透明頭 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 透明頭を被ると頭部が視覚的に見えなくなり、私は首なし人間になった。

 早速、そのマスクを装着したまま近所を散歩した。私は人々の注目を集めようと高らかな笑い声を住宅街に響かせながら走った。一人の女性がこちらを見て顔を引き攣らせながら電柱の陰に隠れた。それから、子供達が悲鳴を上げて逃げ出した。ちょっと考えれば頭部がない人間が死亡せずに走り回るわけがないと誰でもわかるはずなのだが、なかなか咄嗟には冷静な判断ができない様子だった。

 人々が驚嘆する様子が滑稽で面白いので私は最寄り駅まで行き、そのまま電車に乗り込んだ。すると、乗客達の間に走り抜けた緊張が目に見えたような気がした。獣や悪鬼などを模したマスクを着用した凶暴そうな連中もいたが、彼等さえも動揺を隠せていなかった。

 乗客達の反応を楽しみながら私はあくまでも悠然と振る舞い、空いていた席に腰を下ろした。すると、隣の席に座っていた女性が腰を浮かせ、私の頭部を覗き込んできた。礼を欠いた行為だと感じたので私は彼女の顔を睨み付けたが、効果があるわけがなかった。彼女の目には首の断面しか見えていないはずだった。そのようなものを食い入るようにして凝視している態度が薄気味悪いので私は肝を冷やした。次の駅で退散しようと思ったが、それまで気が気でなかった。


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