お宝映画・番組私的見聞録 -4ページ目

レモンの天使

前回にちょっとだけ触れたのだが「金メダルへのターン」の後番組が「レモンの天使」(71~72年)である。スポ根ではないが、職業養成根性ドラマとでも言うのだろうか。看護婦を目指す少女の物語である。今は女性看護師というべきなのだろうか。つまり、舞台は看護学校である。
ヒロインである原ゆかりには吉沢京子。「柔道一直線」で人気を得て、当時は本作と「さぼてんとマシュマロ」にも並行して出ていたくらい大人気であった。「少年ジャンプ」連載でアニメ化もされた人気マンガ「ど根性ガエル」のヒロインもフルネームは吉沢京子だった。
吉沢京子は当時17歳だったが、ゆかりの設定は15歳。中学を卒業してそのまま看護学校へ入学したわけである。本作では中卒組と高卒組の対立みたいなのもあるようだ。ゆかりのライバルとなるのが矢島明美青木英美)である。演じる青木は大人びた顔立ちだし、おそらく高卒組だろう。ゆかりと仲良しになるのが石川珠子松原麻里)で、ドラマはこの三人が中心になるという。本作には相原ふさ子も(おそらく生徒役)で出演しており、青木、松原、相原と「飛び出せ青春」(72~73年)のメイン女生徒がここで顔を揃えていたのである(相原は前半で降板するが)。
他のレギュラーだが先生役で竜雷太、島田多江、夏海千佳子、先輩役で赤座美代子、(おそらく)生徒役で小林亜紀子、瀬川由紀、荻生田千津子、深沢裕子、ゆかりの母に風見章子、明美の母に東美恵子の弟役で大矢茂など。大矢加山雄三、喜多嶋修らで結成されたザ・ランチャーズのギタリストだが、68年頃から俳優活動も始め、「若大将対青大将」(71年)では二代目若大将に任命されている。しかし、結局大矢主演の若大将が制作されることはなかった。ただ、この時点では「二代目若大将」の称号が活きていたこともあり、本作では多分吉沢の相手役だったと思われる。
ゲストでは「金メダルへのターン」ではヒロインだった梅田智子や同番組出演の水谷邦久、前田吟、藤山律子、塩沢とき、他にも藤田進、北村総一朗、原田大二郎、船戸順、山内賢、まだ子役だった坂上忍など。
声優・ナレーターとして知られる納谷悟朗中江真司も役者として出たらしく、本作のナレーターは前半は藤子アニメでお馴染みの太田淑子、後半は「スプーンおばさん」の瀬能礼子が担当している。
ところで、本作はCSでもいまだに放送していないようである。動画も挙がっていないようなので、正確な設定など不明点も多い。ただ近年、DVDがマイナードラマの宝庫であるベストフィールドから発売されている。自分はこのドラマを子供の頃見かけた記憶はあった。ドラマの中身を見た覚えはなくおそらくOPだけだが、それも日曜日の朝だったように覚えていた。実際調べたら北海道では日曜の朝9時から放送されていたようで、自分の記憶は正しかったのだ。この時点では北海道にはフジテレビ系列の局はなかったので、日テレ系のSTVで月曜19時のドラマを6日遅れで放送していたのである。ちなみに、本作の最終話直後の72年4月にフジ系列のUHBが開局している。

金メダルへのターン その2

前回に続いて「金メダルへのターン」(70~71年)である。
本作は全65話、つまり5クールに渡って舗装されており、中々人気があったのだろう。主題歌は「プールに賭けた青春」というどこかで聞いたようなタイトルだが、38話までは佐々木早苗、それ以降は堀江美都子の歌唱となっている。堀江美都子は14歳になったばかりの頃だ。
佐々木早苗については、大雑把にしかわからないが、68年19歳の時に「最後の人/私の宝」でデビュー、69年には「恋の味/あなたがこわい」等をリリース、そして70年「プールに賭けた青春」という流れになっているようだが、なぜ彼女が抜擢されたのかは不明だ。ちょっとビブラートが利いた感じの歌い方に聞こえる。翌71年に「嵐の夜の愛」というシングルが出ているが、それがラストになっているようだ。
放送時間も変動があり、70年7月のスタートかから3カ月は月曜19時、70年10月から半年間は木曜19時、71年4月から半年間は再び月曜19時からとなっている。ちなみにそれぞれの後番組は「のらくろ」「さすらいの太陽」とアニメが入っており、次番組となったのは吉沢京子主演の「レモンの天使」である。
また、1~32話まではサブタイトルがなく、33話からサブタイトルがついたようである。
前回。挙げなかった出演者に木原光知子がいる。元水泳選手で、64年の東京オリンピックに出場している。引退後はタレントに転向し、本作が初のドラマ出演だったようだ。ちなみに本人の役であり、本名の木原美知子名義である。あと、出演者として名前が挙がっているのが、船戸順、森秋子、真理アンヌ、江角英明、菱見百合子、高野浩幸、夏純子、四方晴美、桂木美加、西條康彦、岡本富士太、浜畑賢次など。東宝製作だけあって、特撮系で見かける名前が多い。浜畑賢次は名前でわかると思うが、賢吉の弟である。そして、実況アナとして若き日の逸見政孝が出演している。
スキー場で鮎子とぶつかったことで大腿部に傷を負い、鮎子に辛くあたるのがライバルの御園泉森田敏子)である。演じた森田敏子は聞いたことのない名前だったので、調べて見ると日劇ダンシングチームの出身で、67~68年頃は水着モデルや多くの雑誌のグラビアや表紙を飾ったりしていたようだ。画像を見ると外国人っぽい顔立ちだが、祖父がロシア人だそうだ。ドラマ出演は本作と「赤い靴」(72年)くらいのようだ。
ストーリー上は主役の鮎子梅田智子)の相手役となるのは進介水谷邦久)のはずだが、終盤でその座を奪うのが55話から登場する立花一平沖雅也)である。一平は鮎子に好意を抱き、積極的にアプローチしてくるというキャラのようで、だんだんと進介の影は薄くなっていくようだ。
梅田と沖と言えば「決めろ!フィニッシュ」(72年)では兄妹の役だった。
沖と水谷と言えば、本作の放送中に火曜日の女シリーズ「クラスメート-高校生ブルース-」(71年)でも共演している。二人とも高校生役で沖は不良の一人、水谷は優等生の役で刺されたりもする(死んではいない)。
ちなみに最終話で鮎子はミュンヘンオリンピック代表決定戦で優勝。しかもこの時点で世界新記録と、めでたしめでたしな終わり方だったようだ。まあ1年以上放送されていたのだから、そうでもしないと終われないと思う。

金メダルへのターン

順番としては「コートにかける青春」の次あたりにやればよかったのだが、女性スポ根ものから「金メダルへのターン!」(70~71年)である。制作は「コートにかける青春」や「フィニッシュを決めろ」と同じ東宝である。
割合に有名なドラマだと思うが、よく考えたら個人的には見たことがなかった。まあ、水泳でオリンピック(ミュンヘン)を目指す少女の物語である。
簡単なあらすじだが、主人公の千葉鮎子梅田智子)は、母よしえ三ツ矢歌子)と二人暮らしだが、明るい性格の将来を期待される水泳少女だった。しかし、ある日ボートで転覆事故に遭い、黒木進介水谷邦久)に助けられるのだが、水恐怖症になってしまう。進介はやはり有望な水泳選手であり、その指導で彼女は恐怖症を克服し、オリンピックを目指すことになる。最大のライバルがスイミングクラブの速水四郎会長小泉博)の娘である理恵青木英美)だった。しかし彼女は病気で腹部を手術し選手生命を絶たれてしまう。その後、速水とよしえは何故か再婚することになり、理恵と鮎子は姉妹になってしまい、名前も速水鮎子に変わる。ちなみに鮎子が妹だ。理恵は鮎子に協力するようになり、水島コーチ前田吟)の指導のもと、鮎子は頭角を表していくのであった。
ヒロインの梅田智子は東宝ニュータレント8期生で、当時18歳。東宝テレビ部に所属し、「炎の青春」(69年)では、生徒の中でも中心的存在だったバスケ部主将を演じていた。水泳は得意だったので、他の出演者が顔の見えない場面では吹き替えだったが、彼女は吹き替えなしで演じていたという。
青木英美は当時17歳。姉役だが実際は1歳下である。ミスヤングインターナショナル世界大会に日本代表として出場したことを機に東宝テレビ部に所属。その4か月後に始まったのが本作だったのである。彼女は「飛び出せ青春」(72年)で人気を得るが、人気を二分した大田黒久美(当時は美波)や地味な女生徒約だった小椋寛子も出演している。
水谷邦久と言えば「レインボーマン」(72年)だが、本作が初レギュラーだったようだ。水谷も学生時代に水泳部に所属していたようで、そこからの抜擢かもしれない。本作には「レインボーマン」で共演することになるメンバーも多い。小泉博は父親役だし、全日本監督役長沢大同コーチ役塩沢とき、役柄は不明だが同じ回に出たらしい平田昭彦と「死ね死ね団」の面々が顔を揃えている。ちなみに、平田昭彦三ツ矢歌子の義弟になる(年齢は平田が9歳上だが)。もう一人、大河役の多田きみ子とは藤山律子のことである。彼女も「レインボーマン」では女幹部だ。
本作はタイトル通り「ターン」が見どころだが、鮎子の「飛び魚ターン」を筆頭に、ライバルである聖園泉森田敏子)の「渦巻ターン」、海門政美吉田未来)の「無呼吸泳法」、有田陽子服部妙子)の「風車ピッチ泳法」、日向勝子夏海千佳子)の「ロケットターン」などが登場する。この中では服部妙子は現在も活動中で、夏海千佳子も82年頃までは活動していたようだ。「特別機動捜査隊」によくゲストで出ていた印象がある。可能かづ子名義でピンク映画などにも出演していた。

千葉周作 剣道まっしぐら その3

もう一回だけ「千葉周作 剣道まっしぐら」(70~71年)である。
27話から登場するのが、周作岩下亮)にとって最大のライバルとなる高柳又四郎田村高廣)である。実在した剣客であり、「音無しの剣」の使い手として知られる。さすがの周作も勝てる相手ではないのであった。師匠である浅利又七郎大瀬康一)にも勝ったことがあるというくらいなのである。
又四郎に又七郎と名前が似ているが、どちらも通称だそうだ。又〇郎は強い剣客の代名詞だったのだろうか。そして、この回では周作の母・嘉乃小山明子)が病死してしまう。こういったドラマには珍しく優しい両親の下で育った周作だったが、最初の悲劇が訪れたのである。
他のゲストだが、29話は柳家小さん。30~32話にかけては佐々木剛が登場する。藤岡弘が「仮面ライダー」等で出演しなくなったと思ったら、2号ライダーをやることになる佐々木がここにも顔を見せていた。武家の子ではなく三吉が本名だが、教えたらすぐに出来てしまうという天才肌の男で、東海坊玄信川合伸旺)との出会いによって腕をあげ、不破鉄太郎を名乗り周作とも互角にやり合うようになる。川合伸旺が演じているだけあって怪しい風体の玄信だが、悪人ではない。
33話は長谷川明男、左時枝。34話は高城丈二、市川小太夫。35話は工藤堅太郎、嘉手納清美と続く。
37話にはミラーマン・石田信之が登場する。その「ミラーマン」で共演することになる和崎俊哉工藤堅太郎も出演済だ。ただし、クレジットは石田博之となっている。この時期に芸名を変えていたことはなさそうなので、単純に誤植であろう。後には石田新、石田延之を名乗った時期はあるけれども。
39話は蜷川幸雄、原保美など。後に演出家として有名になる蜷川だが、この当時は普通に役者としてよく見かけた。
40話は倉丘伸太郎、山下恂一郎、原建策。山下は桃井道場の息子だが、短筒に魅せられ六連発銃を持ち歩いている。周作にも「剣など時代遅れだ」と言い放つが、悪人というわけではない。倉丘は直参旗本の役だが、山下とは恋のライバル関係にある。その倉丘に周作は「小百合佐藤燿子)さんをあきらめてもらえませんか」などとおっせかいぶりを発揮する。
42話は目黒祐樹。本作のレギュラーである江夏夕子と後に結婚することになるが、この時点では既に交際中だったようだ。ちなみに結婚は80年で、11年の交際を経てのことだそうだ。その江夏が演じる奈々江に最終話で悲劇が。
44話が最終回で、以下ネタバレである。本作のダブルヒロインである岩井友見)と奈々江。共に武家の娘だが、綾はいかにもという感じで毅然としているが、奈々江はその辺の町娘と変わらない感じなのである。しかし、ほぼ本筋と関係なく奈々江は金目当ての浪人(諸口旭)に襲われ唐突に命を落とす。悲鳴を聞いて駆けつけた高柳が浪人を斬り捨てる。死に際に奈々江は周作への遺言を高柳に伝える。それは「高柳に勝ってくれ」というものだった。それを高柳本人から聞いた周作は勝負を挑むのだが、勝つことはできなかった。周作は新たな修行の旅に出るのだった。とまあ、ハッピーエンドとは言えない終わり方だったのである。
岩下亮だが、この後大映末期の映画「若き日の講道館」(71年)に主演。剣道ではなく柔道である。この作品以降の出演記録がないので、これを最後に引退してしまったようだ。
その後はフリーライター兼コラムニストとして活動しているらしい。

千葉周作 剣道まっしぐら その2

前回に続いて「千葉周作 剣道まっしぐら」(70~71年)である。
ゲストについて触れてみたい。毎回のように強い奴が現れ、周作(岩下亮)と戦うといのが、こういったドラマのお困りのパターンである。
第5話にヤクザの用心棒として登場するのが堀場甚内岸田森)である。槍の使い手で、青白い顔をした不気味な男を岸田が怪演。周作は足を負傷し、思う様に戦えない。師匠の浅利大瀬康一)に、足に頼らない戦いを考えろと言われ、編み出したのが一本足打法ならぬ一本足剣法である。現役時代の王貞治のように構えるのだ。周作は右打者のようだが。
第6話には、岩下が映画デビューした「しいのみ学園」(55年)で、兄弟役を演じた河原崎建三が出演。
第8話には、周作の父・寿貞役である千秋実の息子・佐々木勝彦が登場。親子共演ではるが、会話や絡みなどはないようだ。
第9話は、奉納試合の代表を決める予選の決勝戦で周作は梶原京之進田村亮)とあたることになる。普段は大人しい京之進だが、強い奴と立ち会うと狂ったように向かってくるのである。かつて、父・百鬼天本英世)を(事故ではあるが)立ち合って死なせてしまったことから父の亡霊を見るようになり、正気を失ってしまうのである。梶原道場の師範である叔父・兵部守田学哉)は「キチガイだから勝てるのだ」と言い切る。
「周作と試合をすれば、殺してしまうから出ない」と京之進は試合を回避しようとする。というような話で地上波なら音声がカットされるところである。田村三兄弟(正確には四兄弟)の末弟・だが、声質は兄・正和によく似ているなと感じた。
第10話は奉納試合で、その相手は平田数馬桜木健一)だった。桜木と言えば、当時は「柔道一直線」の一条直也のイメージ。もちろん、周作が勝利し、その名が世に響き渡ることになる。ちなみに、本作は「ブラザー劇場」枠での放送(TBS系月曜19時半)。本作の後番組となるのが桜木主演の「刑事くん」である。
第11話には殺人剣の狼之介森次浩司、後に晃嗣)が登場。赤ん坊の時に捨てられ盗賊に育てられたという彼は、既に何人もの人を斬っていおり、周作は真剣で対決することになるが、初めて人を斬ることになったのである。森次はまだ「ウルトラセブン」のイメージが強かったと思うが、この頃から既にこういった悪役もやっていたのである。この後「美しきチャレンジャー」で新藤恵美のコーチ役をやることになる。
第12話は、あおい輝彦。ジャニーズ解散後、俳優として活動していたが、当時やっていたのはアニメ「あしたのジョー」での主役・矢吹丈の声。藤岡重慶との俳優コンビが見事にハマっていた。あおいはジョー以外には声優の仕事はほとんどやっていない。あおいは25話にも別の役で出演している。
第19話には夏八木勲、和崎俊哉が登場。和崎は辻斬りの役で、これも真剣勝負で周作に斬られたのである。
第20話はウィキペディアによると、CSで放送されたOPクレジットと本編の内容が合っていないとある。実際その通りで、18話の出演者がクレジットされているようだ。ゆえに20話のゲスト出演者で判明しているのは、見て判断できる神田隆真山譲次くらいなのである。そして、前回10話以降出てこないと書いた森川新之助(片岡五郎)が出ていた。何故か神田演じる三浦兵部の屋敷にいたりしたのである。また、寸でところで逃げてしまうのだが。

千葉周作 剣道まっしぐら

剣道一本!」とほぼ同時期で、「剣道」がタイトルに付く番組に「千葉周作 剣道まっしぐら」(70~71年)がある。
まあ「千葉周作」がタイトルに入っているのでわかると思うが、スポ根ではなく時代劇である。まあ時代劇スポ根と言えるかもしれんが、一昨日までCSで放送されていた。原作は山岡荘八で、若き日の千葉周作を描いた物語である。江戸時代後期の剣術家で、北辰一刀流の流祖である。大体の人は「赤胴鈴之助」の師匠として知った人が多いのではないだろうか。
CSで放送されたと書いたが、恐らく今回が初放送だったので、自分もそうだが初めて見たという人や約50年ぶりに見たという人も多いであろう。
主役の千葉周作を演じるのは岩下亮。早くに引退してしまったようなので、知らない人も多いかもしれないが、岩下志麻の実弟である。岩下志麻よりデビューは早かったようである。正確なプロフィールは実は、その姉であるわからず、何年生まれかも不明だが、姉(41年生まれ)より後なのは当たり前だ。
当初、子役として活動しており、デビュー作と思われるのは映画「しいのみ学園」(55年)である。主人公である夫婦(宇野重吉、花井蘭子)の二人の息子の弟役だ(兄は河原崎建三)。そして宇津井健主演の「鋼鉄の巨人(スーパージャイアンツ)」(57年)シリーズのうち3本に出演している。
そしてテレビの方はNHKの「君たちはどう生きるか」(58年)という全3回のドラマに主役として出演しているようだ。その母親役の山岸美代子は実母でもある。
実はここで出演記録は途絶えており、約12年のブランクを経て、本作で復活したという感じになっている。学業に専念というような理由だろうか。
父である浦山寿貞こと千葉幸右衛門千秋実母・嘉乃小山明子、幼馴染の荒尾奈々江江夏夕子で、その兄・春太郎藤岡弘、で周作の師匠となる浅利又七郎大瀬康一で、その妹である綾が岩井友見、息子の蔵太郎蔵忠芳だ。この中では、浅利又七郎(義信)は実在の人物で、実際に周作の師匠だった。演じる大瀬はずっと主役続きだったが、今回から脇(といってもメインの一人だが)に回っている。
第Ⅰ話では、まだ千葉於兎吉だった頃の周作が描かれている。藩の指南役だった父・幸右衛門が何者かに撃たれ右手が不自由になり、代わりに荒尾宮内大坂志郎)が指南役に。於兎吉はその犯人を息子の春太郎だと疑い、斬りかかり怪我を負わせる。その直後に荒尾の屋敷で失火があり、指南術書が消失。石を投げ込んだ於菟吉が犯人とされた。それを救ったのは飛かならぬ宮内であった。というような話。
詳細ははぶくが、佐藤狐雲辰巳柳太郎)に「周作」の名をもらい、松戸の浅利道場へ旅立つのだった。2話からはもう千葉周作となり、父の幸右衛門も町医者・浦山寿貞を名乗るようになる。宮内の娘・奈々江が周作を追って家を飛び出してしまい、それを周作の手引きと考えた春太郎と森川新之助片岡五郎)が後を追う。
春太郎と新之助は序盤だけの登場で、新之助は10話で汚い手を使って周作をはめようとするが、当然失敗し逃げたしたまま以後姿を見せない。春太郎は14話で盗賊と間違えられて奉行所に捕らえられる。そこを周作や奉行(東千代之介)の息子(近藤正臣)によって救われ、以降は姿を見せなくなる。
本作の制作は松竹なので、まだ松竹所属だった藤岡弘が出ていても不思議はない。多分「ゴールドアイ」終了の後、本作でそのあと「めくらのお市」そして「仮面ライダー」へと続いており、この頃既に売れっ子状態になっていたようである。

剣道一本! 

もう一つ、あまり知られていなさそうなスポ根もので、「剣道一本!」(72年)である。
まあ当時人気の「柔道一直線」を意識したかどうかは不明だが、剣道もの以外の何物でもないわかりやすいタイトルである。
三浦友和の初主演番組ではあるが、13回の1クールで終了してしまったこともあり、知る人ぞ知る番組になってしまっている。三浦は当時20歳で、デビュー作が「シークレット部隊」(72年)であることは割合知られている気がするが、本作はその「シークレット部隊」が終了した翌週からスタートした番組である。つまり、ドラマ出演2本目にして主役に抜擢されたわけである。しかも、大映テレビ、TBSの制作ではなく、国際放映、フジテレビの制作である。
自分も全く見たことはなかったのだが、ネット上に数話挙げられているのを見ることができた。
三浦扮する伊吹源太郎は紅陽高校に入学したばかりで、バレー部、バスケ部、剣道部を兼部している運動神経万能な少年である。ちばてつや原作の「ハリスの旋風」の石田国松みたいな感じであろうか。幼馴染の中山京子中田喜子)がいつもそばにいたりするのもちょっと「ハリスの旋風」に似ている。実家は八百屋を営み、有沢正子)と暮らしている。
店番をしていると京子とその弟が、女の子が集団リンチに遭っていると言われ、現場に駆けつけると、学生服の集団が一人の娘に竹刀で襲い掛かていた。実はそれは東西高校剣道部の連中で、伝統の行事なのだそうだ。木棒で彼らを追い払った源太郎だったが、その娘・早乙女光岩崎和子)も同校の新入部員だった。助けたのに「余計な事しないで」と逆に投げ飛ばされる始末だった。
剣道部の顧問である村木高杉玄)や主将の北島亀谷雅彦)からは、剣道部一本でやってくれと言われるが、実は母から剣道だけはやるなと言われているので決心がつきかねていた。亡き父は剣道の強豪だったことも源太郎は知っていた。
そんな折、源太郎は東西高校剣道部から呼び出される。そこには、副主将の勝見鷹市太郎)らが待ち受けており、源太郎に襲い掛かる。多勢に無勢でやられそうになる源太郎。そこに謎の中年男(中谷一郎)が現れ、棒一本で連中を追い払ってしまう。
というのが第1話で、その後中年男は速水と名乗り、源太郎は彼を師匠と呼ぶようになる。実は源太郎の父とは剣道で切磋琢磨した仲なのだが源太郎には秘密であった。また、の実の父であることも割と早い段階で(視聴者には)明かされるのだ。※登場人物の表記は予想。
ダブルヒロインの京子役である中田喜子は今も活躍中でお馴染みであろうが。光役の岩崎和子は馴染みが薄いと思う。活動期間も5~6年と短い。特撮ファンには「帰って来たウルトラマン」の終盤に、坂田アキ榊原るみ)に替わって登場する村野ルミ子役が有名かもしれない。

紅陽高校の剣道部員・本多を演じるのは瀬戸幹雄。と言ってもわからないと思うが、まもなく真夏竜に芸名を変え「ウルトラマンレオ」(74年)では主演となる。この「剣道一本」がデビュー作となるようだ。
とんでもない東西高校剣道部の主将・渡東美行(たぶん)。本作以外に活動歴は見当たらなかった。芸名を変えたのか、これ一作だけなのかは不明だ。前述の鷹市太郎沢田勝美のこと。この時期の数年だけ名義だったのである。だから役名がカツミ(と聞こえた)なのだろう。「おれは男だ!」でも剣道部員の一人を演じていた。因みに、本作の主題歌の作詞は三浦で、挿入歌はの作詞となっている。後に鷹こと沢田は「三浦友和と仲間たち」のメンバーとなっている。

コートにかける青春 その2

前回の続きである。
コートにかける青春」(71~72年)だが、前回も書いたとおり一度も見たことはなく、原作「スマッシュを決めろ!」に関しても同様だ。というわけで、大半がWikipediaなどの資料からの情報になる。
原作は全4巻に対して、ドラマは丸1年放送されたので、オリジナル部分がほとんどだと推測される。その両方に登場するキャラ、つまり名が一致しているのがさおり紀比呂子)のコーチとなる甲山大出俊)、かつて東城安井昌二)のライバルだったという田淵睦五朗)、大学の学長の娘で実力はあるが、勝つためには手段を選ばないという藤沢悦子戸部夕子)くらいであろうか。後、原作ではさおりと真琴森川千恵子)ペアとダブルスで対決する高岡姉妹というのが出てくるようだが、ドラマでは高岡美津子皆川妙子)と言う名のライバルが登場している。原作では大石哲也というさおりとダブルスを組む若者が登場するようだが、自分の予想だがそれっぽい役割を担っているのが水島譲二小野進也)ではないだろうか。
若手女優は大体ライバル役と予想する。もちろん、さおりの友人とかもいるかもしれないけれども。役名とかも判明しているのが柴田靖子大田黒久美)、堀川絵美テレサ野田)、田中友子児島美ゆき)、沢田京子黒沢のり子)、清水キャプテン桐生かほる)といったところ。その関係者として靖子の父下條正巳)、友子の母塩沢とき)がいる。
他に役柄がよくわからん出演者として、尾崎中尾彬)、大杉千恵子南風洋子)、篠田孫八岡本信人)、川原阿知波信介)、曽根立花直樹)など。役名が不明な出演者には牧れい、桜井妙子、岡本茉莉、松谷紀代子などがいたようだ。
大田黒久美は「飛び出せ青春」(72年)が有名だが、やはり東宝が制作したスポ根ドラマ「ワン・ツウ・アタック」(71年)では主役を演じている。ただし、全13話で東京12チャンネル(現テレビ東京)での放送ということもあり、あまり知られていないドラマではないだろうか。内藤洋子主演の「華麗なる闘い」(69年)という映画のオーディションに応募し、最終選考に残った7人(大田黒、皆川妙子、桐生かほる等)はファニーセブンとして売り出され、同映画にも出演し、同時期に東宝に入社している。まもなく東宝テレビ部に所属した。
皆川妙子も大田黒と同様の経緯だが、「アテンションプリーズ」(70年)でも、ヒロイン紀比呂子のライバル役として出演していた。「ワン・ツウ・アタック」にも出演。個人的には「レインボーマン」(72年)における死ね死ね団の女幹部ロリータ役が印象に深い。
桐生かほるは劇団ひまわり出身で60年代前半から子役として活動しており、水谷豊主演の「バンパイヤ」(67年)ではヒロインとなるミカを演じていた。前述のオーディションは知人が知らない間に応募していたものらしい。この「コートにかける青春」にはテニス部キャプテンの役で出演。基本的には脇役で店員とかお手伝いさんの役が多かったようだ。
最終話はどうやら、さおり・真琴ペアが藤沢悦子・田中友子ペアと戦って勝利し、ウィンブルドン行きを勝ち取ることになるようだ。藤沢役の戸部夕子は宝塚歌劇団出身だが、1年程度で退団してしまっているようだ。当時24歳だが、もう少し上に見える。悪女が似合う顔立ちだと思う。田中役は児島美ゆき。「ハレンチ学園」のヒロインもスポ根ドラマではライバル役ばかりであった。
実況アナ役はフジテレビの逸見政孝アナ。当時27歳で、本作だけでなく「金メダルへのターン」(71年)等にも実況アナ役で出演している。

コートにかける青春

もう一つ、女性スポ根もので「コートにかける青春」(71~72年)である。タイトルからテニスものだと想像つくであろう。この欄では取り上げたことはないだろうと思っていたが、19年前にやっていたのである。まあ一度も見たことは無いので、内容については全然触れていないのだけれども。その状態は現在も変わっていない。つい最近、オープニングとヒロイン二人が対決している短い動画を見たのみである。
原作は週刊マーガレットに連載されていた志賀公江スマッシュを決めろ!」である。今だったら、原作のタイトルを完全に変えてしまうことはないのではないだろうか。その代わり、堀江美都子が歌う主題歌のタイトルは「決めろ!スマッシュ」である。これを番組タイトルにしても違和感はなさそうである。
自分は一度も見たことは無いと書いたが、それは裏番組が「ウルトラシリーズ」だったからである。具体的には「帰ってきたウルトラマン」→「ウルトラマンA」だったので、そりゃ少年だった自分は「ウルトラマン」を見るわなあと思う。まあウルトラシリーズじゃなくても見なかった可能性は高いけれども。しかし、注目しべきは強力な裏番組があったにもかかわらず「コートにかける青春」は全52話、つまり丸一年放送されたのである。それなりに安定した人気があったということだろう。
ヒロインである槇さおり役には紀比呂子で、その妹でライバルとなる東城真琴役には森川千恵子がキャスティングされている。二人の苗字が違うのは両親の離婚によるもの。真琴はテニスの天才プレイヤーだった父・博之安井昌二)の元で育つ。一方のさおり母・晴子稲垣美穂子)の元で育つのだが、実は彼女は実子ではない。亡くなった晴子の姉の子なのだが、実子として育てたのであった。そんな時、博之は病に倒れ
「東京にいる母と姉の元へ行き、二人でウインブルドンの栄光を目指せ」との遺言を残して亡くなる。二人は、実の姉妹ではないことを互いに知らず、特に真琴はさおりに激しいライバル心を燃やすのであった。というような概要である。ただ、原作では実の姉妹だったようで、設定が多少変わっているようである。
紀比呂子は当時21歳。母は女優の三条美紀で、高二の時に劇団若草に入団している。デビュー作は吉永小百合主演のドラマ「風の中を行く」(69年)で、新任教師である吉永の生徒役であった。この作品には三条吉永のおば役で出演している。彼女を一際有名ににしたのは「アテンションプリーズ」(70~71年)のヒロイン洋子役であろう。当時は職業根性ドラマなどと呼ばれていた。この「コートにかける青春は」は「アテンションプリーズ」終了から半年後にスタートしたドラマである。
森川千恵子は当時19歳。芸能界のスタートはモデルであり、エメロンシャンプーのCMが有名。ドラマデビューは71年の「2丁目3番地」で、当時の芸名は真樹千恵子。この番組からは石坂浩二と浅丘ルリ子寺尾想と范文雀という二組の結婚カップルが誕生している。そして「仮面ライダー」で、当初のヒロインである緑川ルリ子役に抜擢された。彼女が抜擢されたのはプロデューサーの平山亨が前述のCMを見て気に入ったからだそうだ。しかし、主役の藤岡弘が撮影中のバイク事故で重傷を負い、休演を余儀なくされる。そのため急遽テコ入れが行われ、役柄上藤岡あっての存在だった彼女も降板となってしまったのである。ちなみに彼女の友人役だった島田陽子はもう1クール出演が継続された。
突然の降板は悲しかったという彼女だが、まもなく「コートにかける青春」に抜擢され、芸名も森川千恵子に改めている。 オープニング映像を見た限りでは、シルエットではあるが紀の158㎝に対して、森川の身長は不明だが、10㎝近くは高いように見える。ちょっとアンバランスな感じがした。

決めろ!フィニッシュ その3

もう一回だけ「決めろ!フィニッシュ」(72年)である。
本作は全18話という、中途半端な感じだが打ち切りというわけではないようだ。前々回に書いたように「シルバー仮面」と「アイアンキング」の間の番組なのだが、文字通りその両番組のつなぎで制作されたという見方もあるのだ。「シルバー仮面」は企画がまとまらないうちにクランクインして失敗したという反省から「アイアンキング」の準備期間を設けるために「決めろ!フィニッシュ」を制作したというような発言をプロデューサーの橋本洋二はしているらしい。
つなぎと言っても、視聴率は徐々に上昇していたところでの終了だった。当時の若手俳優中心だが、ゲストは今見ると豪華といえるのである。7~8話には仲雅美。バイクに乗って現れ、みゆき志摩みずえ)の特訓現場に通りかかり「ヘンテコな特訓などやめろ」と茶々をいれる(実際ヘンテコだが)。実はみゆきの通う東和学園のOBで、そのヘンテコ特訓を見て挫折した水泳を再開するというお話。
9~10話は真山譲次。と言ってもピンと来ない人も多いかもしれないが、「人造人間キカイダー」(73年)に出てくる敵役ハカイダーの人間体を演じた役者だ。ゆえに長髪のイメージが強いが、本作では短髪で柔道着姿で登場。陸上部である次郎三ツ木清隆)が何故か彼と柔道の秘密特訓をしいてるのをみゆきが目撃するという話。真山は「柔道一直線」(69~71年)では、ライバルの一人・赤月旭役で出演していたので、そのイメージからの出演であろう。彼は、戦前から戦後にかけて活躍した俳優岡譲司の長男である。芸名はもちろん父親から来ている。岡夫婦は晩年離婚しているが、真山の本名は父方の中溝ではなく母方の田中を名乗っている。
12~13話は西城秀樹。当時17歳でまだデビューまもない頃だ。シングルも2枚目の「恋の約束」が発売されたあたりで、まだ大ヒットは出ていないが、クレジットはトメでしかもピンである。しかし「西条秀樹」と誤表記されていた。これが初のドラマ出演と思われるが、さすがにまだ素人演技であった。このエピソードで一緒に出ていたのがコント0番地(車だん吉・岩がん太)である。
17~18話は沖雅也梅田智子。二人は兄妹の役で牧場を営んでいる。次郎は卒業後はそこで働くと決めていた。妹も体操をやっており、兄はそのコーチでもある。ちなみに17話の出演者は志麻、三ツ木、梅田、沖の4人だけである。16話でみゆきは退部届を出して次郎の元を訪ねたのだが、追い返されるかもという心配をよそに次郎は普通に彼女を歓迎する。実は…というような話だ。
そして最終話。以下ネタバレ。みゆきは新技「スワン四回転ひねり」を編み出し東京に戻るのだが、坂井コー(中山仁)は簡単にみゆきの再入部を許さない。ジュニア選手権も出場できず、東和学園からは藤サチ小林亜紀子)が選抜される。代表選考では強力ライバルの一人・井川啓子児島美ゆき)が負傷であっさり脱落。結局、代表には星わかば新井春美)、神かがり萩生田千津子)、そして藤サチが選ばれる。飛行機で旅だつ三人を見送る中にみゆきの姿はなかった。坂井の指示で一人機材の手入れをやらされていたのである。そこに現れた坂井は「ジュニアなどくれてやれ、四年後のモントリオールで金メダルを目指せ。それができるのはお前だけだ」と言うのだった。
なんとなく、もやっとした終わり方に感じる人もいるかもしれないが、打ち切りではなさそうなので、予定通りなのだろう。
書き忘れていたベテラン出演者だが、白川由美(みゆきの母)、内藤武敏(みゆきの父)、千秋実(次郎の父)、三條美紀(次郎の母)、坂上二郎(一平少年の父)などがいる。ウィキでは一郎少年になっているが、一平少年のようだ。