青春三羽烏
川喜多雄二に対して興味はないのだが、せっかくなのでもう一つ。彼の出演した作品に「三羽烏」シリーズがある。あまりに古くて当然見たことはないが、簡単に並べてみる。まずは「青春三羽烏」(53年)。三羽烏というぐらいだから当然、三人組が主役ということになるのだろうが、この作品では川喜多と高橋貞二、三橋達也。第二作「三羽烏奮戦す」(54年)では川喜多と、大木実、片山明彦。三作目「角帽三羽烏」(55年)では、川喜多と大木、高橋。四作目「三羽烏再会す」(56年)では、川喜多と大木、そして渡辺文雄と全てメンバーが異なっているのだが、全作に出演したのは川喜多だけである。
三橋達也、大木実、渡辺文雄については後年も活躍していたので知っているだろうと思うが、片山明彦は映画監督である島耕二の息子で、37年から子役として活躍しており、「路傍の石」(38年)や「風の又三郎」(40年)などへの出演で有名だ。戦後は大人の役者として70年くらいまで活動していたというので、どこかで目にしているはずだがすぐには思い出せない。その後はPR映画・記録映画の演出に転向したらしい。前項でも名が出た高橋貞二は松竹の看板役者であったが、なにしろ自分が生まれる前に故人となっているのでほとんど馴染みがない。酒好きで車好きだったらしく、50年には諸角啓二郎らと酔って大暴れし逮捕されたり、55年には飲酒運転で少年をはねて軽症を負わせるなどの事件をおこしたりもしていた。しかし人気が衰えることはなく、木下恵介や小津安二郎の作品などに出演していた。そして59年11月飲酒の上ベンツを運転し市電と正面衝突し死亡した。彼の主演で撮影中だった映画「大願成就」は、彼の扮する主人公が半ばで急死し、後を継いだ青年が「大願成就」を果たすというストーリーに変更された。昨今、大きな問題となっているが飲酒運転はやめませう。
肉体の野獣
川喜多雄二という俳優は、自分が物心ついた時には既に引退していたので我々世代でも馴染みがないが、50年代には松竹の看板俳優の一人だった人である。あの「君の名は」(53年)でヒロイン岸恵子の夫役(憎まれ役)が有名だ。そんな彼がフリーになった後、新東宝で主演したのが「肉体の野獣」(60年)である。松竹時代からは想像できない「野獣」な医師役を演じている。しかし元々、川喜多は新東宝でデビューしており当初の芸名は川喜多小六というものであった。しかし一年程度で松竹へ移籍し、それ以来の新東宝出演である。共演の女優が三原葉子、三田泰子、三条魔子と見事に三○○子で揃っており、タイトルでも川喜多の横に三人の名が並んでいる。かといってこの三人がトリオで売出されていたというわけでもなく、詳しく調べていないが揃って出ているのはこの作品くらいではないだろうか。三原と三条は割合名が知られていると思うが、三田泰子は活躍期間が短かったこともありあまり知られていないかも。三田佳子とは勿論別人である。そういえば新東宝には三ツ矢歌子もおり、三で始まり子で終わる名前は縁起が良かったのかもしれない。川喜多も松竹時代は高橋貞二、佐田啓二に次ぐスターといわれていたが、男優の方は二で終わる名前が良いとされていた。
しかし自分が川喜多の名を知ったのは「実写版・鉄人28号」(60年)だったりする。彼のキャリアからすれば出演したのが不思議なくらい珍妙な作品である。おそらく唯一出演した子供向け作品がよりによって…。
さて、川喜多はこの映画では外科医の役だったが、60年代後半に引退した後は歯科医に復帰している。俳優になる前は歯科医だったのである。
大捜査網
突然だが、「踊る大捜査線」は近年大ヒットしたテレビシリーズ&映画で、「夜の大捜査線」(67年)はやはりヒットしたシドニー・ポワチエ主演の米映画、「大捜査線」(80年)は杉良太郎主演のある意味カルトな刑事ドラマ、「大非常線」(76年)は千葉真一主演で1クール弱で終了した刑事ドラマ、そして今回取り上げるのは65年の大映映画「大捜査網」である。特に意味はないが、ややこしいので並べてみた。
宇津井健と藤巻潤といえば「ザ・ガードマン」だが、この「大捜査網」は「ガードマン」がスタートする直前に公開されている二人が出演している映画である。ただし主演扱いは本郷功次郎で、本郷と藤巻そして丸井太郎が新人警察官で、その教官である警部が宇津井という役柄である。新人警察官といっても当時、本郷は26歳、藤巻は28歳、丸井にいたっては30歳であり、あまり初々しくない新人という感じだ。「ザ・ガードマン」では毎回のように重傷を負いながらも不死身のごとく復活する藤巻だが、この作品ではあっけなく?殉職してしまう。さて、丸井太郎だが彼が「図々しい奴」で人気を得たのは63年のことである。その後作品に恵まれず67年に自殺してしまったという のは割合有名な話だが、本来主役になるような風体ではない彼が主役として人気を得てしまったのが逆に悲劇を生んだといえるのではないか。そういえば、似た風体のキレンジャーこと畠山麦も仕事に行き詰まりを感じて自殺してしまったし。今さらながら合掌。
刑事くん・第5部
前項で書いたとおり、「刑事くん」の第5部(76年)は主役は星正人にチェンジされたのだが、その他のキャラは継続して登場していたようだ。名古屋章は勿論のこと、宮内洋、三浦友和、仲雅美そしてついには前主役の桜木健一まで登場することになる。正直この星正人版の「刑事くん」はその存在すら知らなかったくらいだから、彼らがレギュラーだったのかゲストだったのかはよく知らない(桜木はゲストのようだが)。これはあまり人気を呼べなかった為にとられた苦肉の策だったようだが、やはりシリーズはかわっても、「非情のライセンス」なら天知茂、「大都会」なら渡哲也、「はぐれ刑事純情派」なら藤田まことというように、「刑事くん」は桜木でなければならなかったのようだ。星正人版は26話で終了となり、「刑事くん」そのものも幕を閉じることになったのである。
ところで星正人とはいか にも芸名くさい名前だが、実は本名である。当時の東映イチ押しの新人で「暴力学園大革命」(75年)で主演デビューを果たしている。この「刑事くん」以外にも「大都会PARTⅢ」や「爆走ドーベルマン刑事」でも刑事の役を演じており、70年代後半は非常に勢いのある役者だったのだが、80年代にはいるとパッタリと見かけなくなったイメージがある。実際に引退したのは87年ごろのようだが、その後どうしているかは誰も知らない。いやもちろん周辺の人間なら知ってるだろうけれども。
刑事くん
「刑事さん」ときたら「刑事くん」である。説明不要かとは思うが前者は「でかさん」後者は「けいじくん」である。さて「刑事くん」だが、桜木健一が「柔道一直線」で得た人気の勢いをそのまま持ち込むような形で71年にスタートしている。結構有名なドラマだと思うが、個人的にはほとんど見ていなかった。長くやっていたような印象はあったが、3度の中断をはさみながら76年の第5部まで続いていたとは意外であった。まあ最近の番組でいえば「はぐれ刑事純情派」みたいなものか。
1部と2部(計57回)は繋がっており、先輩刑事が仲雅美だった前半を1部、立花直樹に替わってからを2部というように世間では分けているようだ。仲雅美は沖雅也のバッタ者のように思われている節もあるが、先に売れたのは仲である。立花直樹といえば「ジャンボーグA」(73年)の立花ナオキ役が有名だ。以前にも書いたが「ジャンボーグ」に合わせて芸名を変えたわけではなく、最初から立花直樹だったのである。彼は大麻事件で芸能界から姿を消している。3部は73年スタートで全55話である。何故52話でないのかは謎だ。ここでの同僚役は三浦友和で、私の記憶に残っているのはこのあたりである。確か先輩の役だったと思うが、三浦は桜木より実年齢は4つ下である。桜木は若く見えるタイプだが、三浦も大人びて見えるタイプではないのでどうだったであろうか。ご存知の通り三浦はこのあと、山口百恵とのコンビでブレイクしていく。4部は74年のスタートこちらも54話である。ここでの新先輩刑事は「V3」兼「ズバット」兼「アオレンジャー」の宮内洋である。風見ではなく風間刑事役だ。彼がもっとものっていた頃である。これらのシリーズすべてに登場するのが彼らの上司である時村役の名古屋章だ。彼の肩書きは何かと思えば、実は署長だったのである。係長や課長らしき人物はおらず、署長自ら三神(桜木)をどなっていたということになる。それとも署長が刑事課長もかねていたのだろうか。名古屋章といえば若い頃からまったく印象が変わらなかった。はっきりいえば老けていた。ちなみにスタート時は41歳だったのだが、とてもそうは見えなかった。
桜木シリーズはここで終了し、第5部は星正人にバトンタッチされることになる。そして桜木は「特捜最前線」へ向かっていくのであった。
刑事さん
話が前後してしまうのだが、64年に終了した「警視庁物語」シリーズの続編というかテレビ版が「刑事さん」(67年)である。松本克平、神田隆、花沢徳衛、今井健二といった面々が映画版と同じ役柄で登場するらしい。らしいというのは当然見たことがないからだ。正確にはOPのみ見たことがあるが、固定OPではなく冒頭のシーンにテロップがかぶるというものだった。どうやらキカイダー01こと池田駿介がメンバーに加わっているようだ。何故か9回で終わってしまうのだが、翌68年に新たに13回放映されている。この「PART2」の存在は新たな発見であった。主なゲストは67年のほうは大川栄子、江原真二郎、富士真奈美など、68年のほうは村井国夫、中田博久、千秋実といったところである。映画のほうもだが、こちらのテレビ版のほうも是非みてみたい番組ではある。ところで、「さん」が「くん」になるだけで全然違う番組になってしまうので注意しよう。
ポルノの帝王・失神トルコ風呂
梅宮辰夫の主演シリーズはまだあったりする。それが70年にスタートする「帝王」シリーズである。今回は「不良番長」と同様に山城新伍とのコンビで、「夜遊びの帝王」「女たらしの帝王」(70年)、「未亡人殺しの帝王」「ポルノの帝王」そして「ポルノの帝王・失神トルコ風呂」(71年)の五作が存在する。個人的には、多分1作も見たことがないと思う。あらすじや解説などによると今までの女を食い物にする梅宮シリーズとは異なり、多少純愛色が強いとなっている。役名は全作、梅宮が松○浩、山城が金○政雄となっており、○の部分だけ毎回違う。ちなみに梅宮が松原、松永、松山、松村、松宮で、山城が金山、金田、金井、金本、金子となっている。メインとなる女優は「夜遊び」が富士真奈美、「女たらし」が富士と山城の元妻である花園ひろみ、「未亡人殺し」が八代真智子、「ポルノ」が真山知子、「トルコ風呂」がまた花園ひろみである。
山城と花園は東映第4期ニューフェースの同期生で、65年に結婚しているので、この時点では夫婦であった。二度結婚し二度離婚しているが、同居は続けているらしい。山城は東映の他、松竹のニューフェースにも合格したらしいが、出演料が東映のほうが五百円高かったという理由で東映入りしたということである。梅宮は山城と同じ38年生まれだが、こちらは第5期ニューフェースである。ちなみに二人とも医者の息子だったりする。山城は最近テレビで見かけないと思ったら、糖尿病で入院しているとのことだ。かなり痩せてしまったらしい。梅宮もかつて肺種痬にかかったが、こちらは3ヶ月で完治している。
夜の歌謡シリーズ
梅宮辰夫の夜の盛り場シリーズは、前項の作品以降は「夜の悪女」「夜の牝犬」「赤い夜光虫」と続いたが、68年の「柳ヶ瀬ブルース」をきっかけとしたヒット歌謡曲をベースにして夜の盛り場を描いた作品がシリーズ化された。それが「夜の歌謡」シリーズである。ちなみにこの68年には「不良番長」シリーズもスタートし、梅宮の第2絶頂期が訪れたという感じである。
このシリーズは、69年までに計8本が作られたが「柳ヶ瀬ブルース」なら美川憲一というようにその歌を歌っている歌手が当然のように顔を出す。しかし後の7本は「港町ブルース」「おんな」なら森進一、「長崎ブルース」「伊勢佐木町ブルース」なら青江三奈とこの二人が交代で顔を出す。しかし青江、森、美川と夜の盛り場が似合う面々である。計8本と書いたが、73年になって何故か思い出したように「夜の歌謡シリーズ・女のみち」が作られている。当然ぴんからトリオも登場するが、この歌の人気が凄かったので急遽企画を復活させたのかもしれない。確か「およげ!たいやきくん」に次いで歴代売り上げ2位だったはずである。勿論、CDではなくレコードだが。
ひも
第二東映が発足した60年、東映は合わせて165本もの映画を製作した。しかし現場はたまったものではなく、この体制に対する反対運動が起こっていた。先頭にたって批判していたのは片岡千恵蔵だったという。それに加えてテレビの普及は予想以上に映画から客を奪っていったこともあり、翌61年二年足らずで東映の二系統体制は幕を閉じた。
この頃第二東映(ニュー東映)での主演が多かった梅宮辰夫だが、一つに戻り必然的に主演作は減ってしまった。しかし65年、その梅宮主演となったのが「夜の青春」シリーズである(夜の盛り場シリーズとも言われる)。第1作「ひも」を皮切りに、「いろ」「ダニ」「かも」とこの年だけで四本が作られている。全作梅宮の演じるキャラは別人だが、まあ同じようなものだし、女優も緑魔子は3作に、大原麗子は2作に登場するので、はっきりいってややこしい。タイトルも全部かな二文字だし、まあどれがどれなんだか見分けのつきづらいシリーズである。このあたりから梅宮の出る映画が正統派アクションや任侠物から変わっていき、あの「不良番長」シリーズへと繋がっていく。と勝手に分析しているのである。