青い野獣
フランキー堺の喜劇映画が4回続いたが、今回はガラリと変わって東宝の「青い野獣」(60年)である。ジャンルはピカレスクロマンということになろうか。
主演は仲代達矢で、この前年である59年には「人間の條件」や「野獣死すべし」で主演俳優となっていた。ただ本作はあまり語られることがない作品である。仲代演じる黒木は学生時代は左翼運動に身を投じていたが、半ばで抜けあっさりと出版社「婦人春秋」就職していた。数年で組合の副委員長に就任し、小川社長(田崎潤)を相手に賃上げ交渉を行っていたりしていた。しかし、裏では組合の情報を社長に流したりして出世を目論んでいたのである。そもそも入社のきっかけも学生運動の同志だった良重(淡路恵子)がアルバイトに家庭教師をしていた先の小川社長夫人・頼子(丹阿弥谷津子)と関係を結びその口ききだった。黒木は組合を分裂させ、財界の大物江藤(千田是也)に近づく。その娘である文子(司葉子)を脅迫し、暴力で肉体関係を持った。黒木の虜になった文子は婚約を解消し黒木と結婚すると言い出した。全てが黒木の思い通りにいったと思われたのだが…。
本作で注目した俳優が二人いる。まずは西條康彦。西條と言えば「ウルトラQ」での戸川一平役が有名。というか他に思いつかない人も多いのでは。映画では基本的にはチョイ役がほとんどだが、本作では黒木の後輩の大学生・西秀夫を演じており、結構出番もセリフも多いのである。これは同じ堀川弘通監督の前作「黒い画集 あるサラリーマンの証言」で果物屋の店員役の西條が割合長いセリフを一発OKしたことがきっかけだったようだ。彼の演じた西は、一見黒木に尻尾を振っているが裏では冷ややかに見ているという役だ。本人も「映画論叢」のインタビューで、一番思い入れのある出演映画は「青い野獣」だと語っている。
もう一人は組合員の一人井本役の鈴木和夫である。正直名前はよく見かけていたが顔は把握していなかったところ、初めて認識できた。それにしても当時なら全国に同姓同名の人が百人はそうな名前である。この人も基本的にはチョイ役がほとんどだが、本作では社長に「文句あるか」と突っかかていったりするのである。そしてネタバレになるが、ラストで黒木を刺すのが彼なのである。普通に東宝の大部屋役者と思っていたが、俳優座養成所の出身で、60年に俳協入りし、61年に東宝と契約したとwikiにはある。これが正しいとすれば、本作の時点では東宝所属する前だったことになる。東宝大部屋の佐田豊が黒澤映画「天国と地獄」で誘拐される子供の父親という大役を演じたが、鈴木にとっては本作が一番の大役のような気がする。ただ、テレビの出演作を調べると前述の「ウルトラQ」では第2話「五郎とゴロー」の五郎役だったり、「仮面ライダースーパー1」(80年)では、悪の組織「ジンドグマ」の幹部幽霊博士を演じたりしていた。自分は「スーパー1」をほぼ見たことがないので、全く知らなかった。東宝特撮にも結構出演しており、特撮界隈では知られた存在なのかもしれない。
「大怪獣バラン」(58年)ではヒロインだった園田あゆみが社長の若い愛人役で出演している。他に中谷一郎、児玉清(小玉清とクレジット)西村晃、滝田裕介、石川進、稲葉義男、小栗一也など。
喜劇 誘惑旅行
すっかり週一ペースになってしまったが、せっかくGWなので、もう1本くらい書くことにする。
というわけで、旅行シリーズからもう一作くらいということで第9作となる「喜劇 誘惑旅行」(72年)を取り上げたいと思う。こちらはタイトルに「喜劇」がつく。
今回、フランキー堺演じる大沢泰三はひかり号の専務車掌である。しかし、本作においてはそれはあまり関係がない。今回の舞台はほぼフィリピンだからである。最初、音声もつけず部分的に流し見したのだが、夫婦交換プレイの話かと思ってしまった。後からあらすじを見ると全然違っていた。
泰三は妻の弘子(倍賞千恵子)とクイズ番組に出演。ほとんど彼女の力で優勝し、賞品であるフィリピン旅行を勝ち取ったのである。しかし、スポンサーの都合で招待されるのは弘子一人となってしまう。そこへ、フィリピン航空のスチュワーデス・マリ(川口まさみ)が訪れ、弘子が羽田~マニララインの開設十万人目の客となるので、夫婦を一週間のフィリピンツアーの招待すると言う。マニラ空港へつくと番組スポンサーの駐在員三宅(佐藤允)が待っており、招待は一人だけだからと弘子のみを連れた行く。泰三は機内で知り合った清美(尾崎奈々)を弘子の身代わりにして、マリの案内で市内観光へという流れである。
冒頭のクイズ番組で司会役は何故か森次浩司(後に康嗣)で、ゲスト歌手が安倍律子(後に理津子)である。当時子供ながらに安倍律子は結構好きだった。小野ヤスシと噂になったような記憶があるが間違いかもしれない。現在も歌手活動は続けているようで、今年に入ってからもシングルが発売されているようだ。芸名は本名の熊木からベアちゃんと呼ぶ友人がおり、それをひっくり返して安倍になったという。
川口まさみは「ビーバー」と言ったほうがわかる人もいるだろう。ハーフっぽい顔立ちだが、両親とも日本人だという。当初はモデルで、後にラジオパーソナリティーに抜擢。その3人で「モコ・ビーバー・オリーブ」としてシングルも出している。モコは高橋基子、オリーブはシリア・ポールである。ビーバーというのは中学時代のあだ名だったそうで、本作が映画初出演だったようだ。
逆に最後の映画出演となったのが尾崎奈々である。当時の松竹の若手看板女優だが、個人的にはあまり馴染みがなくパッと見て尾崎奈々と判別ができない。彼女が出ていた松竹青春映画を見るような年齢ではなかったし、ドラマもレギュラーで出演していたものを見たことがなかった。見たことは無いが「娘たちはいま」(67~68年)というドラマでは八千草薫、吉永小百合、前回取り上げた野添ひとみと四姉妹を演じている。翌73年に松竹のカメラマン(後に監督)だった石原興と結婚して引退してしまうが(77年に一時復帰)、出会いは石原を有名にした必殺シリーズ(必殺仕掛人)ではなく、浜畑賢吉主演の「紫頭巾」(72年)だったようだ。
ちなみに、安倍律子、ビーバー、尾崎奈々はいずれも48年生まれである。
佐藤允のほか二瓶正也など東宝出身者の顔が見えるが、大映は潰れ、日活はロマンポルノへ、東宝は今も存続しているが俳優の専属制を辞めた頃である。他の出演者は森田健作、左とん平、丹下キヨ子など。
協力フィリピン航空、マニラヒルトンとあるようにフィリピン観光を促進する映画である。
縁結び旅行
今回もフランキー堺なのだが、時代は十数年経過する。日活から東宝に移り「社長シリーズ」などに出演。そして次は松竹へ移り、すぐにヒットシリーズとなったのが「旅行シリーズ」(68~72年)である。個人的にはフランキーと言えば、松竹のイメージが強い。全部で11作あるようだが、今回はその中から第5弾「縁結び旅行」(70年)をチョイスする。理由はとりあえず見たからである。タイトルの頭に「喜劇」が付くものと付かないものがあり、本作は付かないようである。勿論、本作も普通に喜劇なのでその基準は不明である。
主演のフランキーが鉄道員であることは共通だが、役名も設定も毎回違う。本作の舞台は播州赤穂駅ということで、フランキーが演じる主人公も赤穂浪士の一人である赤垣源蔵の子孫らしい赤垣源太といい、同駅の旅客係である。ちなみに赤垣源蔵の実際の名は赤埴重賢といい、源蔵は通称で、「忠臣蔵」の物語の中では赤垣源蔵と呼ばれているということらしい。「埴」と「垣」の字が似ているからだろうか。
このシリーズも寅さんではないが、毎回のようにマドンナが登場するが、今回は金井克子(当時25歳)である。当時は彼女単体の人気と言うよりは、西野バレエ団五人娘のリーダー(最年長)としての人気のような気がする。歌手デビューは62年だが、まだ大きなヒット曲はない。大ヒットとなる「他人の関係」は73年の話である。彼女は駅長(長門勇)の娘で郵便局に勤めているという役柄だ。源太は彼女とデートに漕ぎつけるのだが、邪魔しに?現れるのが倍賞千恵子である。今回は特別出演扱いとなっている。
そして、もう一人。シリーズ2作目の「婚前旅行」(69年)ではメインヒロイン役だった野添ひとみ(当時33歳)である。追いかけられる側だったのが、今回は追いかける側に。つまり彼女の方がフランキーに夢中という設定だ。そば屋の店員で、ど近眼のため分厚いメガネをかけている。メガネを外したら超美人というのはよくあるパターンだが、彼女は登場して直ぐにメガネを外し、素顔を見せており美人であることは判明している。しかし、フランキー演じる源太は金井演じるみち代に夢中の為、彼女は眼中にないのである。役名は「おかる」ちゃん。通称だと思われ、松竹のサイトにある解説には「かおる」となっているので、それが本名だと思われる。
ネタバレになってしまうが、最終的に源太はおかるちゃんと結ばれるのである。と言うより結婚する羽目になってしまうという表現の方が正しいだろう。要するに夢の続きと勘違いした源太が「夢ならいいか」と彼女と一夜を共にしてしまうのである。
見ている人は本命じゃなくても、野添ひとみならいじゃないかと思ってしまったりする。これが、今回はフランキーの妹役で出演している悠木千帆(樹木希林)辺りだったら、また違う感覚だろうなと思った。
とまあ、準ヒロインと言える野添ひとみだが、本作での扱いは低めでクレジットも6番手だ。大映のイメージが強いであろう彼女だが、デビューは52年で松竹なのである。川口浩との交際が始まり、彼が親の力(川口松太郎は大映の重役)を使い、彼女を大映に移籍させたのである。そして、60年に二人は結婚する。彼女が松竹作品へ出演するのは前述の「婚前旅行」が十数年ぶりだったのではないだろうか。彼女には双子の姉がおり、それが野添和子で、彼女の付き人を長く勤めた後に大映テレビ室のプロヂューサーに転身するのである。ちなみに、ひとみの本名は元(もと)といい和子は本名なので字面では双子感を感じないと思ってしまった。
他の出演者だが、伴淳三郎、ミヤコ蝶々、大村崑、牧伸二、鶴岡雅義と東京ロマンチカなどである。
宇宙人フランキー
フランキー堺が続くのだが「宇宙人フランキー」(57年)である。
牛乳屋の次は宇宙人ということだが、監督も違うし出演者もほぼ違うので、特にシリーズというわけでもなさそうだ。フランキーが一人で何役もやるのだが、主には五役くらいであろうか。
主人公は境田栄という煙突掃除を仕事にする天体好きの男である。彼のみが地球人で、彼にそっくり顔かたちをしているのが全て宇宙人という設定だ。その名もフランキー衛星国の人工衛星人。いやいや人工衛星は星じゃないだろうとツッコミを入れたくなるところだが、まあコメディだし、ちゃんとしたSF作家が書いているわけでもない。ちなみに、人工衛星の第1号、つまりスプートニク1号が打ち上げられたのが、この57年なのだが本作が公開された時点ではまだ打ち上げられていないので、誰もよくわかってなかったのかも。
その人工衛星人の中にドラマーのフランキー堺もいたりする。彼の本職でもあるドラムを披露する場面もあるのだ。
フランキー以外の出演者だが、菅井一郎(木下博士)、高友子(木下愛子)、安部徹(安部記者)、藤代鮎子(艶子)がメインどころで、他に清水将夫、浜村純、高品格、柳谷寛といったところ。あまり日活という感じの人が出ていない。高品格くらいであろうか。
ヒロイン役の高友子は新東宝のイメージが強いが、56~58年にかけては多数の日活作品に出演しており、本作のようなヒロイン役も何本か存在する。多分、日活に所属していたと思われるが59年に出演記録がない。詳しいことは不明だが、テレビドラマに多く出演していたため、映画からは干されたという記事もあった。それで新東宝に移籍ということになるのだろう。調べて見ると、新東宝への出演は実質60年のみで、それも本体ではなく富士映画のみである。富士映画も社長は大蔵貢だが、副社長は実弟の大蔵敏彦つまり近江俊郎、取締役に息子の大蔵満彦が就いている。知っている人も多いかもだが、高友子はこの満彦と62年に結婚して引退することになる。60年末で大蔵貢は新東宝社長を退任したので彼女も60年のみの出演となったのではないだろうか。
博士役の菅井一郎だが、実は本作の監督は彼なのである。当時50歳で、「泥だらけの青春」(54年)に続く2本目の監督作品だが、監督作はこの2本のみであった。
他に「ギャグ」担当として永六輔、神吉拓郎の名がクレジットされている。記者役の安部徹があの怖い顔で頑張ってコメディをしているのである。「解説」要するにナレーターが高橋圭三で、まだ局アナ時代のようで(N・H・K)付きでクレジットされている。
本作はノンクレジットの出演者も多く、前述の永は記者役で出演しているが出演者としてはノンクレジット。上野山功一、筑波久子などもチョイ役ではあるがノンクレジットだ。
冒頭のおもちゃサイズのロケット打ち上げからショボい感じが満載なのだが、当時はあんなものだろう。ネタバレを一言で表現すると「夢オチ」である。
牛乳屋フランキー
再び日活映画に戻るが、時代は古くなり56年の「牛乳屋フランキー」である。監督は最近ここでも紹介した「若くて悪くて凄いこいつら」「危いことなら銭になる」(62年)と同じ中平康で、この56年に監督デビューした中平の4作目にあたるようだ。
ちなみに、本作は長いこと原版の一部が欠落していたため幻の作品扱いになっていたようだ。何故か湯河原の図書館で全長版が発見され、その後ソフト化もされている。
タイトルですぐわかると思うが、主演はフランキー堺である。元々ラジオでの放送劇だったものを映画化したもので、提供は森永乳業である。本作でも登場する牛乳はもちろん森永だ。原作は当時売れっ子だった木下徹(キノトール)と小野田勇である。
ストーリーだが、フランキー演じる六平太が盛大に見送られながら山口県から上京。未亡人の香苗(坪内美詠子)が営む杉牛乳店で住み込みで働くことになる。ライバルのブルドック牛乳店と張り合い、次々と顧客を増やしていくというのが大筋だ。当時既にブルドックソースは存在していたが、商品が違うし特にクレームなどはなかった(かどうかは知らない)。
ヒロイン役は南寿美子。彼女は新東宝スターレット1期生であり、天知茂、高島忠夫、三原葉子などが同期にあたる。54年に日活が「復活」すると、彼女も日活へ移籍したのである。ヒロインと言ってもフランキーと結ばれるとかではない。お相手は宍戸錠である。まだ豊頬手術前なので、一瞬誰かわからないかも。わからないと言えば、杉牛乳住み込みの先輩店員が小沢昭一であることもすぐにはわからなかった。彼は裏切ってブルドック牛乳へ行ってしまう役である。店員ではないが、杉牛乳に下宿しているの大学生役が市村俊幸だ。当時フランキーのコンビ的な存在でブーちゃんの愛称で呼ばれていた。つまり太っていたのだが、後の彼は別人のように痩せてしまう。自分などはその痩せた姿の方が印象に深い。
クレジット上でフランキー、南に続く3番手なのが、意外にも利根はる恵である。確かに出番やセリフは多い方だが、ブルドック牛乳の店主(柳谷寛)の愛人という役柄。演技はうまいが、特に美女というわけではない。
松竹、新東宝などを経て、日活の復活2作目「かくて夢あり」(54年)に顔を出しており、その後専属契約を結んだようである。当時の扱いは大きく、3~4番手でクレジットされることも多かった。70~80年代でも彼女の名前はよく見かけた気がするが、いつも市井の人という感じで重要な役をやることはほぼなかったと思う。
西郷隆盛ならぬ南郷隆盛を演じるのが沢村国太郎。長門・津川兄弟の父親である。名前だけで実際に見たことないなと思っていたが、60年に脳卒中で倒れて事実上引退となってしまっていたのである。
柳谷寛や中原早苗もその若さに驚く。また、丹下キヨ子、織田政雄、西村晃、岡田真澄、水の江滝子、ドクトル・チエコ、前述のキノトール、小野田勇が特別出演。ドクトル・チエコは当時話題の性医学評論家で、キノトールの妻でもある。本作でも二人は夫婦を演じている。
紙芝居昭和史 黄金バットがやってくる
最近、日活映画が続いていたので、ちょっと他社を入れて見ようと思い東宝映画で「紙芝居昭和史 黄金バットがやってくる」(72年)である。製作はややこしいのだが、東宝映画であって東宝ではない(配給は東宝)。東宝映画は東宝傘下の製作プロダクションで、その第1回作品が本作なのである。ちなみに、現在はTOHOスタジオという名称になっている。
タイトルだが、ウィキペディアなどでは「紙芝居昭和史」はついていなかったりするのだが、実際のタイトルバックには付いているのでそれに従うことにする。「黄金バットがやってくる」だけだと「黄金バット」にそんな映画あったっけ?ということになりそうだ。有名なのは東映製作の「黄金バット」(66年)であろう。千葉真一が主演だが、ヤマトネ博士役であり、バットの正体というわけではない(そもそもバットは変身ヒーローではない)。アニメと同じ主題歌だが、映画の方が先でアニメは翌67年からの放送なので、アニメの方が映画の主題歌をそのまま使用したのである。実はもう1作「黄金バット 摩天楼の怪人」(50年)という映画が存在していたようだ。過去形なのはこの作品のフィルムは行方不明とかではなく既に存在しないなのだという。監督は新東宝で活躍した志村敏夫で、出演は上田龍児、川路龍子、杉寛、清水将夫、美空ひばりなど。
自分の世代だと「黄金バット」はアニメのイメージで、さすがに紙芝居のバットは見たことはない。そもそも街頭でやっていた紙芝居を見かけたことはあったと思うが、しっかりと見た記憶がない。
さて「黄金バットがやってくる」だが、原作は「黄金バット」の作者でもある加太こうじの自伝的小説である「紙芝居昭和史」である。「黄金バット」の元祖と言える作品は永松健夫が「黒バット」の続編として書いたものらしいが、永松が転職した為、加太が代わりに書くようになったのである。その為が前述の東映版映画やアニメでは原作は永松健夫、監修が加太こうじとなっている。加太の本名は加太(かぶと)一松だが、働かない父に反発して尋常小学校時代には「かた」を名乗っていたという。そのまま「かぶと」だったらカブトコウジ→兜甲児で「マジンガーZ」の主人公と同じ読みになっていた。
さて、本作の出演者だが小林桂樹(49)、藤岡琢也(42)、小沢昭一(43)の当時40代トリオがメイン。スタートは昭和10年(1935)となっており、そこから現代(1972)までを描く構成。主人公は小林なので彼が加太だとすると年齢的に無理がある。加太は1918年生まれなので当時17歳で、50手前の小林では無理過ぎる。実年齢より若く見えないし。原作はわからないが、本作では人物設定を変えていると思われる。紙芝居屋の中で一番若そうな石川博演じる片山が加太にあたるのではないだろうか。加太と言えば、水木しげるの師匠としても知られるが、高橋長英演じる若者の役名が茂男といい彼が水木に当てはまりそうである。
他の出演者だが、北林谷栄(やはり婆さん)、紀比呂子、市川和子、小島三児、梅津栄、上田忠好など。
危いことなら銭になる
前回の「若くて悪くて凄いこいつら」の三カ月後に公開されたのが「危いことなら銭になる」(62年)で、前回は触れてないが監督は同じ中平康である。タイトルは「危い」と書いて「やばい」と読ませる。「やばい」というと若者言葉っぽいが、江戸時代には「やば」という言葉はあり、明治時代には形容詞化していたという古くからある言葉だそうだ。
主題歌は映画タイトルと同名で、作詞が谷川俊太郎というのは「若くて悪くて凄いこいつら」と同じである。三宅光子という人がバラード調で歌っているが、「危いことなら銭になる」の部分だけ曲調も変わり数名(おそらくキャスト?)で叫ぶのである。余談だが、本作の翌月に国産テレビアニメ第1号「鉄腕アトム」がスタートする。主題歌の作詞は谷川俊太郎である。
でそのキャストだが、同じ監督のあまり間をおいていない次作なら似たような顔ぶれになりそうなイメージがあるが、ガラリと変わっており今回は宍戸錠、長門裕之、浅丘ルリ子がメインとなっている。主人公たちの職業はいわゆる「事件屋」で、ガラスのジョー(宍戸)、計算尺の哲(長門)、ダンプの健(草薙幸二郎)が登場する。普段は互いを出し抜こうとする関係性であるが、最終的には協力する。
原作は都築道夫「紙の罠」で、紙幣印刷用の紙が大量に盗まれ、それを使ってニセ札を作ろうとする悪玉たちと事件屋たちの間で、ニセ札の原版作りの名人(左卜全)の争奪戦になるというのが大筋。その悪玉たちと繋がっているビルで電話番のアルバイトをしていたのが女子大生のとも子(浅丘)なのである。ジョーのせいでアルバイトをクビになったことから無理矢理彼の助手となる。浅丘がこういったアクティブなお転婆娘を演じるというのは珍しい気がする。中平は俳優ではない人物(岡本太郎、加藤芳郎、東郷青児など)を起用するなど意外なキャスティングをすることで知られており、この浅丘の役や宍戸や長門と肩を並べる役に草薙幸二郎を起用しているのも意外と言える気がする。
他のキャストだが、悪のボス(社長)が浜田寅彦、その両脇に控える若いのが郷鍈治と平田大三郎、子分たちに野呂圭介、玉村駿太郎、榎木兵衛そして中尾彬(目立たない)、他に藤村有弘、武智豊子、山田禅二、井上昭文などである。
コメディ要素の強いアクション映画だが、死ぬところだけ妙にリアルな感じ。冒頭で刺殺される二人の運転手(野村隆、大路達三)やラストで銃撃戦になり、悪玉たちは全員事件屋によって射殺されるのである。普通に大量殺人だが、真面目に考えてはいけないのだろう。
宍戸錠が劇中で乗っている前が二輪、後ろが一輪の三輪車はドイツのメッサーシュミット。戦闘機のイメージが強いが一時期自動車も製造していた。64年には自動車製造から撤退したらしい。長門の使う計算尺だが、棒状のタイプは40年程前に生産中止になったようだ。自分もこれで計算をした記憶はない。
若くて悪くて凄いこいつら
今回も高橋英樹である。前項の「星の瞳をもつ男」の翌月に公開されたのが「若くて悪くて凄いこいつら」(62年)である。覚えづらいタイトルだなと思うのだが、原作は日活作品ではあまりない柴田錬三郎なのである。それに柴錬と言えば時代作家のイメージが強いが、本作は時代劇ではないのだ。アクション映画の部類に入ると思うが原作はどうか知らんが、ほとんどコメディといえると思う。
髙橋英樹の調子っぱずれなタイトルと同名の主題歌で始まる本作だが、作詞は谷川俊太郎である。前項では、それほどヘタではないと思った高橋の歌唱だが、本作ではヘタクソに聞こえる。まあ上手に歌い上げるような曲ではないけれども。
冒頭、オープンカーを運転する浩(高橋)の後ろ姿。姿は見えないが後部座席から俊夫(和田浩治)と新子(和泉雅子)の声。どうやら俊夫が新子の服を無理矢理脱がせているようだ。左ハンドルなので外車だとわかる。本作ではダンプとパトカーを除き登場する車は全て外車なのである。ベンツはすぐわかるのだが、他は多分アメ車でクライスラーかフォードあたりだろう(適当)。
山道でセーター1枚の新子を置き去りにする二人。こんな目にあっても新子はこの後も彼らとつるみ続けるのである。そこへ通りかかるベンツ。運転していたのは政界の大物・佐倉(清水将夫)で、新子を拾い軽井沢の別荘に連れていった。後から新子を探しに来た俊夫がその別荘で彼女を発見。そこへ怪しげな二人(榎木兵衛、青木富夫)が訪ねてくる。その場にいた俊夫、新子と言い争いになり、俊夫が足を撃たれてしまう。付近に待機していた浩が車で彼らを追い駈ける。追いつくと、車の中に火炎ビンを投げ込むのである。火だるまになる二人。ちなみに、その一人青木富夫だが、戦前は「突貫小僧」の芸名で小津映画などで活躍した名子役だった役者なのである。成人したらただの人というか、セリフもないような端役ばかりになり、今回の通称・ガイコツはかなり目立つ方の役であろう。
こうして佐倉と出会った三人だが、彼は自殺を考えていたのである。しかし死んだはずの孫娘・圭子(進千賀子)が生きており財界の黒幕に監禁されていると判明する。 圭子救出の条件として要求されたのは、財政界の汚職を記録した極秘文書「佐倉メモ」。 浩たちは佐倉を守り、圭子を取り戻すため、大学の仲間である和正(山内賢)と徳子(清水まゆみ)も率いれ五人で悪に立ち向かって行くのである。というようなストーリーだが、ただの大学生なのにヤクザまがいの連中にビビることもない。全員大学生設定だが、実年齢で20歳超えは清水だけ(22歳)。高橋と山内は19歳になる年齢だが、和田は入社は早いがまだ17歳、和泉は15歳である。
浩は孤児だが、親の遺産と株で自由に暮らすという設定。和正が暮す綾小路家は実際に大金持ちで、その伯母さまを演じるのが北林谷栄で当時51歳だが、80くらいに見えるようなメイクを施している。新子の母親役が宮城千賀子で、当時40歳。「女の60分」の印象が強く、こういう艶っぽい感じの時もあったんだなと改めて思った。進千賀子は本作が実質的なデビュー作となる。それなりに出番もあるのにクレジット上の扱いは小さい。ちょっと前までは主役もあった葉山良二だが、本作では六番手扱い。彼等の敵だか味方だかな通称・眠狂四郎という殺し屋を演じている。まあ柴錬の原作なので。
他にも二本柳寛、安部徹、三津田健、草薙幸二郎、細川ちか子、武藤章生、野呂圭介など。武藤はヤクザまがいな連中の一人で通称「笑い屋」で、野呂は珍しく警官役である。
星の瞳をもつ男
日活映画が続くが、今回は高橋英樹である。高橋英樹と言えば「男の紋章」(63年)を始めとした日活任侠映画のスターというイメージだが、今回はその路線に行く前の青春アクション映画「星の瞳をもつ男」(62年)である。
高橋英樹は高校在学中に第5期日活ニューフェイスに合格し、61年に17歳でデビューしている。同期となるのが中尾彬、竜崎勝(高島史旭)などだが竜崎は数本端役で出演した後に退社し、俳優座養成所へ。中尾は当時の雑誌では合格者に名前がなかったが、後に編入されたらしい。
翌62年に赤木圭一郎の急死に伴い「激流に生きる男」の主演に抜擢される。そこから主役スターの道を歩くことになり、その三か月後に公開されたのが「星の瞳をもつ男」である。高橋は当時18歳で、ヒロインの吉永小百合が17歳、山内賢が弟役だが実際は高橋と同じ18歳で誕生日も山内の方が早いのである。
高橋英樹と吉永小百合にあまり共演のイメージがないが、前述の「激流に生きる男」がこのコンビだし、翌63年の「伊豆の踊り子」もこのコンビである。ただ、高橋が任侠路線に行ってからは共演が減り、結果としてデビュー初期の頃に集中している形となったのである。
本作では、高橋演じる榊英司が刑務所から出所してきた所から始まるので、英司の設定年齢は22歳以上ということになると思う(刑期は約2年で少年院ではないので)。実際18歳には見えず大人っぽくて23~24という感じであろうか。英司は元々働いていた自動車工場の娘である冴子(吉永)と再会し、またそこで働くことになる。一方、英司が傷害事件を起こすきっかけとなった弟の光郎(山内)は人気歌手榊ミツオとなっていた。その恋人がジャズ喫茶などで歌う歌手の峰かおり(田代みどり)である。英司は偶然、音楽事務所の社長千紗(吉行和子)に見いだされ、光郎と同じ歌手の道を歩むことになる。英司の人気は光郎を越えるようになり、兄弟間にしこりが生まれるようになる。
というような話なのでアクション映画なのだが、主題歌挿入歌合わせて8曲ある歌謡映画だったりするのだ。山内は歌唱に定評があり、後に日活バンド「ヤングアンドフレッシュ」のボーカルも務めるくらいなので3曲、田代みどり(当時14歳)は元々歌手なので2曲、高橋も主役なので2曲披露している。ちなみにこれは3万を超える応募作品から選ばれたもの。高橋が歌っているイメージがあまりないと思うが、初期の頃は結構歌っており、ヘタというわけではない(うまいとも言えないが)。意外なのは吉永小百合で、ヒロインの時はだいたい歌っているイメージだが、今回は高橋の伴奏者に徹しており歌うことはない。
他の出演者だが、北村和夫、深江章喜、杉狂児、賀原夏子、富田仲次郎、高城淳一、土方弘、中村是好など。深江章喜とは、高橋がテレビ時代劇の主役スターとなってからも「ぶらり信兵衛道場破り」「桃太郎侍」などでも共演が続くことになる。
ネタバレになるが、本作のラストで英司とミツオは和解し、めだたしめでたしとなるのだが、二人のステージ上でのやり取りにはみんな驚くのではないか。普通なら二人で見事な歌唱を披露して拍手喝采で終わりそうなものだが、二人で食料品(そばめん、パン、小麦粉、卵など)のぶつけ合いを始めるのである。現代なら食べ物を粗末にするなと抗議殺到となるところだが、20世紀の時点ではコントなどでよくやっていたことだ。にしても、本作では唐突過ぎて驚いてしまうのである。ちなみに兄弟デュエットのタイトルは「兄弟仔豚」という。
七人の野獣 血の宣言
もう一作、江崎実生監督作品から「七人の野獣 血の宣言」(67年)である。脚本も江崎が担当している。
「七人の野獣」(67年)の続編なのだが、今一つ詳細が不明な部分が多かったりする。「血の宣言」の方はスカパーで放送されたり、YouTubeで公開されたりしているのだが、前作はどちらも未公開のようなのである。そのせいか、当時のポスターには真理アンヌの名前はあるが、実際に出ているのか不明という感じになっていたりするのだ。ここで言う「七人」とは丹波哲郎(木戸)、宍戸錠(佐東)、内田良平(片山)、岡田真澄(辺見)、高品格(芹沢)、郷鍈治(スケコマシの鉄)、深江章喜(金本)のことを言うようだ。高品と郷は兄弟設定だが、実の兄弟か兄弟分なのかははっきりしない。実の兄弟なら似てなさすぎる。彼等が某国所有の別荘にある(らしい)三億円を奪おうとするお話で、他に松原智恵子、安部徹、柳瀬志郎、江角英明などが出演している。
で続編の「血の宣言」で、こちらは見たのだが、タイトルから想像されるようなハードなアクション作品ではない。一言でいえば、空回りなコメディ作品とでも言うのだろうか。これが前項「太陽西から昇る」と同じ人の監督作品なのかと思うほど作風が違う。思わず苦笑してしまうような場面の連続なのである。
今回の「七人」は若干の変更がある。丹波、岡田、高品、郷は前作同じ役のようだが、片山役は内田良平から青木義朗に変わっている。青木といえばどうしても「特別機動捜査隊」での三船主任のイメージが強く、ほとんどニコリともしない鬼刑事の印象だ。しかし、本作ではかなりコミカルな男で、自分的には見たことのない青木義朗だ。彼がバナナの叩き売りをしている場面から映画は始まるのだ。新顔が彼等と留置場で出会う小池朝雄(太田)である。前回は「七人」の深江章喜も出演しているのだが、今回は別役で悪党側である。それにしても、丹波、青木、高品、小池など後に刑事役として活躍する人が多い。これで六人なのだが、残る一人は出演者にも名前のある宍戸錠のはずだが(クレジット順も二番目)、いつまで経っても出てこない。
実質六人で今回の計画は遂行される。悪玉プロモーターの富田仲次郎(大黒)が担う競馬場の売上金(約三億)を強奪しようとするというもの。しかし、結局それを拾ったと称して警察に届けて三千万を手にするのである。しかし、それを大黒の愛人・弓恵子に奪われ、さらにそれを女スリの山本陽子がスリとるのである。いやいや三千万はすれないだろうというツッコミは野暮なのだろう。
他の出演者だが、小高雄二、浜川智子、榎木兵衛、桂小かん、木島一郎、河上喜史朗など。
そして、ラストシーンだが留置場の中、初めて宍戸錠が姿を現す。「六人」に新たな計画を持ちかけているのである。前作とは違う役なのだろう(最後に裏切って倒されているらしい)。これで「七人」ということになるのだろうか。
丹波哲郎に日活作品のイメージがあまりないが、実際に多くはない(10数本だろうか)。新東宝を出て以降は基本的にフリーなのでどこにでも顔を出すのだが、60年代前半は2、3本しかなく「七人の野獣」が6年ぶりくらいの日活出演になるようだ(大雑把に調べただけだが)。