、女性の左耳にあった涙形の耳飾り。それはアタワルパの真珠を模したもの。

素晴らしい絵。譲って欲しいと頼んだら20ギルダーだとの返答。

あの時は金がなかったが、今思えば借金してでも買うべきだったと悔やむ先生。それを聞いてポリネシアは話が簡単になったと言いました。
そんな真珠はガラパゴスに沢山隠されていると言えばいい・・・
それが夢物語でない事を信じさせなければならない、と言う先生。
翌朝ドリトル先生は、ゾウガメのジョージに街へ行く頼み事をしました。

ジョージは、足の悪い先生を甲羅の上に乗せて歩き始めました。
しばらく歩くうちに森を抜け、その先に一軒家が見えました。
そこでジョージが先生に、お金の持ち合わせがないか聞きました。
先生も私もお金は持っていません。

一文なしでは人が施しをしてくれるとは思えません、とジョージ。

叩けよ、さらば開かれん(127~132)
叩けよ、さらば開かれん、とばかりに先生は農家のドアを叩きました。
男の人が出て来て、皆を観て驚きました。次におかみさん、そしてたくさんの子供たち。みんなゾウガメの回りを走ります。スペイン語で多分「すごい」とか「大きい」と言っているのでしょう。子供は全部で五人。
ドリトル先生はスペイン語で親父さんに今までのいきさつを話し、水と食料を恵んで欲しいと頼みました。最初警戒していた親父さんも、ジョージが子供を乗せて歩き回るのを見てなごみました。

ジョージがここにいる理由を話す先生に、なぜそんな事が分かるのかと不思議がる親父さん。

親父さんは、ドリトル先生の言う、ジョージが鳥の言葉を話し、それを介して理解したことがどうしても納得出来ません。ただ子供たちがたいそう喜んでいる事もあり、家の中に案内してくれました。
おかみさんが大鍋で作っていた温かい料理を出してくれ、私はおいしさのあまりあっと言う間に平らげてしまいました。

食事の後、私たちが裏庭に案内されると、たくさんのニワトリが。
ドリトル先生が鳥の言葉で暮らしぶりを尋ねると、悪くないという返事。
ただ卵を産むためには殻の材料が必要だという。
先生がニワトリの要望を話すと、親父さんは不思議がりながらも明日から試すと言ってくれました。
次いでブタ小屋。ブタたちは優しくされてエサも十分だが、小屋の風通しが悪いと言いました。
そして窓をつけ、敷きわらの定期的交換を希望しました。ドリトル先生がが親父さんにそれを伝えると、納得して改善すると言いました。
今度は馬小屋。馬はドリトル先生の事を知っていて大喜び。

そして長い間話しました。気になる親父さん。

この馬は右の奥歯が痛むと言っていると伝える先生は、街まで馬を連れて行き、治療がてらリヤカーでジョージを運びたいと申し出ました。

詐欺かもしれないと心配する親父さん。一切断るか、一切信用するかの二択。先生は、馬自身に決めさせようと提案しました。

答えがイエスなら蹄を二回(トントン)、ノーなら一回(トン)。

それを了承した親父さん。
先生は取り決めを馬に伝えました。そして親父さんが第一問「この先生は信用出来るかね?」馬は蹄をトントン、と二回鳴らしました。

グアヤキルに着く(133~141)
質問を重ねた親父さんは馬の応対に納得しました。
私たちは借りたリヤカーにジョージを乗せて莚で隠し、出発しました。
さしてエクアドルの商都グアヤキルに着きました。

とても陽気な感じ。人目につかない宿屋を見つけました。

ジョージにムシロをかけて裏庭に残し、ドリトル先生と宿に入ります。
先生の風体が信用されて宿代は出発時で良いとされました。
お金作りは私とスタンピンズで考え、先生には馬の歯の治療と親父さんへの買い物を売掛で済ませるよう頼みました。まずは街をひと回り。

グアヤキルの街は雑多な民族が集まって活気があります。裏通りで小さな空き物件を見つけました。大家さんと片言の英語で交渉します。

私はドリトル先生の代理人として賃貸契約を結びました。本来は契約時に前払いが発生しますが、ある提案をしてあと払いに出来ました。
まず商売を軌道に乗せてから。オウムのポリネシアに腹案がありそう。

大家さんへの提案はお客さん第一号になってもらうこと。
その商売は、ガラパゴスゾウガメのジョージの甲羅を撫でて御利益を得る代わりにお代をもらう事。「お安いご用」とジョージ。

店の準備を整えて大家さんを招き入れます。
大家さんがそっとジョージの甲羅を撫でました。

百歳まで生きられるかな?の問いに「もちろんです」とわたし。

喜んだ大家さんは、これは流行るよと言い、近所に知らせるとも言ってくれました。寿命は神の思し召し。

これがイマジネーションを売るという事、と言うポリネシア。
お店は大変な繁盛となりました。皆喜んで入場料の10ペソを払い、お供えのバナナも買って供えてくれます。

バナナの山を時々元に戻し、それをまた売る「無限循環商売」
褒められないけど、これもガラパゴスを救うため、とポリネシア。
ジョージの甲羅は皆に撫でられてつるつるに輝きました。
あっという間にお金が溜まり、私たちは店の家賃、宿代や物品の金を支払えました。
私たちが商売をしている間に、先生の足の調子も良くなりました。

ドリトル先生は、国の宝物室を何度も見学に行きました。

所蔵品の見事さを話す先生。
自然のデザインをリソースとした文様の数々。所蔵品の大半はインカ帝国からの略奪品だが、散逸せずエクアドルの民によって守られているのが貴重だと言う先生。大体は欧米に持って行かれる。

例として挙げられた大英博物館のロゼッタ・ストーン。

その宝物室の一番奥に置いてあったのがアタワルパの涙
部屋の四隅には兵が立ち、鉄の柵越しにしか拝めない。
ぼくも是非見てみたいと言うと「実はここにあるんだ」と言って、ドリトル先生がポケットからくるみほどの大きなピンクの真珠玉を出しました。

びっくりする私に「良く見てごらん」と先生。
よくよく見ると、この輝きは安っぽい。もしかしてニセモノですかと聞くと「そうだ、その通り」貝殻を削って作った模造品だというのです。

その中でも一番できの良いものを10ペソで買って来たとのこと。

先生はこれがニセモノである事の証明を求めました。
中が空洞であるのを明らかにするには秤で重さを量ればいい。

水を使って密度を測ることも出来ます。
 

 

福岡伸一のドリトル的平衡(9/30)
大阪・関西万博(EXPO2025)のテーマ事業プロデューサーを拝命した。
EXPO'70では岡本太郎の「太陽の塔」が一つのアンチテーゼ。
課せられた「いのちを知る」というテーマに、岡本太郎へのオマージュを考えている。生命は数十億年前、たった一つの細胞から出発した。
私のパビリオンは、生命哲学を問い直すものになるだろう。
 

 

 

今日の一曲
Don't Dream It's Over ( Crowded House) 
最近通っているブロガーさんのとこで見つけたもの(懐かし~♪)