お宝映画・番組私的見聞録 -3ページ目

S・Hは恋のイニシァル

唐突だが「S・Hは恋のイニシァル」(69年)である。
前回までの中心だった中村竹弥が出ているというところから思いついた。長いこと当欄をやっているが、これは取り上げたことなかったと思う。何故なら、単純に情報不足だから(取り上げていたらスミマセン、完璧に忘れている場合もあるので)。出回っている動画と言えば、「テレビ探偵団」で流れた2分弱のもののみ。この状態は今世紀に入ってから変化はないはずである。CSでの放送はないし、ベストフィールドあたりからのDVDも発売はされていないようだし。
再放送に関しては不明だが、少なくとも50年近くはされていないのではないだろうか。
さて「S・Hは恋のイニシァル」だが、まずタイトルは「イニシャル」ではなく「イニシァル」が正しいらしい。確認できるタイトルバック映像では、確かに「イニシァル」となっている。そして、放送枠は「ナショナル劇場」である。しかも、急遽決定した穴埋めドラマだったのである。どういうことかというと、渡辺プロが26回の予定で受注した「ドカンと一発!」が12回で終了。残り14回分を埋めるために、「ナショナル劇場」から離れていた松下電器のプロデューサー逸見稔が再登板の運びとなったのである。ちなみに、「ドカンと一発!」の後番組は「こんにちはそよ風さん」という酒井和歌子主演のドラマが全12話放送されており、その次が「S・Hは恋のイニシァル」だったわけである。
結城一平布施明)は毎朝新聞文化部でテレビ・ラジオ欄を担当することになった新米記者。入社式の朝、通勤バスの中でチンピラが乗客にからんでいる場に遭遇する。同僚である坂田龍馬石立鉄男)とともに、チンピラどもを成敗する。微かに血を滲ませた結城に、サッとハンカチを差し出す謎の美女(伊東ゆかり)、そのハンカチにはS・Hのイニシャルが織り込まれていた。このS・Hの美女にほのかな恋心を抱く一平と、彼の前に次々と現れる美女たち、みな奇遇にもイニシャルはS・H、平山節子梓英子)、羽佐間小夜ジュディ・オング)、羽佐間すみれ小山ルミ)、はたして一平はどのS・Hと結ばれるのであろうか。というのが大雑把なあらすじ。つまり、メインヒロインは伊東ゆかりということになるのだが、彼女の役名は北条しのぶという。他のレギュラーだが、平山文化部長大坂志郎)、羽佐間静子月丘千秋)、坂田金五郎中村竹弥)結城重太郎森繫久彌)と結構豪華な顔ぶれだ。
あと、大原麗子もレギュラーのようだ。「テレビ探偵団」の映像では、彼女が映ったあと、「ホンダソノミ、S・Hだ」と布施明が声にするので、大原もS・Hの一人だったこもしれない。後はゲストか一回限りかよくわからんが、左とん平、中村晃子、いしだあゆみ、砂塚秀夫、森進一、竹脇無我、毒蝮三太夫、戸川昌子などが出演していた。中村晃子は本人の役で、毒蝮は「金原亭金馬(字は適当)」と名乗っていた。
主演の布施明は当時22歳で、本作が初の主演作である。布施もヒロイン役の伊東ゆかりも当時は渡辺プロ所属の歌手であった。
ドラマは好評だったようだが、予定通り14話で終了。翌週からスタートしたのが国民的人気番組となる「水戸黄門」なのである。

丹下左膳(中村竹弥版)

もう一つ、中村竹弥主演の時代劇である。
燃ゆる白虎隊」(65年)終了から三か月後にスタートしたのが、誰もが知っているであろう「丹下左膳」(65~66年)である。隻眼隻手の時代劇ヒーローだ。現代では片目片腕などと言ってはいけないのである。片手落ちという表現も控えた方が良い、とマスコミ界ではなっているようだ。
テレビドラマ化は、この時点で4度目であり、中村は丹波哲郎、辰巳柳太郎、大村崑に続く4人目の左膳ということになる。この後も松山英太郎、緒形拳、高橋幸治と続くが、70年代後半くらいからか、こういったハンディキャップ時代劇のレギュラー放送は難しくなり、80年代以降はSPドラマとして、仲代達矢、藤田まこと、そして2004年に中村獅童が演じたのが最後となっているようだ。
映画界では無声映画時代の団徳磨、嵐寛寿郎、大河内伝次郎、トーキー時代になっての月形龍之介、戦後の水島道太郎、大友柳太郎など、錚々たる時代劇スターが演じていたが、一番好評だったのは、やはり中では一番長く演じていた大河内伝次郎のようだ。「しぇい(姓)は丹下、名はしゃぜん(左膳)」という独特のセリフ回しが人気を呼んだようだ。
今回のドラマ化は、中村竹弥がどうしても左膳をやりたいとTBSに頼み込んだらしく、そしてTBSから宣弘社に話が行ったものだという。宣弘社と言えば、「月光仮面」「隠密剣士」。本作でもその監督であった船床定男を始めとしたそのスタッフが集結している。しかし、脚本は伊上勝ではなく「月光仮面」の原作者でもある川内康範が担当することになった。主題歌の作詞を担当した川内和子とは川内康範のこと。
中村以外の出演者だが、中原早苗(おふじ)大森俊介ちょび安)、小山明子(おれん)、光本幸子萩乃)、砂塚秀夫鼓の与吉)、菅貫太郎柳生源三郎)など。大森俊介は「隠密剣士」の周作少年だ。他の船床キャスティングは、牧冬吉月形左門)が後半はほぼレギュラー、天津敏流十次郎)は一回のみ。
複数回登場する役者が多く、瑳川哲朗峰丹波)、戸上城太郎蒲生泰軒)、黒丸良高大之進)、伊達正三郎伊吹大作)、江見俊太郎鷹丸)小林重四郎津田玄蕃)、藤原釜足一風宗匠)、花沢徳衛愚楽老人)、楠トシエおきん)などセミレギュラーみたいなものだ。
ところで、丹下左膳というキャラは有名だが、そもそもどういう話なのか知っている人は少ないのではなかろうか。ひょっとしたら、悪を退治する正義の素浪人と思っている人がいるかも。
八代将軍徳川吉宗の時代、柳生の里に、日光東照宮の造営という役目が申しつけられた。藩主の相談を受けた僧正は、柳生家に代々伝わる「こけ猿の壺」には先祖が隠した幾百万両もの黄金のありかが隠されていると明かす。しかしその壺は、すでに、藩主の弟が婿入りする際の引き出物として、江戸に渡っていた。さらに、偶然そのことを知った者たちが壺を狙い、動き出す。偶然壺を手にした少年は、丹下左膳のいる小屋に飛び込んだ。丹下左膳を中心に、柳生家、幕府の手の者が争奪戦を繰り広げていく。というような話なのである。
番組は半年で終了するが、中村竹弥はこのタイミングでTBS専属を離れたようである。本作が主役を演じた最後になったようだ。
※四年ほど前にも取り上げている番組だが、内容は多少違うのでご容赦。

燃ゆる白虎隊 その2

 

引き続き「燃ゆる白虎隊」(65年)である。
本作では白虎隊以外にも、娘子(婦女)隊というのも登場する。これは名前の通り、中野竹子らにより自発的に組織された女性だけの郷里防衛隊である。本作では中野竹子を中川竹子中西杏子)、妹の優子を中川夕子勝間典子)としている。主人公である日向外記中村竹弥)の娘・美音佐々圭子)も参加する。また、参加者の神保雪子(加藤澄江)は実在の人物で、軍事奉行添役・神保修理の妻である。何故かそのままの名前で登場している。
10話で白虎隊では最年少となる永井雄介佐久間三雄)が功名に焦って、戦死してしまう。演じた佐久間三雄の詳しいプロフィールは不明だが、「火曜日の女シリーズ」の「あの子が死んだ朝」(72年)で、ホームジャックする少年グループの一人を演じていた。水谷豊、火野正平、沖田駿一らが仲間だが、気難しそうな佐久間が一番怪しい雰囲気があった。この家(水谷演じる少年の家)の主婦を演じたのが「燃ゆる白虎隊」では外記の妻役である加藤治子である。佐久間の活動記録はこの72年頃までである。
最終話前、和平工作は失敗に終わり、外記は中二番隊を率いて出陣することになる。この後の外記の行動が物議を醸すことになったのである。
外記のモデルである日向内記だが、長いこと卑怯者だの言われていた人物らしい。8月22日夜、日向隊長は敢死隊へ軍議のため一人隊を離れたのだが、行方不明となり翌日になっても戻って来なかったのである。代わりに小隊長である篠田儀三郎が指揮をとった。その後、三人が戦死し、残った17人は飯盛山に辿り着くが、若松城からの煙を見て、全員が自死を選んだのである(一人は蘇生する)。その後、内記が帰還したため、一人だけ逃げたと批判されることになったようなのだ。
本作は、その内記(外記)を主人公しているので、ちゃんと理由(事情)あっての行動であり(敵に遭遇し身動きが取れなかった)、卑怯者なんかではないという内記の名誉回復を訴えようとする番組なのかもしれない。
最終話では、娘子隊に加わっていた美音が戦死したり、篠田清川新吾)を慕う小夜高野通子)も銃弾に倒れる。実際の娘子(婦女)隊では中西竹子や神保雪子は戦死したが、中西優子は生き延び結婚もしている。
一人、はぐれる形となった外記は戦火の中、外記は中二番隊を探しまわる。戦況不利の中、出会った老兵に「何故ご家老は腹を切らないのか」のかと批判されても、「わしは彼等(白虎隊)に遭わねばならんのだ」というスタンスを崩さない。やっと飯盛山に辿り着いた外記が見たものは、彼らの果てた姿であった。すぐに後を追うことを示唆して番組は終わるのである。
実際の日向内記はというと、自ら死んだりはせず、明治18年に59歳で亡くなったのである。実際どんな人物だったかわかるはずもないが、批判されがちな人物像が見直される風潮にあるようだ。

燃ゆる白虎隊

週二更新を基本としているが、今週も含めてこれからは週一の時もあるかも。
というわけで、前回の「青年同心隊」と同様に、近年CSで放送された激レアな時代劇「燃ゆる白虎隊」(65年)を取り上げたい。やはり国際放映の制作で、全13回のモノクロ30分ドラマということもあり、再放送などの機会にはほぼ恵まれなかったと思われる。
タイトルにある通り白虎隊を描いたドラマなのだが、個人的には白虎隊関連のドラマって一度も見たことは無いと思う。年末か年始かの長時間スペシャルドラマとかでやっているイメージ。日本史でも軽く触れる程度だった気がするので、基礎的なことしか知らない領域なのである。
慶應4年、鳥羽・伏見の戦いにより戊辰戦争が勃発。会津藩主松平容保が江戸幕府側で活動してきたため、会津藩は佐幕の中心とみなされ、新政府軍の仇敵となった。そこで、会津藩は武家男子を集めて、玄武隊、朱雀隊、青龍隊、そして白虎隊らを結成。年齢別で分けられており主に15~17歳の少年で組織されたのが白虎隊である。
よくドラマとして取り上げられるのは、その中の士中二番隊で本作もそうである。で、その隊長が家老でもある日向内記である。「燃ゆる白虎隊」では、創作部分も多く含まれているからか、松平容保板垣退助以外は実名は使われておらず主人公も日向内記(ひなたないき)を模した日向外記(ひゅうがげき)となっている。その外記を演じたのが中村竹弥である。本作では何故か松平容保との二役である。
中村竹弥と言えば「大江戸捜査網」の内藤勘解由のイメージが強いが、元々は名前の通り歌舞伎役者である。と言っても無名に近い存在で、映画に招かれることなどもありえなかった。しかし53年のテレビ開局に伴って、すぐにテレビ時代劇に進出(当時35歳)。KRテレビ(現・TBS)の専属俳優となり「半七捕物帳」「右門捕物帳」「旗本退屈男」「新選組始末記」など人気時代劇で立て続けに主役を演じ、一躍人気俳優となった。ゆえに、歌舞伎出身で、テレビが生んだ時代劇スターの第1号と言われている。
で、その中村演じる日向外記は会津藩家老で、藩校日新館の館長。この日新館の生徒が白虎隊のメンバーでもある。その講師でもある河原田健吉天野新二)は士中二番隊副隊長だが、藩命により白虎隊を離れて出陣していく。その代わりに副隊長となったのが篠田勇三清川新吾)である。
以下は主な白虎隊士だが、梶原和馬三田明)、原圭次郎高島稔)、種部虎之助立花伸介)、井草達馬伊藤健雄)、林田八十治浜こうじ)、永井雄介佐久間三雄)など。
三田明は当時18歳で、言わずと知れた人気歌手。橋。舟木、西郷の御三家に彼を足して四天王と言うこともあった。本作の主題歌も彼が担当している。三田が演じる和馬は家老である梶浦大作神田隆)の息子だが、和馬は父より外記を慕っていた。外記は戦争反対派だが、大作は主戦派であった。大作は実在の家老・梶浦平馬がモデルとなっている。
他のキャストだが、外記の妻・志保(加藤治子)、外記の娘・美音(佐々圭子)、小夜(高野通子)、西条頼母(佐々木孝丸)、板垣退助(神山繁)などである。

青年同心隊 その2

引き続き「青年同心隊」(64~65年)である。今回はドラマの中身についてである。
主演四人それぞれのキャラだが、林兵馬西島一)はその背景は語られることはなかったが、真面目人間で庶民側にたって物事を考えるタイプ。特に通称はない。黒木荘司高島英志郎)は、御家人の息子だがぐれて、武士ではない不良仲間とつるんでいた。その時についたあだ名が「ノラさん」(野良犬から)。気性は一番荒っぽい。佐野金六石川進)は武家ではなく、みそ卸問屋「佐野屋」の息子。同心株を買って役人になったため、剣術・武術は全くダメ。コメディリーフ的な存在。通称「サノ金」。関口信吾石間健史)は他の三人と仲が悪いわけではないが、己の考えを貫くタイプで、一人別行動をすることも多い。口癖が「御意」であることから「ギョイさん」と呼ばれる。
第1話では彼らの指南役は堅物の田倉伊十郎南廣)だったのだが、辻斬りに斬られて殉職。何故か刀を抜いていなかったが、実は竹光だった。自分が捕まえた人間の家族に密かに支援したりしていた為、生活は困窮していたのだった。普通なら下手人を捕まえて一件落着となるところだが、相手は身分の高い侍だったようで、事件は闇に葬られることになった。これが奉行所の限界であることを与力の久保田佐野周二)は四人に隠さなかった。何とも後味の悪いスタートをきったのである。
第2話では四人に仮配属が言い渡される。は御赦免人別係、黒木は隠密回り、佐野は高積見回り役、関口は吟味方である。日頃時代劇を見ている人なら分かるであろう役回りだろう。隠密回りは変装して事件を探る、高積見回りは言葉通り道端に高く積まれている荷物を計って指導する役。「影同心」で渡瀬恒彦がやっていた表の仕事だ。
第3話は黒木のかつての仲間だった英次椎名勝巳)が殺人事件を起こす。二人だけで会いたいという英次に黒木が一人で向い自首を促すが、関口が独断で捕方を引き連れて英次を捕らえる。それで、黒木と関口が対立するという話。
第4話は元同心の榊(庄司永建)が、かつての同僚加川戸浦六宏)を付け狙う話。他に山東昭子、近石真介がゲスト。
第7話は江戸を離れての話だが、「柔道一代」でレギュラーを務めた黒丸良が八州回り役で登場。黒木や佐野が八州回りの領域に踏み込んでしまうのだが、八州は「目的は同じだ」と物わかりの良い人物であった。
第9話は誘拐の話で進藤英太郎、江戸家猫八、穂積隆信などがゲスト出演。この回で四人は見習いから正式な同心となる。林と佐野は定町回り、黒木は隠密回り、関口は吟味方と2話で言い渡された役を踏襲している。
第10話は65年元日の放送だったようで、劇中でも大晦日から元旦が描かれている。大辻伺郎、石浜朗がゲストで、牢破りの話である。
第12話は克美しげるがゲスト出演。書き忘れていたが、本作の主題歌は克美が歌っている。当時は人気絶頂だったが、ご存知と思うがこの10年後に殺人事件を起こすのである。
最終話は水島道太郎がゲストだが、主役も水島が持って行ってしまった感じであった。
監督・企画の飯島敏宏によれば、米の戦争ドラマ「コンバット」をイメージした時代劇だったという。つまり小隊長が佐野周二で、軍曹が戸浦六宏ということだったようだが、「コンバット」を感じた人はあまりいなさそうな気がする。

青年同心隊

人気を呼んだ「柔道一代」の後番組だったのが「青年同心隊」(64年)という時代劇なのである。
TBSのプロデューサーだった飯島敏宏の企画であった。飯島は3年に渡って放送された「月曜日の男」(61~64年)では、プロデューサーでありながら演出や脚本も担当。63年から国際放映に出向し、「柔道一代」の途中から監督として参加するようになり、その流れでの「青年同心隊」である。この後、円谷プロに出向し「ウルトラQ」を皮切りに「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「怪奇大作戦」で監督・脚本を務めることになる。
さて「青年同心隊」だが、数年前にCS(時代劇専門チャンネル)で放送されたのである。60年も前の誰も知らないような作品の映像がよく残っていたなと(しかも全話)思う。国際放映は結構映像が残っているイメージがある。
端的に言うと四人の見習い同心の成長物語である。その四人とは林兵馬西島一)、黒木荘司高島英志郎)、佐野金六石川進)、関口信吾石間健史)である。彼等の上司となるのが次席同心の加川隼人戸浦六宏)であり、与力の久保田雅之佐野周二)である。加川は隻眼で、鬼と恐れられる存在だが、逆に久保田は平素は穏やかな人物である。久保田の娘が志乃紫志乃)で、レギュラーと言えるのはこの七人。後は岡っ引きの八十吉土屋靖雄)や伸六柳谷寛)、魚屋の娘おけい裕圭子)が2~3度づつ登場している。
この中では佐野周二は言わずと知れた映画スターだが、58年頃からテレビドラマにも進出。見習い同心の役名が佐野や関口(本名・関口正三郎)なのは偶然ではなさそうだ。
戸浦六宏は既にベテラン感があったが、当時34歳で、映画やテレビに出始めたのは60年になってからである。京都大学時代から演劇はやっていたが、卒業後は高校の英語教師に。同窓だった大島渚が監督する「太陽の墓場」(60年)に出演することになったのがデビュー作となる。悪役のイメージが強いが「新選組始末記」(61~62年)では土方歳三を演じており、当時はまだそのイメージが強かったかもしれない。
石川進は当時31歳。53年にハワイアンバンドのメンバーとしてデビューし、ダニ飯田とパラダイスキングのボーカルとしてしられるようになる。62年にソロとなり歌手だけでなく俳優や声優、司会者としての活動もスタートさせている。
高島英志郎は前作「柔道一代」から引き続きの出演。東映ニューフェイス高島新太郎としてデビューしたが、「柔道一代」の途中で英志郎に変更したようだ。スピンオフではないが、その時間に馴染みのある役者がいた方がいいと思ったのだろうか。石間健史は詳細不明だが、テレビドラマデータベースでは60年頃からその名が見られ、79年まで出演記録がある。
西島一紫志乃はオーディションで選んだ全くの新人である。飯島は予算の関係と清新なイメージを強調したくて二人を選んだが、それが裏目に出たと後に語っている。佐野や石川のギャラは高そうな気がするけれども。視聴率は振るわず13話で終了してしまうのである。

柔道一代 その2

前回に続いて「柔道一代」(62~64年)である。
メインの五人の他に瞬海和尚役の陶隆がレギュラー扱いのようである。他はゲスト扱いになっているが、判明しているところでは飯田覚三、高松正雄、小山明子、柳生博、田崎潤、岸正子(加賀ちか子)、近衛敏明、龍崎一郎、山本豊三、藤田佳子、松本朝夫、小笠原弘、関みどり、磯村みどり、宮城千賀子、江見俊太郎、松村達雄、成瀬昌彦、小林重四郎、清川新吾、牟田悌三、長内美那子、吉田義夫、初名美香、浅見比呂志、上田吉二郎、丘野美子、六本木真、津沢彰秀、高木二朗、高須賀忍(沖竜次)、嵐寛寿郎といったところである。
新東宝の出身者が結構いるが、これは制作がTBS及びNACだからであろう。NACとはニッポン・アートフィルム・カンパニーの略。61年に新東宝が倒産すると清算会社としての新東宝、配給会社の大宝、制作部門のNACの3社に分割された。大宝の配給作品は5作のみで終わったが、NACはテレビドラマに進出し成功を収め、64年に国際放映に改称され、現在も会社は継続中だが、2018年にドラマ制作からは撤退したらしい。
上記の出演者で役柄がはっきりしているのは、嘉納の師匠にあたる飯久保恒春役の飯田覚三明治天皇役の嵐寛寿郎くらいだ。アラカンの天皇役というのは新東宝の映画でもお馴染み。37話が「明治天皇御前試合」なので、そこに登場するようだ。
脚本は池上金男、七条門、藤川桂介、山浦弘靖などが担当したが、33話のみ大島渚が担当している。これは大島がこの回を担当した監督の中川信夫のファンだからということらしい。監督は仲川の他、柴田吉太郎、小野田嘉幹、山田達雄など。ちなみに、33話のゲストとして大島の妻である小山明子が出ている。
元々は26回の予定でスタートしたと言うが、好評で延長を重ね最終的には全95話となっている。ただ、最後のほうになると嘉納の人生のいつ頃を描いているのか曖昧で、主演の御木本伸介も「演じている自分たちもよくわからない」と語っていたそうだ。
番組主題歌である村田英雄の「柔道一代」も大ヒット。63年に東映で映画化されるが、キャストは全く違っており、村田の主題歌のみそのまま使われた。主演は千葉真一だが、嘉納治五郎ではなく西郷四郎にあたる人物(本郷四郎)が主役だ。嘉納にあたる香野杉浦直樹、富田にあたる戸田室田日出男、横山にあたる横川曽根晴美、山下に当たる中山山本麟一である。こちらには村田も本郷と友情を結ぶ大村という役で出演しており、しかもクレジットは千葉やヒロインの佐久間良子を差し置いてトップである。
以前、どこかで書いたのだが終盤に嘉納のライバル役で出演していた高須賀忍(新東宝時代は沖竜次)は最終話収録後に、映画の撮影で赤尾関三蔵と手錠で繋がれたまま川を渡るシーンで、共に流されてしまいそのまま行方不明に(二人の遺体は見つからなかった)。「柔道一代」の方はまだアフレコが残っていたが、高木二朗が代役でアフレコしたという。

柔道一代

急に時代が遡るのだが、当時流行った柔道ドラマの中から「柔道一代」(62~64年)である。
柔道と言えば嘉納治五郎というくらい、自分もそうだが柔道を知らん人でもその名は知っているという人は多いのではないか。本作はその嘉納を主人公とした初の映像作品だそうだ。
嘉納と講道館四天王と呼ばれた四人の高弟をモデルとした作品である。ただ、フィクションな部分も織り込まれているので、登場人物は全て(よく似た)仮名となっている。講道館も弘道館となっているが、まあそのままに近い。
嘉納治五郎は真野修五郎、富田常次郎は宮田源次郎、西郷四郎は郷文四郎、横山作次郎は横川耕次郎、山下義韶は山上義郎とそれぞれ変えられている。山下のみ名前に「郎」が付かないが、本作では全員「郎」で終わる名前に統一している。ちなみに「姿三四郎」の作者富田常雄は、富田常次郎の息子で、三四郎のモデルとなったのは父ではなく西郷四郎である。
出演者だが主役の真野には御木本伸介宮田黒丸良高島新太郎横川友田輝山上宇南山宏となっている。師匠と弟子というとかなりの年齢差を想像してしまうが、実際の嘉納と四天王の年齢差は4~6歳程度なので、キャスティングもそんな感じになっているようだ。
主演の御木本伸介は当時32歳。大学時代に新東宝の「戦艦大和」(53年)にエキストラ出演したことをっきかけに、55年に新東宝に入社する。主に助演として活躍するが、「三人の女強盗」(60年)では、三人の女強盗犯(万里昌代、星輝美、左京路子)を乗せてしまう主役のタクシー運転手を演じている。新東宝倒産後はテレビを中心に活動するが「新選組始末記」(61~62年)の伊東甲子太郎役が好評で、本作の抜擢に至ったらしい。柔道はほぼ未経験であった。
黒丸良も新東宝の脇役俳優出身だが、詳しいプロフィールは不明で59年にデビューしたと思われる。何と言っても「マグマ大使」(66~67年)の木田記者役が有名だろう。南廣千波丈太郎を合わせたような顔が特徴だ(個人的見地)。
高島新太郎は当時25歳。東映ニューフェイス5期生出身で、同期は梅宮辰夫、八代万智子、応蘭芳など。映画よりテレビでの活躍が目立ち「雪麿一本刀」「風雲黒潮丸」(61~62年)などでは主役を演じている。本作の放映中63年に東映を退社。主要キャスト5人の中では一番柔道ができたという。「特別機動捜査隊」では山崎刑事を数年に渡って演じたが、その間に新太郎→英志郎→弘行と芸名を変えている。「特捜隊」降板後に姿を消してしまった。
友田輝は当時27歳。大映出身で59年にデビューし、「拳銃の掟」「襲われた手術室」(60年)等では、主役に抜擢されている。テレビでは「黒いパトカー」(61年)の主演や、「隠密剣士」の第二部(63年)では、敵役の頭領・甲賀竜四郎を演じている。「新忍者部隊月光」(66年)で敵の首領・幻影仮面を演じたのが出演記録の最後となっている。
宇南山宏は当時28歳。当時は青年座という劇団に属しており、彼のみ映画会社出身の俳優ではない。地味に脇役として長く活動し、70年代後半は日活ロマンポルノにも数多く出演していた。80年代も結構テレビには出演していたが、84年に突然の鉄道自殺。48歳であった。
役者紹介で終わってしまったので、次回に続く。

赤い靴

もう一つだけ女子スポ根ものを。数回前にちょっと話題に出ているい「赤い靴」(72~73年)である。タイトルだけで想像がつくかどうか微妙だが、バレリーナの世界を描いたものだ。今「赤い靴」で検索すると韓流ドラマがトップに出てきたりするが、どうやらサスペンス的な作品のようで、この「赤い靴」とは何の関係もなさそうである。知らんけど。
等ブログでも15年ほど前に取り上げたことがあった若干間違っている部分もあるようだ。そんなわけで改めてになるが、本放送当時は存在は知っていた気がするが、自分が見るタイプのドラマではないので、まともに見たことは無い。CSでも少なくとも自分が加入してからは、放送されていないし、動画などもOPが挙がっている程度なので、大雑把な部分しか知らないのは15年前と一緒である。
原作と脚本は上條逸雄で、製作はTBSと東宝である。その内容はヒロインの小田切美保がバレリーナだった母の後を継ぎ、「和泉バレエ団」に入団し、プリマドンナを目指していくというお話。
その美保を演じるのは「ゆうきみほ」で当時23歳。この時点では女優だったわけではなく、4歳からバレエを始め、16歳の時にプロのバレエダンサーとしてデビュー。二度にわたりニューヨークにバレエ留学もしているという本格派のバレリーナだったのである。本名は靭(うつぼ)啓子という珍しい名前なこともあり、作家の五味川純平よりゆうきみほという芸名をもらったという。ちなみに「靭」とは矢を入れる容器のことで、魚のウツボは「鱓」と書く。そういえば、この頃の樹木希林の芸名は悠木千帆(ゆうきちほ)で、一字違いである。ちなみに彼女の本名は中谷啓子(旧姓)で、同じ啓子だったのである。
話を戻すと当初から本職のプリマ級の人を起用しようと牧阿佐美バレエ団にいた彼女に目を付け、交渉したが、一時は決裂し企画が延期になったりしたという。ライバルの甲斐鏡子には「金メダルへのターン」で主演だった梅田智子が起用されたが、本作では梅田智美を名乗っていたようだ。ちなみに彼女も10年以上のバレエ歴があった。ライバルイコールいじめ役というわけではなく、先輩の稲村節子八代るみ子)が、その役を担ったようだ。演じた八代については詳細不明だが、本作がデビューらしく、以降は「太陽にほえろ」や「どてらい奴」にゲスト出演した記録がある程度で、75年頃には引退したと思われる。
「和泉バレエ団」の代表・和泉邦江南風洋子。宝塚歌劇団出身で、名前は南田洋子に似ているが顔は岸田今日子に似た感じである。「みなかぜ」と読むのが正しいらしい。あと、竜崎勝が(恐らく)勝山というバレエ団のコーチか何かの役で出ている。また「金メダルへのターン」でライバル役だった森田敏子が、ヒロイン美保の憧れの存在である元プリマドンナ・菊村彩子を演じている。
バレエ団のメンバーに、関谷益美、渡辺静、麻衣ルリ子(毬杏双)、佐々木梨里など。関谷は「特捜最前線」の高杉婦警でお馴染みとなる。佐々木は幻の特撮ドラマ「魔神バンダー」の主題歌を歌っている人(のはず)。少年のようなパンチの聞いた歌声である。
他の出演者に有島一郎、草笛光子、佐竹明夫、星十郎、宇南山宏、矢野間啓二、成川哲夫、内田喜郎、小早川純、早乙女ゆう、絹かずみ等である。
番組は好調で、半年の予定が1年52回続いた。ゆうきはその後も「隠密剣士突っ走れ」や「白い牙」などにゲスト出演したが74年限りで女優業を辞め、バレエの世界に戻っていった。しかし「ゆうきみほ」の名はバレエ界でもそのまま使っているおり、現在もバレエの活動を続けているようだ。

紅い稲妻

今回も70年の女性主人公ドラマから「紅い稲妻」を取り上げたい。
とは言っても本作の動画などは一切ネット上には挙がってないし、それも道理でどうやらフィルムの所在が不明らしく、まさに幻のドラマとなっているようだ。
資料と言えるのもウィキペディア情報くらいしかない。あらすじは次の通りだ。
祖父から沖縄空手の手ほどきを受け達人となった沖縄の少女・松村奈美は行方不明となった父を探すため、船で密航という形で上京する。しかし、その行く手を阻む謎の空手家組織が立ちはだかる。奈美は必殺技「くれない三段蹴り」を駆使して、父との再会を夢見て、兄と共に組織との激闘を繰り広げるというもの。
とても非現実的で面白そうな気がする。ジャンルがよくわからんが、変身はしないが特撮ヒーロー(ヒロイン)ものに近いかも。
原作・脚本はその沖縄出身の上原正三。70年だとまだ沖縄は返還されておらず、それで密航という手段で上京という話にしたのだろう。どうせなら主人公一家の苗字も具志堅とか金城とか渡嘉敷とか沖縄っぽくすればいいのにと思ってしまった。音楽は大塩潤となっているが、これは渡辺岳夫のことである。実は本作の裏番組はアニメ「巨人の星」だった。その音楽を担当していたのも渡辺だったため変名が使われたそうだ。
ヒロイン奈美を演じるのは新人の沖わか子で、当時18歳。これが初めてのドラマ出演だったらしい。沖わか子と言えば、「仮面ライダー」(71~72年)に登場する俗に言う「ライダーガールズ」の一人ユリ役が有名だろう。なにしろ2号ライダーが登場した14話から彼女も登場し、最終話まで出演していたので「ライダーガールズ」では一番長かったので、覚えている人も多いかも。沖わか子の芸名は前述の渡辺が名付けたという。単純に沖は沖縄の沖で、わか子は本名(和嘉子)から。ちなみに彼女は東京出身だ。
奈美の祖父・賢才には往年の大スターアラカンこと嵐寛寿郎で、当時68歳。テレビは60年代から顔を出し始めていたが、ほとんどが時代劇でこういった若年齢層向け現代劇への出演は珍しかったかも。
奈美の父(名は不明)に菅原謙次。50年代は大映で主演スターの一人で空手ではなく柔道もので人気があった。60年にフリーとなりドラマ「七人の刑事」にレギュラー出演し、お茶の間でも人気を得た。本作では組織の陰謀を阻止するために師範代として潜入していたという役どころだ。
兄・政彦役は井上紀明。東宝の脇役俳優で、あまり目立った役はないが、特撮ファンには「マイティジャック」(68年)の寺川隊員で知られてるかも。
組織の首領・円徹には松本克平。アラカンと3歳しか違わない65歳であったが、この人はやはり東映の「警視庁物語」シリーズ(56~64年)での捜査課長役が印象に強く、悪役のイメージはない。戦後は俳優座に所属していた。
他には敵対するライバル役として石橋正次。恐らく敵役であろう亀石征一郎安岡力也などが出演していたことが判明している。
本作の制作は新国劇映画社。辰巳柳太郎、島田正吾でお馴染みの新国劇の映像部門とでも言うのだろうか。当時フジテレビと提携していたが、72年には解消している。前述の二人以外には緒形拳や若林豪も出身者だが、本作には石橋正次くらいしか出演していない。
前述のとおり、裏番組に「巨人の星」があったこともあり、視聴率も伸び悩み早々と13話での終了が決定した。主題歌は堀江美都子で、アニメの印象しかなかったが、ドラマも結構やっていたようだ。主演の沖はそのご、高梨わか子と芸名を改めたりしたが、74年には引退してしまったようだ。印象より活動期間は短かったのである。