ファイトだ!ピュー太
先月から取り上げているアニメについてまた数本触れてみたい。今回は「ファイトだ!ピュー太」(68年)である。当時のアニメは再放送も多く、娯楽もテレビくらいしかなかった(我が家の場合)こともあり、たいていの作品は見ていたような気がするのだが、この「ファイトだ!ピュー太」に関しては記憶が曖昧である。ほとんど再放送もされなかったようなので、記憶がないのかもしれないし、実際に見たことがなかったかもしれない。 それはさておき、OP集などに収録されている映像を見ると当時としては、かなり出来の良いアニメに見える(本編もそうとは限らないが)。原作はムロタニツネ象で、元々こういったギャグ系の人なのだが、世間的には「地獄くん」の作者としての認知度の方が高いかもしれない。本家の「悪魔くん」や「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげるとどっちが怖いかといえば文句なしに「地獄くん」の方がこわい。「人形地獄」とか「地獄太郎」なんて作品もあったりする。ムロタニツネ象という字面も何か怪奇マンガっぽい。漫画は少年サンデーに連載されていたが、こちらでのタイトルは「ドクターツルリ」で、ピュー太の敵役がタイトルになっていた。
ほとんど再放送されなかったのは、やはり制作した放送動画制作(会社の名前である)がこの作品で解散してしまったということもあったと思われる。この会社が制作したのは、やはりムロタニ作品である「かみなり坊やピッカリ・ビー」(67年)との2本だけである。声の出演はピュー太に伊藤牧子、他はムッシュメラメラの関敬六、イヤミの小林恭治、ケンケンの神山卓三、サザエさんの加藤みどりなどである。全然知らなかったが、この作品、05年にDVD-BOXが発売されている。忘れられているよう忘れられていなかったということであろうか。
ごめんねママ
手塚治虫の原作で、前項の「ふしぎな少年」と同じ61年にドラマ化されたのが「ごめんねママ」である。原作は同年からマンガ誌ではなく「主婦の友」に連載されていたものである。私は特に手塚通でもないので、原作を読んだことはないし、このドラマについてもほとんど詳細は不明である。唯一わかっているのが主演が三ツ矢歌子、菅佐原英一であるということぐらいだ。三ツ矢歌子については、このブログにも何度か登場している新東宝の看板女優だった一人である。菅原ではなく菅佐原は50年代に松竹の主演俳優だった一人であるが、今いち個性にかけていたようで次第に脇にまわるようになり、当時はフリーになっていた役者である。しかしこの「ごめんねママ」を含めて数本で消えていったようだ。というわけで菅佐原英一を映像で見たことは今のところ一度も無いと思う。唯一ともいえるテレビ出演ドラマがすっかり忘れられた作品となってしまっているとは、菅佐原英一よくよく運のない役者である。
ふしぎな少年
もう一つ手塚治虫原作に実写ドラマということで「ふしぎな少年」(61年)を取り上げてみる。NHKで帯ドラマとして放送されていたようだが、実際に見たことはない(生まれてなかったし)。この番組に関する知識としては「時間よとまれ!」と主人公が言うと時間が止まってしまうというくらいしか知らない。原作も読んだことはない。映像的には、単にストップモーションをかけたのか、出演者がその時の状態のままで動かなかったのかは不明である(後者のような気がする)。主演は当時14歳の太田博之だが、子役時代の太田を見た記憶はあまりない。「必殺仕掛人」や「おしどり右京捕物車」「長崎犯科帳」など個人的に好きな時代劇にレギュラーで出演しており、線の細いハンサムな青年であった。60年代終盤は歌手活動を行っていたようだが、70年代にはそちらに見切りをつけ俳優に専念するようになっている。しかし76年には引退し、小銭寿司チェーンの経営者に転身している。他の出演者は椎名勝巳、日下武史、青柳三枝子、小山源喜、そしてジュディ・オングなどである。そういえば太田とジュディは「おしどり右京捕物車」でも共演していた。
ところでこの番組の演出を担当していたのは、当時NHKのディレクターだった辻真先である。今は小説家としてのイメージが強いが、やはり我々世代には「鉄腕アトム」を初めとして「エイトマン」や「ゲゲゲの鬼太郎」「サザエさん」などあらゆるアニメの脚本家としての印象が強い。アニメなら辻真先、特撮なら伊上勝の名を覚えた子供は結構いると思う。
鉄腕アトム(実写版)
以前鉄人28号の実写版というのを取り上げたのだが、手塚治虫の話題が出ているところでこちらも取り上げることにしよう。「鉄腕アトム・実写版」(59年)である。鉄人の実写版はソフト化もされ、それを見る限りその出来の悪さに驚いたもので、1クールで終了したのも頷けた。しかしアトムの方はソフト化もされておらず(と思う、されていたらすいません)、直接見たことがない。せいぜい「テレビ探偵団」あたりの紹介でチラッと見たことがある程度である。それを見る限りやはり思わず失笑してしまうような出来に見えたが番組は1年以上続いたのだから、人気はあったのであろう。ところで、放映期間は1年3ヶ月ということもあり、全65回となっているサイトが多いが、テレビドラマデータベースでは53話となっている。どちらが正しいのだろうか。それはさておき、当初アトムは原作どおりにハダカスタイルの気ぐるみであったが、途中からジャンパー、マフラーを着たスタイルに変わった。それはもう暑かったであろうことは容易に想像できる。そのアトムを演じたのは瀬川正人という劇団に在籍していた少年だが、他に出演作は見当たらない。これのみで引退したのだろうか。お茶の水博士は田中明夫→森野五郎、田鷲警部は「海のトリトン」でポセイドンの声を演じた北川国彦、ランプは松山浩二、四部垣は後にピラニア軍団となる根岸一正が演じていた。
ところでこの番組はフジテレビの開局番組である。お馴染みのアニメの放映は63年の元旦からである。実はアトムは57年にも冒険漫画人形劇として放映されている。途中から紙人形劇になったそうである。よくわからんが紙芝居でやっていたのを、紙人形にして動かしたということであろうか。
サンダーマスク
最近このブログで取り上げた話題は封印作品であったり、前項では手塚治虫の作品であったりするので、それをあわせて今回は「サンダーマスク」(72年)ということにする。かなりマイナーな特撮作品でありながら、現在見ることができないという点で有名な作品でもある。原作は手塚治虫ということになっているが、正確にはテレビ企画が先行しており、手塚はそれを元にマンガを書いたという手塚にしては珍しい形の作品のようだ。実際テレビのOPには手塚の名前はクレジットされていないらしい。らしいとうのは本放送以来この作品を見た記憶がないからである。これも「封印作品の謎2」に取り上げられており、詳細はそちらを見てもらえばよいと思うが、簡単にいえば制作したひろみプロと創通エージェンシー(当時は東洋エージェンシー)の権利関係がクリアされないため放映できないということのようだ。フィルム自体は今や「ガンダム」で有名になった創通エージェンシーの元に保管されている可能性が高そうだが、ひろみプロとの軋轢は深そうで陽の目を見ることは当分難しそうである。
さて主演の菅原一高は、これ以外に目だった出演作はなさそうだが、「特捜最前線」にはよくゲストで出ていたようである。さすがは<特撮>最前線などと言われる番組なだけのことはある。他の出演者は井野口一美、加地健太郎、滝波錦司、冨田浩太郎といった、あまり知られていないだろう役者が多い。主題歌は歌う若木ヒロシは、「はじめ人間ギャートルズ」のED(やつらの足音のバラード)を歌うちのはじめと同一人物だが、聞きくらべてもわかりづらい。登場怪獣では2話に登場するタイヤーマを何故かよく覚えている。名前の通りタイヤに手足のついている怪獣だ。他にはある意味有名なシンナーマンや鉄人28号ならぬ鉄人13号、そしてハカイダーなる怪獣もいる。同じ72年の「人造人間キカイダー」に登場するのとどちらが早かったかといえば、「サンダーマスク」のほうが早かったりする。しかしその姿を思い出すことはできない。ていうか知っている人はどれくらいいるだろうか。
バンパイヤ
日本漫画映画発達史
ヤスジのポルノラマ・やっちまえ!
「ドラえもん」の項で書いた日本テレビ動画だが、東京テレビ動画と名乗っていた時代に劇場用アニメを制作している。その名も「ヤスジのポルノラマ・やっちまえ!」(71年)である。まあタイトルどおり、谷岡ヤスジのマンガをアニメにしたものであるが、結果からいうと一週間で打ち切られるという見事なまでの失敗に終わった作品なのである。おそらくソフト化もされていないはずなので、知っている人はかなりの通である。私自身も「ドラえもん」を調べている過程で、初めて知った作品であった。この失敗により東京テレビ動画は解散、日本テレビ動画として再編されることになる。というわけで「ヤスジのポルノラマ」については、そのスチールさえ見たこともないのだが、東京テレビ動画が作っていた作品というのが「夕焼け番長」「男一匹ガキ大将」「男どアホウ甲子園」といった月~土の帯で夕方6時半くらいからやっていた10分アニメなので、その出来から考えるとハイクオリティな物は想像しにくいのだが。
声の出演だが、主役に鈴木ヤスシ。ヤスシとヤスジをかけてキャスティングされたかどうかは不明だ。他にコロンビア・トップ、南利明といったコメディアンに加えて、本職の鈴木弘子、雨森雅司(初代バカボンのパパ)、大塚周夫(初代ねずみ男)などである。この作品後にアメリカで公開されると大ヒットしたという話である。いずれにしろちょっと見てみたい気はする。
ジャングル黒べえ
藤子不二雄作品は健全な子供向け作品の代表のように思われているが、何故か前項の「ドラえもん」のように世に出なくなってしまった作品がいくつかある。ご存知の方も多いと思うが「ジャングル黒べえ」(73年)も今は見ることのできないものの一つだ。旧「ドラえもん」は行方不明な作品だが、こちらは封印されてしまった作品である。大ざっぱな認識では、この作品が黒人差別にあたるという理由で封印されてしまったと思っている人が多いと思うが、実際は少し違っているようである。詳しくは安藤健二氏の「封印作品の謎2」に書かれているのだが、その抗議は「オバケのQ太郎」の1エピソードについて行われたものであり、出版社側はそれに過剰反応して、「ジャングル黒べえ」まで封印してしまったという説が有力である。まあ当時(89年)は、「黒人差別をなくす会」による抗議行動が猛威を振るっており、あの「ちびくろサンボ」が封印状態の追い込まれたりしていた頃である(現在は復活している)。この団体は当時は大阪の一家三人がそう名乗っているに過ぎなかったのだが(現在は二百名を超えるらしい)、バックに大きな組織が控えているのではと、出版社側がビビッてしまったのである。大出版社なら多少の抗議くらいはねつける度量が欲しいところであるが、面倒は御免ということなのだろう。それに伴いアニメの方も封印されることになった。「東京ムービー・アニメ主題歌大全集」にも収録されず、存在していなかったかのような扱いとなっているのが現状である。CDは収録されているものがあり、唯一その存在を証明するものとなっている。
ところでこの作品はアニメ企画の方が先行しており、原案を考えたのがあの宮崎駿だったというのはファンの間では有名な話だ。しかしそれは黒人ではなく、コロボックルのようなキャラだったらしく、それを変えたのは楠部三吉郎(現・シンエイ動画社長)だったという。27年延々と続くアニメ「ドラえもん」を成功させた立役者が、皮肉にも「黒べえ」に関しては封印される原因を作ってしまったともいえる。コロボックルといえばこの73年には「冒険コロボックル」というアニメも放映されているが、それは偶然だったのだろうか。
ドラえもん(日本テレビ版)・その2
前項の続きである。もしこの日テレ版の「ドラえもん」を見ることができたとしたら、初めての人はその声に驚くのではないだろうか。ドラえもんの声がおっさんなのである。冨田耕生という今も現役で、数多くの作品に出ている声優だが、二代目バカボンのパパとでもいえば分かりやすいだろうか。当時はどうっだたかと言えば、何の違和感も感じなかった。まだ単行本も出ておらず、世の中に浸透していなかったということもあろう。今の子供はどうか知らんが「ドラえもんがアニメ化されたら、声優は○○がいい」などと当時の子供は考えたりしていなかったので、最初に世に出たものを受け入れるだけだったのである。当時は小学館の学習雑誌に掲載されており、自分も小学2年生から4年生まで読んでいたと思われる。ちゃんと最終回があり(よく覚えていないのだが)、簡単にいえばドラえもんが未来に帰ってしまう話で、アニメの最終話もそれに準じた話だったようだ。ようだと言うのは恐らく見ていないからである。実は1クールでドラえもんの声がお馴染みの野沢雅子に替わったらしいのだが、私はそれを聞いた記憶がないので、14話以降は見ていなかったと思われる。これはやはり視聴率低迷によるテコ入れの一つだったようで、ドラえもんを保護者目線から友達目線に変えるといったような意味合いもあったようだ。しかしいきなり主役の声が変わったら(しかも似ても似つかない声に)子供でなくても驚くだろうなやはり。他のキャストだが、のび太は太田淑子(「オバQの正ちゃんなど)、ジャイアンが新作でスネ夫になる肝付兼太、スネ夫が八代駿(仮面ライダーの怪人役など)、静香が恵比寿まさ子、パパが村越伊知郎(バロム1の声など)、そしてママが新作ではのび太となる小原乃梨子であった。
その映像を今は見ることができないと書いたが、何故かYouTubeで、その旧作ドラえもんのOPがアップされていたりするのだ。興味のある人は探してみるといい。個人的には断然こちらの「内藤はるみと劇団NLT」の歌う主題歌のほうが好きである。