知らない同志
山田太一シリーズ、次は「知らない同志」(72年)である。時系列では「二人の世界」「たんとんとん」(71年)の後となる。今までと異なるのは、本作の脚本は山田単独ではない。1~5話までは山田が書いているが、6~13話まではジェームス三木が担当。その後寺内小春が入り、最終19話は山田と三木の連名となっている。本数的には三木の方が多いが、基板を書いたのは山田ということになろう。全話出筆じゃないのは、次作に取り掛かる必要があったからであろう。それは次回に。
さて「知らない同志」だが、今見ると中々の豪華キャストだ。主役はテレビドラマは初主演となる田宮二郎だ。「白い」シリーズは有名だが、本作はあまり知られていないかも。大映社長永田雅一との対立から、人気絶頂期にも関わらず映画界から干されてしまった田宮だったが、「クイズタイムショック」の司会ぶりが好評で、すっかり茶の間の人気者になり、映画界への復帰も果たした。逆に大映は倒産してしまう。そして「知らない同志」で本格的にテレビドラマへ進出したのである。
共演が栗原小巻、杉浦直樹、山本陽子である。舞台は東京にあるスーパーマーケット「プラネット」。そこに新店長として大阪から赴任してきたのが三友竜一(田宮)だった。逆に前店長だった今西健太郎(杉浦)は大阪へ単身赴任。妻である節子(栗原)は、そのまま「プラネット」で働くことに。次第に竜一と節子は近づいて行く。一方、健太郎は大阪で不倫中。相手は何と竜一の妻である郁子(山本)であった。つまり、二組の夫婦がそれぞれの相手を入れ替えた状態になるわけである。
田宮と山本陽子と言えば、現実世界で不倫関係が取りざたされているが、この時点で夫婦役で共演していたのだ。ちなみに、自分は本作をしっかり見たことはない。しかし、YouTubeに本作を数分づつ切り取った動画が数本挙がっていたのを見ただけだ。全部で30分程度だろうか。それでも雰囲気は伝わって来た。コメディドラマという解説もあったが、コメディチックなのは杉浦だけで、田宮と栗原の場面はサスペンスにしか見えない。
こういったドラマのセオリーだが、最初の竜一の印象は最悪で、店員たちは反感を抱く。その店員を演じるのが石立鉄男、前田吟、鳥居恵子、高松しげお、大山のぶ代、いまむらいづみ、岡本富士太、常田富士男、浜田寅彦など。石立はフロアマネージャーの役だが、当時はほぼ主役も多く、こういった脇役は珍しい気もする。当時も掛持ちだったようなので、出番は少ないかも。大山といまむらは辞めていく役だが、田宮に「引き抜きですね。ここより何が魅力なんですか」と問い詰められる。それにしても大山のぶ代がスリムだった。
ゲストかレギュラーかは不明だが、他の出演者は梅津栄、神田隆、長谷川哲夫、姫ゆり子、三島雅夫、鹿野浩四郎、信欣三、せんだみつお、桜井センリ、小松政夫など。
俄・浪華遊侠伝
山田太一が「ポーラテレビ小説」に関わったのは、前回の「パンとあこがれ」(69年)だけだったようで、翌70年には新たな木下恵介枠である「木下恵介・人間の歌シリーズ」が新設され、その2本目に山田が起用されたのである。「木下恵介アワー」が人気だったので、TBSは新たに木下枠を設定したわけである。本枠でも木下本人は、ドラマ作品の企画・監修を手掛けている。
で、山田が担当したのが「俄・浪華遊侠伝」(70年)で、時系列では「兄弟」と「二人の世界」の間の作品ということになる。今までと異なるのは、山田のオリジナルではなく、司馬遼太郎の原作が存在することである。結構CSで放送されているのだが、まともに見たことはない。
「俄」は「にわか」と読み、舞台ではなく路上で感情を素朴に表現する即興喜劇のことをいう。主人公の明石屋万吉(小林佐兵衛)はやくざ者であり、実在した人物で、幕末明治における上方きっての大親分だそうである。
11歳で母と妹を養うために賭場荒しになったが博奕は好きでも上手でもない。15歳でやくざ者として門戸を構え、いつでも死ねるのが商売という信条を掲げた。物語はこの辺りから始まるので、主役の万吉を演じる林隆三は3話からの本格的登場となるようで、1~2話の万吉少年時は岡本隆成が演じている。この頃に、芸者の小左門(藤村志保)と出会ったのである。藤村はナレーションも担当している。
以下にTBSチャンネルのサイトから各話の主なあらすじを抜粋した。第4話…万吉のところへ、大阪でも指折りの遊侠の親方雁高(辰巳柳太郎)が、命仕事を頼みにきた。その訪問に感激した万吉は、どんな仕事でも引きうけると約束した。第5話…堂島の米相場をたたきつぶした万吉は、いまや度胸日本一とうわさされる男になった。ある夜、万吉は小左門と結ばれる。第6話…万吉は、大阪東町奉行の久須美佐渡守(島田正吾)に頼まれて、囚われの身である野々山平兵衛(二谷英明)を探すために、牢を一つ一つ巡っていた。第10話…元治元年、長州軍の敗残兵が続々と大阪へ落ちてきた。万吉は、幕軍の大阪城代から落武者を見つけ次第斬るように命じられる。第12話…新撰組に捕らえられた万吉であったが、一柳藩にはその士籍がないという理由で釈放された。大石鍬次郎(三上真一郎)らは万吉の後をつける。第13話…徳川幕府の大政奉還から二ヵ月。京都にいる薩長兵と大阪の徳川兵は一触即発の状態にあった。ある夜、万吉は一柳藩の仕置家老・山田捨馬(渡辺文雄)に呼ばれる。
辰巳柳太郎、島田正吾という新国劇の重鎮二人が相次いで登場したり、時代劇は珍しい二谷英明がゲストで顔を見せていたりする。
上記に書かれていない主な出演者だが、小春…万吉の女房(大谷直子)、万吉の母(吉川雅恵)、帯権(東野孝彦)、天満の軽口屋(樋浦勉)、平助(常田富士男)、ゴテ政(蟹江敬三)、内山彦次郎(西村晃)、建部小藤治(花沢徳衛)、遠藤謹介(石浜朗)、榊原三十郎(小松方正)、同心渡辺(津坂匡章)、嘉七(金子信雄)、役者松(細川俊之)、胴元(白木みのる)、胴元(上田吉二郎)、番頭(芦屋雁之助)など。万吉以外にも久須美佐渡守、大石鍬次郎、内山彦次郎、遠藤謹介などは実在した人物である。
結末での大阪での戦争で、万吉たちは、維新軍がわにつくという原作と違うストーリーになっているが、これは脚本の山田の創案によるもの。予め全13話と決まっていたこともあるので、仕方ないことなのか、山田が原作をなぞるだけではなく、何かオリジナリティを入れたかったのかは定かではない。
パンとあこがれ
続けて、山田太一脚本のドラマだが、また時系列が若干戻り、「3人家族」と前回の「兄弟」の間には約半年の期間があるのだが、そこで書かれたのが、「パンとあこがれ」(69年)である。
これは「木下惠介アワー」ではなくかつて存在した「ポーラテレビ小説」の枠で、全156話を一人で担当したようだ。156話と言っても、月~土曜日(後に月~金)の昼12:40~13:00に放送されていた帯ドラマ枠でなので、期間的には半年である。要するNHKの朝ドラと同じような形式だ。20分枠なので、本編は賞味15分弱といった感じだろうが、×6だと90分。つまり、毎週90分ドラマを半年の間書き続けるということになる。
NHKの朝ドラもそうだが、この枠からも沢山の新人女優が誕生し、長きに渡り活躍している人もいる。例をあげると木内みどり、丘みつ子、音無美紀子、佐野厚子、小林亜紀子、中田喜子、萩尾みどり、岡江久美子、岡まゆみ、五十嵐めぐみ、名取裕子、樋口可南子、かとうかずこ、宮崎美子、賀来千香子など錚々たる顔ぶれだ。
この枠は68年9月にスタート。今回の「パンとあこがれ」は2作目にあたり、ヒロインとして起用されたのが文学座所属の新人だった宇津宮雅代(21歳)であった。ちなみに、第1作「三人の母」は新人ではなく、加藤治子、馬淵晴子、千之赫子のベテラン勢で、木下惠介も脚本に参加していた。その流れで本作は山田にバトンタッチされたのではないだろうか。
つまり、宇津宮(宇都宮ではない)はこの枠の新人女優第1号となったわけである。さて「パンとあこがれ」だが、新宿中村屋を創業した相馬黒光と夫相馬愛蔵との波瀾万丈な半生を描く一代記ドラマ。登場人物は全て仮名になっている。相馬黒光(こっこう)とは本名ではなくペンネームのようなもので、相馬良が本名。どちらにしろ、字面だけ見ると男かと思ってしまう。新宿中村屋といえば、中華まんやらインドカリーやらが有名だが、実は大学生時代に夏休みだけだがアルバイトをしたことがあった。要するに皿洗いだが、基本的には機械を使っていた記憶がある。結局インドカリーにありついたことはなく、数十年たった今でもここでカリーを食べたことはない(はず)。
大雑把なあらすじを見た限りでは、黒光をモデルとした吉本綾(宇津宮)は、女学校卒業後まもなく見合いで相馬隆蔵(東野孝彦)と結婚するのだが、当初は親友である島村静子(西尾三枝子)の兄である朔(大出俊)に惹かれたようだ。しかしそれは叶わず、恩師である野口(加藤武)の紹介で二枚目とは言えない隆蔵と一緒になるのである。
出演者は、意外と「木下惠介アワー」と重なっていたりする。吉本敬(津島恵子)、吉本孝太郎(寺尾聰)、吉本美代(松尾嘉代)、相馬正蔵(菅原謙次)、相馬タネ(八木昌子)、相馬明子(新藤恵美)、相馬達夫(小野寺昭)、相馬孝次(石川博)、錦織節子(島かおり)、志沢幹太郎(岸田森)、ブルボー校長(イーデス・ハンソン)、横山先生(穂積隆信)、吉村先生(水原英子)、石川信子(吉村実子)、石川小枝(岸久美子)、木村辰子(伊藤るり子)、浅倉(常田富士男)、吉次(花沢徳衛)、タクール(河原崎長一郎)、信一(河原崎建三)、徹どん(小坂一也)、大友幾代(吉沢京子)、津元弘子(菱見百合子)、金田(加藤嘉)、美代(大山のぶ代)、加代(親桜子)、里子(保倉幸恵)と中々の豪華キャストが並び、役名不群でも原保美、春川ますみ、砂塚秀夫、武原英子、吉田次昭など。ナレーターは市原悦子。この中では小野寺昭がドラマ初出演だったそうである
兄弟
時系列が前後するのだが、「木下惠介アワー」において「3人家族」と「二人の世界」の間に放送されたドラマが「兄弟」(69~70年)である。本作も全26話、山田太一が脚本を担当している。
シンプル過ぎるタイトルで、忘れはしないが逆に印象に残らない気もする。普通なら「〇〇兄弟」としそうなところだ。それはさておき、その兄弟を演じるのが津坂匡章(志沢静男)とあおい輝彦(志沢順二)である。この二人は「おやじ太鼓」でも兄弟役で、それぞれ三男四男を演じていた。何度も書いているので、わかっているとは思うが津坂匡章=秋野太作である。名前を読めない人が多かったということで。一旦「津坂まさあき」にしていたが、その後ドラマでの役名をそのまま芸名にしてしまった。
ドラマはこの兄弟の恋愛模様が中心になるようで、相手役となるのが津坂は秋山ゆり(森本紀子)、あおいは沢田雅美(栗山京子)なのである。秋山は本作がドラマデビュー作となるようだが、沢田は「おやじ太鼓」では。津坂、あおいの妹役だった。三人とも「木下惠介アワー」の常連で、木下のお気に入りだったのだろう。
個人的に津坂を始めて見たのは「必殺仕置人」(72年)であったと思う。その後の「助け人走る」(73年)と合わせて多弁で三枚目的なイメージが強かったのだが、本作で静男は口数も少なく二枚目な感じ(らしい)。女性には目もくれず仕事一筋だったが、秘書課の紀子のことが気になっていた。同僚とは言っても、一度も話したことはなかったのだが、ある日昼食時に入ったレストランで彼女と会うのだった。というところから話はスタートする。一方の順二は大学生。にわか雨でずぶ濡れになっていたところに、傘をさしかけてくれたのが京子だった。名前も名乗らずに去っていた彼女のことが気になる順二であった。とまあ、ある意味ベタなきっかけではある。男女逆パターンの方が多いかもしれんが。文字で読むとミステリアスな雰囲気に思えるが、沢田雅美はミステリアスな感じではないし、ヒロインタイプでもないと思うのだが、本作ではどうだったのだろう。演じている京子はデパートの食堂のウェイトレスとして働いている。
他のキャストだが、北村和夫(志沢修太郎・兄弟の父)、津島恵子(志沢厚子・兄弟の母)、菅原謙次(森本辰造・紀子の父)、市川寿美礼(栗山トシ子・京子の母)、島津元(浅川信吾・辰造の部下の大工)、菅井きん(千代・京子の女子寮の管理人)、南風洋子(山村澄子)など。
津島恵子は東宝副社長・森岩雄の息子(伊千雄)と結婚した後、一時的に映画界からは離れたがテレビ出演は続いていた。この辺の時代は母親役が多い。自分はあまり見ていないのだが「俺たちの旅」(75年)を見ていた人ならピンとくるかもしれないが、津坂が演じていた伸六の恋人役が上村香子で、その両親を演じていたのが北村和夫と津島恵子なのである。また、津島は「おれは男だ!」(71年)では主演の森田健作の母親役だったが、秋山ゆりはヒロイン早瀬久美の姉役で出演していた。彼女の活動期間は短く、75年頃には引退したようである。市川寿美礼は、この2年後に44歳の若さで病死している。
大工の役で出演している島津元は馴染みがないと思うが、まもなく俳優を辞めて脚本家に転向し、本名の畑嶺明で前述の「俺たちの旅」など日本テレビ・ユニオン映画系の青春ドラマに参加していた。しかし、畑で一番有名なのは「毎度おさわがせします」(85年)シリーズではないだろうか。80年代半ばは「夏・体験物語」とか「妻たちの課外授業」、90年代後半は「キッズ・ウォー」シリーズなどヒット作を多く手掛けていた。
たんとんとん
前回の木下恵介アワー「二人の世界」の後番組となるのが「たんとんとん」(71年)である。脚本は山田太一が引き続き全26話を一人で担当している。出演者は前作とはガラリと変わり、主演は青春スター森田健作であり、その母親がミヤコ蝶々で、この母子を中心にドラマは展開する。タイトルの「たんとんとん」はわかると思うが、「母さんお肩をたたきましょう~」の「たんとんとん」を表している。
ただ大変失礼ながら、この二人だと婆ちゃんと孫という関係に見える。ミヤコ蝶々は当時51歳だが、既に60代くらいという感じに見えるのだ。蝶々と森光子が実は同い年と考えると森光子が若造りだったと言えようか。
逆に森田健作は当時22歳だが、高校生にも見え、今回も高校生の役だ。と言っても学園ドラマではない。
森田が演じる尾形健一(緒形拳ではない)は大工の棟梁の息子。しかし、その父親が急逝。大学進学を目指していた健一だったが、高校を辞め父の跡を継ぐ決意をするのだった。というのがあらすじ。
つまり主な舞台となるのは健一と母・もと子(蝶々)の住む「尾形工務店」である。工務店の関係者が棟梁・堀田(花沢徳衛)、父の弟子だった生島新次郎(杉浦直樹)で、堀田の妻・咲子(杉山とく子)、堀田の娘・ゆり子(丘ゆり子)、新次郎の妻・とし子(松岡きっこ)という顔ぶれ。丘ゆり子は馴染みがないと思うが、浅草の軽演劇出身で、ずんぐりした体形が特徴。20歳前の役だが、当時29歳。終盤重要な役割を演じる。松岡は杉浦と15歳離れた妻という設定だ。ここに腕のいい若い大工・江波竜作(近藤正臣)が加わる。設定では20歳だが、近藤も前述の丘と同じ29歳だった。彼と健一は馬が合わず、悉く対立する。
ヒロインとして登場するのが、蕎麦屋に務める石井文子(榊原るみ)。実は竜作とは同郷で、しかも同じ養護施設の出身ということで、おそらく顔見知り。竜作に好意を持つが、彼はあやふやな態度をとる。そのせいか、健一とデートしたりもする中々の小悪魔だったりする。終盤に竜作の父・竜造役で登場するのが由利徹だ。
建一の高校での友人として登場するのが磯田(岩上正宏)。演じる岩上は近藤も出演していた「柔道一直線」では丸井円太郎なる柔道選手を演じた。その名前の元になったであろう役者が丸井太郎で「図々しい奴」が有名。その少年時代を演じたのが岩上である。その彼が告白して振られるのが夏川雅子(岩崎和子)である。彼女も健一の元クラスメートで歯医者の娘。榊原るみと岩崎和子と言えば「帰ってきたウルトラマン」だ。実は本作は全く同時期に放送されていたので、榊原は掛持ちだったと思われる。さらに、彼女はこの後「気になる嫁さん」への出演が決まり、「帰って来たウルトラマン」を宇宙人に殺されるという形で降板する。そして、入れ替わるように登場したのが岩崎和子だったのである。「たんとんとん」においては榊原は結局は近藤とうまくいくようだ。
この他にも「尾形工務店」に家造りを依頼した夫婦(中野誠也、井口恭子)や健一の叔母親子(加藤治子、朝倉宏二)等も登場。朝倉はアニメ「キックの鬼」で、主人公の沢村忠を演じたり、声優活動の方で知られている。
そして終盤に長髪にヒゲのバンドマン園部(朝比奈尚之)が登場し、ゆり子と結婚することになる。最終話はこの二人の結婚がメインになるようで、竜作と文子ではないのだ。
竹脇・栗原コンビと違い、視聴者的には馴染みの薄い役者二人の結婚で盛り上がったかどうかは不明だが、山田ドラマで不評なコメントはあまり聞いたことがないので、悪くはなかったのだろう。
二人の世界
「3人家族」(68~69年)終了から約1年半が経過し、再び竹脇無我、栗原小巻のゴールデンコンビを復活させたのが「二人の世界」(70~71年)である。脚本も全26話全て山田太一が担当している。本作も結構CS等で放送されることが多いようで、つい最近はBSの方で放送されたようである。
「3人家族」では、そのプラトニックなじれったさを売りにしていたようなところがあったが、今回はその逆をやってみようという試みのようだ。竹脇演じる宮島二郎と栗原演じる榊原玲子は、海外有名アーティストのコンサート会場で入場を断られた同士として偶然知り合う。お互い惹かれあった二人は、毎日のように会ってわずか5日目に結婚を約束するまでになる。知り合って短すぎる、若すぎると言う反対にも抗して二人は3カ月で結婚へとこぎつけるのだった。というのがあらすじ。
昔は数年の交際期間を経て結婚までこぎつけるのが普通だったが、その時代にこのスピード婚。50年経った現在でも出会って3か月で結婚は中々ないと思われる。5話だか6話くらいで結婚して、じゃあ残りの回はどうすんのという話だが、脱サラ問題が起きるのだ。二郎は会社の派閥争いで左遷され、サラリーマン生活に前途を見いだせなくなっていた。結局退職し、夫婦でスナックを営んでいくという展開になるのだ。
スナックはスナックバーの略で、日本では一般に女性がカウンター越しに接客する飲酒店を指す。店の責任者は女性であることが多く、その女性は「ママ」とか「ママさん」と呼ばれる。現代の定義ではそんな感じだが、本作では夫婦でやってるし、軽食の提供がメインという感じにみえる。定義上存在しないが、アルコールを提供する喫茶店に近い。
二人以外の出演者だが、榊原家の面々はほぼレギュラーで、あおい輝彦(弟・恒雄)、山内明(父・遼一)、文野朋子(母・孝子)に対して、宮島家は田舎にあるので、二郎が帰省した13話に初登場。長浜藤夫(父・武治)、吉川雅恵(母・イク)、菅貫太郎(兄・一郎)、新田勝江(兄嫁・英子)とまあ馴染みの薄い名前が多い中でなんとスガカンが竹脇の兄役というのに驚く。無論、悪だくみなどしていない普通の兄である。それぞれ、全部で2、3回の登場なのでゲストという感じだ。
あと、登場回数が多いのが、三島雅夫(コック長・沖田)、水原英子(片桐弓子)、東野孝彦(関根)辺りはレギュラーと言っても良さそう。三島は「3人家族」では竹脇、あおいの父親役だった。水原はあおい演じる恒雄の片思い相手、東野孝彦(英心)は二郎の同僚である。
後はゲストだが、近藤洋介、村井国夫、長谷川哲夫、西田健、山本清、加藤嘉、佐山俊二、太宰久雄などで、小坂一也と内田朝雄は終盤の22~25話に連続して登場。ちなみに二人は親子の役だ。ストーリーには関わらないが、印象深いのは五十嵐じゅんで、まだ五十嵐淳子になる前だ。会社の屋上で退職する竹脇にプレゼントを渡すだけだが、すごく目立つ。一回だけの登場が勿体ない。スナックの客では小野寺昭。学生の役のようだが、一際爽やかに見える。もちろん「太陽にほえろ」の前である。三人連れで飯を食っていた木村豊幸、畠山麦、岩上正宏はその見た目だけで目立っていた。
演出は、ほとんどの回を川頭義郎が担当している。ちなみに、川津祐介の兄である。翌72年に46歳で急逝している。
3人家族
前回で、山田太一脚本を取り上げたので、水曜劇場を離れ、山田脚本ドラマを調べてみた。
山田太一は、早稲田大学教育学部の出身で、卒業後は教師になるつもりだったが、就職難で教師の口がなく、大学の就職課で松竹大船で助監督を募集していることを聞き、松竹を受験したという。
松竹入社後は木下惠介に師事。60年代前半から木下の映画をテレビドラマに脚色する仕事を始めている。65年に退社してフリーの脚本家となった。
そして68年、木下に「連続ドラマを書いてみろ」と言われ「木下惠介アワー」に参加することになる。それが「3人家族」であり、全26話を一人で出筆している。「絶対にあててやる」という意気込みで臨み、実際に高視聴率を上げることに成功したのである。実は「木下惠介アワー」って、脚本も全部木下が担当しているとずっと勘違いしていた。この枠においての木下は脚本を担当することもあるが、制作プロデューサーのような立ち位置だといえる。
この「3人家族」でも、木下は「制作」としてクレジットされている。「3人家族」は大人気だった「おやじ太鼓」と「おやじ太鼓2」の間に放送された番組で、頑固親父から一転、若い二人の純愛ドラマだったのだが、負けないくらい好評を得たという。それにしても「おやじ太鼓」にも山田は脚本で参加していたのだが、全然知らなかった。まあ担当話数が少なかったこともあるけれども。
「3人家族」だが、主演は竹脇無我と栗原小巻で、子供の頃に番組の合間に番宣が流れ、二人の名前を聞いて、そのインパクトに驚いた気がする。二人とも本名だし、唯一無二といえる。ただ、番組タイトルは記憶になくこの「3人家族」だったかもしれないし、他の二人の共演作かもしれない。
偶然、横浜駅発の朝の通勤電車で見かけた同世代の会社員の竹脇演じる柴田雄一と栗原演じる稲葉敬子。互いの名前も知らず、一目惚れをし合あうという、よくありそうでまずないシチュエーション。普通はどちらか(大体は男の方)が一方的に惹かれるのが普通な気がする。
実は柴田家も稲葉家も3人家族。柴田家は雄一の他、弟の健(あおい輝彦)と父親の耕作(三島雅夫)の男三人。稲葉家は敬子の他、妹の明子(沢田雅美)と母親のキク(賀原夏子)の女三人。柴田家は二枚目兄弟に対して、スキンヘッドで丸い顔の父親。稲葉家は全然似てない姉妹だったりするが、基本は木下のお気に入り役者がメインだろうから、不思議なキャスティングもあるだろう。
他の出演者だが、中谷一郎、近藤洋介、森幹太、菅井きん、川口恵子、鶴田忍、菅貫太郎、東野孝彦、武内亨、遠藤剛など。
本作は以前、CSで放送されていたりしたが、ちょっと覗いてみた程度なので見ていないのと一緒である。情報によると、とにかく主役二人の関係がじれったいのだそうだ。20話になっても手も握らない(と思われる)状態が続き、ラストの3~4回で一気に進展があり、めでたしめでたしとなるようだ。今なら、NHKの朝ドラとかを除けば、半年も放送される連続ドラマは中々ない。当時は大うけしたらしいが、早い展開に慣れた現代人には途中で飽きがくるかもしれない。にしても昔とはいえ、飽きさせなかった山田太一は凄腕といえるのだろう。
さくらの唄
水曜劇場と言えば、演出は久世光彦というようなイメージがあるが、その久世が山田太一と組んだ作品が「さくらの唄」(76年)である。あまりない組み合わせだと思ったが、実際この1作だけのようだ。久世と言えば、アドリブを含んだ演出が特色だが、山田はそれを好まず「アドリブは一切やめてくれ」と久世に抗議したという。意外にも久世はそれをあっさり受け入れたという。ゆえに、山田が怒って降板というような事態にはならず、全26話を一人で書きあげている。
山田はこの当時、鶴田浩二主演の「男たちの旅路」、田宮二郎主演の「高原へいらっしゃい」が共に好評で、それに続いたのが「さくらの唄」なのである。翌77年の「岸辺のアルバム」もヒットしたこともあり、その間に買かれた本作は今一つ影が薄い気がする。山田ドラマはある程度は見ている自分だが、タイトルを聞いてもピンと来なかったのが正直なところだ。実際見たことはないし。
同じタイトルの漫画がばかったっけと思い、調べると90年代に安達哲がヤングマガジンに連載していた「さくらの唄」があった。ドラマとこの漫画の内容に関連性はない(と思われる)。
さて、水曜劇場「さくらの唄」の舞台だが、東京・蔵前の小さな整骨院。その主人が若山富三郎演じる高松伝六である。その妻が加藤治子(高松泉)で、悠木千帆(高松麗子)、桃井かおり(高松加代)、高野浩幸(高松進)という三人の子供がいる。悠木千帆が芸名売却で樹木希林となるのは翌77年のことである。高野浩幸は当時15歳で、「超人バロム1」(71年)で主役の健太郎少年を演じてから、4年しか経っていないが、すっかり大人っぽくなっている(スチール写真より)。多分、高校生の役だろう。若山富三郎はイメージ通り、よく怒鳴る昭和の頑固親父といった感じの役のようだ。映画では極道シリーズとか極悪坊主シリーズとか主役だがしょうもない人間を演じることの多い若山だが、テレビドラマでは「悪魔のようなあいつ」の刑事とか「啞侍鬼一法眼」のような割合シリアスな役が多い気がする。
ドラマは主に二人の娘の恋愛エピソードが主軸となるようだ。失礼ながら麗子という役名が似合わない悠木だが、本作では中西という男の子供を妊娠する。しかし中々籍を入れようとはしない。その中西を演じたのが、なんと美輪明宏である。普通に男言葉でメイクもしていないという。丸山明宏時代のイメージに近いかも。普通に男の役なら別に美輪じゃなくてもいいだろうと思うが、彼の出演は目玉の一つなのだろう。方や桃井演じる加代は妻子ある男性・朝倉を密かに愛していた。その朝倉信也を演じるのが田村正和で、その妻を篠ひろ子(朝倉圭子)が演じる。あくまで桃井が一方的にという感じのようだ。
他の出演者だが、由利徹(小笠原秀太郎)、野村昭子(小笠原フミ)、前田真里(稲葉なおみ)、ロミ山田(ユミ)、清水めぐみ(岡部悦子)、立野弓子(芸者ぽん太)、初井言栄(管理人)、浦部粂子(人形屋の婆ちゃん)、岸部修三(田代章夫)など。
高松家のお手伝いなおみ役の前田真里は当時16歳の高校生。79年に宝塚音楽学校に入学し、葦川牧の名で舞台に立つ。87年に退団後は声優や脚本家として活動している。立野弓子は73年、高校を卒業したばかりで日活ロマンポルノ「ためいき」の主演女優に抜擢されて話題となった。74年からはテレビに転向し、グラビアモデルとしても活動した。岸部修三は改名前の岸部一徳。修三の読みは本名は「しゅうぞう」だが、タイガース時代は「おさみ」と読ませていた。
番組タイトルと同名の主題歌「さくらの唄」を美空ひばりが歌っている。久世がひばりに直談判して実現した。暗すぎたのかヒットとまではいかなかったようだ。番組自体も予定通り半年間放送はされたが、視聴率的には高いとは言えなかったようだ。
ここまでは他人
もう一本、水曜劇場と丹波哲郎絡みで「ここまでは他人」(81年)である。
星セント・ルイスという漫才コンビを覚えているだろうか。星セントは178㎝の長身で、ヒョロっとした田中邦衛といった感じの風貌で、対する星ルイスは153cmと競馬の騎手になれそうなくらい小柄という身長差が売りのコンビであった。共に48年生まれである。このドラマは当時人気だった彼らが主演(実質セント)なのである。
本作はそのキャスティングが特徴的な感じがする。星セント演じる鈴木秀樹は料亭に務める板前で、その弟を演じるのが宮内淳(鈴木薫)である。「太陽にほえろ」のボンボン刑事として知られる。ヒロインとなるのがマッハ文朱(河原節子)で、その父親が丹波哲郎(河原勘三郎)なのである。この時点でかなりクセの強い顔ぶれとなっている。では星ルイスは何役かと言えば、鈴木兄弟の亡き父(鈴木元年)の役で守護霊という形で登場するという。その妻つまり兄弟の生き別れた母スエを内海桂子師匠が演じたのだ。他の出演者は浅野真弓(朱実)、森田理恵(邦子)、野村昭子(千代子)、戸川純(丸子)、あと役名は不明だが、北村和夫、三谷昇などが出演していたようだ。
そのあらすじだが、鈴木秀樹と薫の兄弟は父と死別し、母と生き別れて以来二人きりで支え合って生きてきた。秀樹はある日、女性警察官の河原節子と知り合い、節子に恋をする。一方、弟・薫には縁談が持ち掛けられた。相手は秀樹が勤める料亭「一心亭」の一人娘で、薫に好意を寄せているという邦子である。しかし薫には婚約者がいると言う。後日その婚約者に会った秀樹はそこで驚き仰天。薫の相手は秀樹が恋した節子だった、というもの。マッハ文朱がモテモテな役だが、失礼ながら逆パターンな役の方がしっくりくる。
13歳の時「スター誕生」に出場し、決戦大会まで行ったのは有名な話だが、当時既に174cmくらいあったという。この時は山口百恵が準優勝したが、彼女とは同い年で向こうから話しかけられたのを覚えているという。マッハはスカウトされなかったが、スタ誕の池田プロデューサーからは「身長が高いからかわいい子路線では売りづらい。13歳だから和田アキ子のような迫力もまだ出せない。だから審査員の先生たちもどう評価したらいいかわからなかったのだと思う」と説明されたという。ならばこの身体を生かそうと女子プロレスラーの道を目指したのだという。76年頃からタレント活動を開始している。
宮内淳は一瞬、字面が宮内洋に見えるが、本名は宮内博史なので実は同じ「ミヤウチヒロシ」なのである。83年辺りからほとんどテレビ等で見かけなくなるが、これは児童演劇活動を中心にしたためであり、50歳を過ぎると芸能活動はほぼ停止し、環境問題の啓発活動に力を入れるようになったという。
さて、主演のセント・ルイスだがその後漫才ブームの仕掛人である横澤彪と相容れなかったことなどが要因となり、テレビ出演は減少してしまうのである。コンビ仲は悪く、お互いの住所すら明かさなかったらしいが、それでも32年間コンビを組み、03年に解消している。しかし、その翌04年7月にセントが56歳で逝去。悲しみのコメントを寄せたルイスだったが、九か月後の05年3月にルイスも56歳で逝去。しかも死因は共に肺癌であった。
話を戻すが、本作は予定通りか打ち切りかは不明だが全9話である。脚本は全話ジェームス三木が担当している。話数の少ないドラマはCSなどでも放送されない傾向にあるが、本作も今後見る機会はあまり訪れない気がする。
拳骨にくちづけ(ゲンコツにくちづけ)
水曜劇場を追って行くと気になる作品があった。「拳骨にくちづけ」(81年)である。主演が大原麗子で、共演が丹波哲郎なのである。
丹波が出演するテレビドラマって、「キイハンター」や「Gメン75」のようなアクションが「三匹の侍」や「鬼平犯科帳」のような時代劇かというイメージを持つ人が大半だろう。実際、その二本柱がほとんどなので、こういったホームドラマはこの時点では珍しいと言えるのである。年齢を重ねていくと、そういったドラマも増えていくのだけれども。
本作に関しても、全く未見であり、存在も初めて知ったくらいなので、丹波の出番がどの程度あるのか不明なのだが、設定的には、多く出番がありそうな気がするのだ。
ヒロイン大原麗子が演じる杉本薫は現代彫刻家である。子供たちに絵画を教える傍ら、鉄を使った彫刻にも励んでいた。薫は、間もなく細川俊之演じる吉川杜夫と結婚する予定であり、結婚前の最後の作品を作るべく荒船鉄工所の一角で製作に取り組んでいた。その鉄工所を営むのが丹波演じる荒船時次郎なのである。彼には3人の息子がおり、柄本明(金太)、本間優二(鉄平)、北詰友樹(鋼介)が演じている。薫が結婚式の仲人夫妻と初顔合わせする当日、薫の不注意が元で工場で爆発事故を起こしてしまう。結婚を控えていた薫だったが、工場の被害の弁済のため、荒船鉄工所で働くことを志願する。というのがあらすじである。
他のキャストだが、山岡久乃(吉川千津:杜夫の母)、橋爪功(吉川慎一:杜夫の兄)、笠智衆(薫の祖父)、島村佳江(八木沢悠子)、原保美(荘吉)、萩尾みどり(マミ子)、菅井きん(イノ)、野際陽子(妙子)といった顔ぶれ。あと役名は不明だが、榎木孝明、蜷川有紀、伊藤栄子など。
鉄工所の三兄弟だが柄本は当時33歳に対して、本間は23歳、北詰は22歳。年齢も離れているが、顔も全然似ていない。本間優二は79年に映画「十九歳の地図」で主演デビューしているが、実は76年のドキュメンタリー映画「ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR」に現役暴走族として出演していた。ブラックエンペラーでは名誉総長にまでなったという。宇梶剛士の先輩にあたるわけである。個人的にも本間が主演の「狂った果実」(81年)を浪人生の時だったか映画館で見た記憶がある。確か三本立てだった。いつの間にか見かけなくなったと思ったら、89年で引退したそうである。役者志向でもなかったらしい。
北詰友樹も79年に「メガロマン」の主役としてデビュー。NHK連続テレビ小説「なっちゃんの写真館」(80年)で注目されるようになった。北詰も94年ころに芸能界から退いている。
細川俊之の兄役が橋爪功で、実際橋爪の方がずっと上に見えるのだが、実は細川が1歳上である。後、丹波と野際陽子の共演というのも「キイハンター」を思い出す。大原麗子は前年(80年)に森進一と再婚している。忘れているかもしれないが最初の相手は渡瀬恒彦だ。
ところで、番組タイトルだが5話より「ゲンコツにくちづけ」と変更になった。やはり漢字で「拳骨」と書いても馴染みが薄く読めない人も多かったのではないだろうか。、