お宝映画・番組私的見聞録 -5ページ目

岸田森の出演映画 その4

引き続き、岸田森である。71年からの出演映画だが、東宝とATGがほとんどである。
71年は何と言っても「呪いの館 血を吸う眼」であろう。これは「血を吸うシリーズ」の第二弾にあたり、1作目は「幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形」(70年)であり、出演は中村敦夫、小林夕岐子、松尾嘉代、中尾彬、宇佐美淳也などで、岸田は出演していない。ちなみに吸血鬼は中村敦夫ではなく小林夕岐子である。つまり美女吸血鬼というわけだ。
今回の「血を吸う眼」も当初は岡田真澄を予定していたというが、スケジュールが合わず、そこで監督の山本迪夫が推薦したのが岸田だったのである。ドラキュラ俳優と言えば、クリストファー・リーが有名だが、本作は1作目とは違い、和製ドラキュラ映画を目指して製作された。他の出演者だが江美早苗、藤田みどり、高橋長英、大滝秀治、高品格など。藤田は67年頃からテレビドラマには出演していたが、映画は本作が初出演だったようだ。当時は劇団欅に所属していたが、同じ劇団だった岡田真澄と後に結婚するのである。つまり、当初のままだったら(後の)夫婦共演ということになっていたのだ。
「いのちぼうにふろう」は山本周五郎「深川安楽亭」を原作とした時代劇である。「島」にある安楽亭は中村翫右衛門演じる幾造とその娘・栗原小巻演じるおみつが営む一見居酒屋だが、実は密輸の本拠地。そこを巣にしているのが主演の仲代達矢ほか、佐藤慶、近藤洋介、山谷初男、植田峻、草野大悟、そして岸田森である。他に酒井和歌子、山本圭、神山繁、中谷一郎、滝田裕介、そして勝新太郎もチラっと姿を見せる。ちなみに脚本は隆巴つまり仲代の嫁さん(宮崎恭子)である。
「曼荼羅」は、ATG制作のR18指定映画。監督は実相寺昭雄で、「怪奇大作戦」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」といった円谷プロ特撮の監督としても知られる。岸田とも「怪奇大作戦」で一緒であり「京都買います」「呪いの壺」といった岸田が演じる牧が主役となるエピソードを演出している。それにちなんでか本作での役名は「真木」である。他にも桜井浩子、小林昭二、原保美といった前述の作品でレギュラーを務めた役者も起用されている。ストーリーの中心となるのは田村亮、清水綋治、森秋子、そして桜井浩子で、岸田はユートピア集団の実現を計ろうとする人物。他に富川澈夫、草野大悟、花柳幻舟など。
72年に入るが、「哥(うた)」は篠田三郎の項でも紹介したが、これもATG制作で、実相寺昭雄の監督作品だ。ここでは岸田、東野孝彦(英心)、篠田三郎が三兄弟で、その父親がアラカンこと嵐寛寿郎だ。他に「曼荼羅」と同じく田村亮、桜井浩子、原保美、加えて八並映子、内田良平など。
「高校生無頼控」は「漫画アクション」に連載の劇画の映画化で、原作は小池一夫、芳谷圭児。主人公のムラマサが過激派で指名手配の兄を探して、鹿児島から東京を旅するのだが、行く先々で女性と知り合い、性的関係を結んでいくという物語。主役のムラマサが沖雅也で、兄が岸田である。他に夏純子、八並映子、進千賀子、川村真樹、木村由貴子、南利明、岡崎二朗、宍戸錠など。

岸田森の出演映画 その3

引き続き岸田森である。今回は70年の大映作品を中心に取り上げたい。
「座頭市と用心棒」(70年)は勝新太郎「座頭市シリーズ」の第20作で、「用心棒」と言えば三船敏郎だ。と言っても「用心棒」は東宝の作品だし、三船が「三十郎」として出てくるわけではない。佐々大作を名乗る謎の素浪人だが、その立ち振る舞いも「三十郎」とは違う。監督はもちろん黒澤明ではないが、東宝の岡本喜八が務める。制作は勝プロダクションで配給は大映である。三船と岡本を貸し出した形の東宝の主張により、本作は正月興行を外れている(1月半ばからの公開)。三船・黒澤のラインが強力なので、三船・岡本のラインの作品がパッと思いつかないが(「結婚のすべて」「血と砂」など)、プライベートでも交友が深く岡本が助監督時代からの付き合い。勝も三船をたてるために岡本を監督に指名したという。
個人的には本作のタイトルを自分は「座頭市対用心棒」だと、ずっと勘違いしていた。実際に二人が本気で対決するわけではないので、タイトル詐欺と思っていたのだが、その内容から「座頭市と用心棒」というタイトルなら正しいわけである。本作で敵役となるのが岸田森演じる九頭竜で、その正体は公儀隠密。他の共演は若尾文子、嵐寛寿郎、滝沢修、細川俊之、米倉斉加年など。勝は岸田を高く評価しており、「勝アカデミー」の講師を頼んだりしていた。
「玄界遊侠伝破れかぶれ」(70年)も勝新太郎の主演作だが、監督は東映のイメージが強いマキノ雅弘。まあ実際にこの時点では東映の所属だった(翌年に退社)。高倉健の主演で「日本侠客伝シリーズ」や「昭和残侠伝シリーズ」をヒットさせていたが、それを大映でもやろうとしたのだろうか。キャストも勝、京マチ子、安田道代(大楠道代)、津川雅彦、南美川洋子などを除けば、松方弘樹、天津敏、山本麟一、和崎俊哉、水島道太郎といった東映色の強いメンバーが並んでいる。ただ松方は当時大映にレンタル移籍されていた身である。岸田森は山本麟一が親分である太田黒組の代貸といった役どころ。また、マキノによれば、若山富三郎がノンクレジットで立ち回りの場面に出演しているらしい。当時は既に大映の城健三朗ではなく、東映の専属にに戻っていた。
「おんな極悪帖」(70年)の主演は安田道代(大楠道代)、田村正和。元々は若山富三郎が可愛がっていた安田の為に企画していた作品だという。他の出演者は佐藤慶、小山明子、小松方正、山本麟一、遠藤辰雄、早川雄三など。岸田の役は舞台となる三田藩の藩主・太守。内容は大雑把に言えば、安田と正和、そして小山で、登場人物を次々と殺害していくというような話だ。岸田も正和に斬殺される。その正和も最終的には安田に…。ちなみに、原作は谷崎潤一郎の「恐怖時代」。
71年の岸田は、テレビでは「帰ってきたウルトラマン」に出演。主人公・郷秀樹(団次郎)が働いていた自動車修理工場の経営者・坂田健役でレギュラー出演。しかし、その妹役でヒロインでもあった榊原ルミのスケジュール確保が困難にななっため37話にて宇宙人に襲われ共に死亡という形で降板した。その直前の35話にて岸田は朱川審の名で脚本を書いている。71年の映画については次回。
前回、「銭ゲバ」のところで唐十郎に触れたが、記事をアップした直後にその訃報を聞いて驚いた。兎にも角にも合掌。

岸田森の出演映画 その2

引き続き岸田森である。今回は68~70年の東宝作品についてである。
68年は黒部進の項でも取り上げた岡本喜八監督の「斬る」に出演。本作から岸田が亡くなるまでの岡本監督作品のほぼ全てに岸田は出演することになる。主演は仲代達矢、高橋悦史。他に星由里子、久保明、中村敦夫、中丸忠雄、土屋嘉男、神山繫、東野英治郎、田村奈巳など。地井武男は本作が初の映画出演。岸田は荒尾十郎太という若侍の役。
「赤毛」(69年)も岡本監督作品で、主演は三船敏郎である。配給は東宝だが製作は三船プロダクションだ。三船と岡本の組み合わせってイメージにないが、「血と砂」(65年)という作品も三船×岡本である。「赤毛」の他の出演者は寺田農、高橋悦史、岡田可愛、乙羽信子、田村高廣、伊藤雄之助、左卜全など。岩下志麻が松竹から出演。阿知波信介、木村豊幸、吉田昌史(沖田駿一)等が「少年」の役、岸田の役は番頭左右吉。
「狙撃」(68年)は加山雄三主演のアクション映画。加山の役は殺し屋で、同じく殺し屋の森雅之と対決する。当時の加山もそうだが、森雅之の殺し屋というのも意外に思えるキャスティングだ。ヒロイン役は浅丘ルリ子で、67年より他社出演が解禁になっている。この時はもう日活の専属ではなく石原プロ所属であった。他の出演者は小沢昭一、藤木孝、船戸順など。岸田の役は加山の親友で銃砲店を営む深沢という男。
「弾痕」(69年)も加山主演のアクション映画で、加山は諜報局工作員を演じる。ヒロイン役は大地喜和子で、他に佐藤、岡田英次、納谷悟朗、原知佐子など。岸田の役は楊という中共側の工作員。
「白昼の襲撃」(70年)も「狙撃」「弾痕」同様に東宝ニューアクションと言われる映画だが、こちらの主演は黒沢年男である。黒沢は工作員とかではなく普通のチンピラだが、重傷を負ったところを組幹部の岸田に助けられ、彼の配下になる。そこに弟分(出情児)や恋人(高橋紀子)が絡み、最終的には銃撃戦になる、というような話らしいが未見なので書いていて分かり辛い。他に殿山泰司、緑魔子、桑山正一、伊藤久哉など。出情児は「イデジョージ」と読むのだろうか?調べると「井出情児」という唐十郎率いるアングラ演劇・状況劇場で役者兼カメラマンだった人がいて、映画には二本のみだが「出情児」名義で出ていたのだろう。後に写真家・国外ミュージシャンの撮影監督としても活躍した知る人ぞ知る存在のようだ。高橋紀子は東宝ニュータレント出身のエキゾチック美女で、黒沢は同期である。この後も「野獣都市」で黒沢の相手役として出演しているが、その直後に寺田農との結婚により引退している。
「銭ゲバ」(70年)はジョージ秋山の人気漫画を実写映画化したものだが、主人公の風太郎を前述の唐十郎が演じている。その少年時代は雷門ケン坊。両親を加藤武と稲野和子で、他に曾我廼家明蝶、緑魔子、横山リエ、左とん平、応蘭芳、鈴木いづみなど。桜井浩子の名が映画サイトなどにはあったりするが、実際は出ていないようだ。岸田は曾我廼家演じる社長の運転手・新星役。すぐに風太郎に殺されてしまうのだけれども。唐十郎自ら歌う主題歌「銭ゲバ大行進」は妙に明るかったりする。原作は当時「少年サンデー」に連載されていたが、小学生だった自分も「面白い」と思って読んでいた記憶がある。今なら少年誌には載らないと思うが。

岸田森の出演映画

今回からは岸田森である。我々世代には「怪奇大作戦」「帰ってきたウルトラマン」「ファイヤーマン」といった円谷作品や「傷だらけの天使」などで子供の頃から馴染みのあるバイブレイヤーだったが、亡くなって既に40年が経過している。前述の様にテレビでの活躍が印象に深いが、勿論映画にも数多く出演している。
岸田森は39年生まれ。本名である。父・虎二は劇作家・岸田國士の弟で、國士の娘が岸田今日子だ。顔立ちと体形から長身のイメージだが、169cmと意外に小柄である。
61年に文学座付属演技研究所に1期生として入団。同期に小川真由美、橋爪功、北村総一朗、草野大悟、寺田農、悠木千帆(樹木希林)らがいた。62年からテレビドラマに出演するようになり、映画出演も同年東宝の「放浪記」が最初のようである。森光子の舞台版が有名だが、映画版の主演は高峰秀子。他に田中絹代、加東大介、宝田明、仲谷昇、草笛光子、小林桂樹などで、岸田は同期の橋爪、草野と共に学生(料理屋の客)役で出演している。
65年に同期である悠木千帆と結婚。翌65年に座員に昇格した。この年に出演した映画が日活の「渡世一代」である。高橋英樹、和泉雅子主演の大正時代を舞台にしたヤクザものだが、岸田は高橋、和泉/松尾嘉代に続くクレジット4番手の大役。高橋の弟分だった岸田だが、現代で言うパワハラ的(殴られたりとか)な接され方を恨みに思って、敵側に寝返る。最終的には高橋に仕留められるのだが、一番の悪役として目立っている。
「水に書かれた物語」も同年、日活で公開されているが製作は中日映画社で、浅丘ルリ子くらいしか日活俳優は出ていない。主演は岡田茉莉子で朝丘、入川保則、山形勲、弓恵子、桑山正一などが共演。岸田の役は入川が子供の頃に病死した父親である。
翌66年に草野や妻・悠木と文学座を退団し劇団「六月劇場」を結成する。以降は舞台中心からテレビ・映画中心へ活躍の場を移している。この年は、大ヒットドラマ「氷点」に、ヒロイン内藤洋子の義兄役で出演し、一気に知名度を高めた。それまでにも多くのドラマに出演していたのだが、「氷点」が本格的なテレビ初出演と語っているらしい。
67年は日活「斜陽のおもかげ」に出演。主演は吉永小百合で、太宰治の愛人の子という設定。岸田はその吉永と恋に落ちる役である。しかし山岳部員である彼は山で遭難してしまうのだった(結局は無事)。「氷点」で岸田と共演の新珠三千代が東宝からレンタル出演。その交換条件として浅丘ルリ子が東宝の「日本一の男の中の男」に出演したという。新珠は吉永の母かず子役、つまり太宰の愛人だった人物。太宰の小説「斜陽」の主人公の名はかず子である。それにちなんで劇中での通称は「斜陽さん」だが、悪い意味ではないらしい。太宰と盟友であった作家の壇一雄が本人の役で出演している。
68年に悠木と離婚。円谷プロ「怪奇大作戦」にレギュラー出演にするが、これが自身の芝居の一大転機になったと語り、「自分は円谷育ち」と公言している。その知的なイメージは本作が大きいようである。

本郷功次郎の出演映画 その6

もう一回だけ本郷功次郎である。
本郷と言えば、大映特撮作品だろうという人も多いかもしれない。ただ、本人は文芸志向が強く、当時は本当に嫌だったようで仮病まで使って逃げようとしていたらしい。「スター街道を歩んできた自分が何故「子供向け映画」にというようなプライドや偏見もあったようだ。
仮病を使っても「治るまで待つ」と言われ、出演せざるを得なかったのが「大怪獣決闘ガメラ対バルゴン」(66年)である。「大怪獣ガメラ」(65年)のヒットによりシリーズ第2弾として急遽企画された。ゴジラシリーズより子供向けな印象のあるガメラシリーズだが、実はこの「対バルゴン」には子供は一切登場しない。「子供を出すように」という会社側からの要請はあったが、ベテラン田中重雄監督は無視して一般向けの内容に仕立て上げている。
主演は本郷で、共演は江波杏子、早川雄三、藤山浩二、藤岡琢也、夏木章、北原義郎、見明凡太郎、星ひかるに加え若松和子、紺野ユカ姉妹も出演している。西尋子は後に東映に移り賀川雪絵と改名する。星ひかるは宝塚女優のような名前だが、ベテラン男優(船長役)である。本作の特撮監督である湯浅憲明の実父でもある。
この「ガメラ対バルゴン」の併映作品が「大魔神」だったのである。特撮二本立ては特撮の本家といえる東宝でも実現できなかった形体である。
その第2弾が「大魔神怒る」(66年)だが、今度はそちらの主演が本郷に回ってきたのである。これもストーリーに絡むような子供はほぼ登場しない。本郷の役名は千草十郎時貞で、何をもじったかは明らか。ヒロインは藤村志保で、他に丸井太郎、内田朝雄、藤山浩二、上野山功一、神田隆、平泉征など。大魔神役の橋本力は元プロ野球選手(大毎オリオンズ)。本作では顔出し出演(池長俊平役)もしている。現役時代に親会社(大映)の依頼で「一刀斎は背番号6」(59年)に出演するが、その際に骨折し自由契約となってしまう。これを大映側が気の毒に思い俳優転向を打診して、入社の運びとなったのである。
「大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス」(67年)は、ガメラシリーズ第3弾。前作で特撮監督だった湯浅が本編監督も合わせて担当した。湯浅やプロデューサーである永田秀雅の意向もあり、このシリーズは子供を対象とした娯楽映画に路線変更されることとなった。引き続き本郷が主演扱いだが、実質的には英一少年(阿部尚之)が主役のようなものである。共演は新人の笠原玲子、丸井太郎、北原義郎、村上不二夫、上田吉二郎など。
「ガメラ対宇宙怪獣バイラス」(68年)は、ガメラシリーズ第4弾。本作から予算が前3作の三分の一に。正確には前3作が通常より3倍の予算を得ていたのであり、通常扱いになったということである。ここでも本郷が主役扱いで、ボーイスカウト隊長を演じる。その指導者として八重垣路子、八代順子、渥美マリの大映19期ニューフェイスの新人三人娘が出演している。前作までは大人も楽しめる作りであったが、本作は完全に子供向けに作られたという。
本郷もずっと嫌々ながらの出演で、当初はプロフィールからもこれらの作品を消していたというが、特撮映画が再評価される時代となり、本郷も「出演して良かった」と考えが変わったたようである。
 

本郷功次郎の出演映画 その5

さらに本郷功次郎である。
元々柔道スターとしてスカウトされながら、デビュー作以来柔道作品から遠ざかっていた(製作されなかった)本郷だったが、再びブームが訪れたのか①「近世名勝負物語 花の講道館」(63年)、②「日本名勝負物語 講道館の鷲」(64年)、③「柔道名勝負物語 必殺一本」(64年)と立て続けに主演に起用された。三本ともヒロインは高田美和で、往年のスター高田浩吉の娘だ。62年、まだ高校1年の時に大映入りしている。父の高田浩吉は松竹のスターで60年代に入ってからは東映にいたので、大映とは縁が薄かった。 本郷演じる主人公はそれぞれ別人なので(②は姿三四郎)、当然高田も別人の役である。①②には城健三朗こと若山富三郎が出演している。62年に東映から弟・勝新のいる大映に移籍してきたが、芸名を変更させられた上、ほぼ脇役に甘んじている。②には山下洵一郎が本郷の弟役で出演。山下も63年に松竹から移籍してきている。
④「外人墓地の決闘」(64年)は、前述の三本とは違ってタイトルに「名勝負物語」が付いていないが、これも柔道物で本郷が主役だ。本作でのヒロインは藤村志保で、主題歌を三波春夫が歌っている。三波本人も顔を出しているようだ。③と④はいずれもラスボスとして戦うのは五味龍太郎である。五味も元々は東映ニューフェイスで、63年から大映に移籍している。
⑤「雲を呼ぶ講道館」(65年)はタイトルに講道館と付いていることからわかると思うが、これも本郷主演の柔道物だ。共演が宇津井健、姿美千子、成田三樹夫、長谷川待子、藤巻潤など。なお、藤巻は②を除いて、全て準主役的に出演している。姿美千子は女三四郎のような芸名だが、橋幸夫の「すっとび仁義」の相手役として公募で選ばれた女優であり、柔道物への出演はほとんどない。妹は日活女優の橘和子で共に読売ジャイアンツの投手(倉田誠、高橋一三)と結婚している。
後はこの時期で気になった作品を挙げておく。
「大捜査網」(65年)は、解説には1年間の訓練を終え、城南署警ら課かに勤務することになった三人(本郷、藤巻、丸井太郎)と赴任してきた講師だった警部(宇津井健)とある。爽やかな警官成長物語というわけでもなく、本郷のミスでパチンコ店主が殺され、宇津井は刺され、藤巻は殉職するという展開。他に姿美千子、藤村志保、千波丈太郎、神田隆など。なお、本作公開の2か月後に「ザ・ガードマン」(65~71年)がスタートし、宇津井、藤巻らが出演する。
「掏摸(すり)」(65年)。品行方正で正義のヒーロー的な役を演じることの多かった本郷が、ここではタイトル通りスリを演じる。解説を読んでも時代背景がよくわからなかったが、どうやら明治時代らしい。登場人物が本郷の「仕立屋銀次」をはじめ、「巾着屋勝蔵」「おいらん小市」「濡れ燕の健」「細目の安」といった具合である(普通の名前もいる)。共演は高田美和、早川雄三、成田三樹夫、滝田裕介、久保菜穂子、内田朝雄、渡辺鉄弥など。渡辺は本郷の弟分役だが、52年の「二人の瞳」で出演者に名前がある。(劇団東童)とあるので子役出身のようだが、詳しいプロフィール等不明なので当時何歳だったかも不明だ。
 

本郷功次郎の出演映画 その4

引き続き本郷功次郎だが、今更だが映画スターとして活躍していたので大映時代だけでも約90本の映画に出演しているのだ。細かく取り上げすぎると20回でも終わらないと思うので、(個人的に)気になった作品のみ挙げていく。
「停年退職」(63年)は、停年退職を1カ月後に控えたサラリーマン(船越英二)を描いた物語でなので、船越が主役なのだろうが、クレジット上は本郷がトップの位置であり、藤由紀子が(新スター)付で二番手、そして船越となっているようだ。ちなみに当時は55歳停年である。他に中田康子、江波杏子、伊藤雄之助、そして倉石功も(新スター)付で出演している。藤由紀子のデビューは松竹であり、1年余りで大映に移ってきた形だ。藤はこれが大映第1作で、倉石はこれがデビュー作となる。
「視界ゼロの脱出」(63年)は、タイムリミットまでに鹿児島から奄美大島に血清?を届けるセスナ機パイロットが本郷で、同乗する看護婦が三条江梨子(魔子)。途中そばにあるサソリ島からの緊急通信で着陸するが、そこにはニセ札ギャング団が待ち受けていたというストーリー。「ザ・ガードマン」に似たような話があった気がする。ギャングのボスが中田康子でその部下に高松英郎、大辻伺郎など。
「ぐれん隊純情派」(63年)も本郷、三条がトップクレジット。チンピラである本郷の父親は旅役者の一座の座長。その父が死に本郷が一座を継ぐことになるが、兄貴分の藤巻潤と千波丈太郎はこの一座を売り払おうと企む。しかし二人も芝居にのめり込んで行くというような話だ。他に大辻伺郎、弓恵子、ミヤコ蝶々、中村鴈治郎など。千波に(新スター)が付いている。千波は60年に新東宝でデビューし、61年は日活(鹿島貞夫名義)、そして62年末から大映に所属している。工藤堅太郎がノンクレジットで出演しているらしいが、この時期大映と専属契約を結んでいたとのこと。
「犯罪作戦No.1」は、クビになった元警視庁の刑事(田宮二郎)が、本郷功次郎、藤巻潤、待田京介を仲間に、安部徹や山本礼三郎扮する悪人たちに復讐するというような話だ。本郷より先輩である藤巻もようやく主演級に上がってきている。「暗黒街No.1」「海底犯罪No.1」という作品もあるが、内容につながりはない。いずれもアクションドラマで、「暗黒街」「海底犯罪」の主演は宇津井健だ。
「巨人大隈重信」(63年)はタイトル通り大隈重信の伝記もの。大隈役は宇津井健で、本郷功次郎(渋沢栄一)、藤巻潤(井上馨)、船越英二(福沢諭吉)、高松英郎(山県有朋)、千波丈太郎(犬養毅)、内藤武敏(伊藤博文)、佐々木孝丸(大久保利通)、小池朝雄(黒田清隆)などが偉人に扮する。
「桃太郎侍」(63年)と言えば、高橋英樹のイメージが付いてしまったが、大映版の桃太郎は本郷である。他に高田美和、久保菜穂子、城健三朗(若山富三郎)など。
 

本郷功次郎の出演映画 その3

続けて本郷功次郎だが、今回は60年である。この年はなんと13本もの映画に出演しており、ホームの大映京都の時代劇だけでなく、大映東京の現代劇にもたびたび出演というハードな時期であった。
「二人の武蔵」は、五味康祐原作。長谷川一夫演じる平田武蔵と市川雷蔵演じる岡本武蔵が登場する。平田の方は俗に言う宮本武蔵で、勝新太郎演じる佐々木小次郎と対決する。勝新は小次郎ってイメージではないが、武蔵のイメージでもない気がする。本郷の役は岡本武蔵と親友となる棒術使いの夢想権之助。他に中村玉緒、宇治みさ子、林成年、鶴見丈二、中村鴈治郎など。
「千姫御殿」はタイトル通り、山本富士子演じる徳川秀忠の娘・千姫が主役。千姫がこもる吉田御殿に公儀の隠密である本郷演じる喜八郎が潜入するが、二人は愛し合うようになってしまう。しかし、喜八郎が隠密と知った千姫は落胆し尼となり、喜八郎は切腹となるといったお話。共演は小林勝彦、中村玉緒、山田五十鈴、志村喬、中村鴈治郎など。
「あゝ特別攻撃隊」は特攻隊を描いた戦記物。本郷はトップクレジットつまり主役で野口啓二、三田村元の若手が続く。他に野添ひとみ、宮川和子、北原義郎、高松英郎など。
「大江山酒天童子」は、川口松太郎原作で、大江山の鬼退治を描く物語である。酒吞童子とも表記される妖怪、つまり鬼の首領が酒天童子を演じるのが長谷川一夫。対する源頼光に市川雷蔵で、その四天王が勝新太郎(渡辺綱)、本郷功次郎(坂田金時)、島田竜三(碓井貞光)、林成年(卜部季武)という面々。中村玉緒は勝新演じる綱の妹役で雷蔵演じる頼光の恋人という設定。ちなみに、勝と玉緒の結婚は翌61年である。鬼側は左幸子(茨木童子)、千葉敏郎(鬼童丸)など。他に山本富士子、金田一敦子、浜田ゆう子、小沢栄太郎、根上淳、田崎潤など。
本作の妖怪は怪獣の造形で知られる大橋史典が担当しているという。伝説では、本郷が演じる坂田金時の幼名は金太郎。あの童話でお馴染みの鉞担いだ金太郎のことである。漫画「銀魂」の主人公・坂田銀時の名はこれをもじったもの。
「勝利と敗北」は「大江山酒天童子」の併映作品だが、こちらは現代劇でボクシング映画で当時の実際のチャンピオンたちが顔を出している。両作に出演しているのは本郷くらいである。主演は川口浩で、三田村元、本郷と続いている。三人ともボクサーの役だ。他に若尾文子、野添ひとみ、新珠三千代(東宝)、船越英二、高松英郎、安部徹、山村聰など。江波杏子がノンクレジットで出演している(ホステスの役)。
「続次郎長富士」はタイトル通り59年公開の「次郎長富士」の続編である。長谷川一夫の次郎長と勝新太郎の森の石松、鬼吉の林成年は前作と同じだが、他は役柄または役者が変更となっている。例えば、市川雷蔵は吉良の仁吉から山上藤一郎に、本郷も小政から小松村七五郎になっている。次郎長一家は中村豊、鶴見丈二、北原義郎、小林勝彦などが演じる。他に中村玉緒、根上淳、近藤美恵子、毛利郁子、阿井美千子に加え、佐々十郎、楠トシエ、堺駿二なども登場する。
この後、「素敵な野郎」「俺の涙は甘くない」「誰よりも君を愛す」という現代劇が続いており、いずれも本郷が主演である。「誰よりも君を愛す」には、飯田久彦が「スリービート」、内田裕也が「スリーガイズ」のメンバーとして出演している。

本郷功次郎の出演映画 その2

引き続き本郷功次郎である。59年はあと5本ある。
「鳴門の花嫁」は勝新太郎主演の時代劇。島田竜三、中村玉緒、林成年、青山京子、毛利郁子など。本郷は家老の息子で密使として阿波に向かう役。島田は58~67年ころまで活躍した役者で主演作も何本かあるのだが、詳しいプロフィールは不明である。林は長谷川一夫の息子。
デビューから時代劇が続いていたが、ここで初の現代劇「海軍兵学校物語 あゝ江田島」に出演。しかも主役扱いである。「扱い」としたのは、クレジット上は本郷がトップなのだが、事実上の主役は同期入社である野口啓二と小林勝彦なのだ。野口と小林は12期ニューフェイスに先んじて行われた「俺たちは狂ってない」の出演者募集で採用されているコンビ。ちなみに、ニューフェイス入社の森矢雄二(平林一雄)も出演者の一人であった。野口は主演デビューしながらも、三年ほどで姿を消している。実際、自分も最近までその存在を知らなかったりする。また、本郷と同期の12期ニューフェイスの中に袴光夫という名前が見られる。これは後に放送作家として活躍するはかま満男(本名・袴充夫)のことであろう。当時の年齢も21歳で一致しているし、かぶるような名前でもない。はかまのプロフィールには「大映ニューフェイス」というのは無いようなので、すぐに辞めたか入社しなかったか、ということだろう。
他の出演者だが、石井竜一、仁木多鶴子、根上淳、北原義郎、菅原謙次などでニューフェイスの1年先輩である三田村元に(新人)がついている(出演者はほぼ新人だが)。小林の弟役で「赤胴鈴之助」で主演となる桃山太郎が、またやはり1年先輩の藤巻潤が本名の藤巻公義で出演している。藤巻の本名時代はほぼチョイ役ばかりで、入社は後の本郷が先にスターとして扱われていたのである。
「貴族の階段」はタイトルからは想像しにくいが、二二六事件を背景としており、森雅之、叶順子、金田一敦子、菅原謙次、友田輝、滝沢修、志村喬などが出演している。本郷は近衛の見習い士官で、金田一の兄、その親友の叶に気があるという役。事件には妹に睡眠薬を飲まされ参加できないのである。金田一敦子、叶順子は共に10期ニューフェイス。金田一敦子は言語学者金田一京助の血筋であるが、60年には引退してしまう。
「風来物語任侠編」は日露戦争当時の東京を背景としたメロドラマで「姿三四郎」で知られる富田常雄の原作。主演は長谷川一夫で、小林勝彦、仁木多鶴子、中村玉緒、根上淳、田崎潤、山田五十鈴などが共演。本郷は仁木と恋仲となる苦学生、小林は国会議員の息子だが家を出て社会主義運動に加わる若者で、中村玉緒と恋仲という役。話は逸れるが、本郷は必殺シリーズには一度だけ「暗闇仕留人」に悪役で出演したことがある。悪徳奉行の役だが、その部下の与力を小林勝彦が演じているのだ。大映時代の同期などと当時は知る由もないが、今調べるとそいう繋がりのあるキャスティングは結構あったりする。
「浮かれ三度笠」は市川雷蔵主演の時代劇で、本郷はクレジット二番手の準主役だ。他に中村玉緒、左幸子、島田竜三、新東宝から移籍の宇治みさ子など。

本郷功次郎の出演映画

大瀬康一と大映では共演が多かったということで、今回からは本郷功次郎である。
本郷と言えば、近年は「特捜最前線」の橘警部のイメージが強いと思うが、大映では若手スターの一人であった。三船敏郎とか高倉健のように、俳優になるつもりは全くなかった状態から名優になった例は結構あるが、本郷も俳優になる気などなかったという。
38年岡山県生まれで、大学は立教で柔道部に所属していた。芸名っぽいが本名である。俳優になった経緯はかなり特殊で、本郷の叔母は柔道着姿の彼の写真をいつも持ち歩いていたという。その夫(つまり叔父)は大映の重役である松山英夫の友人で、たまたま本郷の写真が松山の目に留まったという。大映では菅原謙次に続く柔道スターを探しており、松山が叔母から写真を借りて社長の永田雅一に見せたところ「すぐに連れてこい」という話になった。
大映本社で松山と市川崑による面接があったが、本郷にその気はなく「日本映画はつまらないから見ません」とまで言い放ったが、説得されて「柔道映画なら」ということで承諾したのだった。こうして第12期大映ニューフェイスとして58年に入社。同期には浜田ゆう子、森矢雄二、大川修などで、直前に「俺たちは狂ってない」で公募デビューした野口啓二、小林勝彦も同期扱いかもしれない。
59年に柔道映画「講道館に陽は上る」でデビュー。主演扱いは菅原謙次のようだが、本郷は事実上の主役という感じ。他に浦路洋子、中村玉緒、須賀不二夫、佐々木孝丸など。実はこの2カ月ほど前に公開された「最高殊勲夫人」にも出演しているが、ノンクレジットである。同じような役の同期、森矢、大川はクレジットされているが、スター候補の本郷はあくまでもテスト出演の扱いということだろう。
59年の本郷は「講道館に陽は上る」以外にも8本の映画に出演と、デビュー年からフル回転である。
「紅あざみ」は勝新太郎主演の時代劇。芹沢鴨が局長のころの新選組と勤皇浪士との対立を描いており、「紅あざみ」とは浪士を助ける謎の人物。正体はもちろん勝新で、本郷は浪士の一人吉村の役だが新選組に斬られてしまう。芹沢役は小堀阿吉男で、隊士・伝九郎は千葉敏郎。他に鶴見丈二、黒川弥太郎、近藤美恵子、青山京子など。
「次郎長富士」はお馴染み清水次郎長一家を描いた大映オールスターキャストお時代劇。主役の次郎長には長谷川一夫、吉良に吉に市川雷蔵、森の石松に勝新太郎。クレジットでは以下、根上淳、鶴見丈二、船越英二と続き、次に小政役の本郷。新人としてはかなり上位で期待されていたことがわかる。他の次郎長一家に黒川弥太郎、島田竜三、林成年、千葉敏郎、石井竜一、品川隆二など。女優陣も若尾文子、京マチ子、山本富士子といったスターが出演している。
「濡れ髪三度笠」は市川雷蔵主演の時代劇。本郷は雷蔵に続く二番手クレジットで、11代将軍家斉の38番目の若君・長之助の役。雷蔵演じる半次郎に同行する弥次喜多の役に中田ダイマル・ラケット。他に淡路恵子、中村玉緒、楠トシエなどで、長之助を狙う刺客に千葉敏郎。和田弘とマヒナスターズが「宿の若い衆」で出演している。