鳥巣清典の時事コラム1587「小川和久氏『木ばかりを見ないで、森を見ましょう』 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

鳥巣清典の時事コラム1587「小川和久氏『木ばかりを見ないで、森を見ましょう』

 小川和久(静岡県立大学特任教授)の講演。演題は「世界の平和をフィクションで語るなかれ」<2016年4月2日>。

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 但し以下はメモなので正確性については保障できません。

1、北朝鮮
 
 一見、北朝鮮は日本人には無軌道のように見える。しかし、あの国にはきちんとした戦略目標がある。北朝鮮が追い求める着地点とは何か? それはインドやパキスタン、イスラエル等ーーとくにインド。冷戦期は中立非同盟路線ーー実態はソ連寄りーーのインドと、パキスタンを軍事パートナーとしていたアメリカ合衆国との関係はよくなかった。ところが冷戦終結を契機に印米関係は改善を見せ始める。
 インドが1998年に核実験を強行した際にはアメリカをはじめ西側諸国から経済制裁を受けたが、現在では経済軍事交流をはじめとして良好な関係を築いている。インドはNPT(核不拡散条約)に入らなかったのにーーまさにアメリカのダブルスタンダード
(=矛盾する2つの基準の使い分け)
 北朝鮮も、この成功モデル獲得を狙い続けている。アメリカが「核保有国として認めよう」と言ってくれた暁には、中国やインドのように経済発展へと進むのがシナリオ。
 だから、北朝鮮の瀬戸際外交に日本人はいちいち過激に反応する必要はない。「木ばかりを見て森を見ない」日本人と言われてしまう。

2、中国

 中国もーー日本人から見れば、東シナ海や南シナ海での中国の動きは過激に映る。しかし、私は幾度となく中国大使館の武官と出会いを重ねてきたが、彼らは「中国がいかに抑制的かを理解して欲しい」という事を語る。日本人は、領海侵犯、レーダー照射、異常接近、防空識別圏などの問題があるので、にわかには信じがたい。
 しかし国家首脳が考えているのは、とにかく”国民に弱腰と取られたくない”という思い。全てのパフォーマンスが、その戦略的着地点を目指すアクション。
 尖閣諸島の問題の事実上の棚上げをめざし、日米との戦火を避けるのが大前提。南シナ海でも、国際ルールに基づく公海上の米国の行動を黙認していこうとしている。

 中国人ーー漢民族のメンタリティは”正面対決”は避ける。一方で、迂回しても、目的を遂げようとする。こういう漢民族に対処するには、日米豪は協力して動く事で、中国の思うままにさせない事が肝心。

3、世界

 以上のように、世界は国家間の戦争が起きにくい状況になりつつある。その一方、非国家主体のISとの戦いが起こっており、協力して対応しようとしている。そういう2つの大きな流れを見て行かなければならない。

4、日本

 日本では、「集団的自衛権」について国論が分かれる。しかし戦後、米国の同盟国で攻撃された国はないーー朝鮮、ベトナムは内戦、フォークランドは域外ーーという歴史的事実がある。戦争を避けようとするなら、独走も防ぐ集団的自衛権を強化した方が平和の可能性は高くなる。

5、日米同盟

 戦後、アメリカの戦略は、日本とドイツの封じ込め。未だ以て、日本もドイツも片足は義足さえ履かせて貰えず、仕方なくアメリカの肩に寄りかかっている。アメリカは日本に基地を置き、喜望峰までを網羅している。「おカネを出しても日本の基地を手離したくない」とアメリカに思わせたら大成功。その逆は(
日韓の核武装を容認する発言をする)トランプみたいな奴の登場。核武装中立の考え方につながる。そうなると、カネもかかるし、他国からの干渉が強くなりリスクが高まる。

【鳥巣注】

 「現在のように年間5兆円で世界最高の防衛力を獲得できる他の方法があるのなら教えて欲しい。仮に自力防衛に切り替えたら、年間の防衛予算は20兆円余りに跳ね上がり20年間は続く。そんな負担に耐えられるだろうか。日本国憲法の前文に書かれている『
恒久の平和を念願』達成しようとするなら、日米安保をその実現のためにいかに活用するかを考えるべき」
 小川氏の考え方は、いつもながら理にかなっている。「森を見ている」人です。

【鳥巣注②】

 ただし、トランプが述べるアメリカの現実(=力の衰退)が、日本が「集団的自衛権」の選択へと急速になびいた原因だという事も分かっておく必要があるでしょう。


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PS

 上京して銀座で行われた「出版を祝う会」に出席した清水教授。とんぼ返りした伊勢の方から、早速メールが届いていました。

<伊勢市長に本を贈呈。市長からは『地域の事をお願いしますね』との言葉を頂きました。>

『津波避難学』(すぴか書房)は徐々に浸透しています。



内内容紹介

そのとき、あなたはどうしますか?
「とにかく逃げろ!」はまやかしです。
逃げられない災害弱者もいるのです。生き延びるために、
津波避難における大原則と「正しい避難のしかた」を知りましょう。
東日本大震災の事実を見直すと、尊い犠牲から学ぶべきことがたくさん見えてきます。
巨大な地震・津波には勝てない。いつ起るか予測もできない。でも、絶望する必要はありません。
本書を読めば、「負けない」ために、誰にでも実行可能な方法があることがわかります。津波避難学は災害弱者の希望を引き出す科学なのです。自然の制圧をめざす科学ではありません。いま生きている人間の視点で、危急存亡の「難を避ける」ための最善を追求しています。最優先は命が助かることです。それを可能にする地域をめざしましょう。防災対策は地域づくり。主役はあなた自身です。

内内容(「BOOK」データベースより)

そのとき、あなたはどうしますか?「とにかく逃げろ!」はまやかしです。逃げられない災害弱者もいるのです。生き延びるために、津波避難における大原則と「正しい避難のしかた」を知りましょう。東日本大震災では、どのようなことが、なぜ起ったのか。その事実を見直すと、尊い犠牲から、学ぶべきことがたくさん見えてきます。防災対策は地域づくり。主役はあなた自身です。