孤狼の血 LEVEL2 2021年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

劇場公開も終盤の様ですのでネタバレします。


監督    白石和彌
脚本    池上純哉
原作    柚月裕子

キャスト
呉原東署
日岡秀一(ひおか しゅういち) :松坂桃李
友竹啓二(ともたけ けいじ)   :矢島健一

広島県警本部
嵯峨大輔(さが だいすけ)    :滝藤賢一
瀬島孝之(せしま たかゆき)  :中村梅雀
中神悟(なかがみ さとる)     :三宅弘城

広島仁正会
綿船陽三(わたふね ようぞう) :吉田鋼太郎 組長
溝口明(みぞぐち あきら)     :宇梶剛士 若頭

五十子会
角谷洋二(かくたに ようじ)      :寺島進
角谷華英(かくたに はなえ)    :安竜うらら
五十子環(いらこ たまき)       :かたせ梨乃 故会長の妻
五十子正平(いらこ しょうへい):石橋蓮司 会長(故人)

五十子会上林組
上林成浩(うえばやし しげひろ):鈴木亮平
佐伯昌利(さえき まさとし)      :毎熊克哉
近田幸太(ちかだ こうた)       :村上虹郎 チンタ

尾谷組
一ノ瀬守孝(いちのせ もりたか) :江口洋介(服役中)
天木幸男(あまぎ ゆきお)       :渋川清彦 組長代行
橘優馬(たちばな ゆうま)        :斎藤工 若頭
花田優(はなだ まさる)           :早乙女太一

その他
近田真緒(ちかだ まお) :西野七瀬 「華」のママ。チンタの姉。
吉田滋(よしだ しげる  ):音尾琢真 「パールエンタープライズ」社長
神原千晶(かんばら ちあき):筧美和子 ピアノ講師
神原憲一(かんばら けんいち) :青柳翔
瀬島百合子(せしま ゆりこ)     :宮崎美子
高坂隆文(こうさか たかふみ) :中村獅童 安芸新聞・社会部記者



 

予告編


感想
前作(孤狼の血)で大上の後を継いだ日岡がどんな刑事になったか興味があって観に行った。それと鈴木亮平の狂犬ぶりも気になったし・・・

確かに日岡は大上がやっていた様に組と組との間に入って調整を行い、抗争を未然に防ぐ事はやっていた。この三年間一般市民を一人も犠牲にしていないという自負もある。
だが何と言っても形だけ大上を真似ているとしか見えない。それはたった三年しか経ってないんだから仕方ないんだけど。
だがそれも含めての原作らしい。その未熟さゆえの苦悩が、映画としてもう少しサルベージ出来ると良かったんだけどな。

それにしても鈴木亮平の狂犬ぶりには恐れ入った。「西郷どん」のおっとりしたイイ人もやれるし、お見事。
ただ、設定キャラクター的には、執拗に目つぶしにこだわるのがちょっとうざい感じはする。
チンタ役の村上虹郎がなかなかいい。

だんだん悪い方に引き込まれて行く時の切なさ。

それから終盤で真緒が瀬島を事故死させるシーンには違和感ある。
真緒にとってチンタの仇でもない。日岡の意思が入ったとしても、前作で元々日岡が同じ役割りを命じられていた。恨むべきは嵯峨だろう。

オマケ
①パールエンタの吉田といえば、前作の「真珠男」

けっこう出世したんだ。思わず笑った。
②ヒロインの真緒、なんか見かけないけどサワヤカそうな姉ちゃんやなぁと思っていたらカミさんが「auペイカードの先生やで」びっくり

③尾谷の賭場で金を賭ける男を元サッカー日本代表の播戸竜二がやっていたという。札を指でトントンしていたので記憶があった。

 

④ナレーションが・・・
確かに状況が良く分かるメリットはあるが、ああいう説明をされると深みを損なうわな。

あらすじ
ナレーション
広島県呉原市。昭和63年、暴力団尾谷組と五十子会系加古村の抗争は、組長五十子正平の死によって一応決着した。
だがそれから三年経っても尾谷組と五十子会の抗争は続いていた。


尾谷組の幹部 橘を襲撃すべくバーに乗り込む五十子会構成員四名。下っ端の男(チンタ)がチャカを与えられず短刀を渡される。
だがそこにいたのは広島県警の不良刑事 日岡秀一。
三人は捕まったが、残ったチンタが日岡を短刀で刺した。倒れる日岡。
取調室でチンタ(近田幸太)と話す日岡。チンタは日岡のS(情報屋)で
、疑われないよう銃で撃たれる事を予想して日岡は防弾チョッキを着ていたが、ナイフでは体に届いてしまった。

尾谷組が仕切る賭場で橘と話す日岡。三年前の事件で組長(当時若頭)の一之瀬は服役中。話の中で、死んだ五十子正平の右腕だった上林が出所する話を聞く日岡。

徳島刑務所から出所する上林成浩。

神原看守らから暴行を受け続けていた。
上林は出所早々、手下を連れて神原の妹 神原千晶を暴行の上惨殺。
ナレーション
時代が昭和から平成に変わる中、呉原市を拠点とする尾谷組と広島最大の広島仁成会との長い抗争は、五十子正平殺害事件の後、双方手打ちによって終結した。

それを裏で仕切ったのは呉原東署の刑事 日岡。

だが抗争の火種がまた燃え上がろうとしていた。

近田真緒の実家で、弟のチンタがしばらくムショに入ると言う日岡。
極道をさせたくなかったからガミさんの弟子に任せたのに、とグチを言う真緒。そんな彼女に抱き付く日岡。


「女性ピアノ講師殺人事件捜査本部」の件で県警本部に来た日岡。
被害者は強姦されたうえ両眼を抉り取られていた。
会議を仕切る元上司の嵯峨大輔警視(監察官)。

五十子会の仕業とみて日岡に担当させる腹づもり。

三年前の事件を思い出す日岡。
亡き大上刑事と組んでいた日岡。大上が殺された事の報復として、五十子会主催の「やっちゃれ会」に尾谷一派を手引きし五十子正平を殺させた。そして身代わりでなく実行犯の一之瀬を投獄した。

そのパーティーに出席していた嵯峨は、途中で逃げ出した。
 

そんな日岡に、嵯峨は相棒として初老の瀬島刑事を付けた。


五十子正平の三回忌法要に顔を出す上林。

尾谷を潰しておとし前を付けるという上林に、もう手打ちは済んでいると諫める二代目の角谷と、広島仁正会会長の綿船、若頭の溝口。
ビジネス指向を言う綿船は配下の「パールエンタープライズ」社長 吉田を上林に紹介する。
亡き五十子正平の妻 環がお父ちゃんを成仏させたって、と林に頼む。

数日後、吉田を伴って広島仁正会を訪れる上林。吉田の会社を譲り受けると聞いて驚く綿船。吉田の腕には包帯が巻かれている。

怒って出て来た若頭 溝口の頭にアイスピックを突き立てた上林。



上林を訪ねる日岡と瀬島。ピアノ講師殺しの件で聞きに来たが、神原看守は世話になった恩人だと言って、妹の家に行った事も話す上林。彼女の行方を知らないと言う上林に、あっさり引き下がる日岡。
逆に、オヤジ殺しを裏で仕切ったデカを知らないかと聞く上林にシラを切る日岡。
ナレーション
広島仁正会No.2の溝口を殺害した上林だが、その死は自殺で処理された。広島県警と手を組む事で、影響力を高めていた溝口を排除した綿船。


日岡がチンタを連れて、真緒がママをしているスタンドバー「華」を訪れ
る。余分に渡された金に、またチンタに何かさせるのを察する真緒。


鑑識へ行って証拠品の調査状況を聞く日岡。上林の指紋が出るも決定的な証拠にならす、迷宮入りを匂わせる担当。

日岡に声をかける男。新聞記者の高坂。三年前の事件を追っているという。チンタを留置場から出した件にも注目していた。

五十子会上林組の看板を上げる上林のもとに構成員が、尾谷に襲撃をかけたメンバーとしてチンタを紹介した。
上林が五十子の事務所に乗り込み、組長の角谷とその妻を犬の檻に閉じ込めて銃の場所を教えろと拷問。結局二人は殺され、掘った穴に投げ込まれる。命令されて火を点け、死体を埋めたチンタ。

事件の重要参考人 上林の経歴を知る日岡。

中学生の時に両親を殺して逮捕されている。酒乱の父と、それを止めることが出来なかった母。母親の両眼は抉り取られていた。

瀬島の懇願により一緒に食事する事を了承する日岡。

瀬島が公安出身だと知り警戒していた。実は日岡がかつて大上の下についたのも、彼の身辺調査を命じられたためだった。
瀬島の自宅に呼ばれ、奥さんの手料理を食べるうちに心を許す日岡。

喫茶店のテラスで落ち合う日岡とチンタ。あいつ狂うちょる、と上林を早
くパクる様伝えるチンタに、もう少し辛抱してくれと頼む日岡。
一方、パスポートを出して礼を言うチンタ。さすがじゃわ。
あっちで母ちゃんと一緒に住む。決めたんじゃ・・・

会った高坂の顔を見て「何じゃ、その顔は」と言う日岡。
尾谷組に脅されたという。言うまでもなく日岡の指図。
あんたは大上以上に問題がある、と高坂。大上は泥をかぶるのを分かってやっていたが、あんたは裏で極道とつるんでやっとるだけ。
この三年誰も抗争で死んどらん、と反論する日岡。
高坂は上林から「オヤジとったデカ知っとるやろ?」と聞かれていた。

バー「華」に数人の男が乗り込み嫌がらせが始まる。出て行く客たち。
真緒が相手をする。「ここらじゃ見掛けんねえ。上林組の人なん?」
知り合いのアネキとやれるならコーフンすると話す男。
尾谷組の橘が子分を連れて現れる。小競り合いの末に去る男たち。


上林に、姉がバーやっていた事をなぜ黙っていた、と聞かれるチンタ。
逆に姉を使って尾谷組へ探りを入れるよう命じられた。

そして日岡の家族も調べろとも。いざという時の保険。
その上で上林はチンタに腕を出させ、覚せい剤の注射を打った。


街なかで上林組の銃撃を受けた橘。腹を撃たれて闇医者に担ぎ込まれたところへ日岡が駆け付ける。

いきり立つ者たちに、会長と話をつけるまで待てと言う日岡。
橘が言う「オヤジがアンタを許したんは手打ちを優先しただけの事。ワシら誰ひとりとしてアンタを許しとらせんぞ」

広島仁正会の綿船会長に、上林を抑えるよう日岡が脅しをかける。
困るんはアンタも一緒、と言い返す綿船。この三年アンタの思惑どおりに広島の極道は動いた。問題が起きた時だけ極道にお灸をすえられるのは不公平。オオカミは強くなり過ぎて人間が根絶やしにした。

強うなり過ぎるんも考えもん・・・・

場末のメシ屋でチンタの話を聞く上林。日岡は両親も死んどると言うチンタに、言い訳だと断じた。ガキの頃アホみたいに腹すかしてメシを恵んでもららっとったな、とおばちゃんに話す上林。

夜の屋台でチンタと会う日岡。シャブ打たれたぐらいで何や、と軽く言う
日岡に銃を向けるチンタ。撃たれて脱兎の如く逃げ出す日岡。
腹を撃たれる日岡。「もうやらんと、どがいもこがいもならんのじゃ」
倒れた日岡は「はよ逃げぇ!これで顔も立つやろ・・・」

「華」に転がり込んだ日岡は真緒に瀬島への連絡を頼んだ。
瀬島に事情を話す日岡。上林組に協力者がいた事を知る瀬島は、言われたように日岡を重傷として外部に伝える。
自分が撃たれたことで上林は尾谷組に襲撃をかける筈。

そこを一気に・・・

組に戻って褒められるチンタだが、上林からは何でとどめと刺さなかったのかと責められる。警察も全く動いていない。

ワシはオヤジのために・・・と言いかけたチンタにドスが渡される。

「そこまで言うなら見せてもらおうかの」 

進退窮まり小指を詰めるチンタ。

家に戻ったチンタ。手の包帯を気にする真緒。警察に利用されとるだけやと言う姉に、ヒーさんは正しい事をやっとると弁護するチンタ。
今夜午前0時に襲撃をかけるというチンタの連絡を受けた日岡は、瀬島にチームを組んで待機させるよう頼む。
カチ込みの準備が出来た時、子分らを先に行かせチンタのバイクを借りる上林。
尾谷事務所から少し離れて待機している日岡のベンツに近づくバイク。日岡を引きずり出す上林。撃たれた体で反撃出来ない日岡。

チンタがスパイだという事も知られていた。
車のホーンを鳴らして瀬島に知らせる日岡。バイクで逃げる上林。
戻った上林とその部下に惨殺されるチンタ。


実家の鶏小屋に捨てられていたチンタ。両目を潰されていた。

警察とヤジ馬の中へ駆け付ける日岡に「帰れ!」と叫ぶ真緒。


この姐さんとええ仲じゃった、と言いふらす記者の高坂を殴って連行される日岡。
嵯峨に罵られる日岡。「あいつはお前のSだった。お前のために動いて殺されたんじゃねーのかよ!」
始末書を書けと迫る嵯峨。三年前の五十子事件も。

「俺ら公務員だから」
そこへ尾谷の組員が撃たれたとの報告を受けて出て行く嵯峨。
残された日岡に話しかける瀬島。「わしに手伝わしてくれんか?」
定年間近のロートル。組織に爪痕残したい・・・・
五十子の事件の真相を話し始める日岡。
ナレーション
日岡は瀬島に、昭和63年の五十子正平殺害事件を発端にした自身の操作について全てを話した。そして現状を打開する糸口を二人で模索した。


高坂を吊し上げる日岡。あいつらは証拠隠滅も何もしとらんかったという話を聞き驚く日岡。県警はハナっからそれが目的。アンタの仕切りが気に食わんけー、上林を野放しにしてわやくちゃにした。
鑑識に行って科捜研の報告を聞く日岡だが、つれない担当。
被害者の膣内の精液が前科者リストと一致したとカマをかけると、本部の方針に従っただけじゃ、公安まで入れた作戦じゃと口を滑らした。

瀬島のアパートを訪ねる日岡。住人の話では、そこはずっと空き家。
瀬島が、日岡との会話の録音を嵯峨に渡していた。

通夜をしている真緒の実家に行く日岡。

チンタのパスポートを見せる真緒。

「アンタが作ったんやろ」 「向こうに母ちゃんがおるって・・・」
アホらし、チンピラと駆け落ちしたんや。今ごろ風俗・・・
チンタを殺してしもうた・・・・許してくれ・・・

高坂に、戦争しちゃろうと思うと持ちかける日岡。

記事にしてくれんか?相手は誰じゃ。上林か、県警か?
新聞が発行された。見出しは「広島県警が容疑者隠蔽か?」
内部告発を匂わせる内容に、日岡は県警に軟禁される。

綿船は上林に、いずれ仁成会トップも譲るからこらえてくれと頼む。
だが上林は「何もかんもぶっ壊れりゃいい」
組に戻って襲撃の準備をさせる上林。「尾谷をブチ回す」
そこへ綿船から話を聞いた環が文句を言う。胸を打ち抜かれる環。

両手錠をかけられて座っている日岡。そこに上林組がカチ込みしたとの報告で浮足立つ事務所。お茶をもらう振りをして警官から銃を奪い、窓を破ってパトカーを奪った日岡。

尾谷事務所に突っ込んだトラック。組員が入り乱れての銃撃戦。
そこにさしかかる日岡のパトカー。それを見つけた上林は自分も車を駆って追いかけた。互いが相手をぶつけながら走る。
縁石に乗り上げて上林の車が横転。車を降りて向かう日岡。

銃を奪い合うも決着せず、上林が振った日本刀も半分に折れる。
「ワシゃのう、簡単には死ねんのよ。ガキの頃死神がこびりついたけん

。死神いうんはやっかいでのう。簡単には死なせてくれんのじゃ」

銃を拾って上林の頭にあて、引き金を引く日岡。だが残弾なし。
「言うたとおりじゃろう・・・」
折れた刃先を拾い、布でぐるぐる巻きにして打ちかかる上林。

折れた刀で受ける日岡。日岡の刀が上林の腹にめり込んだ。


そこに走り込むパトカー。嵯峨たちだった。
二人は引き離される。悪態をつく嵯峨。
その時日岡が嵯峨の銃を奪い、上林に何発も撃ち込んだ。
「・・・何で俺の銃だ」 「これでおあいこですのう・・・」
「何してんだ。ぶっ殺す!」 殴りかかる嵯峨を止める警官。

ナレーション
平成4年。暴力団対策法が施行された。日本各地で暴力団追放キャンペーンが始まり、見せしめで暴力団関係者たちが検挙されて行った。


雀荘で遊んでいる瀬島。ダマテンでヒンシュクを買うが「勝ちゃええんでしょ」とうそぶく。瀬島が店を出て通りを歩く先でブレーキ音。

女が足早に去って行った「誰か轢かれた・・・」
ナレーション
そんな中、日岡は県北部の駐在所にひっそりと配置転換された。
広島県警は、日岡が上官の銃を使用して捜査対象者を殺害した事実を公表できないと判断したのだ。


日岡のもとに孫を連れた老人が来る。孫が日本オオカミを見たという。
「冗談言わんでください。日本オオカミは大昔に絶滅したでしょう」
それでも消防団も出るから一緒に来てくれと言われ、出掛ける日岡。
捜索の途中で人から離れる日岡。その先に日本オオカミがいた。
山をどんどん上がって行く日岡。
「どこじゃ・・・どこぞに逃げたんか」
 

 

本日の一曲

Baden Powell - All The Things You Are