今週の範馬刃牙/第138話 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第138話/本分



かつて死闘を演じた範馬勇次郎と愚地独歩。ふたりはどこかのバーに入り仲良く酒を飲んでいる。
そして勇次郎は、克巳の成長を認めながらも、「貴様等は重大なミスを犯している」と指摘。
対する独歩はあっさりとその自覚を認める。…先週も書いたけど、勇次郎がふつうに椅子に座って酒飲んではなしてるってのがなんだかおかしいし、違和感がある。


独歩は言う。いまごろになって自分を嫌悪している。甘きに傾きすぎたと。



ある意味意見の一致を見たわけで、機嫌よくなったのか、勇次郎が「ポート・エレン10年物」をバーテンに注文する。なんだかよくわからないが、とりあえずウイスキーだ。在庫がなかったりしたらおもしろかったのに…

さきほどから緊張しっぱなしのバーテンがウイスキーを手におそるおそる飲みかたを訊ねる。ロックかストレートかと。勇次郎は似合わないおだやかさでボトルごと受け取る。そして逆さまにしたビンの底をうえからつかみ、ジャムのふたでも開けるみたいにひねってもぎとる。


…んなアホな!


花山も似たようなことをやっていたけど、彼はちゃんと口のほうをひきちぎっていた。底を割る意味はあるのだろうか…


さらに勇次郎は、いつのまにやら準備されていたジョッキにウイスキーをまるまる全部注ぐ。アルコール分70パーセントのスコッチをビールのように飲もうというのである。バーテンは驚愕のあまりマーシーみたいになっちゃってる。
キュウウウウ…、というヘンな音とともに、勇次郎はコレをイッキである。



勇次郎のパフォーマンスが終わるのを静かに待っていた独歩が続ける。



「息子 克巳の成長に目が眩み―――
我を忘れた


三段跳びで成長する倅を前に―――
飛躍しようとする我が子を前に


己の本分を忘れ去った
武術家の本分をッ


たとえ親兄弟でも手加減をするなッッ


そう教えてる俺が
そう嘯いている武闘集団が


皆が甘ったるい成長物語に酔いしれた


地上最強のカラテ…?

聞いて呆れる」




克巳のすさまじい成長は誰もが認めているところだ。読者だってそうだろう。どんなにアンチ克巳だって、克巳が以前となんも変わっていないというひとはいない。勇次郎ですらそうなのだ。だがちょっと待ってよと。おれたち、武術家じゃなかったっけと。夢枕貘原作、板垣恵介漫画の『餓狼伝』には、久我重明という、かなり濃ゆい、闇の空手家が出てくる。バキキャラでいったら龍書文みたいな感じか。FAW代表のグレート巽は、後継者である鞍馬彦一が北辰館の空手トーナメントに出場するにあたり、友人である久我に手加減なしの組手稽古を依頼する。久我の実戦力は圧倒的だが、鞍馬の天才性もすさまじい。ぼこぼこに殴られながらも鞍馬は、文字通り秒ごとに強くなっていく。最終的に久我は、タックルを仕掛ける鞍馬を手刀の一閃で仕留めるが、また明日もたのむわという巽の依頼を、彼は断る。



「必要な分は見せたということだ

これ以上は見せぬ


武道家の本音を言うなら

しょせんは自分が一番てことに集約される」


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自分以外の人間が強くなるのを手伝うのは、親切以外のなにものでもない…。これ以上技術を盗まれて鞍馬に強くなられてはたまらないわけである。だって、相手をぶったおし、最後に自分が立ってることが、武術の本義なんだから。


であるのに、克巳以外の武術家たちは、スーパーノヴァのごとき成長と炸裂を見せつけられて歯ぎしりしたろうか?もっといえば、彼の成長を邪魔したりだとかなんとか先んじようとか、こころにおもうだけでもあったろうか?特に独歩は、街にピクルを探しに出る克巳と対峙し、あっさり負けてしまっている。あの敗北が意図的なものだったのか、それはいまいちわからないが、いずれにせよ道を譲ったことにかわりはない…。少年誌的克巳の成長物語に、彼らはうっかりこのことを失念してしまった。重大なミスとはこのことだった。



ぜんぶ独歩に言われちゃってヒマになった勇次郎がタバコに火をつけ、ひといきで根元まで吸いきる。…かぶってるかぶってる!餓狼伝のあいつと!誰だっけあのひと…。バーテンがむせるトコまで一緒だ。


やや間をあけ、勇次郎がピクルについて独歩に訊ねる。あっさり現代に目覚めた1億9千万年前の戦士。貴様はこれをどう解釈するかと。
独歩はバーテンにもらった紙に「50/190000000」と分数を書きつける。



「1億9000万とはピクルの睡眠時間の年数

50とは個人差はあれど我々の現役でいられる年数


解答(こたえ)は380万分の1だ」



この割り算、ちょっと意味がわからないんですけど…。これでなにが求まるのかわからん。ピクルと独歩たちがファイターとして遭遇できた確率、ぐらいのことなのだろうか…。数学的には30万分の1以下の確率は0パーセントといえるのだとか。つまり、ありえない出会いだったのだ。


だがここで重要なのは、その計算をすると出てくる、「380万分の1」という数字のほうだろう。独歩は「38」というぶぶんを指差しているように見える。この計算でなければ、たとえばピクルがもう1000万年はやく起きていたりしたら、出てこなかった数字。38…。今週話は138話だが、バキ読者にこの数字が意味するのはひとつしかない。独歩もこれを「偶然じゃない」という。


帰り道、勇次郎は独歩にいう。思い上がっていいと。

「とてつもなくデカい何かが気付いちまった」



「天上の誰か…


地球史上最強を決定(きめ)るのは―――

“今しかない”―――と」




まさか『範馬刃牙』でこのようにメタ的な描写が見れるとはっ!
「天上の誰か」とは、おそらく板垣恵介のことだ。


たほう、自宅の地下室で我らが主人公・範馬刃牙は、イメージによるピクルの具現に勤しんでいた。が、うまくいかない。カマキリの巨大化、見たこともないティラノサウルスの具現まで成し遂げたバキが、目の前でたたかいを見たピクルをイメージできないのである。すなわち、範馬刃牙ですらが、まだピクルの全貌を把握できていないのである。



つづく。



いや、今週はおもしろかった。

例の数字ですが、あのように断じながらもったいぶったのは、自信がないからなんですが…。「380万分の1」がなにを示すのか、独歩はこの数字と「なに」を比べて、「偶然ではない」としたのか…。いろいろ考えたけど、やっぱりあの最大トーナメント参加人数の「38人」以外ないとおもう。そうすると、あの計算の、なにを求めたいのかわからない感じも理解できる。独歩は、すなわち筆者は、「1億9千万」というキーワードをつかってなんとなくやってみた、この割り算にあらわれてきた「38」という数字に、なにか宿命的な符合を見たのだ。そして「今しかない」と気付いたのは、つまり独歩に気付かされたのは、やはり作者である。

来週は休載だそうだが、以上のことから予想される今後の展開はひとつしかない…。

最大トーナメント再び、である。うひゃ~



まあこのまま順番にたたかっていって、つまり負けていってってやるのは、正直退屈だろうとおもう。克巳であれだけのことやっちゃったし。ここでトーナメントというのは…うーむ、はじまってみないとなんともわからないが、個人的な直観としては、英断だとおもう。いや、まだトーナメントって決まったわけじゃないけど。


やるとしたら誰が出るかな~。前回は通常エントリーが32名、ガーレンなど途中参加が3名、夜叉猿などリザーバーも3名でした。ソトシゴトのある花山と烈、克巳を除いて、動けそうな重要キャラでは、バキとピクルに加え、まず同窓会組の勇次郎、ジャック、独歩、鎬弟、渋川、ガイア、寂。オリバやゲバルやアライが出てもうれしいな~。郭や、個人的に好きな龍書文、あまりに不憫な郭春成もけっこう。本部や加藤、末堂も出とく?おれはとめないけど。あとシコルスキーなんかも再登場希望キャラっすね。
…うーんと、、、これくらいかな?前回一回戦負けしたようなひとはもうナイだろう。これで何人?19人?ぜんぜん足りないな…。



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