ミラーマン
前項で話が出たついでに「ミラーマン」(71年)を取り上げてみよう。今やミラーマンといえば植草教授みたいな感じになっているが、関係者にとっては迷惑な話であろう。円谷の作品の中では「ウルトラセブン」に近い雰囲気と言おうか、日曜19時という放映時間の割にはあまり子供向けではない作風であった。出演者もかなり渋いメンツが揃っていたと思う。主演の石田信之は「柔道一直線」でデビューした当時21歳、元々は警官志望だったという役柄どおり生真面目なタイプだったようだ。村上チーフの和崎俊哉は日本電波映画時代は姿三四郎などを演じており、「木枯し紋次郎」の最終選考にも残ったらしい。当時は33歳だが、もっと老けて見える。藤本役の工藤堅太郎は万年青年といった感じでいつ見てもイメージが変わらない感があるが当時すでに30歳であった。野村由紀役の市地洋子は当時20歳で、前年の映画「三匹の牝蜂」では夏純子、大原麗子と共にズベ公を演じていた。安芸晶子と名乗っていた時期もある。御手洗博士の宇佐美淳也は「光速エスパー」でも博士を演じており、博士といえばこの人というようなイメージがある。古くは宇佐美諄を名乗っており、80年に亡くなった時は宇佐美淳だったようだ。
さて「ミラーマン」といえば、この裏番組であった「シルバー仮面」とかなり関連がある。「ミラーマン」にはパイロット版が存在するが、そこで主役の京太郎を演じたのはシルバー仮面の主役となる柴俊夫であった。一方の石田信之には「シルバー仮面」の主役の話もきていたという。たまたま「ミラーマン」の話が先だったので選択したらしい。ちなみにパイロット版のキャストだが、宇佐美淳也や工藤堅太郎(役名は今野)はそのままだが、ユミという役でアイドル歌手の南沙織、村上役はなんと南原宏治が演じていたという。南原宏治の村上というのも見てみたい気がするが、途中で裏切ってインベーダー側につきそうである。そういえば南沙織がゲスト出演したのはミラーマンではなくシルバー仮面のほうであった。シルバー仮面が途中でジャイアントになったのは、やはりミラーマンに視聴率で負けていたからで、それをみたミラーマンも途中で侵略者路線から怪獣路線へと切り替わっていくのである。まあどっちも地味な番組ではあったけれども、個人的にはそれがまたいいと思うのである。
ジャンボーグA
「怪奇大作戦」の話が出たので、もう一つ円谷の特撮ということで「ジャンボーグA」(73年)を取り上げてみたい。やはり本家のウルトラシリーズに比べるとマイナー感のある作品だが一年続いた(全50話)ところを見るとそれなりに人気を得ていたのかもしれない。私自身も結構見ていた記憶がある。当時は自分もガキなのにガキっぽい作品だと思っていた気がするが、今見直すとハードな部分も多い。何しろ隊員(本作ではPAT)の入れ替わりが激しい。殉職が三人に左遷が一人、移動が一人といった具合である。第1話でいきなり主人公立花ナオキ(立花直樹)の兄である立花隊長(天田俊明)が殉職する。天田俊明は「七人の刑事」の一人として有名。立花直樹は等ブログでも何度が触れたが、本主人公の名をもらったのではなく、逆に番組が彼の名をそのまま主人公の名にしてしまったようだ。よく考えれば当時はこのパターンは結構あり、たとえば「プレイガール」では沢たまきの役名は沢村たまきだし、片山由美子の役名は片岡由美子たったりする。また「ゴールドアイ」では渡瀬恒彦はそのまま渡瀬だし、藤岡弘は藤弘という役名であった。立花の後を継いだ岸隊長(大橋一元)も12話で殉職する。 大橋一元は60年代後半から70年代前半に活躍していた人で「特命捜査室」(68年)というドラマではレギュラーで、「ウルトラセブン」にもゲスト出演している。岸の後を継いだのが浜田(松川勉)で1クールで隊員→チーフ→隊長まで昇格している。松川勉も60年代~70年代に活躍していた慶応ボーイで、「オレとシャム猫」では主演の石坂浩二が忙しいときの代理主演みたいなポジションにいた。「白い牙」の第1話で藤岡弘に射殺される村木刑事を演じていたのも松川である。14話から隊員として加わるのが風間(中村俊男)だが、19話には命令無視を犯し左遷処分となってしまう。中村俊男といえば加山雄三の「高校教師」での小柄だが学ランに下駄履きの番長役が印象に深い。こういったタイプの役が多く、正義の味方は似合っていなかったと思う。さて浜田隊長も31話でヨーロッパでのPAT隊長会議に出席のため隊を離れる。そんなに長い会議なのか?で32話より4代目隊長として登場するのが元SGMの村上(和崎俊哉)で、「ミラーマン」と同じ役柄なのである。唐突に「ミラーマン」と「ジャンボーグA」の世界は繋がっていたことになったのだ。なおこの回はやはり元SGMの野村由紀(市地洋子)も登場するが、この回のみであった。PATの女性隊員も野村せつ子(加瀬麗子)なので、同じ野村でややこしいからだろうか。個人的には市地洋子のほうが好みなのだが。そういえば14話では風間の他に大羽(瀬戸山功)という隊員がひっそりと加わっていたのだが、初めて目立った42話に殉職してしまう。そして43話から登場するのがやはり元SGMの安田(杉山元)で、メガネを外し色黒になっていたのでまるで別人に見えた。杉山元は日活の青春映画で山内賢や和田浩治とバンドを組んでギターを弾いていたりした人である。
とまあ実に入れ替わりの激しいPATだが、デブの熊井隊員(丸岡将一郎)と華のない野村隊員のみ最初から最後まで登場していた。ミラーマンで主役を演じた石田信之も岸の弟という役でゲスト出演している。ちなみに第26話のサブタイトルはDVDなどでは「謎!ノンビリゴンの正体」となっているがオリジナルは「気ちがい星とノンビリゴン」である。数年前のCSではそのまま放映されている。脚本は前項にも登場した山浦弘靖だが、このテのネタが好きなのだろうか。
怪奇大作戦
最近ここで取り上げたネタが勝呂誉や放送禁止作品だったりするので、ここはやはりそれらに共通する「怪奇大作戦」(68年)について触れなければなるまい。封印されているのは第24話「狂鬼人間」で、タイトルどおり気違いネタである。同じ円谷プロの封印作品では「ウルトラセブン」(67年)の12話「遊星より愛をこめて」が有名だが、その後番組である本作との大きな違いは「狂鬼人間」を収録しているビデオやLDが発売されていたということであろう。25年くらい前であろうか、突如封印され欠番扱いとなってしまったわけだが、他の封印作品に比べればその映像は手に入れやすいかもしれない(実は自分も最近YouTubeで見た)。本放送を見ていた記憶はあるのだが、子供が楽しめる類の作品ではなかったし、それほど思いいれもなかった。まさか突然封印されるとは思っていなかったので、ビデオにとって置かなかったのは失敗だったと思ったものである。まあ朝日ソノラマが出していた「ファンタステックコレクション・ウルトラQ/怪奇大作戦」(79年発売)はたまたま所持しており、それには「狂鬼人間」のエピソードも収録されているので、この頃はまだ解禁されていたことがわかる。
まあこのエピソードを解説・紹介しているサイトは結構あると思うので詳しくはそちらを見ていただくとして、ようするに精神障害者に対する差別的な発言が多いのは確かである。関係団体から抗議があり封印されることになったのかも知れないが、70年代まではそういった作品は非常に多かったと思う。当時の刑事ドラマやアクションドラマなどでも犯人が異常者であることは珍しくなかったのである。迂闊に封印すべきではないとは言えないが、逆に好奇心をあおることにも繋がってしまうと思ったりする。ちなみに「狂鬼人間」の監督は今も円谷プロに在籍する満田かずほ、脚本は山浦弘靖だが、両名とも「怪奇大作戦」での担当はこれ一作だけである。この満田に脅迫電話がかかってきた為に封印されたという噂もある。
青年の樹
十代の曲り角
黄線地帯(イエローライン)
新東宝に58年に入社した四人(菅原文太、吉田輝雄、高宮敬二、寺島達夫)はハンサムタワーとして売り出されたが、中でも最も力を入れられていたのが吉田輝雄であろう。以前ここで取り上げたことのある「女体渦巻島」(60年)のポスターには<全女性あこがれのハンサム吉田輝雄の魅力>、同年の「黄線地帯」でも<人気爆発のトップスター吉田輝雄の魅力>と謳われているくらいである。これは他のメンバーはもとより、新東宝スター宇津井健あたりにもない待遇だ。ちなみに両作品とも相手役は三原葉子、天知茂である。
ところでハンサムタワーの四人だが、61年の新東宝解散後は揃って松竹へ移籍、後に東映へ移籍とほぼ同じような道筋をたどっている。特に菅原文太の東映に移ってからの活躍は説明不要であろう。吉田輝雄は前項でも触れたとおり、70年代から芸能界を遠ざかっていく。高宮と寺島も70年代に入るとほとんど目立たなくなり、個人的にもこの二人のことはほとんど知らないのである。寺島は55年に東映フライヤーズに投手として入団しており、同時期に八名信夫も在籍していた。八名は退団後、そのまま東映で俳優になったが、寺島は兄(新島宏:55年に急逝)が新東宝のニューフェースだった縁で新東宝に入社したのである。個人的に覚えているのは「必殺仕掛人」で梅安(緒形拳)に針ではなく、風車の部品(つまようじみたいなもの)で殺される同心役くらいしかなかったりする。97年に60歳で亡くなっている。高宮は73年頃に姿を消しており、その顔を知ったのは結構最近だったりする。この人は謎の部分が多く、キネマ旬報の日本映画俳優全集でも出生地・生年月日は不明となっているぐらいだ。
吉田は90年代後半から芸能活動を再開していたのだが、02年に「ハンサム・タワーズ」という二人組でCDを出している。そのもう一人というのが高宮敬二であった。約30年ぶりに姿を現したようだが、この話題実は全く知らなかった。一度見てみたいものである。
江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間 その2
さて前項の続きだが、この作品に近藤正臣が出ていたことも意外と知られているが、何の役かといえばシャム双生児の片割れで、そのもう一方を演じたのがヒロインとなる由美てる子である。聞きなれない名前だが、それもそのはずで、映画主演はこの作品とやはり異常性愛シリーズの一本である「明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史」の二本だけなのだ。しかし本当はもう一本「徳川いれずみ師 責め地獄」で主演デビューを飾る予定だったのだが、撮影途中に失踪してしまう。まあ撮影とはいえ実際に縛られたり吊るされたりするわけで、Mっ気のない女性であれば辛かったのは容易に想像できる。今で言えばSMビデオみたいなものだし。その替わりに抜擢されたのが当時19歳だった片山由美子であった。東映の児童劇団の出身で、「ジャイアントロボ」(67年)でユニコーンの女性隊員を演じていたことは有名だ。その彼女が東映のニューフェース(12期)になった途端の仕事がこれである。泣く泣くやっていたそうだが、結局ほとんどの異常性愛シリーズに出演することになる。さて由美てる子だが、結局覚悟を決めたのか前述の二作品には出演して映画界を去っていったようだ。主演の吉田輝雄もこの翌年2本ほど映画出演した後、第一線から退き、クラブ経営など事業の方に精を出すようになっていった。
さてこの作品タイトルが「奇形人間」じゃなくても、内容そのものが奇形人間の王国を作るというようなものなので、DVD化とかCSで放送することとかも無理だと思われる。しかし封印作品とか言われながらも巷の映画館ではよく上映されることがあるようだ。客の反応はといえば、思わず笑いが起るとのこと。今見るとそんなにグロいことはないらしく、その陳腐な作りに笑ってしまうらしい。今日も日本のどこかで上映されるているかもしれない。
江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間
最近はネットを通じて様々な映像を見ることが可能だが、YouTubeやstage6といった動画投稿サイトでは俗に言う「封印作品」の映像が流れていることがある。私も事実上封印されている映画の一つとして有名な「恐怖奇形人間」(69年)の予告編とOPから5分くらいの映像を見ることができた。勿論この作品の存在自体は知っていたのだが、詳細については何も知らなかったことに改めて気付いた。まず原作が「パノラマ島奇談」がベースになっているということ。まあ「江戸川乱歩全集」と謳っているくらいだから、乱歩の小説が原作なのは当然なのだが、「パノラマ島奇談」は未読なので映画のタイトルからは結びついていなかった。他の乱歩のエログロなほうの小説も使われているとのことである。そしてつまりは明智小五郎も登場するということ。これも当然といえば当然なのだが、私の頭の中では結びついていなかった。ちなみに明智役は62年の大映版「黒蜥蝪」でも明智役を演じた大木実である。
ところでこの映画は主演は吉田輝雄、監督が石井輝男という新東宝出身のテルオコンビ。このコンビというと「異常性愛シリーズ」ということになるのだが、この映画もその中に含まれているということは知らなかった。実は「異常性愛シリーズ」についてはほとんど知識がないので、正統派二枚目イメージしかなかった吉田輝雄が「徳川女刑罰史」から始まるこのシリーズ、ほぼ全作に出演していることも知らなかったのである。この二人のテルオの結びつきは強いものがあったようだ。このシリーズは常連が多く、小池朝雄、由利徹や大泉滉、若杉英二、女優では賀川雪絵や片山由美子、そして暗黒舞踏の土方巽などがよく登場している。この映画も冒頭、片山由美子の乳のアップから始まっている。片山が「プレイガール」で人気を得るのはこの翌年だが、先に「プレイガール」に出ていたら、こちらには出なかったのではないだろうか。まあその逆も言えるのだけれども。以下、事項に続く。
東京Gメン
元日に「東京新選組」という番組を取り上げたが、その同じ60年に似たようなタイトルの番組を見つけた。それが「東京Gメン」である。Gメンといえば「Gメン75」を思い出す人も多いと思うが、Gメンという言葉は結構古くから使われており、戦後まもなくには片岡千恵蔵主演の「にっぽんGメン」という映画があるくらいだ。刑事だったり、秘密捜査官だったりというイメージがあるが、この「東京Gメン」はどうやら探偵が主人公のようである。主演はロイ・ジェームスで、以前取り上げた「赤白パネルマッチ」などの司会者としてのイメージが強いが、50年代には数本の映画にも出ており役者でもあったわけである。ロイ扮する混血の名探偵ジミーと仲間たちの活躍を描くと解説にもある。で、その仲間たち(全員かどうかわからないが)を演じるのが「部長刑事」「事件記者」の高城淳一、「恐怖のミイラ」の高木二朗のタカギコンビ、声優としてのイメージが強い家弓家正に仲村秀生(「あしたのジョー」の力石役が有名)、そして60年代に活躍していた椎名勝巳という面々のようだ。華を添える女性レギュラーは居なかったかどうかなどとにかく詳細は不明な番組である。ところで、椎名勝巳という人を検索するとスキューバダイビングの第一人者が出てくるのだが、この人の経歴には元俳優などとは一切書かれていないのだが、年齢的にも合致するし、おそらく同一人物ではないかと思われる。ところで、この椎名勝巳という人は「ベルトクイズQ&Q」の2代目司会者だったらしい。初代の増田貴光と押坂忍は覚えているのだが、その間に2代目が存在していたとは全く知らなかった。まあ同じ俳優の田宮二郎や小泉博などがクイズ司会として成功していたが、この人はごく短期間で終わったらしい。
真夜中の警視
打ち切りドラマとして割合有名なのが、以前このブログでも取り上げた「追跡」(73年)だが、この番組は当初の予定通り13回で終了していれば、打ち切りドラマにはなっていなかったはずなのである。問題となった「汚れた天使」という話は追加となった15話だったからである。その原因を招いたのが、その前番組であった「真夜中の警視」(73年)である。これも割合有名な話かも知れないが、主演の原田芳雄が撮影のため無免許運転で事故を起こし、ケガ人を出してしまうという、言い逃れのできない事件で番組は7回で打ち切りとなってしまったのである。主演俳優でしかも撮影中というダブルパンチでは中止もやむを得なかったかもしれない。で、次番組の「追跡」が13話予定から19話予定となり、同じ局の同じ時間帯の番組が連続して幻になるという珍事態になってしまったのである。
さて「真夜中の警視」がどんな内容だったのかは全く知らなかったのだが、見ていなかった人は恐らくみんな原田芳雄が警視に粉した刑事ドラマだと思っていると思う。私もそう思っていたのだが実は違っていた。原田は兄を殺した犯人に復讐するために警察を退職した男という役柄なのであった。他の出演者が中野良子、現代劇のレギュラーは珍しいと思われる菅貫太郎などで、後は門岳五郎、菅野忠彦という知らない名前が並んでいる。ちなみにゲストだが初回から順に、園まり、緑魔子、太地喜和子、ハナ肇、長谷川明男、加賀まりこ、桜井浩子といったところである。
やはりこういった番組は二度と陽の目を見ることはないのだろうか。ないんだろうなやっぱり。