警視庁物語・十二人の刑事
警視庁物語・上野発五時三分
「警視庁物語」シリーズは56年~64年にかけて年2,3本のペースで前後編も含めて(自分が調べた限りでは)24本もの作品が制作されている人気シリーズだ。捜査課長の松本克平、捜査主任の神田隆、長田部長刑事の堀雄二、林刑事の花沢徳衛、金子刑事の山本麟一はほぼレギュラーで、後は須藤健、佐原広二、今井健二らの登場が多い。そして、ほぼ年変わりで、レギュラー以外の主役的若手刑事(あまり若くない場合もあるが)が登場する。56年はデビュー当時は正義役もあった南原宏治(当時は伸二)、57年は『初代七色仮面』波島進、58年は『映画版月光仮面』大村文武、59年は『マイティ・ジャック』南廣、60年は『キリヤマ隊長』中山昭二、61年は『二代目七色仮面兼アラーの使者』千葉真一といった具合である。個人的にはCSで放映されたのを2,3本見た程度で、こんなに続いたシリーズだったこともよく知らなかった。
取り上げた「上野発五時三分」(57年)はシリーズ五作目で、共に61年にスタートする長期刑事ドラマ「七人の刑事」と「特別機捜査隊」のそれぞれの主役である堀雄二と波島進が同僚刑事として共演した作品である。堀雄二はおそらく、この作品のイメージから「七人の刑事」の赤木係長役に抜擢されたと思われる。波 島と神田隆、田中刑事役の佐原広二は「特別機動捜査隊」の初期レギュラーだ。ところで、この作品の犯人役は先日亡くなった多々良純である。そういえば、多々良も「非常のライセンス」では特捜部のベテラン吉田刑事を演じていた。とりあえず合掌。
特別機動捜査隊・ニューフェース編
前項でニューフェースの話題が出たが、これは昔はどの映画会社も採用していたシステムである。しかし以外とその詳細ははっきりしない。ネット上での話だが、出身者一覧が出てくるのは東映くらいなのだ。特に松竹などは藤岡弘くらいしか把握できていない。古い話だし、そういう資料ってあまり出回っていないのかもしれない。新東宝はスターレットという表現を使っていたが、その1期生(51年)は天知茂、高島忠夫、松本朝夫などである。同じ新東宝のスターでも宇津井健などは俳優座から、中山昭二などはバレエ団からの転身なので、そのあたりも話しをややこしくする。さて中山の話がでたところで「特別機動捜査隊」の刑事を演じた役者の話題である。
これは東映制作だからして当然、東映のニューフェース出身者は多い。それも意外に地味なメンバーである。前項であげた滝川潤、小嶋一郎の他には、第1話で妹尾部長刑事を演じていた佐原広二や刑事ではないが鑑識役の北峰有二などは東映ニューフェースの1期生である。他にも木川哲也や吉田豊明、白石鈴雄、割合名前が知られている者では倉丘伸太郎や「忍者部隊月光」こと水木襄なども東映ニューフェースの出身なのだ。ところで、東映という会社は51年に東横映画、太泉映画、東京映画配給の三社による合併で誕生したのだが、その中の太泉(おおいずみ)映画のニューフェース出身なのが波島進、南川直、そして藤島班の小杉刑事役だった三島耕である。しかし50年に募集したのが第1期ということらしいので、翌年合併してしまったということは太泉のニュフェースというのはこの1期だけということになると思われるので、ある意味貴重である。特に波島と南川は10年に渡って出演を続け、番組降板後まもなく引退してしまったところも同じである。
この太泉映画が後の大泉撮影所となるのだが「太」だったり「大」だったりややこしい。ところで三橋達也はこの太泉映画の大部屋俳優としてスタートしているらしい。ニューフェースとしてスター候補としてデビューする者もいれば、エキストラ同然から這い上がる者もいるのである。
特別機動捜査隊(映画版)
以前、テレビ版の特別機動捜査隊については取り上げたことがあるが、その時点ではCSでの放送は始まっていなかった。さすがに全話は保存されていなかったようで、第1話の後は117話まで飛んでしまった。つまり現在放映されているのは64年に放映されたものが中心だが、映画版「特別機動捜査隊」は2本制作され、いずれも63年に公開されている。何が違うかと言えば、それはもう出演者である。テレビ版の方の64年ごろのメンバーはほぼ立石班の五人で固定されており、波島進(立石警部補)が主任で、南川直(橘部長刑事)、岩上瑛(荒牧刑事)、轟謙二(桃井刑事)、滝川潤(岩井田刑事)といずれも漢字三文字名前のとても地味なメンバーである。波島以外は知らないという人も多いのではないだろうか。それに比べこの映画版のキャストだが、主任の秋山警部補の安部徹、以下のメンバーは織本順吉(倉本部長刑事)、南廣(井上刑事)、亀石征一郎(土屋刑事)、千葉真一(小松刑事)と当時でもそれなりにネームバリューのあった連中ばかりである。特に千葉真一は「七色仮面」を波島進から受け継ぎ、その後「アラーの使者」などにも抜擢されすでにヒーローであった。亀石征一郎はご存知の通り、約10年後に5番目の主任・矢崎警部補として特捜隊にレギュラー入りすることになる。ちなみに千葉と亀石は第6期東映ニューフェースの同期生である。テレビ版の滝川潤とたまに出てくる小嶋一郎(村上刑事)は第5期のニューフェース、映画版のゲストである中原ひとみ(1期)、大村文武(3期)、室田日出男、曽根晴美(4期)、第2作である「特別機動捜査隊・東京駅に張り込め」のゲストである小川守(8期)、新井茂子(6期)などもみんな東映ニューフェース出身だ。スタートは同じでも千葉のようにスターになる者や、小川守のようにすぐに引退してしまった者もいる。
ところで映画の方はやはり安部徹が主役ということになるのだろうが、どうみてもギャングのボスにしか見えないと思うのは私だけではあるまい。
七人の野獣
日活アクションといえば、石原裕次郎、小林旭、渡哲也、二谷英明、宍戸錠あたりの名前が挙がると思うのだが、丹波哲郎主演の日活アクションも存在する。それが「七人の野獣」(67年)である。丹波哲郎は新東宝を離れた後は東映のイメージが強いのだが、調べると日活にも東宝にも松竹にも出演している(テレビは東映制作が多いが)。さて「七人の野獣」だが、これは元刑事の丹波が特捜部の刑事だという男(宍戸錠)に依頼され、仲間の五人(内田良平、岡田真澄、高品格、郷瑛治、深江章喜)と原子力技師の救出と三億円の強奪を企てるという話である。七人というのは丹波たち六人と宍戸錠のことをいうのだろう。他の出演者は松原智恵子、安部徹などである。この作品には続編があり、同年に「七人の野獣・血の宣言」が制作されている。今度は単純に現金を強奪しようという話で丹波、岡田、高品、郷は前作と同様の役、役は同じだが内田良平は青木義郎に交代、前作では裏切り者だった深江に代わり小池朝雄が仲間に加わる。やはり強奪を決行するのはこの六人で、七人目は前作とは違う役で登場する宍戸錠のことをいうようだ。他の出演者は弓恵子、浜川智子(「プレイガ ール」の浜かおる)などである。それにしても、丹波、高品、小池、青木など後に刑事役で活躍する面々が多い強盗団である。
未見なのであらすじから抜粋したが、タイトルは物騒だが、野獣というほど野獣でもなく、コメディっぽい要素を含んだ作品のようである。
トップ屋
前項に続き丹波哲郎の話題である。この人の歴史を辿ってみると51年に新東宝に入社、しかしデビューは翌52年「殺人容疑者」という作品である。この時既に30歳という遅いスタートである。態度が大きすぎて一年間干されていたというエピソードは事実らしい。新東宝には59年まで在籍していたが、主役連発の宇津井健や天知茂、高島忠夫などを尻目に主演になることは一度もなかった。新東宝を退社することになったのも、新東宝の製作体制を批判した記事が載り、社長の大蔵貢に問いただされ、「この記事は俺の言ったとおりに書かれている」と言い放ったという。ようするに社長とケンカして新東宝を離れたのであった。そんな丹波がスターとなるきっかけとなったのは60年のテレビドラマ「トップ屋」ということになるだろう。未見なので詳細はわからないが、一匹狼の週刊誌記者が企業や社会に裏面を鋭くえぐる硬派なドラマということのようだ。彼を抜擢したフジテレビのディレクター五社英雄は「三匹の侍」でも彼を起用することになる。他の出演者は梅津栄、水の也清美、阿部寿美子などで、主題歌を丹波自身が歌っている。解説に「当時新東宝の大部屋俳優であった」という文もあるが、このドラマ放映時にはフリーだったようである。いずれにしろ40歳手前でやっとスターの仲間入りをしたのであった。ちなみにテレビはこれが始めてではなく、58年には「丹下左膳」で主役の左膳を演じたりしたこともあった。
ところで丹波哲郎(本名・正三郎)という芸名は会社が勝手につけたものらしいが、新東宝の後輩である伊達正三郎は知り合った丹波の薦めで新東宝のニューフェースに応募して合格したそうである。無論、芸名の正三郎は丹波の本名をもらったものである。当初は館正三郎だったが、伊達に改名したため、大映の悪役俳優であり伊達三郎とまぎわらしくなってしまった。まあ渡辺篤と渡辺篤史とかよりはいいかもしれんが。
コレラの城
先日、丹波哲郎が亡くなった。ここはやはり丹波哲郎を振り返らねばなるまい。自分が丹波哲郎を知ったのは、やはり「キイハンター」であったと思う。小学生になったかならないかくらいの時から認識していたように思う。しかし「キイハンター」は以前取り上げたし、「Gメン75」や「三匹の侍」、はたまた「大霊界」あたりではありきたりだと思い、その出演作を調べてみると、一際目を引くタイトルがあった。それが「コレラの城」(64年)である。しかもこの物騒なタイトルの映画は、丹波自身が監督(菊地靖と連名)・制作、そして主演を務めている作品だったのである。それにしてはほとんど話題になることもなく、知っている人もあまりいないのではと思われるこの作品、やはりタイトルからしてやばいのだろうか。
もちろん私も未見だが、コレラ自体を描いている映画ではないようだ。コレラにより廃墟化した城下町に砂金が隠されているとの噂が広がり、それを求めて様々な人間が集まってくる。その中の一浪人が丹波である。つまりコレラは終息した後なので、次々と登場人物が病原菌に犯されていくというような映画ではないようだ。だったら、コレラじゃなくても災害でも飢饉でも良いのではないかと思ったりする。他の出演者だが、ヒロインの佐代姫に鰐淵晴子、他に稲葉義男、河野秋武、悪役は山本麟一、そして南原宏治である。最後は丹波対南原の対決ということらしいので、簡単にいえば、正義のヒーロー丹波が悪を斬る痛快時代劇ということになるのだろう。そういえば「キイハンター」の第1話も丹波と南原の対決であった。
それにしてもタイトルからは想像できない普通な映画だと思うのである。
青春の海
前項の「青春の風」と一字違いの吉永小百合主演映画が「青春の海」(67年)である。前項と同じようにタイトルだけで青春映画であることがわかるが、内容は全然想像できない。というわけで、タイトルのみでチョイスしたので、当然見たことはない。あらすじによると吉永小百合と和泉雅子が姉妹であり、隣家が歯科医院なのだが、そこは男ばかり四人兄弟で、そのメンバーが凄い。長男が川地民夫、次男が渡哲也、三男が和田浩治、四男が山内賢と山内を除いてみんなアクション路線の兄弟である。そして彼らの父親が笠智衆で、日活作品にでているのは結構珍しい。ちなみに川地が歯科医で、渡は当然?やくざという設定である。吉永がこの中で誰と絡むかといえば、やはり渡哲也である。最後はついて来ようとする小百合をおいて渡は去っていくらしい。まあ当時の渡のキャラからしてラブラブハッピーエンドは似合わないだろう。小百合はこの作品では教師の役なのだが、問題児タケシ君を演ずるのが当時16歳の小倉一郎である。今では痩せたおじさんだが、当時も痩せた少年であった。
この作品、前項の「青春の風」とタイトルを入れ替えても特に問題はないと思う。しかし印象に残りにくいタイトルだなあ。
青春の風
前項で吉永小百合の話題が出たところで彼女が主演の映画を一つ。明らかに青春映画とわかる「青春の風」(68年)を取り上げてみる。吉永小百合の他にも和泉雅子、山本陽子のトリプルヒロインという感じである。相手役は毎度のごとく浜田光夫だが、川口恒、川地民夫、そして当時日活の杉良太郎も登場する。ちなみに役名は岩上岩太だ。今の杉だったらこの役名だけで、出演を拒否しそうである。いや以前にも書いたが日活を去った後は、ほとんど映画出演がないのだ。彼らより扱いが小さいがアクション映画のイメージが強い藤竜也も登場する。他には小沢栄太郎、岡田真澄の実兄E.H.エリック、イーデス・ハンソンといったお馴染みの顔が見られる。内容はまあどうということはない、サユリストが彼女を見て楽しめばいいといった作品である。
君たちがいて僕 がいた
「あなたがいたから僕がいた」は郷ひろみの歌。「君たちがいて僕がいた」(64年)は東映の青春路線映画である。日活系のチャンネルNECOで東映の作品が放映されたので驚いたが、この作品は東映が日活のような映画をやろうとした作品といえる。主演は舟木一夫、ヒロイン役は本間千代子で日活のエース吉永小百合の役目を担ったのが彼女である。本間千代子は当時のアイドル的存在でレコードも30枚以上出している。世界の王貞治が歌唱力はゼロであることを露呈した「白いボール」を彼とデュエットしているのも彼女である。彼らの同級生役にスパイダースに入る前の堺正章、映画はこれ一作だけらしい佐藤政一、教師役は千葉真一で彼が出ているので東映作品という気がする。もちろんアクションなどはない。他に宮園純子、ベテランスターの高峰三枝子、佐野周二なども登場する。チョイ役では住田知仁つまり風間杜夫の名も見える。どこに出ているかよくわからんかったが。内容はさておき主人公舟木の役名が佐藤洋、堺の役名が田中彰ってもう少し考えてもいいんじゃないのって思った。同姓同名が何人いることか(狙いかもしれないが)。
舟木・本間コンビでは同年「夢のハワイで盆踊り」という作品がつくられているのみで、翌年は本間の相手役は西郷輝彦だったり梶光夫だったりと、いずれも当時の人気歌手とのコンビでに作品が何本か制作されているが、やはり東映にこの路線は合わなかったようで、本間千代子をヒロインとした青春映画路線はわずか二年足らずで終了している。本間も人気はあったのだが、やはり吉永小百合相手では分が悪いといえよう。何でも手を出す東映だが、青春ドラマと人情喜劇はニガ手のようである。