絶対に受けたい授業「国家財政破綻」 -14ページ目

鳥巣清典の時事コラム1568「長期金利が初めてマイナスに」

長期金利が初めてマイナスに
 NHK2月10日


 国債の市場では、世界経済の先行きに対する懸念からリスクを避けようと、買い注文が広がり、長期金利の代表的な指標になっている、満期が来るまでの期間が10年の国債の利回りが初めて0%を下回り、マイナスの金利をつけました。
 9日の国債の市場では、取り引き開始直後から買い注文が広がりました。国債が値上がりすると金利は下がる関係にあり、長期金利の代表的な指標になっている満期までの期間が10年の国債の利回りは、一時、マイナス0.035%まで低下しました。
 長期金利は、その後、0%に戻ることもありましたが結局、マイナス0.025%で9日の取り引きを終えました。
 長期金利が0%を割り込んでマイナスとなるのは国内では初めてです。
 これは投資家の間で、今後も国債の値上がりが続くという見方が出ているためで、背景には、日銀が金融機関から預かっている当座預金の一部の資金にマイナス金利を導入すると決めたことがあるうえ、ここに来て世界経済の先行きへの懸念が強まっていることもあります。
 市場関係者は、「世界経済を引っ張ってきたアメリカ経済への懸念が広がっているため、投資家がリスクを避けるならば、株式などより、さらにもうけが出そうな国債に資金を移す動きが一段と強まった」と話しています。

ディーリングルーム 静まり返る

 長期金利の代表的な指標になっている、満期までの期間が10年の国債の利回りが初めてマイナスとなったことを受けて銀行のディーリングルームでは担当者が対応に追われました。
 このうち、三井住友信託銀行では、長期金利が初めて0%を割り込んでマイナスとなった瞬間、部屋全体が静まり返りました。その後は、国債の売買を仲介する担当者のもとに取引先からの問い合わせが相次いで寄せられ、慌ただしい空気に包まれました。

 三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは、長期金利がマイナスになった背景について「世界経済の失速への警戒感が非常に強く、投資家がリスクを避けようとする流れが東京市場にも押し寄せた。今、日本国内は運用難でお金を持っていく先が少なく、やむを得ずマイナス金利でもリスクの小さい資産にお金を配分しなければいけない投資家が国債を買っている」と指摘します。
 そのうえで、今後の見通しについては、「日銀がさらに金利のマイナス幅を拡大する可能性もまだ十分残っているので、そういう期待があるうちは金利がプラス方向に大きく戻る可能性は低いのではないか」と話しています。
 一方、生活への影響については、「住宅ローン金利はすでに低下が顕著になっていて、ローンを組む人にはプラスということになる。マイナス面では、預金金利はゼロに近い状態が続いていくということや、生命保険や年金の運用が厳しくなるので、将来、何かのときのための保険とか、老後の年金の受け取りに影響が出てくることが考えられる」と話しています。

長期金利がマイナスになるとは

 国債の利回りがマイナスになる仕組みについて詳しく説明します。
 話をわかりやすくするため、満期までの期間が1年の国債で考えてみます。
 たとえば額面の価格が100円で、年1円の利子がつく国債があったとします。この国債の利回りは年1%で、1年間、持ち続けると1円もらえ、最終的に101円が手に入ることになります。
 この国債の人気が高まって買う人が増えれば国債の市場での価格は値上がりします。仮にこの国債の市場での価格が105円まで値上がりしたとします。
 投資家がこの国債を105円で買い、満期まで1年間保有した場合、得られるのは、1年間の利子1円と、額面の100円、合わせて101円です。
 105円投資したのに合わせて101円しか得られず、4円の損失が出る計算です。つまり投資に対して損失が出て利回りがマイナスになります。これが国債の利回りがマイナスになるということです。
満期までの期間がより長い国債の場合も、基本的にはこの仕組みとほぼ同じだと考えてください。
 ただ、国債を個人で買って持っている人は満期まで保有していれば金利がマイナスになることはありません。一方、損失が出るのに国債をさらに買う投資家がいるのは、国債の価格がさらに上がれば、高値で売って利益を得られると考える投資家がいるからです。
 長期金利がマイナスになったことで、世の中の金利は全般的に一段と下がると見られますが、ただちに預金の金利がマイナスになったり融資の金利がマイナスになるわけではありません。

長期金利マイナスの影響

 長期金利の代表的な指標とされる満期までの期間が10年の国債の利回りは、企業が設備投資のための資金を銀行から借りる際の金利や住宅ローンなどの金利に大きな影響を及ぼします。
 銀行は、日銀がマイナス金利の導入を決めたことをきっかけに長期金利など金利全般が急低下したことからすでに定期預金や住宅ローンの金利を相次いで引き下げています。
 このうち、大手銀行の「三菱東京UFJ銀行」「三井住友銀行」とそれに「みずほ銀行」は今週から満期まで2年から10年までの定期預金の金利をそれぞれ引き下げました。
 また「ゆうちょ銀行」も9日から「通常貯金」や「定額貯金」などの金利を引き下げています。
 一方、インターネット専業の「ソニー銀行」は普通預金の金利を0.001%まで引き下げました。0.001%の金利では100万円を1年間預けても10円しか利息がつかない計算です。

 一方、住宅ローンの固定金利は満期までの期間が10年の国債の利回りが指標となっていて、このところの金利の低下を受けて大手銀行は、すでに、2月から、10年間、固定金利を適用する住宅ローンの金利を過去最低に引き下げました。今後については、長期金利の水準を見ながらさらに金利を引き下げるかどうか検討することにしています。
 また、「みずほ銀行」は、大企業向けの融資の基準となる金利「長期プライムレート」を10日から過去最低となる1%に引き下げると発表し、個人だけではなく企業に対する金利の低下も広がることが予想されます。

 今回、長期金利がマイナスになったことで、世の中の金利は全般的に一段と下がることが見込まれますが、預金金利や住宅ローン金利がただちにマイナスになるわけではありません。
 日銀の黒田総裁は、4日の衆議院予算委員会で「銀行の個人向けの預金にマイナスの金利がつくことはない」と述べています。
 各大手銀行も、現時点で、預金金利や住宅ローン金利をマイナスにすることはないとしています。長期金利がマイナスになったことで今後、個人の資産運用などにさまざまな影響が広がる可能性があります。

日商会頭「マイナス金利政策はわかりにくい」

 日本商工会議所の三村会頭は記者会見で、円高ドル安が進み、長期金利が0%を下回ってマイナスとなったことについて、「日銀が導入を決めたマイナス金利政策による影響がまだはっきりしていないことも市場が混乱している要因ではないか。マイナス金利政策は日本にとって初めてでわかりにくいため、日銀としてねらいや意図を明快に説明してもらいたい。また、マイナス金利政策の導入によって多くの中小企業が資金を借り入れている信用金庫や地方銀行への経営にどういう影響を与えるのか懸念している」と述べました。

 大手酒類メーカー、「アサヒグループホールディングス」の奥田好秀常務は、9日の決算発表の会見で、「長期金利の低下が長引く状況とみていて、当社にとっては資金調達で有利になる可能性がある」と述べました。
 また、円高と株価の下落については「日銀は、マイナス金利で円高を阻止するという強固な意志を表明したが、残念ながら市場の見方は日本やアメリカの経済に従来ほど強さが見られないということだろう。当社としてはきちんと原材料を調達し、商品を提供していきたい」と述べました。

ヨーロッパでもマイナス金利相次ぐ

 ヨーロッパでは、ユーロ圏やスイス、デンマーク、それにスウェーデンですでにマイナス金利が導入されていて債券市場では、各国の国債の利回りが低下しています。
 このうち、スイスでは、償還までの期間が10年の国債の利回りがマイナスになっています。
 また、ドイツやフランス、それにフィンランドなど、ユーロ圏各国でも償還期間の短い国債を中心に利回りがマイナスになっていて、今では、ユーロ圏の国債の3分の1近くがマイナス金利となっています。

 ヨーロッパ中央銀行は、マイナス金利の幅が大きな国債を、量的緩和の買い入れ対象にしていません。
 このためマイナス金利の国債が増えれば、量的緩和の制約につながるのではないかという見方も出ています。
 一方金融機関の間からは、中央銀行にお金を預けるといわば手数料を取られることになるため、収益が圧迫されるという懸念が出ています。

 このうち、スイスでは、預金者に負担を求めるとして、先月から預金金利をマイナスにする銀行が現れたほか、住宅ローンについても金融機関にかかるコスト負担を借り手に転嫁しようと金利を引き上げるところがでてきています。

 一方、デンマークでは、市場に合わせて変動するタイプの住宅ローンの金利をマイナスにするところも出てきています。
 これは、借り手の金利負担を金融機関が肩代わりすることになり、金融機関の負担が増すことになるほか、金利の低下が住宅価格の上昇も招いていて、バブルの懸念も出始めています。

鳥巣清典の時事コラム1567「水野和夫氏『持てる者により負担をしてもらうべき+消費税20%余』」

 水野和夫氏の『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)について知人の経営者の意見を聞きました。

「水野和夫」の画像検索結果

鳥巣
 水野和夫氏の『資本主義の終焉と歴史の危機』は読みましたか?
経営者
 いや、読んでいない。
鳥巣
 日本を筆頭にアメリカやユーロ圏でも政策金利がゼロになり、10年国債利回りも超低金利となり、資本の自己増殖が不可能になってきている。「電子・金融空間」のなかでも、1億分の1秒単位で投資しなければ利潤をあげることができない。つまり「地理的・物的空間」からも「電子・金融空間」からも利潤をあげることができなくなってきている。これは、資本主義が終わりに近づきつつある兆しだと。ま、マルクス経済学的な考えかもしれないけどね。
経営者
 『資本主義の終焉』なんていうタイトルを付けているくらいだから社会主義者だと思う。僕は社会主義者の言う事は信用していない。彼らは、歴史的事実を自分の都合の良いように解釈するからね。
 むしろ今の中国の状況を見ていると、何でも国の計画通りに進めようとする”社会主義の終焉”と言った方が良いんじゃないか。今の安倍政権も設備投資を経済界に押し付けようとしたり、全くおかしいけど(苦笑)。
鳥巣
 そこで、聞きたい。水野氏は中国のバブルの崩壊は世界にリーマンショック以上のリスクがあると警告している。同時に今のグローバリゼーションでは、バブルは生成と崩壊を繰り返すと述べている。この分析はどう思う?
経営者
 中国は今3番底になろうとしていると言われている。
鳥巣
 ソフト・ランディングは無理なのか?
経営者
 バブルはハード・ランディングしかない。クラッシュさせるしかない。そういう意味では、その水野氏が言うように、世界経済の深刻な不況という影響が出るだろう。また政府による財政出動をしなくてはならなくなる。
鳥巣
  財政出動をすれば、また税負担に跳ね返る。ところで、マイ・ナンバーカードは申請しましたか?
経営者
 会社は、義務だから、申請した。個人的には、していない。国は資産を把握しようとしている。これからは経営者や資産家と国との駆け引きになっていく。どう資産を隠すか・・。
鳥巣
 最終的には、デノミをやるかもしれない。
経営者
 資産を吐き出させる訳か・・。


【鳥巣注】

 さらに水野氏は、深刻な影響を受ける筆頭として「日本」を挙げています。

中国のバブルが弾け、世界経済が冷え込めば国家債務は膨れ上がる。日本は財政破綻に追い込まれる国の筆頭候補。
❷国家間の大規模戦争の可能性は少ない代わりに、国内では行き場を失った労働者の抵抗が高まり、内乱の様相を呈するかもしれない。
❸日本は「ゼロ成長社会(=定常状態)」を目指すべき。ただし、国が巨額の債務を抱えていては、ゼロ成長下においては税負担だけが高まる。基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を均衡させておく必要がある。
❹現在、破綻しない理由(フローの資金繰り)。
 金融機関は800兆円の預金ーーその多くが年金ーーが年3%、約24兆円ずつ増えている。さらに企業は、年間の資金余剰が23・3兆円(2013年第3四半期時点)。家計部門と企業部門を合せた資金余剰は48兆円(2013年第3四半期での1年間の累計)
 これが、銀行や生保などの金融機関を通して、国債の購入費に充てる金額で、毎年40兆円発行される国債が消化されている。
❺しかし、日銀の試算では、2017年ーー来年ーーには預金の増加が終わると予測されていて、そうなると外国人に国債を買ってもらわなければならなくなる。(高い金利を要求されて)金利が上昇すれば利払いが膨らむので、日本の財政はあっという間にクラッシュしてしまう。
❻そうならないためには、財政を均衡させなければならない。財政の均衡を実現するうえでは、増税はやむをえない。消費税も最終的には20%近くの税率にならざるを得ない。ただし逆累進性の強い消費税の増税ばかりが注目されるが、本来は法人税や金融資産税を増税して、持てる者により負担をしてもらうべき。


【鳥巣注】

 水野氏の説はーー持てる人には申し訳ないのですがーー日本人の体質(天皇を象徴として平等さを尊ぶ)としては受け入れやすい話だと思います。これからの最大の課題は、いかにパニックにさせず、取り付け騒ぎを起こさず、日本人の団結力に持っていくか。痛みは伴うけれど解決策はあるんだーーというより精度の高い情報を伝えることが大切になってくる。
 現在はまだ一般の高齢者の人は「1000兆円の借金があるといっても、ほとんどは日本人から借りている。アベノミクスで何とかなるだろう」と思っています。「これ以上、社会保障が削られたらうちのカミさんなんか・・大変だよ」。私も最初は震撼しましたーー確度の高い情報(私の場合は、それは”一次情報”と考えて、財務省、国会議員、日本銀行、金融機関のエコノミストや大学・大学院経済学部教授に直接取材して行きました)を探しながら認識のギャップを埋め、解決策を模索していく必要があります。
 そういえば故・松村劭氏がつぶやいていました。「日本人は価値観を変えられるだろうか」。水野氏の言う「ゼロ成長社会」の到来を見通していたのでしょう。デフレに育った若い世代の方が適合しやすく、負担も軽くなってむしろ喜ぶかもしれません。
 現在の日本経済の実力そのものが「ゼロ成長」とも言われています。日本人よ、身の丈に生きよう、という話です。

 <ミヒャエル・エンデが言うように豊かさを「必要な物が必要なときに、必要な場所で手に入る」と定義すれば、ゼロ金利・ゼロインフレの社会である日本は、いち早く定常状態(ゼロ成長社会)を実現することで、この豊かさを手に入れることができるのです。>(水野和夫氏)


                                    【ミヒャエル・エンデ】
                                     ドイツの児童文学作家。 
                                                  「ミヒャエル・エンデ」の画像検索結果


鳥巣清典の時事コラム1566「マイナス金利で得する人、損する人」

 NHK『あさ イチ!』で、「マイナス金利の影響は」。

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マイナス金利で得する人、損する人とは?

柳澤秀夫(キャスター)
 金融機関が日銀におカネを預けるとこれまでは0・1パーセントの金利があった。ですが今回、これにプラスして一定の金額を超えて日銀におカネを預けると金利がマイナスになっちゃう(苦笑)。

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井ノ原快彦(キャスター)
 今まではそうじゃなかったんですね。
柳澤
 今までは金利があったから預ければそれだけ儲かった。これからは一定の金額を超えるとマイナスになっちゃうから、どうします? 民間の銀行は。
有働由美子(キャスター)
 「マイナス」ってどういう事ですか?
柳澤
 手数料がかかったりとか、預けたら損をするという事です。銀行にとってみると。そうすると銀行は手持ちのおカネを日銀に預けるのではなく、どうすると思います? 企業に貸し出したり、個人に貸して利息を取った方が良いという事になるじゃないですか。そうすると世の中におカネが出回りますから景気も好くなってインフレに行くんじゃないかというのが日銀の説明。


住宅ローンを組む人は諸手を挙げて{万々歳」?


柳澤
 さあ、ここでマイナス金利で得する人、損する人。なかなか断定はしにくいんですよ。ただ、ざっくり言うと得する人と損する人がどんな人か順番に見ていきたい。
 まず、これから住宅ローンを組みたい人。得すると思います? 損すると思います?
井ノ原
 この対策がうまくいってれば得するんじゃないかと思います。
柳澤
 つまり、住宅ローンを組むという事はおカネを借りる訳ですよね。金利全体が下がっている訳だから「ニコニコ」。ローン金利が下がるから、まんざら悪くない。ただし、諸手を挙げて金利が下がるから万々歳とはいかないところもあるので、このいマイナス金利の専門家を呼んでいます。今井解説委員です。
今井純子(解説委員)
 銀行の戦略にもよるのですが、おおむね住宅ローンの金利は下がるだろうとはみられます。



 ただ例えばすでにマイナス金利を導入しているヨーロッパの一部の国では、住宅ローンの金利が下がった結果、住宅バブルになって住宅の値段が上がってしまったというケースもあるんですね。そういうところも見ていかなければならない。また金利が安いからといって「今が借り時ですよ!」と言われて多額の借金を、しかも変動金利軟化でしてしまうと、長期的にみて金利がワッと上がったときに困るという事にもなりかねない。
 ですから、良い物件が見つかったときに身の丈で借りる。

借換には保証料や司法書士への報酬等を考慮


有働
 視聴者から。<すでに住宅ローンを借りています。警戒をすべきですか(30代)>。
柳澤
 これはどれだけ今、借金が残っているか。十分に合わせて考えないと借換を組むときにも色々おカネがかかりますよね。
今井
 保証料とか司法書士への報酬とか色んな費用がかかる。いま柳澤さんが言ったように、どのくらいの残額が残っているのか。どのくらいの期間が残っているのか。今借りている金利と新しく借りようとする金利の差がどのくらいなのか。そういうのを比較考慮して個別に検討していくことが大事。
柳澤
 いま確かにローン金利は下がっているかもしれませんが。将来的に上げる可能性だってある。そういう事も考え合せる必要がある。ヨーロッパでは実は、上がっているところもある。
井ノ原
 そういう例や注意点もちゃんと考慮して今回の政策が行われているのだったら良いなと思うんですけどね。

預貯金性の強い保険に入っている人は損?


柳澤
 次、生命保険に入りたい人。この人は、損か得か。
井ノ原
 どうなんですかね・・。
柳澤
 これは、「ちょっと渋い」。生命保険にみなさんおカネを払う。生命保険会社はそれで色々運用する。運用利回りは、全体的に利率が下がってきているから保険会社の運用実績が下がってくる。ただ、掛け捨てで終身保険という人よりもむしろ保険会社におカネを預けて預貯金性の強い、のちのちおカネが貰えるような人にとってみれば「渋い」事になる。
今井
 特に退職金などを一括して払って保険会社が運用するようなタイプのもの。亡くなってしまったときの死亡保険とか年金保険。こういったものは比較的早く保険料が上がる可能性があるといわれている。また月々で保険料を払っていくタイプの保険についても、このマイナス金利がしばらく続いていけばのちのち保険料が上がっていくといわれています。

定期預金を普通預金と同金利に下げる銀行も


柳澤
 最後に年金暮らしで預金が1000万円あるおばあちゃん。どうでしょう、これから・・。
井ノ原
 預金があるんですね。で年金を貰っている。
柳澤
 得なのか、損なのかーー「渋い」顔なんです。今すぐ年金が減るという事ではないんですが、年金も運用する部分もある。それになんせ、おばあちゃん1000万円を銀行に預けている訳ですよ。銀行の利率が下がるという事になると、いくつかの銀行では定期預金の金利を普通預金の金利と同じくらいにしてきている。
井ノ原
 定期にする意味がない。(ゲストからも「ひどい」の声)
柳澤
 そうなってしまうと、このおばあちゃんの渋い顔。年金についても、今は下がってないですけども、この先ーーこの保険と同じようにーー運用して利益を出そうとしているんですが全体の利率が下がってきている。この先、年金の受給開始年齢の時期が先にずれたりという事もなきにしもあらず。

銀行AТMの手数料がある日上がることも


今井
 もうひとつ気を付けなければいけないのは、銀行が運用で利益を挙げられないという事になると、今度は手数料などで利益を稼ごうとしてくる。例えばAТMでおカネを引き下ろすときとか。あるいは送金するとき、振り込みするとき。あるいは今優遇されている措置が縮小されたり。知らないうちに手数料が上がっていく事もあるのでちょっと目を・・。(スタジオ、やや騒然)
有働
 今、銀行って投資信託とかにすごく呼びかけたりしているじゃないですか。それも手数料が欲しいから?
今井
 一概には言えませんけども、金融機関が熱心に勧めてくる商品はその金融機関にとって手数料などの収入が良い、利益になる。
井ノ原
 「おカネを眠らせていては駄目だよ」と。
柳澤
 世の中におカネを出して景気を良くしようと言うんだけども。


おカネを使えーーでもこの先が不安で貯め込む心理


井ノ原
 おカネがうまく回って、みんなが得したら一番良いなとは思うんですけども。気を付けなくちゃいけない事が、いくつか出てくるというのは・・。
柳澤
 企業でもこのおカネを使おうと思っても、この先何だか不安だからずっと貯め込んでたり。銀行の方も本当に貸していいのかなどうなのかな・・と滞ってしまう。しかも特にこういう時期にお年寄りの方は、「銀行に預けていてもうま味ないよ、メリット無いよ」というところに目を付けて、いま流行の電話をかける。「銀行よりもここにおカネを持って行った方が良いですよ」という話が来たときにはちょっと注意ですね。
井ノ原
 いちばん良いのは、今のままーーという事ですかね。
柳澤
 一概には、そうは言えない。

色んな”正確な情報”を集める方法とは?


今井
 お年を召した方には、あまり投資は勧められない。若い方が長期的な観点でリスクをある程度分散させながら投資をしていくというのは1つの方法かもしれない。その時にも他人に言われたから申し込むという事ではなくて。自分で本当に勉強して、情報を・・(スタジオ内からは「その情報集めが大変」、「いろんな情報が必要になる」。そして「それも正確な情報じゃないとね」<柳澤氏>などの意見が続出)

~~~~


<お金の話を聞いて怖くなりました>(視聴者)


有働
 視聴者からもお問い合わせです。
今井
 変動金利というのは、いつワッと金利が上がるか分からない。ましてや10年後とか20年後金利がどのくらいの水準位にあるか本当に読めない。返済額を決めて安心していたいという方は固定金利で借りる。いま金利が低いので変動金利でという人も、ただ金利がいざワッと上がったときに返すおカネがあるかどうか。自分の状況に応じて考えていくことが大事。
有働
 「おカネの話を聞いて怖くなりました。勉強も出来ないし、損もしたくないのでタンス貯金ーーつまり自分で管理する。これで安心できるなら、これでも良いでしょうか」。
今井
 ただ誤解して頂きたくないのは、銀行に預けていて、そのおカネに手数料がかかるという訳ではない。ちょっとずつでも金利はある。
井ノ原
 下ろしたりするときに。
今井
 それは手数料を気にすれば大丈夫ですし。泥棒に入られる心配をいつも抱えながら生きていくよりも、銀行の経営が安定していれば問題ない。


***********

PS

 『あさ イチ!』ゲストの仏料理人が和風サバの味噌煮に挑戦。そのときの一言。
「ひとつひとつの論理がきちんと組み立てていられればーー料理(の創り方)は1つに決めつけないでーーあれもあるよね、これもあるよね、という事だと思います」
 
 

鳥巣清典の時事コラム1565「”反対の力”を利用してスローらしくダイナミックに踊る」



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 現在、「
リバースウエーブ~バックフェザー~バックスリーステップ」というバック・ステップをレッスン中。
 図書館で借りた『ダンスビュ』(2015年4月号)の付録DVDを見ました。「統一全日本ボールルームチャンピオン庄司浩太・庄司名美組によるスローフォックス」。その中にバック・ステップの方法に参考になる点がありましたので記録しておきます。

■テーマは、”反対の力”の利用
❶フェザーステップはスローをやるうえで、いちばん初めに習うステップで本当に基本的なステップです。3歩歩くだけ、4歩歩くだけと言ってしまえば簡単のようですが、その中には大変難しい要素がたくさんあります。テーマは、反対の力を利用してスムーズにスローらしく、そしてダイナミックに踊ろう。”反対の力”とはーー重力に対して立っている。立っているという事は、下に引っ張られる力(引力)に対して自然と上に伸び上がる力がある。反対の力があるから自分の中でバランスを保って立っている事ができる。
 ダンスというのは、歩く事の応用から出来ています。その歩く中にライズ(伸び上がる)、フォール
重力によって無意図的に落ちる)、スイング(揺らす・振る)、ターン(回転する・方向を変える)、スウェイ(ボディの傾き)など非常に歩く要素を強調したような動きがあります。その動きの体の中で、「前と後ろ」、「上と下」、「右と左」といった反対の力を意識する事でバランス良く踊る事ができます。

フェザーステップ(男性)
❶まず1歩目、右足を大きく「Sスロー」のカウントで前進させるときーーもちろん体も前進、足も前進ですがーー大事なのはいわゆる”送り足”。左足の後ろへ蹴る力、それと前へ出ようとする右足ーーこの両足はいつも意識して踊る事がいちばん大事になります。
 前進だからといって、前に1歩出る事だけを考えてしまうと女性を押し倒してしまうような事にもなる。

 【ポイント】
 前に出る意識もあるが、後ろ側のしっかりと伸びた左足。そして女性と女性の足の間に深く前方に伸びた右足ーーこの両方のバランスを意識して動く。
 
最初の1歩目はロァー低くなりますが、同時に自分のボディが上に伸びている意識も大事です。下に降りる力と、それに反して上に伸び上がる力ーーそれを保つ事によって良い姿勢を保つ事が出来ます
 下に降りるとき、どうしても自然の重力に従って体が緩んで丸くなったりしがち。必ず自分の体の上半身はグッと引き上げて、次の第2歩目がステップされるときも、やはり左足は前にスイングされますが右足は後ろへ。

【ポイント】
 前へと後ろへ大きく引き裂くような、そして下に押す力と上に伸びる力がいつもバランスを取っていると思って下さい。

❸フェザーステップは中央斜めに行きますが、ボディはローテーションといって、回転動作が含まれます。平面的に行ってしまうのではなくて、前進しながら左サイドは前へ、右サイドは後ろ側へストレッチーーこれも反対の力。
 後半は、右のスウェイがかかってきます。ローテーションに伴ったスウェイがありますが、ボディは下に引っ張られる力に対して両サイドとも上に伸びるような意識を保ってください。

【ポイント】
 スウェイに伴って、右サイドを落とさず、右サイドも左サイドもアップさせるような意識を。

□フェザーステップ(女性)
①後退するアクションなので、どうしてもバックバランスになりやすい。これも反対の力ーー後ろに下がるのに対して前に使う力を意識して後退アクションをしていく。足を下げるのに対して、軸足の膝を前に入れますが、軸足の膝のところに壁があるとイメージ。この壁から膝を離さないようにして足を下げる。そうすると後ろに下がっていきながらも、相手の体の下に膝が深く入ります。自分の体重がバックバランスではなくて、床に対して垂直に降りるような形になる。この動作をしながら下がっていくと、バランス良く下がって行ける。

【ポイント】
 後ろに下がる力に対して前に使う力を意識して下がる事をイメージする。

②上半身のローテーション(回転動作)は、右ステップをするローテーションですが、このローテーションに釣られて、足が右の方にカーブしてしまうと進行方向が相手から離れてしまう。ローテーションをしていても、足は中央斜め、斜めの方向に向かって足を出すように意識してください。

【鳥巣注】
 今は自分の動きの事で精一杯ですが、女性の動きも意識するクセを強いる事で一体感を生み出す余裕のある領域に近付きたいものです。

■リバース・ウェーブ~バック・フェザー
❶男性は「バックするのが苦手」という方が多いようです。バックするときにいつも意識しなくてはいけないのはーー女性のフェザーステップやスリーステップと同じですがーー後ろにバックするときは(前足の)膝の前に壁があるように使っていく

【ポイント】
 後ろにステップするときの前の足の使い方は、前と後ろを同時に(⇔)使っていく。

❷ホバー・クローズというホバー(宙に浮いた状態)から着地。その左足が着いたときに右足の準備が非常に大事になります。準備が遅れてしまうと左足を使おうと思っても右足がまだ前にあるので、うまく使えないでバックバランスのまま後ろへ倒れ込んでしまう事がよくある。
 左足で着地ーーこの左足のH(かかと)が着く間に右足を後ろに準備しておきます。あくまで準備するだけで、もし右足に体重を乗せてしまうとヒップ(お尻)が抜けた状態になる。

【ポイント】
 足を自分の体の下に準備(横から見たら「1本足の案山子」)して、左足を前へ、右足を後ろに(横から見たら「八」の字)ーー同時に使います。これでスローの1歩を大きく踏み出し、中間バランスの状態になる事ができる。
【鳥巣】
 「う・・む、なるほど」というテクニックですね。

❸次の第1クイックに向けても、同じように体重移動をする際に、左足をやはり自分の体の下に準備をしておきます。足を残したままだと右足が使える状態にならなりません。必ず準備させて、右足を前に使うときに左足を後ろへーー前と後ろの反対の力を利用してバックしていく。
 そのときのレッグ・アクションーー膝とか足首の使い方ですがーー着地して準備する際に必ず膝を持ち上げて足の甲を伸ばす。この状態で足をサッと体の下に寄せていく。そして大きく出した右足に乗る際も、左の足はТ(つま先)からH(かかと)へとフットワークは変わりますが、体重移動する途中で膝を持ち上げて足の甲を伸ばし、自分の体の下を通すような意識を持つ。
 それによって、前に蹴る右足と、後ろに送り出す左足ーーこの両足をうまくバランス良く使う事が出来ます。

❹最後の足はそれほど大きく出す必要はありませんが。H(かかと立ち)になった足の膝を持ち上げてТ(つま先立ち)にして、自分の体の側を通して最後はТ(つま先)とТ(つま先)のバランスで立つ中間バランス。
 そして次のバック・フェザーに入る前のH(かかと)が降りるときには同様に左の足を後ろに大きく出す準備をする。前に蹴る力と後ろのバランスをうまく保つように気をつけて下さい。

【鳥巣注】
 ❸~❹は動画を見ていても今の私には「まだ先のテクニック」。ですが、採りいれたときにはカッコ良くなるだろうなとは思います。憶えておきましょう。

■リバース・ウェーブ
❶ボディのローテーションに伴った右のスウェイがかかります。そうすると、どうしても右の前にいる女性を見るけれども自分の意識は右の後ろーーこれも反対側。実際見ているのは前の方ですが、右の後ろ側を意識する事によって、男性自身のボディシェイプが大きく見えるだけでなくて、右にいるボディのコンタクトもより女性に対して強く与える事が出来ます。
 バックするからといって、体が全部後ろに行くだけでなくて、後ろに体自体は進んでいきますが、コンタクトしている右の前はいつも女性に向かってーーこれは前のバランス。そして前を見ている自分は頭の後ろを意識。左サイドは後ろ斜めに引っ張り合うような力をイメージして後退する事によって、大きなシェイプを保ったまま大きくバックする事が出来ます。

【鳥巣注】
 「足型」の次には「各関節の使い方」。その次には「シルエットの見せ方」など次第にステップアップしていくようです。このテクニックもカッコ良さをつくるには「なかなかのもの」で、「よっ、大統領!」ですね。
********

PS
 
YouTubeの『山口宏隆・八嶋亜矢子組のフォックストロット』に「ナチュラルターン」のアドバイス。

❶ナチュラルターンに入っていくときに、男性は女性に近づいていくのではなくて、あくまで自分が左の方へ突き進む。よく見られる悪い例としてはーー男性が女性の方へ入ってしまう。これでは女性のスペースがなくなり大変になってしまう。男性としては、女性の右サイドに向けてそのまま自分の進んでいく軌道を変えないで突き進んで行ってください。

【鳥巣注】
 こういうコツは、実際に踊っている身からするとヒントになります。レッスン以外からも参考になるーー現時点の実力の半歩先くらいのーー情報はどんどん引き出しに入れていきたいと思います。「常に再確認しておくべき基礎的テクニック」「半歩先のテクニック」「将来のテクニック」の3つに整理されるかもしれません。

 実は、雑誌に掲載する内容は「想定読者レベルの半歩先」というのが原則です。「1歩先」では実力との差があり過ぎてあきらめやすい、「同じ程度のレベルの内容」では物足りない。「半歩先」くらいが、読者のモチベーションに働きかけ購買意欲につながるという訳です。スターを作り表紙などに載せ、夢を見てもらう事もモチベーションにつながります。
 
アンドリュース・シンキンソンに憧れ意欲につなげている私自身が原則の正当性を身を持って実感しているところです。

鳥巣清典の時事コラム1564「なぜ、利子率の低下が『資本主義の死期』と関係するほどの重大事件か」

 水野和夫氏は、著書『資本主義の終焉と歴史の危機』で「資本主義の死期が近づいているのではないか」と述べます。


 私はイデオロギッシュ的体質の人間ではありません。単純に今、私たちはどのような時代に生きているのかーーあわよくば未来の選択にはどういうものがあるのかーーを知りたいのです。

なぜ、利子率の低下が「資本主義の死期」と関係?


 なぜ、死期が近づいていると水野氏は考えるのか。その大きな理由が「利子率」。
 水野氏は、こう述べています。
日本を筆頭にアメリカやユーロ圏でも政策金利はおおむねゼロ、10年国債利回りも超低金利となり、いよいよ資本の自己増殖が不可能になってきている

なぜなら、”金利は資本利潤率と同じ”だと言えるから


 なぜ、利子率の低下がそれほどまでに重大事件なのかを氏は以下のように解説。
<金利はすなわち、資本利潤率とほぼ同じだと言えるからです。資本を投下し、利潤を得て資本を自己増殖させることが資本主義の基本的な性質なのですから、利潤率が極端に低いということは、すでに資本主義が資本主義として機能していないという兆候です。>


16世紀末~17世紀初頭のイタリアも利子率が極端に低下


 水野氏は、こう続けます

<ジェノヴァをはじめとする16世紀末から17世紀初頭のイタリアでもそうでした。>
 そして、ブローデルの『地中海』が紹介される。16世紀の地中海を舞台に
「地理と経済が政治史をつくる」との自説を証明しようとした、あの本です。

「ブローデル」の画像検索結果

ブローデルは『地中海』で「利子率革命」と指摘した


 <ブローデルは著書『地中海』でこの時期について、カルロ・M・チッポラの著書を引きながら、「銀と金は投資の手段を見出すのが困難である。『資本がこれほど安く提供されたのは、ローマ帝国の衰退以来ヨーロッパの歴史において初めてであるが、これは実は並み並みならぬ革命である』と指摘しています。つまり、投資がすでに行き渡ってしまい、「革命」と言えるほどに利子率が低下したのです。
 これが「利子率革命」です。>


利潤率2%以下の長期化では設備投資は「過剰」設備

 水野氏は、さらに詳しく語っています。
<利子率=利潤率が2%を下回れば、資本側が得るものはほぼゼロです。そうした超低金利が10年を超えて続くと、既存の経済・社会システムはもはや維持できません。これこそが「利子率革命」が「革命」たるゆえんです。(中略)10年国債の利子率が2%を下回るということは、資本家が資本投資をして工場やオフィスビルをつくっても、資本家や投資家が満足できるリターンが得られなくなったことを意味するのです。(中略)このような資本利潤率の著しく低い状態の長期化は、企業が経済活動をしていくうえで設備投資を拡大していくことができなくなったということです。利潤率の低下は、裏を返せば、設備投資をしても、十分な利潤を生み出さない設備、つまり「過剰」な設備になってしまうことを意味しています。>
 安倍政権が経済界に「設備投資」を勧めても渋る理由がここにもあるようです。


*****
 前回も取り上げましたが、水野氏の「資本主義についての解説」を再録しておきます。

資産や金融でバブルを起こすしか成長できなくなった


 <資本主義は「中心」と「周辺」から構成され、「周辺」つまり、いわゆるフロンティアを広げることによって「中心」が利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していくシステムです。「アフリカのグローバルりぜーション」が叫ばれている現在、地理的な市場拡大は最終局面に入っていると言ってよいでしょう。もう地理的なフロンティアは残っていません。

 バブル崩壊は結局、バブル期に伸びた成長分を打ち消す信用収縮をもたらします。その信用収縮を回復させるために、再び「成長」を目指して金融緩和や財政出動といった政策を動員する。つまり、過剰な金融緩和と財政出動をおこない、そのマネーがまた投機マネーとなってバブルを引き起こす。先進国の国内市場や海外市場はもはや飽和状態に達しているため、資産や金融でバブルを起こすことでしか成長できなくなったということです。こうして、バブルの生成と崩壊が繰り返されていくのです。>(水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』)

「水野和夫」の画像検索結果

【鳥巣注】

 5年余り前に「国家財政破綻」の取材をはじめた頃、やがて「10年国債利回り」が非常にポイントである事が分かってきました。日本政府のように莫大な借金を抱えていると、金利が上がると、借金額も雪だるま式に膨れ上がる。ここがまさに攻防戦であり、元財務相の与謝野馨(当時)議員は金利を抑えるために「じゃぶじゃぶにしてきた」と語ったものです。あれから5年ーー現在では、日本もアメリカもヨーロッパも金融緩和(いわゆる”じゃぶじゃぶ”にする政策)により超低金利の時代を迎えています。
 水野氏は、利潤率の低下は1974年に始まったとしています。1973年、79年のオイルショック、75年のベトナム戦争の終結。これらの出来事は、「もっと先へ(空間を拡大し続ける)」と「エネルギーコストの不変性」という近代資本主義の大前提のふたつが成立しなくなったことを意味しているとします。
 先の1974年にはイギリスと日本の10年国債利回りがピークとなり、1981年にはアメリカの10年国債利回りがピークをつけた以降、先進国の利子率は趨勢的に下落。
 結果
アジア通貨危機(1997年)やリーマン・ショック(2008年)を経て今日ーー”10年周期”ではありませんが、「バブルが弾けるのではないか。その時には、リーマンショック以上のリスクがある」「資本主義の終焉が近づいている」など専門家の予言も穏やかではありません。

 バブル⇒バブル崩壊⇒信用収縮⇒金融緩和・財政出動⇒余剰マネーが投機マネーを生む⇒バブルを引き起こす⇒バブル崩壊(以下、繰り返し)

 改めて、載せておきます。

「バブルは3年に1度生成し、弾ける」(サマーズ元財務長官)

「サマーズ元財務長官」の画像検索結果

「そして今また、欧米でも日本でも同じようなバブルの生成と破裂が繰り返されようとしています」(水野和夫氏)

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PS①
 
経営不振に陥っている「シャープ」は4日、7000億円を超える規模の資金を投じて買収を提案した台湾の大手電子機器メーカー「ホンハイ精密工業」と優先して交渉する方針を決めました。>

PS②
 
経営再建中の東芝は4日、2016年3月期の連結業績見通しを下方修正し、純損益の赤字が従来予想の5500億円から7100億円に拡大すると発表した。過去最大の赤字となる。>

鳥巣清典の時事コラム1563「『スロー』を『1、2』と数えるーーそして力を抜く」

 2月は、引き続きスローフォックストロットに、新たにチャチャチャ。


「社交ダンス」の画像検索結果スローフォックストロット

 K先生の数多い指導の中で印象に残ったのが「スローを”スロー”と数えないで、”1、2”と数える」。本人はスローのつもりで踊っていても、実は短かかったりする。「1,2(スロー)、3(クイック)、4(クイック)のリズム」。

1)フェザーステップ~リバースターン~スリーステップ~ナチュラルターン1~3歩~インピタスターン~フェザーフニッシュ~

 単にステップを踏むのではなく、”ダンスらしく踊れるようになる”のが目標。技術的なところでは、「ナチュラルターン(S)HТ⇒(Q)Т⇒(Q)ТH」から、「インピタスターン=(S)ТH⇒(Q)HТ⇒(Q)ТH⇒(S)Т」の理解と練習が必要。ナチュラルターンではスエーは右。インピタス・ターンでは、2歩目の右足が左足にHターンでそろえるのだが、この時にスエーは左(他のスエーは直)など決め事は細部に宿る。どういう分野でも、名人芸の神は細部に宿る。だから、長い時間をかけての修正に継ぐ修正が必要になってきます。

2)リバースウエーブ~バックフェザー~バックスリーステップ~ヘジテイション~ホバーフエザー~オープンテレマーク~

 とくに「リバースウエーブ~バックスリーステップ」間の後退のステップ。「女性は、押していく」--男性からすれば合点がいくK先生の指導。スエ―に浮力が付く感じがする。さらに「スロー=1,2」--この音の取り方は、今後意識していこう。
 そして過日K先生から指摘があった「力を抜く」を加える。
 目指すぞ、
アンドリュース・シンキンソン!(笑)。
 彼のダンス動画を見るのが楽しみですが、その中に以下のものがあります。

アンドリュー・シンキンソン ヨルゲンセン組の涙無くしては見れない最高のスローフォックストロットの社交ダンス動画

 
 
       

 確かに己の稚拙さを噛みしめているときにこの動画を見ると、あまりの美しさに(心の中でですが)涙なくしては見れません(苦笑)

 3)ナチュラルターン~アウトサイドスイーブル~ウイング~ライトシャッセ~ウイーブ~フェザーフニシュ~
 4)スリーステップ~フエザ―ステップ~チェンジオプデレクション~ナチュラルウイーブ~フエザーフニシュ~ランジ~

 余談ですが、「力を抜く」でふと思い出したのがーーかつて私がプロ野球の落合博満選手をインタビューしたときの言葉。ロッテに入団した落合選手は控え捕手だった土肥選手の打撃に注目。「球に逆らわずスカーン、スカーンと力も入れずに打っていた。楽そうで良いなと思って真似することにした」。その打法によって、後に3度の三冠王という不滅の記録を生み出す。

「落合博満」の画像検索結果

 「力を抜く」ーー野球、ダンスに限らず、それが出来たら達人のような気がします。私は無骨なタイプなので、よけいにそう感じるのかもしれません。

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❶先週は「自由練習」の日でした。終了後、先輩E氏と「サイゼリア」に行き、ドリンクバーを注文して私の反省会はスタート。右も左も分からない2年余り前の私の踊りから知っているE氏。「だいぶ上達したよ」とまずはホメてくれたうえで、気付いた点を指摘。
「足を先に出している。必ず後ろの足で、次の足を押し出すこと」。
私も「あ~っ」と声を挙げました。基本でありながら自覚症状あり・・という思いからです。

 そして「クイックでは、つま先立ちを忘れないように(厳密には、クイックは全てが必ずしもつま先立ちではないのですが)」と指摘。これもつい疎(おろそ)かになる修正ポイントでした。

 加えて将来の課題としては、「女性をリードしていく自信がついたらボディをーー今は、離れているからーー密着して、ボディの動きで次の動作の指示を与えるようにする」。
 女性をボディで自在にリードできるようになったら、これはーー私が思うにーー間違いなく上級者です。

 私が「こうやって、分からない時が花ですね。克服しようと懸命に向上しようとしている時期がたぶん最も面白い」と述べるとE氏も笑いながらうなづいてくれました。
 K氏は、本当によく私の踊りを観察してくれていて感謝です。

❷自主練習中には、副会長のY氏は私との雑談の中でこう述べました。
「大事なのはベーシック。パーティーでも、サークルが違うとベーシック以外の踊りはお互い分からないから使えない。実際はベーシックを踊ってみて、相手の力量をはかる事になる」
 ベーシックの重要さはーー私が検索した限りでもーーダンス界で格言として残っています。
「忘れてならない鉄則は、数多くのステップを下手に踊るよりも、2~3のフィガー
(=いくつかのステップを連続させたもの)を充分に踊りこなす方が優れているということである」(レン・スクリブナー)
 スクリブナー氏は、1950~1952年の全英チャンピオンで、日本ダンス界の要請により英国から派遣され、1955年に指導と講演のために来日。日本ダンス界の夜明けを創った人物とされています。(ライターとしては、ダンス界史を少しずつ知っていく楽しみもあります。)
 毎月のレッスンで新しいステップを学びつつも、ベーシックの重要さは不変。そのためにもまずは、つま先でしっかり立てるように特に左足の指の鍛錬を継続中。足の裏がしなやかに躍動できるようになるのが目標です。

❸ダンスサークルの会長に私が「少しわかってくると、その度にさらに奥が深くなっていくんですね」と言うと、「何でもそうじゃないですか」と即座に回答。会長は、合気道歴40年で師範でもあるそうです。「若いときにちょっと踊っていた事はあったんですが、会社の仕事をやりながらダンスは難しかった。ダンスを本格的に始めたのは、定年後です」。実は、こういう60歳後にダンスを始めた男性は非常に多い。

❹足型をいちばん正確に覚えていると評判の人がT氏。私にもレッスン中に教えてくれる事もあります。実はT氏、職業は「ピアノの調律師」。興味深かったのは「調律師に必要なのは絶対音感ではなく相対音感」だそうです。
 実は、チャチャの踊りの復習の時に、T氏のある独特のステップに目が留まりました。落合選手ではありませんが「あ、楽そうで良いな」と思ったものでした。使用していいのか、私にはまだ判断がつきません。


 


チャチャチャ

■チャチャチャとは?

❶チャチャチャはルンバとマンボの曲から派生して生まれました。1951年、キューバの作曲家がダンスフロアに紹介したのが始まりと言われています。ダンサーの床を叩くステップの音がキューバの擬音語でチャチャチャと言うところから名付けられたそうです。

❷ラテンアメリカン種目の一つで、チャチャチャもしくはチャチャと呼ばれています。リズムは4拍子で4拍目からチャチャチャ(4&1)と歯切れのよいアクセントがあります。競技ダンスでは1種目目もしくは2種目目に踊ることが多い。

❸チャチャチャは軽快で歯切れのよいダンスです。基本的な動きはルンバと似ていますが、スピード感がルンバとは異なり非常に早いです。メリハリがあり素早く動くことが要求されます。

❹社交ダンスでは、フロア上を反時計回りに回るというルールがあります。このルールをLOD(ラインオブダンス)と呼びます。この交通規則を守らないと、他のカップルと交通渋滞が起こったり、衝突事故のもとになります。しかし、チャチャチャはLODに関係なく主にその場で留まって踊ることが多い種目です。

1)オープンヒップツイスト~アレマーナ~オープニングアウト~ファンポジション~ニューヨーク3回~スポットターン~
2)ホローマイリダ~~タイムステップ~ニューヨーク(キューバンブレーク)~スポットターン

 このチャチャも私はビギナーに近いので、K先生の指導をよく聴くことが大事になってきます。初めて踊りましたが、とてもとても・・全てに復習が必要です。

 
YouTube では、以下のような語録を見つけました。
<チャチャは、歯切れがあって、ソフトがあって、このコントラストがいちばん大切なポイント>
 具体的には、「1(ワン)と3(スリー)が大切」というものです。

□ワンは、アクセントを付ける
<「ワン」の「ワ」の時には乗っているくらい速く乗る。そのときボディのトーンがーー筋肉が一瞬凝縮されるくらいーー入る。後ろ足で送って、同時にボディを「フォー、&、ワン!」とアクセントを付ける。ボディのトーンを強くすることによって「ワン」という表現がはっきりしてくる。
 
 ただし、次の「ツー」などに固くなったボディのまま行くと、動きがひっかかってしまう。1度トーンが入ったボディは、次にはルラックスして入る動きがあると「強い」「弱い」の動きがはっきりしてくる。>

□スリーは少し音を長くキープする
<「スリー」は、音楽を保つために大事な音。強い音ではなく、長く音を保つというのが表現のポイント。「ツー、スリー」と乗ったときに、いかに長くボデイアクションを使うか。「ツー、スリ~ィ、&、ワン!」。後退も同じで「ツー、スリ~ィ、フォー、&、ワン!」。
 ワンは強く、スリーは長くーーといった感じでうまく使い分けると表現にも幅が出てくる。>


【鳥巣注】
 余談です。
 ライターとしてベテランとなっていた時期から一転、未知の分野を勉強するのは、「小学生」に戻った気分で初々しく新鮮です。今や、60歳からバレエに挑戦したーーという話題を妙に記憶しており、私自身インタビューもさせて頂いたーー宇宙工学者の故・糸川英夫氏の晩年を少し意識しています(笑)

「糸川英夫」の画像検索結果

鳥巣清典の時事コラム1563「今のバブルの規模はリーマン・ショック頃の4倍+途方もない水準」

 『クローズアップ現代』は「世界経済」を特集。ゲストに、第一生命経済研究所の西濱徹・主席エコノミスト。

「国谷裕子」の画像検索結果国谷裕子キャスター「西濱徹」の画像検索結果西濱徹・主席エコノミスト


中国の鉄鋼業中心の街では成長率は国内最低に


1、中国の遼寧省は鉄鋼業が盛んだが、今は多くの工場で生産ラインが止まっている。景気刺激策で建設されたマンションなどが大量に売れ残り、需要が大きく減少しているため。以前14パーセントに達した遼寧省の成長率は去年3パーセントと国内最低水準になった。「ここ2年で社員の給料は30パーセント減らされた。今年はさらに20パーセント減らされる。給料も出なくなるし工場全体が見捨てられたようだ」(30年以上鉄鋼メーカーに勤めている男性)給料だけでは生活が出来ないと、男性は週末にタクシー運転手として働いている。「この辺りは飲食街だった。工場が閉鎖し、誰も食事に来なくなり、店は全部閉店してしまった」
 街には、職を求める人があふれていた。「新婚で家を買ったけど給料が下がってローンを払えなくなった人がいた。その人は自殺しました。明るい未来なんて、もう想像できません」


中国経済減速による鉄鉱石価格下落がブラジルを直撃


2、IMF国際通貨基金は、中国経済の減速などで先月成長率の見通しを新興国を中心に下方修正。世界全体でも0・2ポイント下げた。中でも最も悪化するとされたのが南米ブラジル。今ブラジルでは経済が低迷し市民生活を直撃。各地で暴動やデモが相次いでいる。背景にあるのが資源価格の下落。鉄鉱石の産出量が世界有数のブラジルは中国に輸出を拡大し成長を続けてきた。しかし中国の需要が激減したため鉄鉱石の価格がピーク時の4分の1以下に下落。ブラジル経済を大きく揺るがす事態となっている。
 例年2月はカーニバルでにぎ合うが今年は財政難を理由に国内50か所以上で中止となった。半年後に迫ったオリンピックの経費も10パーセント削減され準備も遅れている。

アメリカの利上げが新興国に追い打ちをかけている

3、さらに新興国経済に追い打ちをかけているのがアメリカの利上げ。金利の高いアメリカへと資金の流れが大きく変わったため。世界中の投資家から集めた170兆円の資産を運用するこの会社は投資先を見直しているという。「私たちは新興国市場に対して極めて慎重です。そのため新興国市場から資金を引き揚げています。投資家は安全な投資先を求めているのです」<
ピムコPIMCO)=現在は、ドイツの大手保険会社アリアンツの傘下にある>
 金利が上がったアメリカへと向かう資金。その資金の流出を止めるためには、新興国は金利を上げなくてはいけない。ところが、この利上げが大きな影響を及ぼす。新興国は金融緩和によってこれまで2000兆円にのぼる借金を積み重ねてきた。そこで利上げを行えば、この借金がさらに膨らみ企業の倒産が相次ぐ怖れがある。


朴槿恵・大統領「経済の成長が失われてしまう」

 
4、IMFが警告している国の1つが韓国。国が低金利政策を続けるなか、韓国では民間の借金が4年間で20パーセントほど増加。今後金利が1パーセント上がると全体の20パーセント以上の企業が借金の返済に行き詰ってしまうとみられている。「このままでは堕落し、経済の成長が失われてしまいます」(
朴槿恵・韓国大統領)
 従業員10人の建設部品メーカー。この企業では2億円余りを借り入れ去年工場を購入。しかし中国向けの輸出が伸び悩む中、赤字に転落。今は利息を払うだけで精一杯だという。「売り上げは下がり、利益も出ないところで、銀行からの借金の利子もかさんでくる。どんどん大変になる」(経営者)専門家は積み上がった借金が韓国経済を危機的に追い込みかねないとしている。
「韓国にとっては、アジア通貨危機(1997年)やリーマン・ショック(2008年)よりも深刻になるかもしれない。このような問題をすぐに解決できるような国はどこにもありません」


今のバブルの規模はリーマン・ショックの4倍くらい


5、対談
国谷
 リーマン・ショック後、また巨大なバブルが生まれた。今その市場が動揺する場面が増えている。何のシグナルですか。
西濱
 大きくいうと2つある。中国はリーマン・ショックの後に4兆元ーいま換算すると7兆円くらいーー大規模な景気対策を行った。これにより生産設備、不動産投資、在庫あらゆるものが過剰状態を抱えている。もう一方はアメリカで、3度にわたる金融緩和を行い、実は日本もヨーロッパも量的金融緩和を行っている事もあって世界的なカネ余りの状態が続いている。新興国にとっては、このカネ余りの状態というのは景気の化粧をしてもらっている状態だったが、これが逆流する事もあって新興国にとっては化粧落ちになっている。
国谷
 バブルの大きさは、リーマン・ショックと比べて市場に出ているお金の規模は?
西濱
 単純にアメリカのFRBの資産規模と考えるとリーマン・ショック前と足元だとざっと4倍くらい。これに加えてヨーロッパも日本も量的金融緩和を行っている。かつこれにリバレッジ。いろんな形で倍、倍とマネーが膨らんでいるので、そういった意味では途方もない水準になってきている。かつ、このIТ技術の進展によって非常にマネーの足が速くなっている事があるので、新興国それぞれの国が手におえない状況になって来ている。
国谷
 韓国ではアジア通貨危機やリーマン・ショックよりも深刻になる可能性があると専門家の声があった。相当民間企業が借り入れを増やしている。そして、ちょっとした金利の上昇に立ち行かなくなるのではないかという怖れがあるようですね。
西濱
 韓国は中国への依存度を強めてきたという事もあって、中国経済の減速が直接ダメージを与えている。プラスそこに加えて企業もしくは家計が相当に借金をしてきている。たとえば日本において政府が国内で資金調達をしていますが、韓国は企業や家計は海外で資金調達をしている。今みたいに資金がアメリカに逆流していく。通貨ウォンが安くなるとさらにそれによって債務負担が上がって行く。非常に悪循環になってきている。

石油公社がカネに根詰まりーバブル崩壊の引き金に?


国谷
 「巨大なバブル」と聞きますと、それが崩壊するという事を非常に怖れる訳ですが。もし崩壊するとなったら、どんな事がきっかけでなる怖れがありますか?
西濱
 今回のある種バブルの状態が過去のたとえばアジア通貨危機と違うのは何かというと企業の方が借り入れを行っている。かつては政府が信用力を担保して政府が借り入れを行っていたゆえに通貨危機や経済危機に陥るといった事があった。もっかのところは企業債務が非常に膨張している。特にやっかいなのは資源関連企業。このところ原油価格を始め資源価格が下がってきているが、そうなってくると商品市況の調整を通じてカネ回りが立ち行かなくなる。たとえばブラジル最大の国営石油公社のペトロブラス、ここなんかがもしカネが根詰まりを起こすなんて事になると、当然株式市場・債券市場など色んなところに影響を与える。国際金融市場に多大な悪影響を与えるという可能性はある。


リーマンショックを上回るリスクを念頭に置く必要が


国谷
 原油価格は一時の4分の1程度。ブラジルの採掘コストは高いですよね。
西濱
 海底油田なので中東の国々などと比べてかなり高い。需要も、中国経済をはじめ新興国経済が減速するなかで需要が弱まる。一方でОPECは減産できず、イランからの輸出がまもなく再開される。ロシアもなかなかОPECと協調しない。加えてアメリカからのシェールオイルという新たな供給がどんどん増えてくる。実需からどうしても原油安になびいてしまう。
国谷
 需要が減っているにもかかわらず供給が増える傾向がある。
西濱
 供給がなかなか協調できないところが大きな問題かと思っています。
国谷
 私たちはずっとバブル、そしてバブルが崩壊する事を繰り返し見てきました。今回のリーマン・ショック後どれくらいのバブルになっていて、それがもし破綻した場合、破裂した場合、ちょっと考えるだけで怖いですね。
西濱
 リーマン・ショックはよく”未曽有の危機だ”と言われました。やはり未曽有の危機に対応するがゆえに、どの国も極限の対応を採った。底が深かったために山も高くしてしまった。山が高くなると当然ながら谷も深くなるリスクがある。そういう意味では、これまでにない、リーマン・ショックを上回るようなリスクも念頭に置いておく必要があると考えています。
(中略)


中国は必要な内需喚起に逆行した政策を行っている


国谷
 中国は本当にアジアのインフラ需要を取り込んで自分の成長につなげていけるのか。AIIBについては、どう見ていますか?
西濱
 アジアのインフラニーズは高い。それはそうなんですが。問題は、実はAIIBは「市場金利でおカネを貸す」と言っている。果たしてアジアのインフラに市場金利でペイできる案件がそういっぱいあるのかが疑問。それと国際機関を名乗っている。にもかかわらず中国は、自分たちの理屈・得手勝手にやってしまうという事になれば、当然これはもしかしたら中国の国内の過剰状態を単にアジアに垂れ流すだけになるリスクもある。そこは慎重に見ておかなければならない。
 もうひとつ気になるのは、今やらなければならないのは内需喚起。にもかかわらず外需で無理やり景気を保たせようとしている。これは、やるべき事から完全に逆行している。またぞろ同じ事になりやしませんかというところが気になる。


アメリカの利上げは今後1年に1回~2回に変更か?


国谷
 アメリカのFRBは12月に金利を上げました。1月はそれを見送りました。大量に市場に出たおカネを徐々に吸収していく事が必要になってくるが、今後どのようなペースで利上げをしていくと考えられますか?
西濱
 もともと昨年12月に利上げが行われた際には、年4回、四半期に1回ずつは利上げが行われるだろうと見られていた。しかし、1月の金融市場の動揺もあって、もっかのところは1年に1回ないし2回というところで、かなり落ち着いてきている。市場をあまりおっかなびっくりさせない形で、イエレン議長が市場との対話をはかっていくのが今後より重要になってくる。昨年の12月ーーここまでは何とか成功しているので、そことどうバランスをとっていくのかが重要になる。
国谷
 アメリカ経済も、あまり新興国の経済が急減速するとアメリカ経済にも跳ね返ってくる。アメリカ経済だけを見て判断が出来なくなってきた。
西濱
 アメリカも輸出がかなり厳しくなってきている。かつ4~5年景気拡大が続いている。利上げを行いきる前にもしかしたら景気がまたピークアウトしてしまうのではという話もある。そうなってしまうと「あ、利下げが出来なければ、また金融緩和なんですか?」という事になる。それは最悪のシナリオ。そうならないために、どう市場との対話を構築していくのかが重要。


金融緩和は時間稼ぎ・日本も政治の安定の間に改革を


国谷
 日本も量的緩和をしていますが。日本も問われていますよね。
西濱
 金融緩和というのはある種、時間稼ぎの政策です。時間稼ぎをしている間に日本としては内需をどう安定化していくか。アベノミクスといわれている政策もしくは構造転換なりを、着実に今政治が安定している間に進められるかどうかがカギだと思っております。


*****************

PS①

「バブルは3年に1度生成し、弾ける」(サマーズ元財務長官)

「サマーズ元財務長官」の画像検索結果
ローレンス・ヘンリー・サマーズはアメリカ合衆国の経済学者、政治家。 クリントン政権後半期に第71代アメリカ合衆国財務長官を務めた。

PS②


資産や金融でバブルを起こすしか成長できなくなった


 <資本主義は「中心」と「周辺」から構成され、「周辺」つまり、いわゆるフロンティアを広げることによって「中心」が利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していくシステムです。「アフリカのグローバルりぜーション」が叫ばれている現在、地理的な市場拡大は最終局面に入っていると言ってよいでしょう。もう地理的なフロンティアは残っていません。

 バブル崩壊は結局、バブル期に伸びた成長分を打ち消す信用収縮をもたらします。その信用収縮を回復させるために、再び「成長」を目指して金融緩和や財政出動といった政策を動員する。つまり、過剰な金融緩和と財政出動をおこない、そのマネーがまた投機マネーとなってバブルを引き起こす。先進国の国内市場や海外市場はもはや飽和状態に達しているため、資産や金融でバブルを起こすことでしか成長できなくなったということです。こうして、バブルの生成と崩壊が繰り返されていくのです。>(水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』)

「水野和夫」の画像検索結果

資本主義の終わりの始まりーー「歴史の危機」を直視する

<中間層が資本主義を支持する理由がなくなってきている。自分を貧困層に落としてしまうかもしれないし資本主義を維持しようというインセンティブがもはや生じない。資本主義の終わりの始まり。この「歴史の危機」から目をそらし、対症療法にすぎない政策を打ち続ける国は、この先、大きな痛手を負うはずです。>(同上)

鳥巣清典の時事コラム1562「日銀 新たな金融緩和策決定  当座預金金利マイナスに

 日銀 新たな金融緩和策決定
 当座預金金利マイナスに

 NHK1月29日


 日銀は、29日まで開いた金融政策決定会合でこれまでの大規模な金融緩和策に加えて金融機関から預かっている当座預金の一部につけている金利を、マイナスに引き下げる新たな金融緩和に踏み切ることを決めました。
 日銀は29日までの2日間、金融政策決定会合を開き、さきほど声明を発表しました。
 それによりますと、日銀が市場に供給するお金の量を年間80兆円のペースで増やす、今の金融緩和策については維持します。
 そのうえで新たに、日銀が金融機関から預かっている当座預金のうち一定の水準を超える金額につけている金利について、現在の0.1%からマイナス0.1%に引き下げる金融緩和策を導入することを決めました。
 マイナス金利は来月16日から導入するとしています。
 この決定は、9人の政策委員のうち賛成5、反対4と僅かの差で決まりました。
 これによって、金融機関が必要以上の資金を日銀に預けておくメリットが薄れることから、日銀としては、日銀の口座に積み上がっている金融機関の資金をより積極的に貸し出しなどに振り向けるよう促すねらいがあると見られます。
 新たな金融緩和策を導入した背景について日銀は、原油価格の一段の下落に加え、中国をはじめとする新興国や資源国の経済の先行きが不透明なことなどから、金融市場が世界的に不安定になっていることがあるとしています。これによって企業や消費者のデフレ意識の転換が遅れ、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増えていると説明しています。

「マイナス金利」とは ヨーロッパ各国で導入

 今回、日銀が導入を決めた「マイナス金利」は、金融機関から日銀の当座預金で預かっている一部の資金につけている金利をマイナスに引き下げる政策です。
 金融機関は、預金をきっちり預金者に支払うことができるよう日銀の当座預金に預金することが法律で義務づけられています。
 しかし、大規模な金融緩和のもとで、金融機関は、余った大量の資金を日銀に預けていてこの部分に日銀は0.1%という金利を付けていました。
 日銀は大規模な金融緩和によって金利全般を低下させ企業が資金を設備投資や賃上げに回すよう促してきましたが、金融機関は日銀の当座預金に資金を積み上げ続けてきました。
 金融機関が日銀に預けている当座預金の残高は、去年12月から今月にかけての平均で252兆円となっており、このうち大半の242兆円余りに0.1%の金利がついています。
 そこで今後、法律で定められた資金を超えて預けてくる金利をマイナスに引き下げれば、金融機関は日銀にいわば手数料を支払って資金を預けることになってしまうため、金融機関が資金をより積極的に貸し出しなどに振り向けることを期待しているのです。
 中央銀行に預けられた金融機関の資金についている金利をマイナスに引き下げる政策は、ヨーロッパですでに各国の中央銀行が導入しており、▽ヨーロッパ中央銀行がマイナス0.3%まで引き下げているほか、▽デンマークの中央銀行がマイナス0.65%、▽スイスの中央銀行がマイナス0.75%、▽スウェーデンの中央銀行がマイナス1.1%までそれぞれ引き下げています。
 ただ、この政策は、金融機関の収益を減らすことになり、貸出の増加にはつながらないのではないかという指摘もあります。このため、▽デンマーク、▽スイス、▽スウェーデンの中央銀行では金融機関の預金残高の一定の水準を超えた部分にマイナスの金利をつけており、今回、日銀もこれらの国の事例を参考にしてマイナスの金利をつける部分を一定の水準を超えた部分に限ったとしています。

仕組み 当座預金を3つの階層にわけて運用

 日銀が今回新たに導入したマイナス金利。金融機関は日銀にお金を預けると通常は金利がもらえますが、マイナス金利では逆にお金を預ける金融機関は金利を払わなければならなくなります。
日銀は、このような政策をとることによって金融機関が資金を日銀に預けるのではなく、積極的に企業や個人に貸し出す効果を狙っています。ただ、金融機関にとっては日銀への金利の支払いが増えれば、収益が圧迫されるおそれがあります。
 このため、日銀は金融機関の収益への影響を抑えるため、金融機関が日銀にお金を預ける当座預金を3つの階層にわけて運用することにしました。
▽1つ目の階層は去年1年間の平均残高までの部分です。この部分にはこれまでと同じように0.1%の金利を支払います。
▽2つめの階層は0%の金利を適用します。これら2つの階層によって金融機関の収益を悪化させないように配慮しています。
▽そしてこれら2つの階層を超える部分にのみマイナス0.1%の金利を適用し、金融機関から実質的に手数料をとることにします。
 黒田総裁は「金利や相場の決定にはマイナス金利が効果を持つ一方で、金融機関の収益には過度な影響がでないようにした。これまでの経験や知見をいかして導入した」と説明しました。

目標の2%物価上昇率にはほど遠い状況

 日銀の黒田総裁が、デフレ脱却を目指して大規模な金融緩和を打ち出したのは、2013年の4月4日でした。2%の物価上昇率を目標として掲げ、2年程度の期間で達成するため、市場に供給する資金の量を2倍に増やすという大規模な金融緩和で、記者会見では、黒田総裁みずから「これまでとは次元が異なる」と評しました。
 この金融緩和に真っ先に反応したのは株や為替などの金融市場です。
 円相場は、緩和発表前日の2013年の4月3日の時点では1ドル=93円台だったのが、円安ドル高が進み、去年6月には、一時、1ドル=125円86銭まで値下がり。
 日経平均株価も2013年4月3日の終値は1万2362円だったのが、去年6月には、2万868円銭まで値上がりし、それまでの「円高株安」が「円安株高」へと一転するきっかけとなりました。
特に、自動車メーカーなどの日本企業が苦しんでいた円高が円安に転じたことで、大企業を中心に業績が改善し、過去最高益に達する企業が続出しています。
 このため、春闘で従業員のベースアップを実施するなど賃上げに踏み切る企業が増えたほか、物価も当初は上昇基調が続き、大規模緩和の導入前には前の年と比べてマイナスだった消費者物価指数は、おととし4月には消費増税の影響を除いて1.5%程度の上昇率に達しました。
 しかし、おととし夏以降に原油価格が急激に下落したことで、消費者物価は、上昇率が鈍り始めました。
 日銀は、「デフレ脱却に向け正念場」だとして、おととし10月、国債などの買い入れをさらに増やす追加の金融緩和に打って出ましたが、このところ原油価格が一段と値下がりした影響で消費者物価指数は0%前後にとどまり、大規模緩和の導入から2年9か月以上たっても目標とする2%にはほど遠い状況になっていました。
 こうしたなか、黒田総裁は、物価の上昇に向けた動きに変化があらわれたら、ちゅうちょなく追加の金融緩和に踏み切るという姿勢を見せていました。

官房長官「大胆な手法の導入を評価」

 菅官房長官は午後の記者会見で、「物価安定目標を確実に達成するために必要な措置として決定されたと認識していて、内外の経済情勢を丹念に分析して十分に議論したうえで適切に判断されたものと考えている。日本銀行が目標達成のために、新たに大胆な手法を導入したことを評価し、今後とも経済物価情勢を踏まえながら物価目標の実現に向かって努力されることを期待したい」と述べました。

 日銀がマイナス金利という新たな金融緩和策に踏み切ったことについて、石原経済再生担当大臣は、記者団に対し、「これまでの政策に加えてマイナス金利という初めてのことを決めたことは日銀がデフレ脱却に向けて、強い意志を示されたのだと思う。政府としては、日銀がかかげる物価目標2%の実現に向けてこれからも努力していただけると確信している」と述べました。

日商会頭「市場はわかりにくかった」

 日銀がマイナス金利という新たな金融緩和策の導入を決めたことについて、日本商工会議所の三村会頭は、政府の一億総活躍国民会議のあと記者団に対し、「市場にはわかりにくかったため、株価が上がったり下がったりしたのだと思う。それに銀行からの貸し出しは、中小企業向けでも減っていることはなく、若干でも増えており、お金を借りたい企業が借りられないということは全般的にはないと思う。マイナス金利が画期的な革新的な政策というよりも今ある材料をさらけだしたということではないか」と述べました。

 経団連の榊原会長は、29日、東京都内で記者団に対し、「黒田総裁は以前から2%の物価目標を達成するためにはあらゆる政策をちゅうちょなく打ち出すと言っていたので、その一環として、量、質に続く3本目の矢としてマイナス金利の導入を打ち出したのだと思う。原油安や世界的な金融資本市場の不安定な状況を受けて広がっている国民や企業の間の不安心理を改善しようというねらいだと思う」と述べ、今回の決定を評価する考えを示しました。
 そのうえで実体経済への影響について、「企業経営者のマインドに対するプラスの影響があるのではないか。結果的に賃上げや設備投資の拡大にも効いてくるのではないか」と述べました。

 東京証券取引所を傘下にもつ日本取引所グループの清田瞭CEO=最高経営責任者は記者会見で、「マイナス金利の効用はこれまで日本では否定する見解が多かったのでサプライズとして受け止められたのだと思う」と述べました。
 そのうえで清田CEOは東京株式市場への影響について、「このところの株価の変動は、中国・上海市場の株価の乱高下や原油価格の下落などが要因だ。日銀によるマイナス金利の導入がこれらの要因に対してすぐにプラスの影響を与えるわけではない」と述べました。

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PS
 周囲に「マイナンバーカードの手続きは済ませましたか?」と尋ねると、「ご近所と相談の上、申請しない事にした」などの回答がほとんど。今のところ100パーセントが「NО」。いかに資産を隠すかに腐心している富裕層もいます。気配を感じた時にさっと身構えに入ったにしても、かなり警戒心が強いようです。
 知人の医師は、「一般の人は、あまりピンと来ていないみたいですよ。関心が高いのは、お金持ちじゃないでしょうか」。
 2012年ーー今から3年余り前ーーにインタビューした
佐藤主光・一橋大学大学院教授の言葉が蘇ります。

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 教授は「これからは経済学というよりも正直、心理学の領域に入ってきます」と答えたものです。国民はどんどん”自分の城を守る”に進んでいくはずなのですが、その進捗度具合はもはや心理学の世界という訳です。マイナンバーカードが、リトマス試験紙になっているようです。
 ちなみに私は、申請はしました。

PS②
 高齢者が働く理由ーー。
<❶日本は少子高齢化へと突き進んでいる。高齢者がどんどん多くなれば、その年金を支えるため若者ーー少子化でますます少なくなるーーを中心とした現役世代の負担も賦課方式ではどんどん増える。

【賦課方式】
現在の日本の公的年金は、基本的に「賦課方式」で運営されており、現役世代が納めた保険料は、そのときの年金受給者への支払いにあてられています。

 高齢者は働いて、現役世代の負担分を補う必要があると同時に、場合によっては目減りする年金(あるいは、消費増税など増税に進む分)を補う必要がある。
 まさに”1億総活躍社会”の原点ーー。
❷夫婦2人世帯で1か月にかかるおカネ平均27万円-夫婦2人の1か月の年金平均20万円=平均7万円の赤字。経済的な理由から働きたい高齢者も多い。
❸日本は、「早くリタイアしたい」率の高い他の先進国に比べ、「経済的な理由以外でも、健康でいたい、生き甲斐を持ちたいなどの理由から、働いていたい」率が非常に高い。>(*参考資料=NHK『週刊ニュース深読み▽高齢者の働き方とは』)

【鳥巣注】

 私もせめて、これ以上の医療費負担でご迷惑をかけないよう健康には留意しなくてはいけません。現在は毎月診療代1850円、薬代3390円で、計およそ5240円。そういう訳で
月謝2500円で心身共に元気になれるビタミンD(=ダンス)にも精を出します。

PS③
 
 先日『時事放談』で武村正義氏が指摘していた安倍政権の特徴は「ナショナリズムとポピュリズム」。私も、広い意味での保守層に向かっては絶妙なさじ加減だと感じています。その”信頼感”をどこまで繋(つな)ぎとめ得る事ができるか。カギは憲法論議よりも国民生活に直結する財政問題か。痛税感を和らげながら、気分を前向きにさせつつ、圧倒的な借金財政に対して増税を先伸ばしにする方針がいつまで通用するか。
「信なくば立たず」ーー政権と国民との心理戦。国民に僅(わず)かな弱気も見せられない安倍総理の重圧感はいかばかりかと拝察します。

民(たみ)信(しん)無(な)くば立(た)たず】
《「論語」顔淵から》社会は政治への信頼なくして成り立つものではない。孔子が、政治をおこなう上で大切なものとして軍備・食生活・民衆の信頼の三つを挙げ、中でも重要なのが信頼であると説いたことから。民信無くんば立たず。

    鳥巣清典の時事コラム1561「あなたはフィリピンの『許しの精神』の事をどれだけ知っていますか?」

     両陛下のフィリピン訪問を機に、「フィリピンの犠牲者100万人」や「フィリピン残留日本人」の事が改めてクローズアップされています。
     『報道ステーション』(テレビ朝日)でも、「フィリピン戦」を取り上げました。

    「報道ステーション」の画像検索結果

    <ーー先の大戦中フィリピンでは100万人以上が犠牲になったとされている。国籍を問わず犠牲者を慰霊したいとお考えの両陛下。「この戦争においては貴国の国内において日米両国間の熾烈な戦闘が行われ、この事により貴国の多くの人が命を失い傷つきました。この事は、私ども日本人が決して忘れてはならない事であり、この度の訪問においても私どもはこの事を深く心に置き、旅の日々を過ごすつもりでおります」。(中略)

    古館(司会)
     真っ先に「フィリピンの無辜の(むこの=罪のない)市民の多くの方々が犠牲になって」というふうに語られました。その天皇陛下が強いお気持ちの源流とは何なのか。私も本当に遅ればせながら、そこをしっかりと立ち止まって考えないといけないと痛感する。今の日本で、先の大戦でのフィリピン戦をどれだけ知っていますか」ーー。

     文字にしてしまえば、たった2文字の「戦争」。その戦争で多くの日本人、アメリカ人が亡くなりました。そしてフイリピンの人は、100万を超える、あるいは110万人もの犠牲者が出たともいわれます。当然フイリピンには日本に対する憎しみというものがありました。さあ、その後フィリピンは、日本に対する憎しみがどう変わっていったのか。それを知る必要がある訳です。

     --今から54年前、皇太子としてフィリピンを初訪問された陛下。戦争の犠牲者の家族との交流を重ね友好の出発点となった。しかし終戦からの道のりは平たんなものではなかった。

    宮本正二(94歳。元BC級戦犯)
     向こうの言葉で「バタイ、バタイ(殺せ、殺せ)」と言うんですがね。フィリピン人は、(「万歳、万歳」と叫ぶ日本人を見て)いい気味だと思って見てたんでしょうな。

    ーー捕虜に向けられた憎しみの目を未だに忘れられないという。

    ーーフィリピン人は100万人余りが犠牲になったとされる。戦場で巻き添えになっただけでなく、飢えによる犠牲者も少なくなかった。もともと食糧に乏しいフィリピンで日本軍が地元の人たちから食糧を奪い取ったからだ。飢えへの憎しみは、全土で抗日ゲリラを生んだ。そしてゲリラの疑いをかけられた人は、日本兵によって容赦なく殺されていった。
     終戦直後の日本人への眼差しは敵意に満ちていた。宮本さんはフィリピン人の殺害に関わったとして終戦後戦犯として起訴された。判決は死刑。憎しみには憎しみで返すのか。宮本さんはモンテンルパの刑務所でその時を待った。(中略)
     終戦から8年後、宮本さんは無事日本に帰れる事になった。当時の
    エルピディオ・キリノ大統領が特赦を決断したからだ。(中略)

    「エルピディオ・キリノ」の画像検索結果
     1945年2月9日マニラ市での激しい市街戦の最中、キリノは目の前で妻子4人を日本の狙撃兵に殺されていた。キリノ大統領が出した声明。「私は妻と3人の子ども、5人の親族を殺された者として日本人を許す最後のひとりとなるだろう」。
     キリノの決断をうながした背景には、日本国内から寄せられた無数の嘆願書の存在があった。そこには、戦争への反省とフィリピン国民への謝罪が綴られていた。(中略)
     日本との未来を選択したキリノ。許しの精神は歴代の大統領にも受け継がれ、反日感情はしだいに和らいでいった。こうした歴史をどれだけの日本人が知っているだろうか。

    古館
     ショーンさん。これを見ていますと改めてこういうフィリピン戦の現実で何があったのか。そしてマニラ市街戦。もっともっと学校で繰り返し教えるべきではないかと強く思います。
    ショーン・マクアードル川上(経営コンサルタント)
     私もドキュメンタリー番組で、フィリピンの兵站部隊として送られた93歳のお話を聞いた事があります。

    「ショーン・マクアードル川上」の画像検索結果

     やっぱり戦争というものは非常識なものである。今考えてみれば、バカげた事をやってしまう。やがて、それがへっちゃらになってしまう。そういう事を涙ながらにしゃべられた事を思い出します。(中略)
     あと、最近の天皇・皇后両陛下の慰霊の旅を拝見しておりますと、歴史の風化によってこそ起こってくる悲劇の教訓というものをしっかり私たち考えなければいけませんよという。私は個人的には焦りにも似た強い御意志を強く感じるんです。サイパン、パラオに行ってらっしゃってもそうです。戦禍にあった場所で戦没者そして犠牲になった方々に54年ぶりに行ってくるのは大変な事だと思います。そういう当時の傷跡にも向き合いながらも、そして今日現在の両国の国交の正常化をお慶びになられているお姿を見て、じゃ我々は何を考えるべきか。そういう事を特に考えさせられる、ここ数年ですね」

    ~~~~~~
    NHKニュースでは、「在留日本人」を取り上げた。

     1、アベリナ・アンガ・モリさん(82歳)。父親が日本人だと訴えてきたが、親子のつながりを示す証拠が戦争で全て失われたため日本の国籍の取得が認められていない。父親が幼い頃に歌ってくれた唄は忘れることはない。「モモタロウハァ・・」。唄を教えてくれた父親は戦禍がミンダナオ島に及ぶと召集された。
     終戦はモリさんが12歳のとき。父親は還らず、その後の消息も分からない。母親も終戦直後に病死。モリさんは3人の兄弟とともに虎児になった。さらにモリさんを苦しめたのが、戦後の強い反日感情。自分が日本人の子どもだと周囲に知られないように人里離れ隠れるように暮らさざるを得なかった。
     自分は日本人だと信じて生きてきた森さん。戦後70年が経った今も日本の国籍を取得したいと願っている。
    2、長年国籍が認められずにいた在留日本人。転機が訪れたのは、終戦から50年後。外務省の委託を受けたNPОと現地の日系人会が在留日本人の調査を開始。去年までの調査で、在留日本人とみなされる人は少なくとも3500人余りに上る事が分かった。その4分の1に当たるおよそ900人は、モリさんのように親が日本人である証拠を示す事ができず未だに日本の国籍が認められていない。
    3、カルロス寺岡さん。自らも残留日本人で1人でも多くの人が日本人と認められるよう現地での調査に中心となって取り組んできた。「みんな同じ同胞です。同じように戦争を体験した犠牲者です。この人たちを助ける必要があります」。「しかし71年も経ちました。未だにまだ残っている。日本の政府が動いてくれないと、もう時間は無いと思います」。
     寺岡さんは、天皇・皇后両陛下との懇談に臨む事になっている。残留日本人に目を向けてくれた事への感謝の気持ちを伝えたいとしています。

    ~~~~~~~~~

     ■ことば(毎日新聞)

    太平洋戦争とフィリピン

     1941年12月8日、日本軍は真珠湾攻撃の直後にアメリカの植民地だったフィリピンを攻撃し、翌年1月に首都マニラを占領。軍政下に置いた。奪還を狙う米軍は44年10月に上陸作戦を開始。米軍の激しい攻撃に加え、フィリピン人抗日ゲリラの抵抗もあり、日本軍は壊滅状態となった。51万8000人の日本人が亡くなり、戦渦に巻き込まれたフィリピン人の死者は100万人を超えるとされる。サンフランシスコ講和条約を経て52年から戦後賠償の交渉が始まり、56年7月に賠償協定が発効。国交を回復した。

    【鳥巣注】

    「あなたは、フィリピン戦の事をどれだけ知っていますか?」
     正直、私も断片的な知識しかありませんでした。1970年代ーー私は20歳代の頃にミャンマー(当時ビルマ)に数か月滞在して太平洋戦争当時の模様の一部を知りました。この体験は、私の人生観に大きな影響を及ぼしています。
     その時にタイ、マレーシアも訪れたのですが、フィリピンまで足を伸ばす事はありませんでした。歴史に学ぶ事はいつの時代にも行っていく必要があると思われます。とにかく人間は、何事も失敗から学びます。

    【鳥巣注②】
     
     ただ歴史も奥深いので用心深く検証していく必要があります。当時フィリピンは、アメリカの植民地。日本軍から駆逐された米軍ですが、1944年ーー終戦の前年の昭和19年ーーになると反攻作戦を計画。松村劭著『世界全戦争史』(H&I)によると、米軍は7月にハワイで今後の作戦会議を開いています。ニミッツ提督は「台湾またはシナ大陸」へ侵攻する案を推奨。これに対してマッカーサーは「フィリピン侵攻」を主張。ルーズヴェルト大統領はマッカーサーに同意しますが、理由は「植民地の独立運動を嫌ったからであった」と松村氏の調査結果ではそう記述されています。
     欧米列強の覇権への執着ぶりもなかなかのものです。

    「マッカーサー」の画像検索結果「ルーズヴェルト大統領」の画像検索結果

    【鳥巣注③】

     フィリピンをアメリカが植民地化した際のいきさつは、”力ずく”みたいなストーリーです。

    米西戦争(1898年にアメリカとスペインとの間で起こった戦争)の最中に独立を果たしたのもつかの間、1898年のパリ条約によりフィリピンの統治権がスペインからアメリカに譲渡された。1899年1月21日フィリピン共和国がフィリピン人によって建国された。

     フィリピン共和国の建国を認めないアメリカによる植民地化にフィリピンは猛烈に抵抗したが、
    米比戦争で60万人のフィリピン人がアメリカ軍により無残に虐殺され、抵抗が鎮圧される。

     1901年にアギナルドが米軍に逮捕されて第一共和国は崩壊し、フィリピンは旧スペイン植民地のグアムプエルトリコと共にアメリカの主権の下に置かれ、過酷な植民地支配を受けることとなった。>(参考資料ウィキペディア)

     ですから太平洋戦争のフィリピンの戦いでは、
    フィリピン市民は必ずしもすべてが対日武装勢力に与したというわけではなく、日本が1943年10月14日に独立政府(ホセ・ラウレル政権)を設立するなどフィリピン宣撫工作により親日派の市民たちも存在した。

     彼等は
    マカピリと呼ばれる武装組織を作り、抗日ゲリラを討伐したり、中には日本軍とともに敵陣に突入していく部隊もあった。なお、これらの親日派武装勢力の約5600名は戦後に特赦され、軍事裁判に問われないものとされた。>(ウィキペディア)
     という事実もあるようです。

     16世紀にスペインに植民地化され、次いでアメリカに植民地化され、太平洋戦争では日米激突の戦場になる。屈辱的で過酷な歴史を背負いながらも、なおかつ「許し」を選択できるフィリピン民族とはーー。

    鳥巣清典の時事コラム1560「両陛下 フィリピンの『無名戦士の墓』で慰霊」

    両陛下 「無名戦士の墓」で慰霊
     NHK1月27日
     
     フィリピンを訪れている天皇皇后両陛下は、27日、フィリピンの戦没者をまつる「無名戦士の墓」を訪ね、太平洋戦争などで犠牲になった人たちの霊を慰められました。
     両陛下は、27日午後、国賓としての公式行事の合間に、マニラの英雄墓地にある「無名戦士の墓」を訪ねられました。ここには、太平洋戦争などで犠牲になったフィリピン人の兵士がまつられています。
     半旗が掲げられ、日本とフィリピン両国の国歌が演奏されたあと、両陛下は、フィリピン軍の兵士が見守るなか、陸軍の司令官の先導で慰霊碑の前まで進まれました。そして、用意された花輪が慰霊碑の前に立てかけられると、深く長く拝礼をして犠牲となった人たちを悼まれました。続いて、礼砲や鎮魂のラッパが鳴り響くなか、出席者とともに黙とうをささげられました。
     天皇陛下は、去年、来日したフィリピンのアキノ大統領を歓迎する晩さん会で、先の大戦で多くのフィリピン人が命を失ったことについて、「日本人が深い痛恨の心とともに、長く忘れてはならないことである」と述べられていて、「無名戦士の墓」は両陛下の意向で訪問先に加えられたということです。
     両陛下は、29日には太平洋戦争の戦没者のため日本政府がマニラ郊外のカリラヤに建てた慰霊碑を初めて訪ねられます。

    両陛下 フィリピンで歓迎式典

     NHK1月27日

     
     26日からフィリピンを親善訪問している天皇皇后両陛下は、27日、首都マニラで歓迎式典に臨まれました。
     両陛下は、27日午前、大統領府のあるマラカニアン宮殿の広場に車で到着されました。そして、アキノ大統領と姉のアベリャダさんの出迎えを受け、国賓としての公式行事のスタートとなる歓迎式典に臨まれました。
     式典では歓迎の空砲が鳴らされ、両国の国歌が演奏されたあと、天皇陛下が儀じょう兵の栄誉礼を受け、整列した兵士たちを巡閲されました。
     続いて、大統領がフィリピン側の出席者を紹介すると、両陛下は一人一人とあいさつを交わされていました。このあと両陛下は、宮殿のエントランスの前でフィリピンの人たちによる竹で出来た楽器の演奏を楽しみ、大阪万博のテーマソングが奏でられると、にっこりとほほえまれていました。27日は、大統領との会見など一連の公式行事が続き、夜には、歓迎の晩さん会が開かれて、天皇陛下がおことばを述べられます。
     また、公式行事の合間に両陛下は太平洋戦争などで犠牲になったフィリピン人の兵士をまつる「無名戦士の墓」も訪ね、戦没者を追悼されることになっています。