鳥巣清典の時事コラム1563「今のバブルの規模はリーマン・ショック頃の4倍+途方もない水準」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

鳥巣清典の時事コラム1563「今のバブルの規模はリーマン・ショック頃の4倍+途方もない水準」

 『クローズアップ現代』は「世界経済」を特集。ゲストに、第一生命経済研究所の西濱徹・主席エコノミスト。

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中国の鉄鋼業中心の街では成長率は国内最低に


1、中国の遼寧省は鉄鋼業が盛んだが、今は多くの工場で生産ラインが止まっている。景気刺激策で建設されたマンションなどが大量に売れ残り、需要が大きく減少しているため。以前14パーセントに達した遼寧省の成長率は去年3パーセントと国内最低水準になった。「ここ2年で社員の給料は30パーセント減らされた。今年はさらに20パーセント減らされる。給料も出なくなるし工場全体が見捨てられたようだ」(30年以上鉄鋼メーカーに勤めている男性)給料だけでは生活が出来ないと、男性は週末にタクシー運転手として働いている。「この辺りは飲食街だった。工場が閉鎖し、誰も食事に来なくなり、店は全部閉店してしまった」
 街には、職を求める人があふれていた。「新婚で家を買ったけど給料が下がってローンを払えなくなった人がいた。その人は自殺しました。明るい未来なんて、もう想像できません」


中国経済減速による鉄鉱石価格下落がブラジルを直撃


2、IMF国際通貨基金は、中国経済の減速などで先月成長率の見通しを新興国を中心に下方修正。世界全体でも0・2ポイント下げた。中でも最も悪化するとされたのが南米ブラジル。今ブラジルでは経済が低迷し市民生活を直撃。各地で暴動やデモが相次いでいる。背景にあるのが資源価格の下落。鉄鉱石の産出量が世界有数のブラジルは中国に輸出を拡大し成長を続けてきた。しかし中国の需要が激減したため鉄鉱石の価格がピーク時の4分の1以下に下落。ブラジル経済を大きく揺るがす事態となっている。
 例年2月はカーニバルでにぎ合うが今年は財政難を理由に国内50か所以上で中止となった。半年後に迫ったオリンピックの経費も10パーセント削減され準備も遅れている。

アメリカの利上げが新興国に追い打ちをかけている

3、さらに新興国経済に追い打ちをかけているのがアメリカの利上げ。金利の高いアメリカへと資金の流れが大きく変わったため。世界中の投資家から集めた170兆円の資産を運用するこの会社は投資先を見直しているという。「私たちは新興国市場に対して極めて慎重です。そのため新興国市場から資金を引き揚げています。投資家は安全な投資先を求めているのです」<
ピムコPIMCO)=現在は、ドイツの大手保険会社アリアンツの傘下にある>
 金利が上がったアメリカへと向かう資金。その資金の流出を止めるためには、新興国は金利を上げなくてはいけない。ところが、この利上げが大きな影響を及ぼす。新興国は金融緩和によってこれまで2000兆円にのぼる借金を積み重ねてきた。そこで利上げを行えば、この借金がさらに膨らみ企業の倒産が相次ぐ怖れがある。


朴槿恵・大統領「経済の成長が失われてしまう」

 
4、IMFが警告している国の1つが韓国。国が低金利政策を続けるなか、韓国では民間の借金が4年間で20パーセントほど増加。今後金利が1パーセント上がると全体の20パーセント以上の企業が借金の返済に行き詰ってしまうとみられている。「このままでは堕落し、経済の成長が失われてしまいます」(
朴槿恵・韓国大統領)
 従業員10人の建設部品メーカー。この企業では2億円余りを借り入れ去年工場を購入。しかし中国向けの輸出が伸び悩む中、赤字に転落。今は利息を払うだけで精一杯だという。「売り上げは下がり、利益も出ないところで、銀行からの借金の利子もかさんでくる。どんどん大変になる」(経営者)専門家は積み上がった借金が韓国経済を危機的に追い込みかねないとしている。
「韓国にとっては、アジア通貨危機(1997年)やリーマン・ショック(2008年)よりも深刻になるかもしれない。このような問題をすぐに解決できるような国はどこにもありません」


今のバブルの規模はリーマン・ショックの4倍くらい


5、対談
国谷
 リーマン・ショック後、また巨大なバブルが生まれた。今その市場が動揺する場面が増えている。何のシグナルですか。
西濱
 大きくいうと2つある。中国はリーマン・ショックの後に4兆元ーいま換算すると7兆円くらいーー大規模な景気対策を行った。これにより生産設備、不動産投資、在庫あらゆるものが過剰状態を抱えている。もう一方はアメリカで、3度にわたる金融緩和を行い、実は日本もヨーロッパも量的金融緩和を行っている事もあって世界的なカネ余りの状態が続いている。新興国にとっては、このカネ余りの状態というのは景気の化粧をしてもらっている状態だったが、これが逆流する事もあって新興国にとっては化粧落ちになっている。
国谷
 バブルの大きさは、リーマン・ショックと比べて市場に出ているお金の規模は?
西濱
 単純にアメリカのFRBの資産規模と考えるとリーマン・ショック前と足元だとざっと4倍くらい。これに加えてヨーロッパも日本も量的金融緩和を行っている。かつこれにリバレッジ。いろんな形で倍、倍とマネーが膨らんでいるので、そういった意味では途方もない水準になってきている。かつ、このIТ技術の進展によって非常にマネーの足が速くなっている事があるので、新興国それぞれの国が手におえない状況になって来ている。
国谷
 韓国ではアジア通貨危機やリーマン・ショックよりも深刻になる可能性があると専門家の声があった。相当民間企業が借り入れを増やしている。そして、ちょっとした金利の上昇に立ち行かなくなるのではないかという怖れがあるようですね。
西濱
 韓国は中国への依存度を強めてきたという事もあって、中国経済の減速が直接ダメージを与えている。プラスそこに加えて企業もしくは家計が相当に借金をしてきている。たとえば日本において政府が国内で資金調達をしていますが、韓国は企業や家計は海外で資金調達をしている。今みたいに資金がアメリカに逆流していく。通貨ウォンが安くなるとさらにそれによって債務負担が上がって行く。非常に悪循環になってきている。

石油公社がカネに根詰まりーバブル崩壊の引き金に?


国谷
 「巨大なバブル」と聞きますと、それが崩壊するという事を非常に怖れる訳ですが。もし崩壊するとなったら、どんな事がきっかけでなる怖れがありますか?
西濱
 今回のある種バブルの状態が過去のたとえばアジア通貨危機と違うのは何かというと企業の方が借り入れを行っている。かつては政府が信用力を担保して政府が借り入れを行っていたゆえに通貨危機や経済危機に陥るといった事があった。もっかのところは企業債務が非常に膨張している。特にやっかいなのは資源関連企業。このところ原油価格を始め資源価格が下がってきているが、そうなってくると商品市況の調整を通じてカネ回りが立ち行かなくなる。たとえばブラジル最大の国営石油公社のペトロブラス、ここなんかがもしカネが根詰まりを起こすなんて事になると、当然株式市場・債券市場など色んなところに影響を与える。国際金融市場に多大な悪影響を与えるという可能性はある。


リーマンショックを上回るリスクを念頭に置く必要が


国谷
 原油価格は一時の4分の1程度。ブラジルの採掘コストは高いですよね。
西濱
 海底油田なので中東の国々などと比べてかなり高い。需要も、中国経済をはじめ新興国経済が減速するなかで需要が弱まる。一方でОPECは減産できず、イランからの輸出がまもなく再開される。ロシアもなかなかОPECと協調しない。加えてアメリカからのシェールオイルという新たな供給がどんどん増えてくる。実需からどうしても原油安になびいてしまう。
国谷
 需要が減っているにもかかわらず供給が増える傾向がある。
西濱
 供給がなかなか協調できないところが大きな問題かと思っています。
国谷
 私たちはずっとバブル、そしてバブルが崩壊する事を繰り返し見てきました。今回のリーマン・ショック後どれくらいのバブルになっていて、それがもし破綻した場合、破裂した場合、ちょっと考えるだけで怖いですね。
西濱
 リーマン・ショックはよく”未曽有の危機だ”と言われました。やはり未曽有の危機に対応するがゆえに、どの国も極限の対応を採った。底が深かったために山も高くしてしまった。山が高くなると当然ながら谷も深くなるリスクがある。そういう意味では、これまでにない、リーマン・ショックを上回るようなリスクも念頭に置いておく必要があると考えています。
(中略)


中国は必要な内需喚起に逆行した政策を行っている


国谷
 中国は本当にアジアのインフラ需要を取り込んで自分の成長につなげていけるのか。AIIBについては、どう見ていますか?
西濱
 アジアのインフラニーズは高い。それはそうなんですが。問題は、実はAIIBは「市場金利でおカネを貸す」と言っている。果たしてアジアのインフラに市場金利でペイできる案件がそういっぱいあるのかが疑問。それと国際機関を名乗っている。にもかかわらず中国は、自分たちの理屈・得手勝手にやってしまうという事になれば、当然これはもしかしたら中国の国内の過剰状態を単にアジアに垂れ流すだけになるリスクもある。そこは慎重に見ておかなければならない。
 もうひとつ気になるのは、今やらなければならないのは内需喚起。にもかかわらず外需で無理やり景気を保たせようとしている。これは、やるべき事から完全に逆行している。またぞろ同じ事になりやしませんかというところが気になる。


アメリカの利上げは今後1年に1回~2回に変更か?


国谷
 アメリカのFRBは12月に金利を上げました。1月はそれを見送りました。大量に市場に出たおカネを徐々に吸収していく事が必要になってくるが、今後どのようなペースで利上げをしていくと考えられますか?
西濱
 もともと昨年12月に利上げが行われた際には、年4回、四半期に1回ずつは利上げが行われるだろうと見られていた。しかし、1月の金融市場の動揺もあって、もっかのところは1年に1回ないし2回というところで、かなり落ち着いてきている。市場をあまりおっかなびっくりさせない形で、イエレン議長が市場との対話をはかっていくのが今後より重要になってくる。昨年の12月ーーここまでは何とか成功しているので、そことどうバランスをとっていくのかが重要になる。
国谷
 アメリカ経済も、あまり新興国の経済が急減速するとアメリカ経済にも跳ね返ってくる。アメリカ経済だけを見て判断が出来なくなってきた。
西濱
 アメリカも輸出がかなり厳しくなってきている。かつ4~5年景気拡大が続いている。利上げを行いきる前にもしかしたら景気がまたピークアウトしてしまうのではという話もある。そうなってしまうと「あ、利下げが出来なければ、また金融緩和なんですか?」という事になる。それは最悪のシナリオ。そうならないために、どう市場との対話を構築していくのかが重要。


金融緩和は時間稼ぎ・日本も政治の安定の間に改革を


国谷
 日本も量的緩和をしていますが。日本も問われていますよね。
西濱
 金融緩和というのはある種、時間稼ぎの政策です。時間稼ぎをしている間に日本としては内需をどう安定化していくか。アベノミクスといわれている政策もしくは構造転換なりを、着実に今政治が安定している間に進められるかどうかがカギだと思っております。


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PS①

「バブルは3年に1度生成し、弾ける」(サマーズ元財務長官)

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ローレンス・ヘンリー・サマーズはアメリカ合衆国の経済学者、政治家。 クリントン政権後半期に第71代アメリカ合衆国財務長官を務めた。

PS②


資産や金融でバブルを起こすしか成長できなくなった


 <資本主義は「中心」と「周辺」から構成され、「周辺」つまり、いわゆるフロンティアを広げることによって「中心」が利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していくシステムです。「アフリカのグローバルりぜーション」が叫ばれている現在、地理的な市場拡大は最終局面に入っていると言ってよいでしょう。もう地理的なフロンティアは残っていません。

 バブル崩壊は結局、バブル期に伸びた成長分を打ち消す信用収縮をもたらします。その信用収縮を回復させるために、再び「成長」を目指して金融緩和や財政出動といった政策を動員する。つまり、過剰な金融緩和と財政出動をおこない、そのマネーがまた投機マネーとなってバブルを引き起こす。先進国の国内市場や海外市場はもはや飽和状態に達しているため、資産や金融でバブルを起こすことでしか成長できなくなったということです。こうして、バブルの生成と崩壊が繰り返されていくのです。>(水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』)

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資本主義の終わりの始まりーー「歴史の危機」を直視する

<中間層が資本主義を支持する理由がなくなってきている。自分を貧困層に落としてしまうかもしれないし資本主義を維持しようというインセンティブがもはや生じない。資本主義の終わりの始まり。この「歴史の危機」から目をそらし、対症療法にすぎない政策を打ち続ける国は、この先、大きな痛手を負うはずです。>(同上)