私の耳は底ぢから -26ページ目

東野圭吾 『超・殺人事件』

東野 圭吾
超・殺人事件―推理作家の苦悩

お勧め度:★★★★☆


東野圭吾が贈る、『名探偵の掟』と並んでミステリ小

説を茶化しているお笑い本。

『名探偵の掟』と異なるのは、『名探偵~』がミステリ

小説の構造そのものに関するパロディを中心とした

作品なのに対し、この作品はミステリ小説に関わる

作家や読者の苦悩にスポットを当てているという点

である。


超税金対策殺人事件」は、多額の税金を払うことに

なってしまった新人作家が、以前の買い物を何とか

経費に計上しようとして自作を改変したため、作品が

どんどん目茶苦茶になってしまうという内容。


超理系殺人事件」は、理科の先生が理系のミステリ

小説をがんばって読む話。扉に「この小説が肌に合わ

ない人は飛ばし読みして下さい。」と注意書きがあるの

がイカしている。


超長編小説殺人事件」は、長編ブームの波に乗って

編集者にやたら長い小説を書かされる作家の話。

具体的には、原稿用紙八百枚分の作品を、内容据え

置きで千八百枚に水増しさせられたりするのである。


ミステリ好きなら、思わずニヤリとさせられる短編集。

柳田 理科雄 他『空想科学研究所』

柳田 理科雄, 円道 祥之, 空想科学研究所
空想科学論争!

お勧め度:★★★☆☆


メディアファクトリーから出てるシリーズの一つ。

シリーズの中では、初代空想科学読本の次くらい

に面白い。


「ウルトラマンの、あまりに失礼な地球来訪態度を

叱る!」とか、「ショッカーは、どうすれば世界制服

を実現できるか?」とか、特撮作品の中で描かれた

描写が適切であるかどうかを、文系・理系、双方の

立場から検証している。


ゴジラが東京湾沿岸に現れても、付近住民がパニ

ックに陥ることはまずないだろう。むしろ上陸するなど

とは夢にも思わずに、沿岸地域ではゴジラまんじゅう

が売られたりして、歓迎ムード一色になるだろう」など

と、妙にリアルで冷静な分析が面白い。



これから先、ネタ切れ気味など諸々の事情で、

更新が滞るかも知れません。

あしからず。

うすた京介『チクサクコール』

うすた 京介
うすた京介短編集

お勧め度:★★★☆☆☆


何を隠そう、うすた京介の短編集である。

デビュー作から「ピューと吹く! ジャガー」連載

のちょっと前までに描かれた10篇の読みきりが

所収されている。


「マサルさん」連載以降に描かれたものは押し

なべてギャグ色が薄いので個人的には物足り

ないが、それ以前に描かれた「未確認飛行物

体男」「男一匹セニョリータ」は、マサルさんを

超えるわけの分からないパワーに溢れていて、

一見の価値がある。


あと、うすた京介はその辺のバトル漫画よりも

戦闘描写が遥かにうまい。

下手したら「はじめの一歩」位のアビリティはあ

るんじゃないかと思うのだが、どうだろう(暴言)。

筒井康隆 「最後の喫煙者」 他

筒井 康隆

最後の喫煙者―自選ドタバタ傑作集〈1〉



お勧め度:★★★★★


この小説の凄いところは、非喫煙者は馬鹿である

とはっきり言い切ってしまっている点だ。

内容を説明する。禁煙運動が急激に盛んになり、

喫煙者が昇進不能となり、新聞や雑誌の煙草の

広告が撤廃され、近所の公園では喫煙者の入場

が禁止されるなど、喫煙者には住みにくい世の中

になっていく。そんな中、喫煙を貫き通す作家の

主人公には、次第に非難が集中していく、という話

である。


主人公が、非喫煙者を批判するコラムを執筆する

シーンがあるのだが、この内容がまた素晴らしい。


「喫煙者差別が激しいようであるが、これは過激な

人間に非喫煙者の単純さが加わるからである。嫌

煙権を主張する人間に惻隠の情がもののみごとに

ないのは、まさに煙草を喫わぬからである。口内炎

は煙草によって治癒するが、これは煙草に神経の

苛立ちを鎮める効果があるからだ。煙草を喫わぬ

人間は確かに健康的で血色もよい。スポーツをやる

人が多いからだ。意味なくにこにこしている。物ごと

を深く考えず、会って話していても面白くない。話が

表面的で話題が軽い。まとまりがなく散漫である。

話が途中でことわりなく横へそれる。(後略)」


非喫煙者への悪口はこの後も延々と続くのだが、

もちろんこんな論理はむちゃくちゃなものである。

たが、それがあまりに有無を言わせぬ勢いで展開

されるため、読者は閉口することを忘れ、なるほど

そうかと主人公の論理に同調してしまう。

罵倒が芸術の域にまで高められているのだ。

そして小説の中では、いよいよ禁煙運動が気炎を

上げ、わずかに残った喫煙者への迫害が始まるの

だが、非喫煙者の理不尽で陰惨な仕打ちに、思わ

ず読者も涙してしまうという、恐るべき破壊力を持つ

短編である。


他に筒井作品としては、「傾いた世界」は思い切り

女性差別的な内容であり、これも他の作家が書け

ば単なる悪口にしかならぬところを、抱腹絶倒の

ユーモアで女性像を陵辱し、素晴らしいエンタテイ

メントに仕立て上げている。

エンガッツィオ司令塔」はスカトロネタで大変下品

なのだが、筒井氏が料理すると一級のギャグ小説

になってしまうのだからすごい。


こういう、有無を言わさない説得力を持つ短編という

のは、読んでいて面白い。


ギー・ド モーパッサン, Guy De Maupassant, 高山 鉄男
脂肪のかたまり

お勧め度:★★★★★

もう一つお勧めなのがモーパッサン「脂肪の塊」。

中篇だけど。主役のブルース・リーが上映後3分で

死ぬ映画。それは「死亡の塔」。


普仏戦争でプロイセンにうそのようにボロ負けした

フランスを舞台に、リヨンの町からイギリスに亡命

しようと乗合馬車で夜逃げする人々を描く。

乗客の中に卑しい娼婦が混じっていて、他の乗客

が事あるごとに彼女の尊厳を傷つける、という内容

である。


基本的に悲劇であり、反戦小説であるのだが、折々

に描かれるブルジョアへの皮肉が軽快なアクセント

になっていて、楽しく読めた。

今週のさよなら絶望先生

週刊少年マガジン2005年47号

第二十四話「生八つ橋を焼かねばならぬ」



今週は修学旅行ネタです。もうそんな季節なんですね。

さて、先週の絶望先生は「取材のため、休載」とのことで

したが、学校と旅行会社の癒着問題を調査していたこと

が作中で明らかになりました。だから可符香は先々週

居なかったのですね。ネタが細かすぎます。


あと、臼井→あびるのフラグが立ったようです。


とりあえず、そのファッションはどうかと思うぞ。

そういえば「勝手に改蔵」の地丹もデートの際

こんなカッコウをしていました。

世界情勢を読む会 《『タブー』の世界地図帳》

世界情勢を読む会
『タブー』の世界地図帳―マフィア、極右、原理主義、スパイ、黒幕…

お勧め度:★★★☆☆


煽りには「マフィア、極右、原理主義(以下略)」とか、

《世界を牛耳る「裏」勢力の全貌》と書かれ、いかにも

裏社会について詳しく記述されているように見えるが、

それらに触れているページは一部で、メーンとなって

いるのは世界の渡航危険区域の特集に始まり、各国

の軍事力とか、世界のトップ企業とか、思い切り「表」

に登場する話題が並んでいる。

つまり、私のような、裏社会に興味のあるパンピーを

釣っているわけですな!!


個人的に驚いたのは、世界の大富豪ベスト50に

「アラブの石油王」が一人もランクインしていないことだ。

いや、50位までに漏れた人々もものすごい金持ちなん

だけどさ。


看板に偽りありだが、分かりやすくまとめられている

ので総合的な資料としてお勧め。


新保信長 『笑う新聞』

新保 信長

笑う新聞―1980‐2000「なまぬる事件簿」


お勧め度:★★☆☆☆


西原理恵子ファミリーの構成員である新保信長の

お笑い本。過去20年の新聞を引っ張り出してきて、

時間の渦に埋もれた笑える記事、みみっちい記事

を論評しようという、いかにもな企画である。

悪乗りして続編まで出ている。


「男は弱いよとか」「運の悪い話」とか、いくつかのテーマに分かれていて、

「スリを捕まえた男は泥棒だった」

「コミケ会場に火炎瓶持ち込んだ男を逮捕」

「陸自大隊長が露天風呂盗撮、しかも従業員に取り押さえられる」

みたいなトホホな記事が並んでいる。

大貫卓也『マイブック』

大貫 卓也
マイブック―2005年の記録 (新潮文庫)

お勧め度:★★☆☆☆


タイトルのとおり、1年間の記録をこの本に

(読者が)記すのである。割と好評らしく、

数年前から1年ごとに新刊が出ている。

1ページごとに「一月一日」などと書かれて

おり、そこに日々の記録をつけるらしい。

使い勝手を考えるなら、日付を取っ払って

完全に白紙の頁が並ぶというような構成に

したほうがいいと思うのだが、さすがにそれ

は抵抗があったのだろうか。


「それって、日記じゃん」という野暮なツッコ

ミを払拭するかのように、ちゃんとカバーの

見返しには空白の「著者近影」の欄もある。

景品の応募券もちゃんとある。

作りこもうと思えば、とことん作りこめる仕組

みだ。だが、こんな本を完成させる人は、あ

まりいないだろう。


つまり、日記云々はどうでもよくて、こういっ

た本を出して、新潮文庫のブランドイメージ

を定着させるのが目的なのではないか。

こんなおしゃれな本も出していますよ、と。


最近の新潮文庫は景品のキャンペーンを

大々的に張ったりして、「変わろうとしている」

感じだ。実際、私もオマケ欲しさによく新潮文

庫を買う。

そう考えれば、大貫卓也(CMプランナー)が

制作しているというのも納得だ。「広告批評」

っぽい人だし。


そろそろ2006年度版が発売されるはずなので、

物好きな方はどうぞ。

創元社編集部『新版 ことわざ・名言事典』

創元社編集部
新版 ことわざ・名言事典

お勧め度:★★★☆☆


ネタ集めのために、こういった事典を読むともなし

に眺めてみるのも良いものだ。

あんまり身につまされることわざ・名言を見ている

と辛くなってくるため、ここでは脱力ものの名言、

味のある名言、思わず笑えてくる名言、情けない

名言(そんなものが名言と呼べるのか)をいくつか

引用しようと思う。




もし生涯の第二版があるなら、私は校正をしたい。

クレア(250頁)

かっちょわりいいいいいい


白髪は年齢のしるしであって知恵のしるしではない。

西諺(252頁)

うちのオヤジが


経験は最良の教師である。ただし授業料が高すぎる。

カーライル(255頁)

文学部唯野教授でも触れてました


すべての人間が世に生れ出たのは快楽のおかげである。

ヴォルテール(277頁)

そんな、当たり前のことを堂々と言われても。


実るほど頭を垂るる稲穂かな。

川柳(288頁)

頭下げれば蔵が建つってね。


タバコよ。汝のためなら私は死以外の何でもしよう。

ラム(330頁)

健康のためなら死んでもいい(桂文珍)。

絶望先生人物ファイル

絶望先生人物ファイル07

音無 芽留 (おとなし める)

2のへ組の生徒。

極度の対人恐怖症にして、メール弁慶。

という特殊な設定のため、セリフが極端に少なく、

基本的には「もじもじ」という擬音を発するのみで

ある。また、他のキャラとの絡みもあまり無い。


しかし、本編の端々で見られる彼女のメールでの

毒舌やツッコミは、いかにも久米田漫画らしいアク

セントになっており、今後の活躍が期待される。



絶望先生人物ファイル08

木津 千里 (きつ ちり)

2のへ組の生徒。

クラスにおける委員長的存在。

何事もきっちりしていないと気がすまない性格で、

髪型も真ん中分け。クラスの机は測量器を使って

並べるし、茶道部で食べるケーキはきっちり人数

分に等分する。その分テンパるともろく、電波発言

をすることもしばしば。


糸色先生と保健室で共寝をしたと勘違いしており、

関係をきっちりさせようと彼に入籍を迫ってくる。


最近の本誌、及び単行本では眉毛がちょっと太く

なって、昔の西田ひかるみたいな風情がある。

個人的には細い方が良いと思うのだが、

何かあったのか。