若くて悪くて凄いこいつら
今回も高橋英樹である。前項の「星の瞳をもつ男」の翌月に公開されたのが「若くて悪くて凄いこいつら」(62年)である。覚えづらいタイトルだなと思うのだが、原作は日活作品ではあまりない柴田錬三郎なのである。それに柴錬と言えば時代作家のイメージが強いが、本作は時代劇ではないのだ。アクション映画の部類に入ると思うが原作はどうか知らんが、ほとんどコメディといえると思う。
髙橋英樹の調子っぱずれなタイトルと同名の主題歌で始まる本作だが、作詞は谷川俊太郎である。前項では、それほどヘタではないと思った高橋の歌唱だが、本作ではヘタクソに聞こえる。まあ上手に歌い上げるような曲ではないけれども。
冒頭、オープンカーを運転する浩(高橋)の後ろ姿。姿は見えないが後部座席から俊夫(和田浩治)と新子(和泉雅子)の声。どうやら俊夫が新子の服を無理矢理脱がせているようだ。左ハンドルなので外車だとわかる。本作ではダンプとパトカーを除き登場する車は全て外車なのである。ベンツはすぐわかるのだが、他は多分アメ車でクライスラーかフォードあたりだろう(適当)。
山道でセーター1枚の新子を置き去りにする二人。こんな目にあっても新子はこの後も彼らとつるみ続けるのである。そこへ通りかかるベンツ。運転していたのは政界の大物・佐倉(清水将夫)で、新子を拾い軽井沢の別荘に連れていった。後から新子を探しに来た俊夫がその別荘で彼女を発見。そこへ怪しげな二人(榎木兵衛、青木富夫)が訪ねてくる。その場にいた俊夫、新子と言い争いになり、俊夫が足を撃たれてしまう。付近に待機していた浩が車で彼らを追い駈ける。追いつくと、車の中に火炎ビンを投げ込むのである。火だるまになる二人。ちなみに、その一人青木富夫だが、戦前は「突貫小僧」の芸名で小津映画などで活躍した名子役だった役者なのである。成人したらただの人というか、セリフもないような端役ばかりになり、今回の通称・ガイコツはかなり目立つ方の役であろう。
こうして佐倉と出会った三人だが、彼は自殺を考えていたのである。しかし死んだはずの孫娘・圭子(進千賀子)が生きており財界の黒幕に監禁されていると判明する。 圭子救出の条件として要求されたのは、財政界の汚職を記録した極秘文書「佐倉メモ」。 浩たちは佐倉を守り、圭子を取り戻すため、大学の仲間である和正(山内賢)と徳子(清水まゆみ)も率いれ五人で悪に立ち向かって行くのである。というようなストーリーだが、ただの大学生なのにヤクザまがいの連中にビビることもない。全員大学生設定だが、実年齢で20歳超えは清水だけ(22歳)。高橋と山内は19歳になる年齢だが、和田は入社は早いがまだ17歳、和泉は15歳である。
浩は孤児だが、親の遺産と株で自由に暮らすという設定。和正が暮す綾小路家は実際に大金持ちで、その伯母さまを演じるのが北林谷栄で当時51歳だが、80くらいに見えるようなメイクを施している。新子の母親役が宮城千賀子で、当時40歳。「女の60分」の印象が強く、こういう艶っぽい感じの時もあったんだなと改めて思った。進千賀子は本作が実質的なデビュー作となる。それなりに出番もあるのにクレジット上の扱いは小さい。ちょっと前までは主役もあった葉山良二だが、本作では六番手扱い。彼等の敵だか味方だかな通称・眠狂四郎という殺し屋を演じている。まあ柴錬の原作なので。
他にも二本柳寛、安部徹、三津田健、草薙幸二郎、細川ちか子、武藤章生、野呂圭介など。武藤はヤクザまがいな連中の一人で通称「笑い屋」で、野呂は珍しく警官役である。
星の瞳をもつ男
日活映画が続くが、今回は高橋英樹である。高橋英樹と言えば「男の紋章」(63年)を始めとした日活任侠映画のスターというイメージだが、今回はその路線に行く前の青春アクション映画「星の瞳をもつ男」(62年)である。
高橋英樹は高校在学中に第5期日活ニューフェイスに合格し、61年に17歳でデビューしている。同期となるのが中尾彬、竜崎勝(高島史旭)などだが竜崎は数本端役で出演した後に退社し、俳優座養成所へ。中尾は当時の雑誌では合格者に名前がなかったが、後に編入されたらしい。
翌62年に赤木圭一郎の急死に伴い「激流に生きる男」の主演に抜擢される。そこから主役スターの道を歩くことになり、その三か月後に公開されたのが「星の瞳をもつ男」である。高橋は当時18歳で、ヒロインの吉永小百合が17歳、山内賢が弟役だが実際は高橋と同じ18歳で誕生日も山内の方が早いのである。
高橋英樹と吉永小百合にあまり共演のイメージがないが、前述の「激流に生きる男」がこのコンビだし、翌63年の「伊豆の踊り子」もこのコンビである。ただ、高橋が任侠路線に行ってからは共演が減り、結果としてデビュー初期の頃に集中している形となったのである。
本作では、高橋演じる榊英司が刑務所から出所してきた所から始まるので、英司の設定年齢は22歳以上ということになると思う(刑期は約2年で少年院ではないので)。実際18歳には見えず大人っぽくて23~24という感じであろうか。英司は元々働いていた自動車工場の娘である冴子(吉永)と再会し、またそこで働くことになる。一方、英司が傷害事件を起こすきっかけとなった弟の光郎(山内)は人気歌手榊ミツオとなっていた。その恋人がジャズ喫茶などで歌う歌手の峰かおり(田代みどり)である。英司は偶然、音楽事務所の社長千紗(吉行和子)に見いだされ、光郎と同じ歌手の道を歩むことになる。英司の人気は光郎を越えるようになり、兄弟間にしこりが生まれるようになる。
というような話なのでアクション映画なのだが、主題歌挿入歌合わせて8曲ある歌謡映画だったりするのだ。山内は歌唱に定評があり、後に日活バンド「ヤングアンドフレッシュ」のボーカルも務めるくらいなので3曲、田代みどり(当時14歳)は元々歌手なので2曲、高橋も主役なので2曲披露している。ちなみにこれは3万を超える応募作品から選ばれたもの。高橋が歌っているイメージがあまりないと思うが、初期の頃は結構歌っており、ヘタというわけではない(うまいとも言えないが)。意外なのは吉永小百合で、ヒロインの時はだいたい歌っているイメージだが、今回は高橋の伴奏者に徹しており歌うことはない。
他の出演者だが、北村和夫、深江章喜、杉狂児、賀原夏子、富田仲次郎、高城淳一、土方弘、中村是好など。深江章喜とは、高橋がテレビ時代劇の主役スターとなってからも「ぶらり信兵衛道場破り」「桃太郎侍」などでも共演が続くことになる。
ネタバレになるが、本作のラストで英司とミツオは和解し、めだたしめでたしとなるのだが、二人のステージ上でのやり取りにはみんな驚くのではないか。普通なら二人で見事な歌唱を披露して拍手喝采で終わりそうなものだが、二人で食料品(そばめん、パン、小麦粉、卵など)のぶつけ合いを始めるのである。現代なら食べ物を粗末にするなと抗議殺到となるところだが、20世紀の時点ではコントなどでよくやっていたことだ。にしても、本作では唐突過ぎて驚いてしまうのである。ちなみに兄弟デュエットのタイトルは「兄弟仔豚」という。
七人の野獣 血の宣言
もう一作、江崎実生監督作品から「七人の野獣 血の宣言」(67年)である。脚本も江崎が担当している。
「七人の野獣」(67年)の続編なのだが、今一つ詳細が不明な部分が多かったりする。「血の宣言」の方はスカパーで放送されたり、YouTubeで公開されたりしているのだが、前作はどちらも未公開のようなのである。そのせいか、当時のポスターには真理アンヌの名前はあるが、実際に出ているのか不明という感じになっていたりするのだ。ここで言う「七人」とは丹波哲郎(木戸)、宍戸錠(佐東)、内田良平(片山)、岡田真澄(辺見)、高品格(芹沢)、郷鍈治(スケコマシの鉄)、深江章喜(金本)のことを言うようだ。高品と郷は兄弟設定だが、実の兄弟か兄弟分なのかははっきりしない。実の兄弟なら似てなさすぎる。彼等が某国所有の別荘にある(らしい)三億円を奪おうとするお話で、他に松原智恵子、安部徹、柳瀬志郎、江角英明などが出演している。
で続編の「血の宣言」で、こちらは見たのだが、タイトルから想像されるようなハードなアクション作品ではない。一言でいえば、空回りなコメディ作品とでも言うのだろうか。これが前項「太陽西から昇る」と同じ人の監督作品なのかと思うほど作風が違う。思わず苦笑してしまうような場面の連続なのである。
今回の「七人」は若干の変更がある。丹波、岡田、高品、郷は前作同じ役のようだが、片山役は内田良平から青木義朗に変わっている。青木といえばどうしても「特別機動捜査隊」での三船主任のイメージが強く、ほとんどニコリともしない鬼刑事の印象だ。しかし、本作ではかなりコミカルな男で、自分的には見たことのない青木義朗だ。彼がバナナの叩き売りをしている場面から映画は始まるのだ。新顔が彼等と留置場で出会う小池朝雄(太田)である。前回は「七人」の深江章喜も出演しているのだが、今回は別役で悪党側である。それにしても、丹波、青木、高品、小池など後に刑事役として活躍する人が多い。これで六人なのだが、残る一人は出演者にも名前のある宍戸錠のはずだが(クレジット順も二番目)、いつまで経っても出てこない。
実質六人で今回の計画は遂行される。悪玉プロモーターの富田仲次郎(大黒)が担う競馬場の売上金(約三億)を強奪しようとするというもの。しかし、結局それを拾ったと称して警察に届けて三千万を手にするのである。しかし、それを大黒の愛人・弓恵子に奪われ、さらにそれを女スリの山本陽子がスリとるのである。いやいや三千万はすれないだろうというツッコミは野暮なのだろう。
他の出演者だが、小高雄二、浜川智子、榎木兵衛、桂小かん、木島一郎、河上喜史朗など。
そして、ラストシーンだが留置場の中、初めて宍戸錠が姿を現す。「六人」に新たな計画を持ちかけているのである。前作とは違う役なのだろう(最後に裏切って倒されているらしい)。これで「七人」ということになるのだろうか。
丹波哲郎に日活作品のイメージがあまりないが、実際に多くはない(10数本だろうか)。新東宝を出て以降は基本的にフリーなのでどこにでも顔を出すのだが、60年代前半は2、3本しかなく「七人の野獣」が6年ぶりくらいの日活出演になるようだ(大雑把に調べただけだが)。
太陽西から昇る
前回の「花嫁は十五才」で監督デビューした江崎実生が次に監督した作品が「太陽西から昇る」(64年)である。「西から昇ったおひさまが東へ沈む~」という唄で始まるのはアニメ「天才バカボン」だが、本作は別にコメディではないし、アホな映画でもない。終始シリアスな雰囲気に包まれている。
正にこれを書いている今日(3月7日)にスカパーで放送されたようだが、自分はそのチャンネル(衛星劇場)には未加入なので(高いから)、YouTube経由である。違法動画ではなくちゃんと公式(つまり日活)で公開しているやつである。
主演は浅丘ルリ子だが、その相手役は長谷川明男なのである。長谷川といえば大映のイメージだが、この時点ではまだ未所属だったのかもしれない。子役としてデビューし、テレビドラマに数本出演してから東宝の「林檎の花咲く町」(63年)で映画デビューしており、恐らく本作が初の日活出演と思われる。突如として準主演に抜擢された経緯は不明だが、長谷川も和田浩治と同様に当時は石原裕次郎に似ていると言われていたのである(もちろん顔がシュッとしていた頃)。実は本作では石原裕次郎邸が撮影に使われているという。プール付きの豪華な家が登場するがそこがそうらしい。裕次郎本人は出ないが似た奴を出そうとということになったのかも。
さて「太陽西から昇る」だが、大学生の康子(浅丘)は小野寺建設の社長令嬢、亜紀(槇杏子)の家庭教師を務めることになった。小野寺邸は父・重樹(芦田伸介)と女中・シノ、そして居候の日下浩(長谷川)という青年の四人暮らしだった。浩の父は小野寺建設の経理課長をしていたが、汚職事件の渦中に巻き込まれて自殺、そのため浩は小野寺に引き取られたのだった。浩は大学をさぼり昼は庭のプールでゴロゴロし、夜は仲間の溜まり場“ブルーマンディ”で憂さを晴らしていた。康子は何故かそんな浩に惹かれていくのだった。
浩の友人である久我(中尾彬)、仲間の一人で浩にベッタリなノン(設楽香乃)、店のバーテン・ガン(平田大三郎)、黒田組のヤクザ権田(草薙幸二郎)らが主な登場人物である。中尾は61年に日活ニューフェイスとして採用されながら翌年には退社。この時は民藝の一員だ。平田も60年代の日活作品を見ていない人には馴染みの薄い役者であろう。それよりも浅丘以外の若い女性として出演している槇杏子、設楽香乃はもっと馴染みがないだろう。槇は本作では高校生役だが、恐らくそのぐらいの年齢だったと思われる。映画出演はどうやら5本程度で記録上ラストなのは、やはり江崎が監督の小林旭主演「女の警察」(69年)である。こちらではホステスの役である。設楽も年齢とかは不明だが、読者モデル出身で、映画出演は本作含めて2本だけのようだ。もう1本は松竹なので本作が唯一の日活映画出演作となる。本作ではずべ公のような役だが、実際はバレエをやったりピアノをやったりの総立ちのいいお嬢様らしい。彼女の弟は当時の人気子役だった設楽幸嗣である。
久我、ノンと相次いで浩の前で不慮の死を遂げ、父の死は自殺ではなく小野寺の差し金によるものと知った浩はニューヨークへ行こうとしていた小野寺を殺害する。二か月後、逮捕された浩が小菅刑務所に移送されることを知った康子はその塀の前で護送車を待っていたが…。
当時の「映画芸術」でベストテン第1位に選出されたという。おしゃれな画面づくりで専門家が好みそうな作品ではあるだろうと感じた。客が入るかどうかは微妙な気がするけれども。
花嫁は十五才
前回の「駈けだし刑事」(64年)から約三カ月後に公開されたのが「花嫁は十五才」(64年)である。
本作を選んだのはネットで公開中というのもあるが、両作品の原作が同じ藤原審爾だったからである。普通に推理サスペンスといった分野の人だと思っていたのだが、ジャンルは多岐に及び本作のように恋愛ものも書く人というのを初めて知った。まあ、その作品を一つも読んだことがなかったためである。
そのタイトルから恋愛コメディ的なものか「三年B組金八先生」における「十五歳の母」みたいな物を想像するこもしれないが、そのどちらでもない。
主演は和泉雅子と山内賢というお馴染みの「二人の銀座」コンビ。和泉の相手役は高橋英樹も多いが、個人的には山内賢が一番しっくりくる気がする。当時の実年齢は和泉が16歳で山内は20歳だったが、設定では和泉の演じる牧山弘子はタイトル通り15歳で山内の演じる片山むく太は17歳である。当時も今と変わらずで結婚可能年齢には共に1歳足りないのだ。にしても山内の役名である「むく太」というのは虚構でも現実世界でも初耳な名前である。漢字で書くと「椋太」ということになろうか。
その「むく太」は熊本で中学卒業後、叔父の養鶏場で働いていたがイヤになりあてもなく上京。まあ当時は高校に進学せず働くことはそれほど珍しくはなかった。と言っても進学率は65年で70%、2010年以降からは99%弱が続いている。で都電の中で弘子と出会い、最寄りの停留所のまえにある牛乳屋で働くことになる。弘子は15歳ということで中学生という設定なのだが、共学ではないようである。女子中というのは基本は女子高とセットで、いいとこの娘が通うというイメージである。弘子の家庭は母親は二年前に他界し、銀行の守衛である父(下條正巳)と二人暮らし。この時代のヒロインは貧乏と相場が決っていたが、裕福というわけではないがそこまで貧乏でもない感じであろうか、当初は。
当初はというのは、結局貧乏に陥る事件が起きるからである。弘子の父が銀行強盗に射殺されるのである。射殺シーンがあるわけではないが、銀行から走り去る車を配達中のむく太が目撃。自分も銃口を向けられるが、そのまま逃走。もしやと感じたむく太が倒れている彼女の父を発見することになる。その辺が藤原テイストなのかもしれない。で、弘子が一人ぼっちになったので、むく太は結婚を考えるようになるわけである。しかし年齢が壁になる。まあ一年くらい待てよという話なのだが。
ライバルの赤羽牛乳というのが登場するが実際撮影は北区赤羽付近で行われた模様。本作のロケ地を探訪する動画があるのだが、仕事でこの辺に通っていたことがあり、分かる場所もあったりする。
他の出演者だが、東野英治郎、奈良岡朋子、杉山俊夫、香月美奈子、初井言栄、高原駿雄などで、和泉のクラスメート役で山本陽子、西尾三枝子、有田双美子などが出演しているが、和泉演じる弘子と親しい娘というのはいないようである。
結局、何も解決しないまま終わるのだが、悲痛なエンディングというわけではない。狭い部屋の中で抱き合う二人の周囲をカメラが360度ぐるぐる回るのである。ここまで回るのは中々ないと思う。監督は本作がデビュー作である江崎実生(みおと読む)。大映テレビ制作のドラマでよく見かける名前ではないだろうか。助監督は藤田繁夫(敏八)で、山内が歌う主題歌の作詞も彼である。
駈けだし刑事
もう一作、日活の刑事ものから「駈けだし刑事」(64年)を。シリーズものではなく単発ものである。
原作は藤原審爾の「若い刑事」で、新宿警察シリーズの第1作だったようだ。原作小説を読んだことはないのだが、根来刑事を始めとする刑事たちの活躍を描いたシリーズ作品と解説にはあり、75年に「新宿警察」のタイトルで東映でドラマ化され、北大路欣也が根来刑事を演じていた。他の登場人物、結城刑事(藤竜也)、山辺刑事(財津一郎)、徳田刑事(花沢徳衛)、仙田主任(小池朝雄)らが原作に存在するかどうかは調査できなかった。この「駆け出し刑事」の主役は新米の新田刑事であり長門裕之(当時30歳)が演じている。舞台は当然、新宿警察署だが、当時新宿にあったのは淀橋警察署であり、新宿署はあくまでも架空の警察署であった。69年に改称され新宿署となっており、前述のドラマの時には存在していたので、架空の角筈署という名前を使っていた。
主演の長門は石原裕次郎、小林旭、宍戸錠、渡哲也辺りと比べると華はないし、なんとかラインにも入っていないのだが、主演作は結構多い。本人も本質的には脇役だと思うと語っている。54年、映画製作を再開した日活に自ら売り込む形で入社。京都で時代劇などに出演していたが、誰も知らないだろうと思ったので、父親(沢村国太郎)の名前を使ったという。61年には「太陽の季節」などで共演した南田洋子と結婚。62年には日活を退社してフリーになっており、つまり本作の時点では既にフリーの立場だったわけである。
先輩刑事役でコンビを組むのが伊藤雄之助である。見ていてもわかりづらいのだが、新宿署の人間と本庁からの応援組が混在している。伊藤の他は、河上信夫、木浦祐三、そして「機動捜査班」でも刑事役だった花村彰則が新宿署の刑事役。高品格や弘松三郎は普段は悪役だが、本作では本庁の刑事役である。陶隆や、やはり「機動捜査班」でレギュラーだった宮崎準が本庁のお偉いさん役である。
高利貸しの権藤(山田禅二)が殺され、その犯人を綾子(長谷百合)が目撃したという。容疑者である密売人の井上(深江章喜)も殺人に関してはシロのようだった。新人刑事の新田(長門裕之)は昼は花屋、夜はホステスとして働く綾子と親しくなっていくのだが…。井上は「俺の前にスケと野郎がいた」と証言。どうやらそれは綾子と弟の敏夫(鍵山順一)だったらしい。というのがストーリーの概要である。
長谷百合と言えば「スチャラカ社員」(61~67年)の初代事務員として知られる。世代ではないので、実際に見たことはないが、藤田まことの「長谷くーん」は結構有名ではないだろうか。二代目は藤純子、三代目は東山明美、四代目は西川ヘレンと全員が「出世」している。
長谷百合の詳しいプロフィールは不明で、当時24歳で大阪の生まれ。関西の番組を中心に活動していたということくらい。映画出演も少なく本作も含めて全部で5本(日活が4本)だけのようである。翌65年のドラマ出演を最後に活動記録がないので、その辺りで引退したということだろう。
長門の刑事役といえば、「特捜最前線」の蒲生警視。これは二谷英明のケガをきっかけに登場し、準レギュラーとなった。「私鉄沿線97分署」の滝村課長とか、ある程度お偉いさんのイメージ。「スケバン刑事」の暗闇指令(原作では暗闇警視)もそうなのだろうか。
機動捜査班シリーズ
引き続き「機動捜査班」シリーズである。
タイトルの機動捜査班とは捜査四課二係のことで、主役が若手の青山恭二(大宮刑事)で、ほぼ固定されているのが長尾敏之助(遠山係長)、宮崎準(伊藤部長刑事)、花村典昌(金子刑事)である。この中で花村は名前を典克、典昌、彰則と変えているようだ。
前回ちょこっと触れたが、4~5作目は花村ではなく長弘が金子刑事役を演じていた。しかし6作目「暴力」(61年)で花村が復帰し、長弘は村田刑事という役目に変更されている。
しかし7作目「無法地帯」(62年)では再び長弘が金子刑事で、花村の名はない。1作目で伊藤部長刑事役だった二本柳寛がここでは悪の黒幕役である。上野山功一は保安課の刑事として登場している。
62年は他に8作目「東京午前零時」、9作目「港の略奪者」、10作目「東京暴力地図」、11作目「群狼の街」が公開され、花村が金子刑事に定着していたようだ。またちゃんとした役名はないようだが、同僚の刑事として秋山耕志、今村弘、晴海勇三、東郷秀美、平塚仁郎らが出演している。この中では今村弘は日活ニューフェイスの1期生、つまり宍戸錠の同期となるわけだが、その宍戸と最も親しかったのがこの今村のようである。まあ宍戸錠の著書「シシド」を読んだ限りでは、そう感じるのである。宍戸と言えば、弟は郷鍈治だが、郷が8作目より登場し、内田良平と共に悪役の常連となる。前回も書いたが内田と香月美奈子はほぼ毎回のように登場するのである。南寿美子、藤岡重慶、弘松三郎、山田禅二なども出演率は高い。
珍しいところでは、6作目「暴力」に清水まゆみ、8作目「東京午前零時」には三原葉子、10作目「東京暴力地図」に上月左知子、11作目「群狼の街」に和田悦子、金子光伸の名が見られる。金子は内田良平に拉致される幼稚園児を演じていたようだ。ただ、光伸ではなく伸光と誤ってクレジットされていたらしい。
63年は12作目「裸の眼」、13作目「警視十三号応答なし」、最終作「静かなる暴力」と公開されている。
13作目で大きな動きがあった。主役だった青山恭二演じる大宮刑事は、冒頭で研修のため渡米してしまうのである。代わりに移動して来るのが上野山功一演じる新田刑事だ。つまり上野山が新主役なのか、と思ったらそういう扱いではないようだ。本作でのクレジット上のトップは内田良平なのである。勿論、今回も悪役だ。内田に続くのが本シリーズ初登場の白木マリ、そして青山となっている。ちなみに上野山は7番手のようだ。本作は白木のほか松尾嘉代も郷鍈治の妹役で初登場している。
そして最終作だが、情報ではタイトルバックに「機動捜査班」の文字はなかったらしい。故意か忘れたのかは不明だが、それではただの「静かなる暴力」という作品になってしまう。ちなみに、今回もトップクレジットは内田良平である。前回に続き白木マリ、そして初登場の石山健二郎と続く。石山と言えば黒澤映画「天国と地獄」の部長刑事役が印象に深いが実は本作の3カ月前の公開であり、本作では通常の?ヤクザの会長役である。機動捜査班の面々は8~11番手にレギュラー四人(宮崎、上野山、長尾、花村の順)が仲良く並んでいる。まあ当初から悪側を中心に描かれていたが、最後までそのスタイルだったようだ。あと、ノンクレジットだが、竜崎勝が県警の刑事役で出ていたという。元々は高橋英樹と同期となる日活ニューフェイスの5期だったので出ても不思議はないのだが、早々と俳優座に行ってしまうのである。 上映時間は87分とシリーズ一長かったのが最後っぽいかもしれない。
青山恭二は本シリーズを最後に映画に出演することはなくテレビの方へ廻ったようである。恐らくその際に日活も辞めたと思われるが、結局68年に役者を引退したようである。
触れていなかったが、「刑事物語シリーズ」「機動捜査班シリーズ」とも監督は小杉勇。戦前はスター俳優だったが、戦後は監督に転じている。といっても他監督の作品には役者として出演することもあった。シリーズ音楽担当の小杉太一郎は息子である。、
機動捜査班
「刑事物語」シリーズと入れ替わる形で、始まったのが「機動捜査班」シリーズ(61~63年)である。引き続き青山恭二が今回は単独で主演を務める。タイトルを聞くと、どうしても東映の「特別機動捜査隊」を思い出してしまうが、同じ61年スタートではあるが、実は「機動捜査班」の方が約半年早い。「機動捜査」なる言葉を最初に使ったかどうかまではわからないが、その可能性は高そうだ。
このシリーズは全14作あり、上映時間も「刑事物語」シリーズよりは若干長く、70分前後になることが多いようだ。この手の刑事ドラマだと、たいてい捜査一課が主役となるのだが、こちらは捜査四課つまり暴力団関係を扱う部署である。
捜査四課と言えば、テレビドラマでは「大都会~闘いの日々~」(76年)が思い浮かぶ程度であろうか。渡哲也を主役に石原裕次郎率いる石原プロが手掛けたテレビシリーズ第1作で、日活出身者を多く起用したドラマであったが、地味過ぎて人気もイマイチだったこともあり、「大都会partⅡ」からは捜査一課の物語に転じていたりするのだ。
そもそも「機動捜査」とは刑事たちが覆面パトカーに乗って捜査にあたることというのがほぼ同義で、前述の「特別機動捜査隊」もOPは覆面パトカー(サイレンを鳴らしているが)が走っているだけの映像である。ただ、この「機動捜査班」(61年)の第1作を見た限りでは、警察側よりも悪人つまり暴力団側の描写に時間が割かれているのだ。
機動捜査班は青山恭二演じる大宮刑事、コンビを組む二本柳寛演じる伊藤部長刑事、以外の顔ぶれは長尾敏之助、花村典昌、深水吉衛など誰ですか?と言った感じの役者が並ぶが、悪人側は丹波哲郎、内田良平、藤岡重慶、森塚敏といったお馴染みとも言える顔ぶれで彼らに吉行和子、南寿美子が絡むといった構図なのである。絵になるのが悪人側なので、必然的に彼らの出番が長くなるわけである。
第2作は「機動捜査班 罠のある街」(61年)では、主演の青山恭二(大宮刑事)はそのままだが、伊藤部長刑事は宮崎準に変更で、二本柳寛は1作のみの刑事役であった(後に他役で登場する)。長尾敏之助(遠山係長)、花村典昌(金子刑事)は引き続きの登場だが役名は前作と替わっているようだ。伊藤孝雄が別部署の刑事として出演している。ゲストだが、内田良平、南寿美子は引き続きの登場で、他に近藤宏、佐野浅夫、香月美奈子、南風夕子、嵯峨善兵など「刑事物語」に良く出ていた面々が顔を揃えている。
第3作「機動捜査班 秘密会員章」(61年)では、青山恭二の役名が木村刑事になっており、大宮刑事は上野山功一になっている。宮崎準、花村典昌、長尾敏之助は前作と同じ役名である。松原智恵子が青山の妹役で登場。香月美奈子、近藤宏、嵯峨善兵は引き続き同じような役での登場、悪役に草薙幸二郎が加わっている。タイトルの「会員章」だが「会員証」ではないのか?と疑問が浮かぶ。
第4作「機動捜査班 都会の牙」では、青山恭二の役名が大宮刑事に戻っている。宮崎準、長尾敏之助は引き続きの登場だが、金子刑事役は長弘に変更となっている。ゲストの内田良平、香月美奈子は毎回違う役なのだが、レギュラーに近い。山内明、井上昭文、堀恭子などがシリーズ初登場。他に深江章喜、高品格など。
第5作「機動捜査班 東京危険地帯」(61年)では、機動捜査班のメンバーは第4作と同じようだ。内田良平、香月美奈子も当然のように出演。他に菅井一郎、小園蓉子、藤岡重慶、弘松三郎、野呂圭介、山田禅二、星ナオミなど。
刑事物語シリーズ
現状、基本は週一更新になっているが、祝日とかがあると週二もあったりする。というわけで前回の続きで、残りの「刑事物語」である。
予め言っておくと、実際に見たのは1作目だけで他は見たことは無い。で、その「刑事物語 東京の迷路」で書き忘れたのだが、保郎刑事役の待田京介が蝶ネクタイ姿なのが気になった。当時は普通だったのかもしれんが、今は蝶ネクタイで犯罪捜査にあたる刑事はいないだろう。
というわけで第4作「刑事物語 銃声に浮かぶ顔」(60年)である。今回、益田喜頓演じる佐藤源造は隅田署の刑事で、青山恭二演じる佐藤保郎は警視庁の部長刑事という設定のようだ。話は三年の刑事を終えて出所してきた森下(岩下浩)がひき逃げされるところから始まる。同時に源造の拳銃が盗まれるという事件が発生する。ゲストは南風夕子、刈屋ヒデ子、丘野美子、河上信夫、弘松三郎、近江大介、嵯峨善兵など。
第5作は「刑事物語 前科なき拳銃」(60年)である。今回は佐藤源造、保郎の親子刑事がスペイン製の銃を追うというお話。ゲストは中川姿子、南風夕子、佐野浅夫、高品格、深江章喜、木下雅弘などで、山田禅二が捜査主任役。深江や木下が犯人グループのメンバーのようだ。今気づいたのだが、「刑事物語」に良く出てくるのは南風夕子であって、南風洋子ではないのだ。洋子の方は民藝に所属していたので、日活作品にも顔を出しており、名前は南田洋子、顔は岸田今日子に似た感じの女優という印象があった。夕子の方はよくわからないが、芸名の変更による同一人物でも誤植でもなく南風洋子と南風夕子の二人が存在していたようだ。もっとも南風夕子で検索しても南風洋子が出てくるのでややこしい。
第6作は「刑事物語 小さな目撃者」(60年)である。今回の親子刑事は共に向島署の刑事らしい。薬品の密売人たちを追う話のようだ。ゲストは中川姿子、南寿美子、佐野浅夫、杉幸彦、宮崎準、弘松三郎、山田禅二など。中川姿子は姉が中川弘子、妹が中川ゆきで、三姉妹揃って女優としての活動経験がある。父はモダンダンスの父と呼ばれる中川三郎である。
第7作は「刑事物語 知り過ぎた奴は殺す」(60年)である。源造は「所轄」の刑事で、保郎は警視庁の部長刑事らしい。犯人役が上野山功一と森塚敏で、ゲストが香月美奈子、南風夕子、山田禅二、土方弘など。
第8作は「刑事物語 犯行七分前」(60年)である。源造は隅田署の刑事で、保郎は警視庁の部長刑事。犯人役は宮崎準、上野山功一、近江大介などで、ゲストが香月美奈子、南風夕子、深江章喜、杉幸彦、山田禅二など。
上野山功一は大映のイメージが強い気がするが、58~65年は日活に所属し、その後に大映なので両社に同じくらいの期間所属していたことになる。香月美奈子は55年に松竹から「銀令子」としてデビューし、翌56年から日活に所属となっている。66年には引退しているので、彼女も青山恭二同様にあまり語られない役者ではないだろうか。山田禅二は基本悪役だったが、このシリーズではほぼ警察の人間である。後に「特別機動捜査隊」の後半でも特捜隊の係長を演じることになる。
第9作は「刑事物語 ジャズは狂っちゃいねえ」(61年)である。佐野浅夫が麻薬組織のボスらしい。ゲストは伊藤孝雄、上野山功一、楠侑子など。
最終作は「刑事物語 部長刑事を追え」(61年)である。囮捜査のため、保郎刑事が偽装退職するが、源造はそれを知らない。ゲストが伊藤孝雄、深江章喜、楠侑子など。伊藤孝雄は日活ニューフェイスの3期(二谷英明、小林旭の代)に合格しているが、宝塚映画に入社している。60年に退社し俳優座養成所へ入所。つまり本作は養成所に所属中での出演ということになる。63年からは劇団民藝に所属し、その後は一筋である。昨年亡くなっていたことが、今年になって民藝から発表されている。
刑事物語 東京の迷路
今回は日活の「刑事物語シリーズ」(60~61年)である。全10作で、基本1時間に満たないSPだ。
東映の「警視庁物語シリーズ」(56~64年)を意識していると思われるが、こちらは親子刑事が物語の中心となっている。
主役の佐藤源造刑事に益田喜頓、息子の佐藤保郎刑事に青山恭二というのが基本だが、変わらないのは二人の名前だけ。というのも源造刑事は所轄のベテランというのは毎回一緒だが、それが城南暑だったり隅田署だったりするのである。保郎刑事も源造と同じ署の時もあれば、本庁所属で源造より偉い部長刑事だったりする時もあるようだ。
益田喜頓と言えば、ひょろっとした爺さんのイメージが強く本作もそういったイメージで見てしまうが、当時まだ50歳であった。36年に川田義雄(晴久)、坊屋三郎、芝利英と「あきれたぼういず」を結成。元々コメディの人なのだが、個人的にはあまりそういうイメージはなかった。芝は坊屋の実弟だが、応招され31歳で戦死。川田は50歳の若さで病死しているが、益田と坊屋は長生きしたイメージがある。
青山恭二は日活で70本を越える作品に出演しており、主演作も多いのだが、早くに引退したこともあり、あまり語られることのない役者である。55年に東宝ニューフェースに合格し、東宝からデビューしたのだが、翌56年に日活に移籍している。「銀座旋風児」や「銀座無頼帖」といった小林旭の主演シリーズに助演で出演することが多く、クレジット順位も3~4番手と高かったのだが、あまり印象に残っていない気がする。
さて、その第1作「刑事物語 東京の迷路」(60年)だが、実はキャストが違う。保郎役は青山ではなく待田京介なのである。城南署の南刑事(関口悦郎)が殺され、城南署に捜査本部が置かれる。同僚だった源造はもちろん本庁からは保郎も派遣され捜査にあたる。保郎と南は警察学校の同期だったのである。その容疑者となるのが、ホステスのマリ(香月美奈子)やその婚約者である元ヤクザの君塚(青山恭二)だった。そう、青山は更生した若者の役で出演しており、クレジット順も青山が3番手で待田が4番手になっている。これは、この1作目だけなのだが、何故かは不明である。真犯人役は浜村純だが(浜村淳ではない)、実は喜頓より年上だったりするのだ(当時53歳)。喜頓同様にひょろっとした爺さんのイメージだが、本作では結構走らされている(吹替かもしれんが)。
第2作は「刑事物語 殺人者を追え」(60年)からは前述のとおり青山恭二が佐藤保郎刑事役に定着する。今回は本庁の部長刑事という設定で、源造は三原署の刑事になっている。ゲストは筑波久子、稲垣美穂子、深江章喜、野呂圭介、榎木兵衛、若水ヤエ子など前作よりはお馴染みの顔が多い。ちなみにタイトルは殺人者と書いて「ころし」と読む。
第3作は「刑事物語 灰色の暴走」では、1作目の保郎役だった待田京介が犯人役で登場する。待田と上野山功一、武藤章生が深夜の信用金庫に侵入。金庫を開けている間にパトカーが到着し、上野山と武藤は主犯格の弘松三郎の車で逃走するが、待田は乗り遅れ弟分である沢本忠雄のいるガソリンスタンドに逃げ込むという話。お馴染みの名前が並ぶが他にも清川虹子、楠侑子、中川姿子などが出演している。