銀座わが町
「おやじ山脈」の後に、郷ひろみが出演したドラマが「銀座わが町」(73~74年)というNHKドラマである。
舞台はタイトル通り銀座で、老舗の天ぷら屋「江戸春」とレストラン「ぎんざ亭」の両家を中心に、関わる人々の人間模様や騒動を明るくコミカルなタッチで描いたホームドラマである。主役級の俳優が何人も出ていることで当時、話題になっている。と言っても個人的にはタイトルを聞いたことがあるといった程度で、もちろん見たことはない。
出演者だが、「江戸春」側は中村玉緒(篠宮雪…当代で女将。未亡人)、宇野重吉(篠宮春吉…先代で大旦那)、黒柳徹子(篠宮八重…春吉の娘でカメラマン)、海老名美どり(篠宮かおる…春吉の娘)、鮎川由美(篠宮ひかる…春吉の娘)、森光子(三津江…女中頭・仲居)、藤岡琢也(富三…板前)、三木のり平(野呂平作…篠宮家の親類)。「ぎんざ亭」側はフランキー堺(国分王介…当主)、北林谷栄(国分松代…先代で王介の母)、原田大二郎(国分伸介…長男で新聞記者)、小倉一郎(国分恭介…次男でコック)、相吉賢一(国分賢介…三男)となっている。つまり、両家は男女が全く逆になっている家族構成になっている。先代、当代四人ともに伴侶を失っており、江戸春は三人娘、ぎんざ亭は三人息子となっている。ちなみに両者は何かと対立する関係にある。出演者を見ると、この時点で主演級俳優が中村玉緒、森光子、フランキー堺、三木のり平と顔を揃えている。ちなみに、森光子は最初に顔を見せると、すぐに渡米ということで姿を消し、後半になって再登場するようだ。これは「時間ですよ」が並行して放送されていたからであろう。小倉の演じる国分恭介だが、同姓同名の騎手がJRAに存在する。まあ偶然だとは思うけれども。鮎川、相吉は詳細不明だが子役ではなかろうか。黒柳徹子はこの頃は普通にドラマに出演していたが、「徹子の部屋」が始まった辺りで、悪女役をやったりすると悪い女の人がインタビューしていると思われるかもしれないと思い、ドラマ出演は辞めたそうである。
本作は1年の長丁場で、もちろん主要キャストはこれだけではない。中村玉緒や森光子に並ぶヒロインとして登場するのが島田陽子(溝口銀子)だ。当時20歳だが、既に「新・氷点」(71~72年)の陽子役などで注目されていた。役名の銀子は何となく女番長っぽいネーミングだが、銀座の子という意味のようだ。ドラマは彼女が祖父が銀座で開いていた菓子店を再興する夢を持って田舎から出てくるところから始まる。彼女の祖父は宇野、北林とも親友だった。彼女の下宿先を巡って二人は互いに「ウチだ」言い争う。結局、彼女は1か月ずつ交代で、江戸春とぎんざ亭に下宿することになる。
他には、有島一郎(有馬一六…和菓子店の店主)、役名のみ判明しているのが、岸田今日子(谷四季子)、新藤恵美(江見和子)、そして郷ひろみ(南郷弘)など。この辺は役者の名前をもじった役名になっているようだ。さらに、芦田伸介、峰竜太、志垣太郎、加藤嘉、竹下景子、青木英美、奈良岡朋子、藤木悠、加藤武、下條正己、志村喬など。後、フォーリーブスの青山孝が森光子が経営する酒屋の店員役として単独で出たようだ。主題歌も彼のソロだったらしい。当時はグループとしての人気も好調だったはずだが、ソロ出演があったのは意外な気がする(実際彼のソロ活動は少なかったようだ)。まあ歌唱力はグループで一番だと評価されていた。
次回へ続く。
おやじ山脈
若干時代が戻るのだが、郷ひろみの出演しているドラマに「おやじ山脈」(72~73年)というのがある。「木下恵介アワー」の一作で、同枠で人気を呼んだ「おやじ太鼓」(68~69年)の続編といえるドラマである。
「おやじ太鼓」と言えば、鶴亀次郎(進藤英太郎)と妻・愛子(風見章子)の夫婦と四男三女の子供たちがおりなすホームコメディであったが、本作でも登場するのは亀次郎・愛子の他は兄弟では末っ子である三女のかおる(沢田雅美)だけのようである。他には伯母(亀次郎の妹)の正子(小夜福子)、鶴家のお手伝いお敏(菅井きん)、運転手の黒田(小坂一也)は引き続きの登場である。
あまりホームドラマの類を見てこなかった自分だが、「おやじ太鼓」は夕方によく再放送をやっており、自然と見ていたのである。ただし「おやじ山脈」については見たことはないと思う。
本作では鶴家に加えて愛甲タイル店を営む愛甲家が登場し、専らこちらが中心になりそうである。ちなみに「愛甲」と言うと愛甲猛(横浜高→ロッテ)を思い出す人もいるかもしれないが、彼の活躍は80年代になってからである。
さて、その愛甲家のメンバーだが、父・源四郎(佐野浅夫)‥本作では彼が主役扱いになるのだろうか。母・信子(織賀邦江→三宅邦子)‥織賀は撮影中に肺癌で死去。50歳の若さであった。11話より三宅に交代している。
次男・良介(林隆三)…長男は既に亡くなっているという設定。物語上意味はあるのだろう。長女・順子(秋山ゆり)‥秋山は「おれは男だ!」での吉川操(早瀬久美)の姉役が有名だろうか。三男・三郎(小倉一郎)‥大学で考古学を専攻している。鶴家の三男も三郎(津坂匡章=秋野太作)だった。四男・清司(吉田次昭)‥彼も大学生である。五男・正明(郷ひろみ)‥設定では中学生。デビューしてまもない頃だが、実物は17歳である。家族は以上だが、タイル店に勤務する職人や店員がいる。木全健一郎(峰岸隆之介=峰岸徹)‥タイル店の職人で、かおると恋仲である。轟(小野川公三郎)…タイル店の職人。小野川は「レッドファイター」の人。光男(山田隆夫)…タイル店の店員。節子(三島千枝)‥タイル店の店員で、後に轟と結婚する。他にゲストかレギュラー化も不明だが、葵テルヨシ、相原ふさ子などの出演記録がある。葵は郷と同じ(当時)ジャニーズ事務所のアイドル。この時点ではレコードデビュー前である。元祖ジャニーズのあおい輝彦とよく似た芸名だが、本名が浅井照善で名古屋出身ということもあり葵テルヨシになったようだ。
かおると結ばれるのが、愛甲家の兄弟ではないのがポイント。峰岸と沢田では不釣り合いな気もするが、とにかく物語の中では彼女の妊娠が発覚して騒ぎとなるようだ。
主題歌は郷の3枚目シングルである「天使の詩」。個人的には記憶にない曲だが、フランスで発売された「Baby Chorus」という曲のカバーである。ちなみに「おやじ太鼓」では。あおい輝彦が同タイトルの曲を歌っている。
次回の更新は9月の6日か7日になる予定。
あこがれ共同隊 その2
引き続き「あこがれ共同隊」(75年)である。7話で西城秀樹扮する竜也が死んだ後、どうなるのかと言うと、恋人だった桜田淳子扮する明子は、郷ひろみ扮する広介に励まされているうちに恋人関係になるのだという。
当の桜田淳子は「いい役だけど、秀樹クンとひろみクンのファンが怖い」と語っていたようだ。実際に何かされたという情報はないけれども。
8話には出演予定だとされていた吉田拓郎が登場した。本作の主題歌「風の街」は出演者でもある山田パンダが歌っているが、作曲は拓郎である。テレビ嫌いとして知られていた為、注目度も高かった。登場シーンは原宿ペニーレーンで店員役の山田パンダに「飲み代をツケにしろ」などと迫り、結局勘定も払わず出ていくというような困った客の役だったようだ。
そして、10話からは浅田美代子扮する庄司洋子が登場しレギュラー入りする。本作においては拓郎と浅田の共演シーンはないと思われるが、当時既に二人は交際中との噂はあったようだ。本作の最終話は直前に山田太一脚本の単発ドラマ「なつかしき海の歌」(75年)で、二人は本格的に共演するのである(主演は加山雄三)。拓郎は既に既婚者であり、要するに不倫状態だったわけだが、二人が叩かれていたような記憶はない。単に自分が芸能ニュースをあまり見ていなかっただけこもしれんが。77年に二人は結婚し、浅田は21歳で芸能界を引退するのだが、83年になり拓郎と森下愛子の不倫報道が取りざたされる。結局、拓郎と浅田は84年に離婚するのだが、一足先の83年中に浅田は芸能界に復帰している。
話を戻すと、「あこがれ共同隊」のその後の展開だが、11話で黒柳徹子扮する竜也の母・晴子が長門裕之扮する鶴岡と再婚する。13話では広介に悲劇が。チンピラに絡まれて殴られ、失明してしまうのである。絶望に陥る広介に明子、洋子、そして三田佳子扮する明子の姉・令子が愛情を注ぐという展開になるらしい。つまり、広介の心変わりがあるのかも、というまさかの状況に。
というような鬱展開も影響したのか、視聴率は当初から低迷。最大の原因は本作の放送時間は金曜20時だったこと。当時は裏番組に「太陽にほえろ」が君臨していたのである。そのため、全26回の予定が17話に短縮されることになったのである。
ところでこの作品、今だ一度も再放送されていないとされる。無論、ソフト化もされたことはない。72~73年辺りででVTR撮りなら、テープの上書きにより映像がこの世から消えてしまうということもあったのだが、75年くらいだと映像は保存されるのが普通になってきたと思う(100%ではないだろうが)。
映像は残っているとしたら、権利関係の問題だろうか。主演の三人は所属事務所も違うし。もしかすると、桜田淳子の統一教会問題絡みもありえるのだろうか。ただ、CDとかに関しては2007年くらいから復刻されたりしているし、あまり関係はないかも。
いずれにしろ、幻の番組と化しているようである。
あこがれ共同隊
70年代アイドルの郷ひろみ、西城秀樹、桜田淳子の共演で話題を集めたのが「あこがれ共同隊」(75年)である。当時人気絶頂だった新御三家と花の高二トリオの共演が実現。企画自体はもっと前からあったようだが、なにしろ売れっ子アイドルなので、スケジュール調整に1年を要したという。中三トリオだった昌子、淳子、百恵も高二になっており、進級するごとに呼び名も進級していったのである。個人的には、新御三家はもちろん、このトリオにあまり興味がなかった(歌は好きなのもあったが)こともあり、この番組は見ていない。
出ていたのは三人だけだっけと思ったが、第1話には山口百恵もゲスト出演していたようなので、彼女も出演していたイメージがあったのである。百恵に関しては「赤い疑惑」が控えていたため、ゲストという形になったようだ。アイドルの出演は彼等だけではなく、シェリー、浅田美代子(10話から)もレギュラー。そしてフォーク・ニューミュージック系からも吉田拓郎、山田パンダも出演したことが話題となった。現在はSHELLYというハーフタレントがいるが、シェリーの元祖?はこちらで、ハーフであることは一緒だ。
配役と他のキャストだが、郷ひろみ(八田広介)が主人公扱いで、西城秀樹(畠山達也)、桜田淳子(黒沢明子)は恋人同士という関係。高橋昌也(八田洋介・広介の父、高級紳士服店を営む)、田中邦衛(八田雄二郎・広介の叔父)。広介と洋介は対立し、広介は家を飛び出してて裁縫工として働いている。シェリー(正子)はその工場の従業員で、裁縫工場の社長が品川隆二(吉之助)である。
西城演じる達也は酒屋の息子で、その関係者が黒柳徹子(畠山春子・達也の母)、玉川良一(達也の祖父)、森本レオ(志郎・酒屋の従業員)である。志郎と前述の正子は恋人関係にある。
淳子演じる明子は高校生だが、三田佳子(黒沢令子・明子の姉、ブティックとコーヒーショップを営む)。彼女は広介の父・洋介と愛人関係。明子とは異母姉妹である。その関係者が大和田伸也(郷太、ブティックRの主任)、せんだみつお(海老蔵、コーヒーショップRのバーテン)だ。
他に長門裕之(鶴岡武造)、黒沢久雄(黒川邦彦)、常田富士男(花本勝)、山田パンダ(花本修)などがいる。常田と山田は風貌が似ているからか親子の役なのだろう。ちなみに、実年齢では8歳しか違わない。
トップアイドル主演のドラマだし、明るい青春ドラマが繰り広げられるのかと思いきや、かなり暗い展開になっているようである。まず第7話にして、西城演じる達也が死んでしまうのである。簡単に言えば、西城のスケジュールが取れなくなくってしまった為の降板であった。不治の病に冒され、自分の死期を悟った彼は、好きなマラソンをして死にたいと病院を抜け出して走り出す。そして力尽き神宮外苑の池の中で死んでしまうというものだった。ファンが押し寄せては撮影にならないと、早朝6時からのロケにしたのだが、ファンを舐めてはいけない。携帯はもちろん、SNSなどという言葉も存在しない時代でも、どこからか情報を嗅ぎ付けて、ファンが殺到し、現場は大混乱に陥ったという。
池の中はかなりの汚水だったそうだが、西城は自分から言った手前引くにひけなかったという。彼だけでなく後を追ってきた恋人役の淳子も池の中で彼を抱きかかえて号泣するのである。ファンの悲鳴が響く中、ディレクターは早く撤収させようとOKを出したが、西城は納得がいかずやり直しを要求したりで、二人は汚水の中で一時間ほど頑張ったらしい。
西城は後に「騒ぎが凄いので、おちおち死んでいられなかったよ」と福本清三に先んじて語っていたそうである。次回に続く。
ちょっとしあわせ
「てんつくてん」(73~74年)のあと、司葉子と和田アキ子が再び共演したドラマが「ちょっとしあわせ」(74~75年)である。正直、調べてたらたまたま見つけたもので、全く聞いたこともないドラマである。というわけで、ウィキペディアにある概要では、都電荒川線沿いにある柚木家が経営する「太陽保育園」が主な舞台となっている。柚木家の三女鈴子(酒井和歌子)と弟の和久(郷ひろみ)には暗い出生の秘密があるという。だから、全く明るいドラマというわけではなさそうだ。
都民の人なら知っているだろうが荒川線は現在都内を走る唯一の都電(路面電車)。この放送時点で、他の路線はほぼ廃止され、唯一の存在になっていたようである。
酒井和歌子で「太陽」保育園だと「飛び出せ青春」を思い出してしまうが(舞台は太陽学園)、そのメインライターだった鎌田敏夫が本作でも脚本に関わっているし、校長役だった有島一郎もゲストで登場するようので、クレジット上にはないようだが東宝も関わっていたのだろうか。
出演者だが、鈴子と和久の母・綾子が司葉子、父・忠基が田中春男、祖父で保育園の園長・紋平がアラカンこと嵐寛寿郎である。アラカンこういうドラマに出ていたのは意外に思ったりする。田中春男は宇治みさ子の父としても知られるが、実年齢で言うとアラカンと10歳しか違わない。当時の田中のビジュアルはわからないが、入り婿という設定もありうる。ヒロインの鈴子は三女と書いたが、長女・ちどりは林美智子、次女・かな子が結城美栄子、四女・まゆみが野口みどりとなっている。野口の詳細がわからないが、おそらく郷(当時19歳)より年下ではないだろうか。
他の出演者については役柄は不明なので、名前だけ並べるが、和田アキ子、高沢順子、芹明香、内田あかり、丹阿弥弥津子、遠藤幸吉、森本レオ、高岡健二、今井和子、植木等、二谷英明など。和田アキ子の役名だが、野中小百合というらしい。似合わないな思いつつ、野中小百合というアイドル歌手がいたなあと確認すると、本作終了の数か月後に同名の歌手がデビューしているのである。野中は渡辺プロで、和田はホリプロだが、植木や高岡は渡辺プロだったので、偶然とも考えにくいので、この役名を拝借した可能性はある。そういえば、植木と高岡はこの後「二人の事件簿」(75年)でも共演することになる。
内田あかりは73年に大形久仁子から改名したタイミングで歌った「浮世絵の街」がヒットしたところであった。遠藤幸吉は元プロレスラーで、力道山とタッグを組んでいたことで知られる。当時は既に現役を引退しており、プロレス中継の解説などを務めていたようである。どんな役で出たのかは不明だ。
あと概要を見ると郷が演じる文久は、年上の女性に憧れて愛を知って傷付きながらも成長していくとある。キャストを見て対象になりそうなのが高沢順子くらいだろうか。芹明香がこういったドラマでメインどころになるのは考えにくいし。ただ、高沢は郷と同じ55年生まれで、年上って感じにも見えない気がするのだが。余談だが、芹は酒井和歌子について、「本当にいい人で、すごく好きだった」と証言しているらしい。
全15話で終了しているが、2月の2週目が最終話で中途半端なので、打ち切りだった可能性も高い。本作を知っている人は少ないだろうし、再び陽の目を見ることもない気がする。
てんつくてん
クレージーキャッツ関連の話題は前回までとして、そこで「うしろの正面だあれ」での犬塚弘の娘役が和田アキ子のドラマデビューのようであると書いたが、そこで思い出したドラマが「てんつくてん」(73~74年)である。ここでも、和田アキ子が主人公の長女を演じているからである。
舞台は天保時代創業の老舗佃煮屋「天佃天(てんつくてん)」。タイトルは店の屋号なのである。その店主が佃崑(三波伸介)である。妻は早くに亡くなったが4人の子供たちがいる。上から魚介(渡辺篤史)、アキ子(和田アキ子)、潮(吉田次昭)、淳子(桜田淳子)である。そこへ、山の手のお嬢様育ちである笑子(司葉子)が後妻としてやってくるところから物語は始まる。
子供の頃から、ほぼホームドラマの類を見て来なかった自分だが、何故かこの一家のキャスティングはよく覚えていた。ということは見ていたんだろうけれども、ストーリーに関しては一切覚えていない。本作は日曜20時から日テレ系での放送だったのだが、この前番組が「おこれ!男だ」(73年)であった。森田健作と石橋正次という二大青春スターの共演が話題になった青春ドラマである。これは毎週見ていたので、その流れでチャンネルを合わせていたのかもしれない。
それにしても、見事に似ていない親子・兄弟である。三波伸介は当時43歳で、戸塚睦夫、伊東四朗と組んだてんぷくトリオのメンバーだったが、本作の半年前に戸塚が急逝。トリオから「てんぷく集団」に改名したばかりの頃だった。こういった連続ドラマの主演は本作が初だったようである。司葉子は当時39歳。映画女優のイメージが強いがテレビドラマにも60年代から多く出演していた。恋愛系が多く、本作のようなホームドラマへの出演はは意外と主なかったように思われる。
渡辺篤史は当時26歳だったが、見た目の印象は10代の頃から50代くらいまでは全く変わらなかったイメージがある。和田アキ子は当時23歳、歌手として人気もあったが、当時は毎年のようにドラマにもレギュラー出演していた。ちなみに、本作の二日前にスタートしたのが「金曜10時うわさのチャンネル!!」であった。
吉田次昭は当時19歳。幼少期から子役として活躍しており、個人的にはやはり「マグマ大使」(66年)の17~20話のみガム(二宮秀樹)の代役を務めていたのが印象に深い。桜田淳子は当時15歳。歌手デビューから約7カ月くらいの頃で、これが孜のドラマ出演だったようである。山口百恵も淳子の直後にデビューしており、前年デビュー森昌子を含めて「花の中三トリオ」と既に言われていたと思う。
実は森昌子も本作に出演している。天佃天の近くにたいやき屋があり、その主人が鹿(杉山とく子)であり、その娘が洋子(岡崎友紀)と昌子(森昌子)なのである。淳子と昌子は中学のクラスメートであり、その担任が前川先生(前川清)である。
他の出演者だが、崑の妹が佐山蕗子(宮本信子)で、その夫は佐々木功、笑子の父・国男(松村達雄)、近所の自転車屋兄弟の一郎(新田昌玄)と敏夫(大石悟郎)、潮の予備校での友人・尾崎(中島久之)、春海和尚(菅原洋一)、後役柄はよくわからないが、ヒデとロザンナ、本郷直樹、渚まゆみ、水原麻紀なども出演していた。
本作が26話放送された後、再び青春ドラマ枠に戻り中村雅俊主演の「われら青春!」(74年)がスタートするのである。
ゆびきりげんまん/うしろの正面だあれ
次は犬塚弘である。本名は字面は同じだが「ひろむ」と読む。クレージーキャッツの前進である「ハナ肇とキューバンキャッツ」の創設メンバーでもある。そのクラリネット奏者だった萩原哲晶は作曲家に転向し、クレージーの曲の多くを手掛けることになる。
さて、犬塚だが調べてみると結構主演作があったりするのである。とは言っても詳細不明なものばかりで、紹介できる情報もほとんどないのだが、書き連ねてみたい。2作だけど。
「ゆびきりげんまん」(68~69年)は、土曜19:30からフジテレビ系で放送されていた30分ドラマ。鈴木家の人物を描いたドラマで、毎回さまざま動物が登場していたらしい。全6話予定が好評で27話に渡って放送されたという。
主人公は鈴木強少年で、思ったことを実行しないと気が済まない性格。演じたのは大山尚雄(ウィキペディアでは高雄となっているが、尚雄が正しいと思われる)で、当時10歳。役柄上の年齢もおそらく実年齢と同じくらいであろう。大山は後に声優としても活躍し、アニメ「機甲創世記モスピーダ」(86年)では主役を演じたりしている。
そのパパ役が犬塚で、国際線のパイロットをしているという設定。ママ役が小林千登勢で、おばあちゃんが飯田蝶子である。他には植田多華子(メグミ)、武田浩志(ユタカ)の名があるが、多分子役だろう。他にベテラン益田喜頓も出演していたようだ。益田と植田、武田は73年の「青春家族」というドラマでも共演しているようだ。主題歌はピンキーとキラーズの「ゆびきりげんまん」である。3枚目のシングルなのだが、聞いた記憶はない。この5カ月ほど前に出たのがデビューシングルで大ヒット曲の「恋の季節」である。
「うしろの正面だあれ」(69年)は日曜21時からTBS系で放送された30分ドラマ。「ゆびきりげんまん」とシリーズになっているようなタイトルだが、関連性はない。その内容だが、犬山家は部屋が二つの小さな家に留吉、スミ子の両親と9人の子供がひしめく大家庭。動物園のベテラン飼育員だった留吉が定年を迎え、代わってスミ子が務めに行くことになり、そのスミ子に代わって留吉が9人の子供の世話から家事一切に至るまで引き受けることになり、珍事、変事が続出する。というお話である。留吉役が犬塚で、スミ子役が春川ますみだ。犬塚は当時40歳だが、この時代の定年は55歳。なので、役柄上は55歳ということになろう。春川は当時34歳で、実年齢設定でも9人子供を産むのは可能。ただ、長女役は和田アキ子のようで当時19歳。本作が初のドラマ出演だったようだ。実年齢的には女子高生と変わりないが、まあ見えないので少なくとも19歳くらいの設定ではないだろうか。他に出演者として名が挙がっているのが、夏八木勲、中村春美、小松政夫、江戸屋猫八、悠木千帆(樹木希林)など。
夏八木(当時30歳)がその長男役ということさすがにないだろう。他もしかりだが、中村春美はおそらく子役だろう。77年に「もしもあの時」というシングルを同じ名前の中村春美という女子が出しているのだが、56年生まれとなっており、ドラマ当時は13歳ということになり、娘役にもぴったり。この「中村春美」は同一人物である可能性が高い。全13回の30分ドラマということで、映像が残っているかどうか不明だし、今後陽の目を見ることは難しい気もする。
男一番!タメゴロー
クレージーキャッツメンバーの主演ドラマ、今回はそのリーダーであるハナ肇である。
ハナのヒットギャグである「アッと驚く為五郎」は歌だけでなく映画にもなり、ハナが主演で五作作られているのだが、そのテレビドラマ版があるのを、ご存知だろうか。それが「男一番!タメゴロー」(70年)である。
始まりはバラエティ番組である『巨泉・前武ゲバゲバ90分!』(69~71年)のコントとコントの間をつなぐVTRとして登場するものとして誕生した。ハナがヒッピー姿で「アッと驚く為五郎」と言うのがウケたのである。この為五郎というのは、ハナがお気に入りの浪曲である『清水次郎長伝』の節回しで登場人物の「本座村の為五郎」を指しているという。
この人気を受けて、まず69年の年末にクレージーキャッツのシングル「アッと驚く為五郎」として発売された。メインボーカルは植木等で、他のメンバーはコーラスだが1コーラスごとにハナが「アッと驚くタメゴロー」と叫ぶ構成になっている。
当時は話題になると、まず映画化というような風潮もあり、70年2月には松竹で映画「アッと驚く為五郎」が公開された。主演はもちろんハナ肇でお馴染みのヒッピー姿だったようだ。共演が谷啓、なべおさみ、ヒロイン役が梓みちよ、尾崎奈々、佐藤友美、他にミヤコ蝶々、財津一郎、金子信雄、高松しげおなど。主人公のフルネームは大岩為五郎である。
そして4月にスタートしたのがドラマ「男一番!タメゴロー」なのである。こちらも、ハナが主演だが、ギャグやキャラクターとは無関係なストーリーとなっているらしい。制作も松竹ではなく東映である。その概要はハナ演じる若林為五郎は、海老問屋の従業員でダンプの運転手。単細胞だが正義感は強い。ある日、海老問屋を営む西尾家に娘の美加(八千草薫)が出戻って来た。為五郎は美加に夢中になってしまうという展開になっている。
全26話だが、脚本はその三分の一くらいを向田邦子が担当している。音楽も富田勲となっており、クレージーキャッツの歌う「為五郎」が流れることはなさそうだ。
他の出演者だが、金子信雄、なべおさみ、飯田蝶子、入川保則、田坂都、丹阿弥谷津子など。入川は八千草の夫役である。レギュラーかゲストかは不明だが、松木路子、小橋玲子、北あけみといったところも出演していたようだ。本作も映像に関しては不透明だが、少なくともCSなどで放送されたことはないはずである。ただ一般家庭にビデオが普及する前の81年頃に、東映芸能ビデオから第1話を収録したビデオが発売されていたことがあるというので、少なくとも第1話は現存しているのではないだろうか。ちなみに値段は4万円したそうな。
また98年に発売されたLD(レーザーディスク)『東映TVドラマ主題歌大全集 現代劇編』第2巻には、本作のオープニング映像が収録されているらしい。これは第1巻なら自分も所持していたが2巻は見た記憶がない。なので、この「男一番!タメゴロー」については、その映像を全く見たことがない気がする。今になって見ると、一時期LDを集めたのは失敗で、すぐに衰退してしまいハードもソフトも生産が中止。ハードが壊れてしまい再生できなくなってしまったのである。探せば中古のプレーヤーもあるだろうが、壊れるリスクの方が高い気がするので買おうとも思わない。
何故か『東映TVドラマ主題歌大全集 現代劇編』はDVD化されていないのである(アニメ編と特撮編はされている)。
あひるヶ丘77
ついでなので、クレージーキャッツのメンバーが主役を担ったドラマを取り上げてみたい。
クレージーと言えば、ハナ肇、植木等、谷啓が中心で、犬塚弘も第4の男として大映で主演作が撮られたりしたが、残る安田伸、石橋エータロー、桜井センリは基本的に脇役である。
しかし、その中で桜井センリが主役を演じたドラマが存在する。それが「あひるヶ丘77」(68~69年)である。桜井はメンバー中最年長(26年生まれ)なのだが、グループへの加入は七人目つまり最後である。石橋エータローが結核で休業を余儀なくされた為。代理として同じピアニストの桜井に白羽の矢が立ったのである。しかし、通常のバンドマンが月給4万程度の時代に、桜井は18万を得ていた高給取りだったので、植木や谷は反対したが、ハナが強く推すので本人に確認したところ「ああいうことを一度やってみたかったんですよ」と快諾したのである。前述のとおり26年生まれだが、メンバーバランスが考慮され公称は30年生まれということになった。その後、石橋が復帰してもそのまま残ることになったのである。
そんな桜井の恐らく唯一の主演作となったのが「あひるヶ丘77」だ。原作は「仙人部落」や「ヒゲとボイン」でお馴染みの小島功の漫画である。原作は61年から87年まで長きにわたって「週刊サンケイ」(現・SPA!)に連先されていた。都内の2DK団地・あひるヶ丘に住む、マロニエ商事勤務の係長の夫婦と子供というサラリーマン一家を中心に、その周囲・近所・会社などを舞台に繰り広げられる日常を描き、時にお色気も盛り込んでいたホームコメディである。
63年に藤田まこと、姫ゆり子でラジオドラマ化されていたが、ドラマ化は今回が初だった。制作はフジテレビ、東映で、主役の団野九平に桜井が抜擢され、妻・百合子に広瀬みさ、息子・太平に下沢広之というキャスティング。下沢は現在の真田広之である。役柄は不明だが、安田伸と石橋エータローも出演しており、クレージーのじゃない方が三人揃った形である。
奥さん役の広瀬みさだが、大映15期ニューフェイスに合格し、大映演技研究所で学んだようだが、大映作品に出演した記録はない。俳優より先に63年に歌手デビューしているのである(広瀬美砂名義)。女優デビューは日本初の刑事ドラマ「ダイヤル110番」(57~64年)の335話は「死のタイピング」となっている。映画出演はほぼ日活作品で、大映には入社しなかったということだろう。本作の直前には竜雷太主演の「でっかい青春」(67~68年)でヒロインとなる国語教師を演じていた。69年に結婚して引退しており、短い芸能生活であった。
他のキャストもレギュラーかゲストかは不明だが、清川虹子、大原麗子、山城新伍、桑原幸子、園佳也子、伊藤慶子、斉藤浩子、潮健児、春川ますみ等である。明らかにゲストとされているのが、小川宏、益田喜頓、楠トシエ、花園ひろみ、曽我町子、谷幹一、南利明、小林千登勢、松山英太郎などである。
桜井と広瀬がヂュエットしている主題歌入りのオープニング映像が『東映TVドラマ主題歌大全集1 現代劇篇』に収録され、自分もそれを見たことがあるが、逆に言うとそれ以外は見たことがない。タイトルバックも小島功の絵をベースにしたアニメであり、中の映像に関しては一切見たことは無い。実際、東映チャンネルでも一度も放送されたことはなく。フィルムが存在しているかどうかも不明である。、
天下の若者/天下の学園
もう一つ(というか二つ)、渡辺プロ関連のドラマから「天下の若者」(64~65年)である。
銀座に事務所を構える芸能プロ「希望プロ」を舞台に、その社員とタレント、同じビルの住人たちとの交流を描くドラマ。渡辺プロ所属のタレントが総出演した。NHKで放送中の「若い季節」に対抗して始まったというが、その「若い季節」にも渡辺プロが関わっており、そのタレントが大勢出ていたのである。
主演は谷啓で、5度のクビを経験して希望プロに入社してきた谷田啓太郎を演じる。ヒロインの原みよこ役が梓みちよで、とある会社の令嬢らしい。山内社長には三橋達也、男女で態度の違う花木興行部長にハナ肇、タレントとしては見込みのない木下専務に藤田まこと、といった面子が話の中心となるようだ。
三橋達也は東宝の所属で、ナベプロに所属したことはなかったと思うが、当時は黒澤映画「天国と地獄」や自身が主演の「国際秘密警察シリーズ」など映画スターとして好調な時期であった。
他はレギュラーか準レギュラーかは不明だが、クレージーの残りの五人(植木等、犬塚弘、桜井センリ、安田伸、石橋エータロー)を始め、人見きよし、南利明、左とん平、谷幹一、小野栄一、木の実ナナ、中尾ミエ、伊東ゆかり、園まり、田辺靖雄、ザ・ピ-ナッツなど。クレージーキャッツはもちろん、中尾、伊東、園の「スパーク三人娘」、藤田まこと辺りは「若い季節」にも出演していた。
丸一年放送されていた番組だが、ほとんど情報がないので書くこともない。ゆえに、その後番組である「天下の学園」(65年)にも触れておきたい。
幼稚園から大学まで有る「理想学園」という学園を舞台に、大学4年の啓太が様々な事件を巻き起こしながらも、楽しく明るい青春を出していく姿を描くというもの。主演は前作に引き続き谷啓で、彼が演じる谷山啓太は大学生活七年間、初等部から数えると、この学園に十九年間もいる、いわば、学園のヌシ。音楽部のマネジャーでもある谷山は、新入生の川村マリ(園まり)に会い、彼女が美人なのと、歌好きなのにつけこんで、さっそく学園内の案内役を買って出た、というのが第1話。ちなみにウィキペディアでは谷村、テレビドラマデータベースでは谷山となっている。ヒロインが川村なので、「村」がかぶらない谷山が正解な気がする。
その第1話のキネコが現存しているとのことで、とにかくキャストがやたらと多いらしく、タイトルバックだけで3分近くあるという。クレージーのメンバー全員に役名があるので、他の6名もレギュラーっぽい。ハナ肇(花田大和)、植木等(植松均)、犬塚弘(比留間弘)、桜井センリ(梅田)、安田伸(安原)、石橋エータロー(橋わたる)となっており、植木演じる植松はスペイン語の教授で、「いろいろ節」を歌いながら登場するという。他にも前作ヒロインの梓みちよは久世みちよ、中尾ミエは上尾ミエとなっている。
学園長役は伴淳三郎で、食堂の親父が柳家金語楼である。その金語楼とエノケンこと榎本健一がケンカするシーンがあるという(口ゲンカだろう)。お話はあってないようなもので、登場人物の出番が次々とあるだけだそうな。
他の出演者は淡路恵子、木の実ナナ、小山明子、芳村真理、上原ゆかり、スリーファンキーズ、ジャニーズ、藤村有弘、南都雄二など。
前作と違い、全18話と短いがサブタイなどは全て判明している。