複雑な彼
「裸の青春」の項で、チラッと触れた「複雑な彼」(66年)が先日CSで放映された。書いた時点では(放映を)知らなかったのでナイスなタイミングであった。真理アンヌが「マリアンヌ・シェーツ」名義で出演しているというネタ以外が何も知らなかったのだが、原作は三島由紀夫で主演が田宮二郎という、まあ衝撃の自殺コンビとでもいうのだろうか、でも中身はおとなしめのメロドラマといった感じの作品である。本作での田宮の役はあの安部譲二がモデルになっているらしいのだが、イメージが違いすぎて想像できない。安部がパーサーをやっていたこと自体が想像しづらいし。
さてヒロイン役は高毬子である。高毬子といえば、真っ先に思い出すのが「プレイガール」である。というかそれ以外思いつかないのだが、プレイガール以前の彼女については全然知らなかった。宝塚歌劇団の出身で、映画デビューはこの66年、出演2作目の本作でヒロインに抜擢されている。この年出演した五本の映画はすべて田宮が主演であり、高もほとんどヒロイン役のようだ。しかし大映での活躍は翌67年までで、68年からは東映の作品に顔を出すようになっている。セクシー美女という感じでもなく、まさか「プレイガール」に出演するようになるとは本人も予想していなかったであろう。この大映時代のイメージとプレイガールの時とではかなりイメ ージが違っている。現在は普通に主婦だそうである。
新・平四郎危機一発
平四郎危機一発
一度見てみたいと思っていた番組がCSでスタートした(といっても2ヶ月ほど前からだが)。それが「平四郎危機一発」(67年)である。これはあの「キイハンター」の前番組にあたるというのでTBS系の土曜21時から放送されていたはずだ。しかし制作は東映ではなく東宝である。主演は当時大人気の石坂浩二で、石坂本人が得意なフェンシングの技を使う九条平四郎を演じている。探偵物には違いないが、九条はあくまでも探偵マニアであり本業は花屋を営む青年実業家という設定だ。その彼が毎回事件に首を突っ込んでいくというある意味強引なドラマだが、そうでないと話が進まない。他のレギュラーは次の「キイハンター」でもレギュラーとなる大川栄子、そして誰?という感じの広町富雄に田中紀久子。実際にこれ以外の出演記録は見当たらなかったりする。とまあ微妙なメンバーでスタートした番組だが、当時の石坂というのは大変な殺人的スケジュールだったようで、ついには体調を崩し第8話を持って降板ということになった。主役のいなくなった番組に対して制作サイドがとった手段はキャストの総入れ替えであった。一人だけ交替するというのはたまにあるケースだが、番組タイトルや設定そのままでレギュラー総入れ替えとうのは珍しいケースだろう(まあ新企画などを立てている暇などなっかたであろうが)。広町や田中など恐らく初レギュラー作品だったと思われるが道連れになってしまったのである。
で第9話より九条平四郎となったのが宝田明である。青年っぽい石坂からアダルトな宝田へチェンジされ、キザっぽさが強調されるようになった。ヒロインも娘っぽい大川から大人っぽい雰囲気の夏圭子へと替わった。他のレギュラーは当時は人気のあった砂塚秀夫や東宝期待の若手で二代目若大将に予定されていた矢吹渡(後の浜田柾彦)や進千賀子など多少華やかな雰囲気となっている。10話には土屋嘉男や佐原健二がゲストで登場し東宝色が強くなった。兎にも角にもこうして26話を乗り切ったのである。番組そのものが「危機一発」だったのである。
ちなみに国語的には「危機一髪」が正しいので注意しよう。何故か映画やドラマのタイトルには「発」が使われることが多い。間違いやすい原因は間違いなくこういったドラマにあるのだろう。
裸の青春
「裸の青春」というタイトルだけだと日テレの青春ドラマシリーズかなと思ったり(ありません)、加山雄三主演の「高校教師」の主題歌を思い浮かべる人もいるかもしれないが(夏木マリ「裸の青春」)、65年の田村正和主演の松竹映画だったりする。当時22歳の田村が少年院を脱走してきた不良少年を演じているが、品の良いハンサムである正和は不良には見えないのである。といっても内容は純愛物で、ヒロインは市川瑛子が演じている。誰?と思ったが当時の新人で、活躍時期は65年と66年の二年だけのようで詳しくは不明である。正和を拾ってトラックに乗せてやる運ちゃんが加東大介(東宝)だが、この人は「陸軍中野学校」にも(東宝)付きで出ていたが、他社への出演が多かったようだ。工藤堅太郎がヤクザの子分で兄貴分が鹿内孝(当時はタカシ)。鹿内孝は若い頃からヤクザ役が多かったようである。ちなみに映画の主題歌を熱唱しているのは鹿内だ。
彼らの周りにる少女たちを演じるのが嘉手納清美や真理アンヌなのだが、やはり真理アンヌが目立つ。当時17歳だが妙に貫禄がある。ちなみに彼女が真理アンヌ名義で出演したのは本作が初めてだったようで、64年の「自転車泥棒」はデビー・シェス名義(本名ワサンティデビィ・シェス)で、66年の「複雑な彼」ではマリアンヌ・シェーツ名義で出演しているらしい。正和も田村三兄弟として有名だが、真理アンヌの三姉妹も有名だ。長女がアンヌで、次女がプラバー・シェス、三女が久万里由香だ。プラバー・シェスはモデルと「ヤング720」の司会などをしていたが女優活動はほとんどしていないのであまり記憶にないが、久万里由香は女番映画とかに出演していた。三人の中では一番日本人っぽい顔立ちだと思う。久万里というのは本名のスワァクマリから来ているようだ。いつの間にか真理アンヌの話になってしまった。そういえばずっと以前に取り上げた「コードナンバー108・七人のリブ」に毬杏双(まりあんぬ)という人が出ているが、この人は「アテンション・プリーズ」などに出演していた麻衣ルリ子だったらしい。今さらながら記しておく。
家庭の事情シリーズ
古い話題が多くなっているついでにもう一つ、トニー谷である。自分なんかの世代では、かろうじて「アベック歌合戦」(62年~)での「あなたのお名前なんてえの」という拍子木を叩きながら(ソロバンではない)の司会ぶりを生で見た記憶が残っている程度である。当時はもちろん知らなかったが、人気が落ち目になっていたトニー谷はこの番組で復活を遂げていたのであった。大人気だったのは50年代で、初の主演映画として作られたのが「家庭の事情」シリーズ(54年)である。1作目の「馬ッ鹿じゃなかろかの巻」「さいざんすの巻」「おこんばんわの巻」「ネチョリンコンの巻」の計四本が作られている。これらのタイトルはいずれも彼のギャグ?であり、当時の作品らしくいずれも50分弱くらいである。共演はかろうじて知っている名前をあげると重山規子、柳谷寛、千葉信男、有木山太、谷晃、寺島雄作といったところであろうか。ちなみに2本目だけ頭に続がつく(つまり続家庭の事情・さいざんすの巻)。トニー谷という人はかなり不幸な生い立ちを背負っている人のようで、継母から虐待を受けていたとか最初の妻は空襲で行方不明になったとか色々あるようだ。順調に見えた芸人生活も55年に長男が誘拐されるという事件にあってしまう。当時は報道協定などもなく子を心配する彼の素の姿が報じられ被害者なのに人気を落とすという目にあう。結局無事に戻ってきたのだが、このときから晩年までマスコミ嫌いだったという。
冒頭の「アベック歌合戦」の終了(68年)と共に姿を消したような印象が強いが、実際は「スター飛び出せ歌合戦」を経て71年の「トニーの外人歌合戦」が3ヶ月で終了した後に休養期間に入り、そして77年の「てんぷく笑劇場」でまた復活していたのである。個人的にも子供の頃にテレビで見たのが最後だった(と思う)ので意外な事実であった。
青春三羽烏
川喜多雄二に対して興味はないのだが、せっかくなのでもう一つ。彼の出演した作品に「三羽烏」シリーズがある。あまりに古くて当然見たことはないが、簡単に並べてみる。まずは「青春三羽烏」(53年)。三羽烏というぐらいだから当然、三人組が主役ということになるのだろうが、この作品では川喜多と高橋貞二、三橋達也。第二作「三羽烏奮戦す」(54年)では川喜多と、大木実、片山明彦。三作目「角帽三羽烏」(55年)では、川喜多と大木、高橋。四作目「三羽烏再会す」(56年)では、川喜多と大木、そして渡辺文雄と全てメンバーが異なっているのだが、全作に出演したのは川喜多だけである。
三橋達也、大木実、渡辺文雄については後年も活躍していたので知っているだろうと思うが、片山明彦は映画監督である島耕二の息子で、37年から子役として活躍しており、「路傍の石」(38年)や「風の又三郎」(40年)などへの出演で有名だ。戦後は大人の役者として70年くらいまで活動していたというので、どこかで目にしているはずだがすぐには思い出せない。その後はPR映画・記録映画の演出に転向したらしい。前項でも名が出た高橋貞二は松竹の看板役者であったが、なにしろ自分が生まれる前に故人となっているのでほとんど馴染みがない。酒好きで車好きだったらしく、50年には諸角啓二郎らと酔って大暴れし逮捕されたり、55年には飲酒運転で少年をはねて軽症を負わせるなどの事件をおこしたりもしていた。しかし人気が衰えることはなく、木下恵介や小津安二郎の作品などに出演していた。そして59年11月飲酒の上ベンツを運転し市電と正面衝突し死亡した。彼の主演で撮影中だった映画「大願成就」は、彼の扮する主人公が半ばで急死し、後を継いだ青年が「大願成就」を果たすというストーリーに変更された。昨今、大きな問題となっているが飲酒運転はやめませう。
肉体の野獣
川喜多雄二という俳優は、自分が物心ついた時には既に引退していたので我々世代でも馴染みがないが、50年代には松竹の看板俳優の一人だった人である。あの「君の名は」(53年)でヒロイン岸恵子の夫役(憎まれ役)が有名だ。そんな彼がフリーになった後、新東宝で主演したのが「肉体の野獣」(60年)である。松竹時代からは想像できない「野獣」な医師役を演じている。しかし元々、川喜多は新東宝でデビューしており当初の芸名は川喜多小六というものであった。しかし一年程度で松竹へ移籍し、それ以来の新東宝出演である。共演の女優が三原葉子、三田泰子、三条魔子と見事に三○○子で揃っており、タイトルでも川喜多の横に三人の名が並んでいる。かといってこの三人がトリオで売出されていたというわけでもなく、詳しく調べていないが揃って出ているのはこの作品くらいではないだろうか。三原と三条は割合名が知られていると思うが、三田泰子は活躍期間が短かったこともありあまり知られていないかも。三田佳子とは勿論別人である。そういえば新東宝には三ツ矢歌子もおり、三で始まり子で終わる名前は縁起が良かったのかもしれない。川喜多も松竹時代は高橋貞二、佐田啓二に次ぐスターといわれていたが、男優の方は二で終わる名前が良いとされていた。
しかし自分が川喜多の名を知ったのは「実写版・鉄人28号」(60年)だったりする。彼のキャリアからすれば出演したのが不思議なくらい珍妙な作品である。おそらく唯一出演した子供向け作品がよりによって…。
さて、川喜多はこの映画では外科医の役だったが、60年代後半に引退した後は歯科医に復帰している。俳優になる前は歯科医だったのである。
大捜査網
突然だが、「踊る大捜査線」は近年大ヒットしたテレビシリーズ&映画で、「夜の大捜査線」(67年)はやはりヒットしたシドニー・ポワチエ主演の米映画、「大捜査線」(80年)は杉良太郎主演のある意味カルトな刑事ドラマ、「大非常線」(76年)は千葉真一主演で1クール弱で終了した刑事ドラマ、そして今回取り上げるのは65年の大映映画「大捜査網」である。特に意味はないが、ややこしいので並べてみた。
宇津井健と藤巻潤といえば「ザ・ガードマン」だが、この「大捜査網」は「ガードマン」がスタートする直前に公開されている二人が出演している映画である。ただし主演扱いは本郷功次郎で、本郷と藤巻そして丸井太郎が新人警察官で、その教官である警部が宇津井という役柄である。新人警察官といっても当時、本郷は26歳、藤巻は28歳、丸井にいたっては30歳であり、あまり初々しくない新人という感じだ。「ザ・ガードマン」では毎回のように重傷を負いながらも不死身のごとく復活する藤巻だが、この作品ではあっけなく?殉職してしまう。さて、丸井太郎だが彼が「図々しい奴」で人気を得たのは63年のことである。その後作品に恵まれず67年に自殺してしまったという のは割合有名な話だが、本来主役になるような風体ではない彼が主役として人気を得てしまったのが逆に悲劇を生んだといえるのではないか。そういえば、似た風体のキレンジャーこと畠山麦も仕事に行き詰まりを感じて自殺してしまったし。今さらながら合掌。
刑事くん・第5部
前項で書いたとおり、「刑事くん」の第5部(76年)は主役は星正人にチェンジされたのだが、その他のキャラは継続して登場していたようだ。名古屋章は勿論のこと、宮内洋、三浦友和、仲雅美そしてついには前主役の桜木健一まで登場することになる。正直この星正人版の「刑事くん」はその存在すら知らなかったくらいだから、彼らがレギュラーだったのかゲストだったのかはよく知らない(桜木はゲストのようだが)。これはあまり人気を呼べなかった為にとられた苦肉の策だったようだが、やはりシリーズはかわっても、「非情のライセンス」なら天知茂、「大都会」なら渡哲也、「はぐれ刑事純情派」なら藤田まことというように、「刑事くん」は桜木でなければならなかったのようだ。星正人版は26話で終了となり、「刑事くん」そのものも幕を閉じることになったのである。
ところで星正人とはいか にも芸名くさい名前だが、実は本名である。当時の東映イチ押しの新人で「暴力学園大革命」(75年)で主演デビューを果たしている。この「刑事くん」以外にも「大都会PARTⅢ」や「爆走ドーベルマン刑事」でも刑事の役を演じており、70年代後半は非常に勢いのある役者だったのだが、80年代にはいるとパッタリと見かけなくなったイメージがある。実際に引退したのは87年ごろのようだが、その後どうしているかは誰も知らない。いやもちろん周辺の人間なら知ってるだろうけれども。
刑事くん
「刑事さん」ときたら「刑事くん」である。説明不要かとは思うが前者は「でかさん」後者は「けいじくん」である。さて「刑事くん」だが、桜木健一が「柔道一直線」で得た人気の勢いをそのまま持ち込むような形で71年にスタートしている。結構有名なドラマだと思うが、個人的にはほとんど見ていなかった。長くやっていたような印象はあったが、3度の中断をはさみながら76年の第5部まで続いていたとは意外であった。まあ最近の番組でいえば「はぐれ刑事純情派」みたいなものか。
1部と2部(計57回)は繋がっており、先輩刑事が仲雅美だった前半を1部、立花直樹に替わってからを2部というように世間では分けているようだ。仲雅美は沖雅也のバッタ者のように思われている節もあるが、先に売れたのは仲である。立花直樹といえば「ジャンボーグA」(73年)の立花ナオキ役が有名だ。以前にも書いたが「ジャンボーグ」に合わせて芸名を変えたわけではなく、最初から立花直樹だったのである。彼は大麻事件で芸能界から姿を消している。3部は73年スタートで全55話である。何故52話でないのかは謎だ。ここでの同僚役は三浦友和で、私の記憶に残っているのはこのあたりである。確か先輩の役だったと思うが、三浦は桜木より実年齢は4つ下である。桜木は若く見えるタイプだが、三浦も大人びて見えるタイプではないのでどうだったであろうか。ご存知の通り三浦はこのあと、山口百恵とのコンビでブレイクしていく。4部は74年のスタートこちらも54話である。ここでの新先輩刑事は「V3」兼「ズバット」兼「アオレンジャー」の宮内洋である。風見ではなく風間刑事役だ。彼がもっとものっていた頃である。これらのシリーズすべてに登場するのが彼らの上司である時村役の名古屋章だ。彼の肩書きは何かと思えば、実は署長だったのである。係長や課長らしき人物はおらず、署長自ら三神(桜木)をどなっていたということになる。それとも署長が刑事課長もかねていたのだろうか。名古屋章といえば若い頃からまったく印象が変わらなかった。はっきりいえば老けていた。ちなみにスタート時は41歳だったのだが、とてもそうは見えなかった。
桜木シリーズはここで終了し、第5部は星正人にバトンタッチされることになる。そして桜木は「特捜最前線」へ向かっていくのであった。