お宝映画・番組私的見聞録 -5ページ目

決めろ!フィニッシュ その2

引き続き「決めろ!フィニッシュ」(73年)である。
スポ根と言えばライバル。本作もヒロインの白鳥みゆき志摩みずえ)の前に、次々とライバルが登場する。1話から登場しているのは鷹羽高校の1年・星わかば新井春美)である。みゆき同様に体操界隈では天才少女として名高い。演じている新井春美は当時20歳で、スポーツ紙主催の「ミス赤い靴コンテスト」で優勝したのをきっかけに16歳で女優デビューしている。ただ本作においては、男っぽい短髪のせいもあってか、失礼ながらあまり華がない。この4年後にNHKの連続テレビ小説「風見鶏」のヒロインになるとは、全然想像できないのである。その姉が夏子中山麻里)で、鷹羽高校のコーチでもある。中山麻里中山仁同様に「サインはV」で、お茶の間に知られるようになった。美形のライバルと言えば彼女というイメージがあり、当時25歳で、さすがに女子高生役ではないが、ライバルの姉としてキツさ満開の鬼コーチを演じている。
ライバルは同じチームにもいた、ということでクローズアップされるのがみゆきの1年先輩である藤サチ小林亜紀子)である。みゆきが所属する東和学園の体操部は1年と2年の仲が悪い。キャプテンの大川町子森るみ子)以外の2年生は1年生に意地悪なのである。サチとみゆきの関係も良くはないが、態度が冷たいだけで、攻撃を加えるわけではない。演じる小林亜紀子は前述の中山麻里と同じ当時25歳であったが、こちらは女子高生役でも通るタイプ。大学在学中にスカウトされ、卒業後の71年よりドラマに出演し始め、高橋英樹主演の「おらんだ左近事件帖」(71~72年)に準レギュラーとして数回出演。「決めろ!フィニッシュ」の後は、ポーラテレビ小説「薩摩おごじょ」(73年)のヒロインに抜擢されたが、その終了をもって引退してしまう。これは元々、両親との間で女優は3年間だけという約束があり、実業家と見合い結婚して家業(機械金属商)を継ぐことが決められていたからなのだが、74年に結婚した相手は髙橋英樹であった。前述のとおり「おらんだ左近」に小林は4回ほど出演しただけだが、高橋は初対面の時に「結婚の文字が浮かんだ」と後に語っている。
話を戻すが、第5話にて木の上からサルのようにみゆきとサチの前に現れたのが井川啓子児島美ゆき)である。「ハレンチ学園」で人気を得たこともあって、セクシー系女優と見られていたと思うが、東映児童研修所出身でありばがら「プレイガール」等に出演することはなかった。代わりに?研修所の同期で東映ニューフェイスとなった片山由美子がレギュラーになっていた。
もう一人、この回から登場したのが高山ひろ子四方正美)である。突如、剣道部から体操部へ転部してきて、みゆきの友人となる。4話までその役目は丸顔の娘(宮前ゆかり)が担っていたが、4話かぎりで姿を消している。
11話から登場するのは神かがり萩生田千津子)である。一瞬「カミガカリ」に見えるが「ジンカガリ」である。演じていた萩生田は文学座の所属。82年に交通事故に遭い生涯寝たきりを宣告されたというが、数年後に車椅子女優として復活している。
最終話には三田洋子青木英美)も登場するが、セリフはなかった。

決めろ!フィニッシュ

前回の「泣くな青春」が始まる前日に終了した、やはり中山仁が出演していたドラマがある。それが「決めろ!フィニッシュ」(72年)である。
タイトルは知っていたが、一度も見たことはなく、スポ根ドラマであることは予想できたが、何の競技なのか考えたことは無かった。まあ「フィニッシュ」という言葉が出てくるスポーツと言えば、まずは体操であろう(他にもあるかもしれんが)。これは、高校女子体操部を描いたドラマである。本作もネット上で飛び飛びだが見ることができた。
中山仁の他、三ツ木清隆、森るみ子、四方正美、木村由貴子、高橋ひとみ(61年うまれの高橋ひとみとは別人)らがレギュラー出演しており、そのまま「泣くな青春」にスライド出演した形になっている。両番組は放送局も日時も違うが、共に東宝製作で、プロデューサー(香取擁史)は同じなので、こういう形になったのだろう。前述のように「決めろ!フィニッシュ」の最終話は72年10月1日放送だったが、翌10月2日に「泣くな青春」の第1話が放送されたのである。
「決めろ!~」は、TBS系日曜夜7時、あのタケダアワーでの放送であり。「シルバー仮面(ジャイアント)」の後番組として放送されたのである。個人的には「シルバー仮面」の後番組って「アイアンキング」だとずーっと思っていたので、驚きであった。前述のとおり「決めろ~」は全く見た記憶はないので、普通に裏番組だった「ミラーマン」を見ていたのかもしれない。なにしろ若手女優が劇中ほぼレオタード姿なので印象に残らないはずはないのだ。、
中山仁と言えば、「サインはV」の鬼コーチぶりが有名だったが、本作でも鬼コーチ役なのである。クレジットも中山がトップだが、主役というわけではない。女子体操なのだから、女子が主役でなければ困る.
まあ当時は主役が新人や若手の場合、トップクレジットじゃないことは結構あった。たとえば同じタケダアワーの「ウルトラマン」(66年)では主役は黒部進だが、トップ扱いは隊長役の小林昭二だったし、「ウルトラセブン」(67年)も同様で、主役の森次浩司(康嗣)ではなく隊長役の中山昭二がトップだった。
ヒロインの東和学園1年白鳥みゆきを演じたのは、ほぼ新人であった志摩みずえ(当時19歳)である。70年代に活躍した女優で、こういいうスポ根よりもお嬢様役が似合うようなイメージがあった。その幼馴染で、ナレーションでは「親友」と紹介しているが、ほぼ恋人関係と言っていいのが小野次郎三ツ木清隆)である。彼は同じ高校の3年で、棒高跳びの選手だ。1話はこの二人の特訓シーンから始まる。みゆきは既に結構な実力者として描かれている。ゼロから始めて次第に頭角を現していく、という様にゆっくり描いているヒマはなかったらしい。その次郎が3話で突然長野に転校することになり、みゆきがスランプに陥り、かと思えば次郎は大けがをして、東京の病院に運びこまれてきたりするというジェットコースター的なドラマなのである。

相手役の三ツ木清隆も当時19歳。14歳で「光速エスパー」(67年)の主役としデビュー。70年代に入ってからは、実年齢どおりの青春ドラマへの出演が多かった。本作の翌73年には「白獅子仮面」でも主演に抜擢さたが1クールで終了してしまった。並行して「ウルラマンタロウ」にも西田隊員役で出演していたが(白獅子仮面の撮影は終了していたらしい)、新たに大河ドラマ「国盗り物語」への出演が決まり、「タロウ」も1クールで降板することになった。「タロウ」は主役候補でもあったらしいが、8話ほどしか出演していないため、出ていたことを知らない人も多いかもしれない。

※次回の更新も1週間後になる予定。

 

泣くな青春 その2

前回に続いて「泣くな青春」(72~73年)である。
ヒロイン役の教師となるのが、有村校長二谷英明)の娘である千秋武原英子)である。教員の一人ではあるようだが、いつも父親のそばにいて秘書のように見える。当然、大和田中山仁)とは相性が悪いのだが、5話から出演しなくなる。4話から7話までしか見ていないので、断定はできないのだが、このまま最後まで出てこないかもしれない。その替わり登場するのが佐伯先生岩本多代)である。でもヒロインという感じではない。失礼ながら実年齢より、上に見えるタイプで主婦感があったりする(当時32歳)。中山は30歳だ。逆に年を重ねても見栄えはあまり変わらず、いつしか年齢が追い越した感がある。ちなみに「多代」は「ますよ」と読む。個人的には、ずっと「たよ」だと思っていた。
工藤教頭役は渥美国泰だが、この人のレギュラードラマというのは記憶にない。同時期に放送されていた「飛び出せ青春」の江川教頭役の穂積隆信は俳優座の同期である。
ゲストに目を向けると、4話に小林文彦、5話に千葉裕、7話に児島美ゆきと出演しているが、彼らの共通点がわかるだろうか。そう「ハレンチ学園」である。小林はテレビ版、千葉は映画版の山岸役で、児島は両方でヒロイン十兵衛(柳生みつ子)を演じている。D組生徒でレギュラーの福崎和宏イキドマリ役)と合わせて、意識的なキャスティングであろうか。
小林はD組の生徒・大内を演じているが、突然自殺してしまう役である。過去の役柄のイメージからそういうタイプには見えないのが狙いかも。本作は基本的にはシリアスなドラマなのである。児島はA組の転校生・木宮役だが、彼女には売春の容疑がかかる。刑事として登場するのが、大和田も世話になったという島村安部徹)である。真相は彼女の父親小瀬格)が元ヤクザで、その時の子分と偶然再会したことで、過去を黙っていて欲しい彼女が売春行為をさせられそうになったというわけで、まあ結局はめでたしめでたしで終えている。
5話はD組の生徒・河野粕谷正治)の裏口入学の話で、6話もD組の小原秀明)と光子森るみ子)の恋愛話である。8話は予告だけ見たが、金貸しの生徒(藤間文彦)が登場し、彼に金を借りた女生徒(京春上)との話のようだ。藤間文彦は藤間勘十郎藤間紫の息子で、スポ根ドラマ「ガッツ・ジュン」(71年)で主役を演じている。京春上は「きょうはるえ」と読み、本名は石濱春上。中国人ではない。彼女の両親が川端康成と知り合いで「春上」と言う名は川端が付けたものだという。芸名も川端が考えたもの。彼女も当時は関根恵子同様に際どいシーンを結構やっていた記憶がある。
他の回はほぼ見てないのだが、ゲストは平田昭彦、宮口精二、仲谷昇、地井武男、加藤武などで、おそらく生徒役で二瓶康一(火野正平)、松岡きっこ、鷹市太郎(沢田勝美)、沖田駿一などが出演している。
16話には「飛び出せ青春」から青木英美、最終の17話には武岡淳一、頭師佳孝、剛達人が登場したようだ。頭師や剛はカメオ出演だそうだ。
本作の後は全8話の「青春家族」という番組が放送されているところからも、17話で打ち切りであったと考えられる。シリアス展開が受けなかったのだろうか。

※次回の更新は、(おそらく)一週間後になる予定。

泣くな青春

東宝の学園青春シリーズが「飛び出せ青春」(72~73年)で復活し、人気を呼んだ。これは日テレだが、フジテレビでも同時期に東宝製作の学園青春ドラマ「泣くな青春」(72~73年)を放送していた。しかし前者は全43回に対して強者は全17回とマイナーな存在である。
その「泣くな青春」だが、ここでも6年ほど前に(あまり見ていない状態で)取り上げているが、数話だけだが見ることができたので、改めて解説したい。
父の後を継いで有村学園の校長に就任した有村秀太郎二谷英明)は、学園を有数の進学校へと躍進させた。また、問題児たちを3年D組に一まとめにして、担任として卒業生で不良学生でもあった大和田英一中山仁)を起用する。というのが始まりであるが、第1話は見たことがると思うが、はっきりとは覚えていない。いつも教室に空席が目立ち、15人くらいのクラスのようで、まさに隔離クラスという感じなのだ。
その番長格が守屋親造水谷豊)で、彼を含め男子のほとんどがバイク通学だ。名前がわかっているのが浅岡鶴吉福崎和宏)、島三郎小原秀明)、寺田正史川代家継)、河野宏粕谷正治)で、もう一人ほぼセリフがなく名前も不明な男子(朝倉隆)がいる。
水谷豊「炎の青春」(69年)では優等生役だったが、本作では一転して不良番長に。約2年役者業から遠ざかっており、本作が復帰作である。と言われているが、実は本作よりも「太陽にほえろ」の第1話の犯人役や火曜日の女シリーズ「いとこ同志」の古坂役の方が放送時期は早い。福崎和宏は「ハレンチ学園」、小原秀明は「流星人間ゾーン」でレギュラーで、この後「われら青春」でも生徒役を演じる。朝倉隆は「ウルトラマンレオ」(74年)でMACの梶田隊員を演じることになる。

女子生徒は新谷邦子四方正美)、新城文子木村由貴子)、田村光子森るみ子)、後は名前は不明の藤田美保子、田沢純子、高橋ひとみらがレギュラー生徒だ。四方正美は名前でわかると思うが四方晴美の姉である。妹の方も「高校教師」(74年)で似たような役をやっている。森るみ子は当時、歌手として4枚ほどレコードを出していた。レーベルは東宝なのである。藤田美保子はあの藤田美保子(現・三保子)である。本作がデビューとなるようで、4話までその名が見える。5話以降はクレジットに名がないが、その姿は見える。実は5話以降は浅田京子名義で出演しているのである。まさか彼女がこの2年後にはNHKの連続テレビ小説「鳩子の海」でヒロインになるとはだれも予想していないだろう。一方、高橋ひとみは、あの高橋ひとみではない。61年生まれなので、当時小学生のはずである。前述の「高校教師」にも出ていたようだが、同姓同名の別人だろう。
3Dとは対照的な優等生のクラスとして3Aが登場。所属するのは生徒会長でもある高木明子関根恵子)や宮崎洋介三ツ木清隆)などがいる。関根恵子はこの頃「太陽にほえろ」と掛持ちだったはずである。実年齢は17歳だから、女子高生役は普通だが、方や女刑事をやっていたわけである。三ツ木清隆も10年以上後になるが、二谷の部下として「特捜最前線」に参加することになる。
この番組、後にレギュラーとして刑事役を演じることになる人が多い。二谷、三ツ木、関根に加え、中山仁、水谷豊、藤田美保子、藤木悠(大和田の下宿先の主人役)もそうだ。中山は「七人の刑事(新)」、藤田と藤木は「Gメン75」、水谷は「相棒」は言うまでもなく「夜明けの刑事」他、数作ある。

炎の青春 その2

前回に引き続き「炎の青春」(69年)である。
本作で前4作と違う点といえば、放送時間がそれまでの日曜20時ではなく、月曜20時だったことである。どうやらこれは日曜20時に「コント55号!裏番組をブッ飛ばせ‼」を放送することになったからのようである。あの野球拳などで人気を呼んだ番組だ。実際に裏番組のNHK大河「天と地と」の視聴率も追い抜いてしまったようなので、局的には成功だったのだろう。

もう一つはプロデューサーに岡田晋吉がいないこと。日テレで青春ドラマと言えば岡田だったのだが、本作も企画段階では絡んでいたということだが、結局降りているようだ。
脚本家も今までの須崎勝弥、井出俊郎、鎌田敏夫、田波靖男などから押川国秋、白山進、後に「三年B組金八先生」でお馴染みとなる小山内美江子に一新されている。
とまあ、新たな体制で臨んだわけだが、視聴率は振るわず、10話で打ち切られることになる。「進め!青春」も打ち切りといえ、それなりに形をつけていたが、本作は大筋と無関係なエピソードで、ゲストの三益愛子、長谷川明男が主役という感じになっている。ヒロインである柏木由紀子も出番はなく、まさに急な打ち切りという感じだった。実はこの翌週である69年7月21日はアポロ11号の月面着陸の様子が午前中から伝えられていて、その関係番組の放送のため、急に終わりにしたという可能性もあると思う。
シリーズ次回作となる「飛び出せ青春」(72年)までは、約3年待たねばならない。
ところで、主演の東山敬司だがデビューの経緯についてはスカウトか一般公募かわからないのだが、普通の大学生であり劇団に所属するでもなく、ちゃんとした芝居のレッスンは受けていないと思われる。その素人感満載の演技もマイナスに作用したかもしれない。
デビューは69年3月公開の「恋にめざめる頃」で、酒井和歌子の相手役。「炎の青春」放送中の6月には酒井に加え、黒沢年男とトリプル主演で「俺たちの荒野」。12月の「娘ざかり」では主演の内藤洋子の相手役と、東宝の看板となる女優との共演が続き期待されていたことがわかる。しかし、翌70年は「社長学ABC」とその続編に出演したのを最後に姿を消してしまう。当時の東宝が俳優の専属制度を解消し出していたいう事情もあるかもしれないが、デビューからわずか1年半足らずで、引退してしまったのだ。と思いきや、1度復活しているのである。「京都清水五条坂」(74年)という村松英子主演で、東宝系の宝塚映画が制作したドラマで復活したのである。他にも桜木健一主演の「虹のエアポート」(75年)では、桜木演じるパイロットの同僚として出演していたようだ。そして記録上最後となっているのは松本留美主演の昼メロ「誰が故郷を思わざる」(77年)への出演である。彼の演技が上達していたかどうかはいずれも未見なので、何ともいえない。
余談だが、本作の生徒役では一番目立っていた梅田智子だが、やはり生徒役の大谷直(黒ぶちメガネの男)と結婚しのだという。共に「でっかい青春」(67~68年)から生徒役をやっているが、その「でっかい青春」で二人がカップルになるようなエピソードがあったらしいが、それをきっかけに結ばれたという。このシリーズの生徒役同志で結婚したのはこの一組だけらしい。

炎の青春

進め!青春」(68年)終了から五カ月、東宝青春学園シリーズの第5弾となるのが「炎の青春」(69年)である。「進め!青春」同様に短期(全10回)で打ち切られ、再放送もほとんどされず、CSでの放送も今世紀に入ってからはない。加えて、浜畑賢吉は売れっ子役者になって行ったが、こちらの主演である東山敬司は早くに引退してしまったので、余計にマイナー感が強い。視聴が難しい番組ではあるが、これも最近になってネット上で見ることができた。
私立陽光学園3年C組の担任がベテラン和田先生佐藤英夫)から、新任の猪木豪太郎東山)に替わることが決定した。和田は女子バスケット部の顧問でもあったが、その主将で3Cの生徒でもある大村映子梅田智子)は特に反発。高井教頭平田昭彦)の意向が強く働いていると主張するが、クラス1の秀才である中本勇水谷豊)は、それは関係なく授業中に他の科目をやっていた野村池田忠男)を停学にしたしたことが大きく担任交替もやむなしというスタンスで、クラスも二つに割れていた。
その頃、学校に向かっていた豪太郎は学生のデモ隊に逆らって歩いてた所を機動隊に連行されてしまう。すぐに釈放されることになり、高井は少し先に同校に赴任した西村先生柏木由紀子)を警察署まで迎えによこすのだった。
学園に辿り着くと映子を中心とした和田先生派の生徒から反発を受け、反対デモをされる始末。しかし、多少のことにはめげない豪太郎は敢えてバスケット部の顧問に就任するのだった。というのが第1話だ。
主演の東山敬司は東宝期待の新人で、実際はまだ20歳の大学生であった。だから、実際は生徒役の役者同い年だったり年下だったりしたわけだ。その生徒役だが、前述の梅田智子徳永礼子、中沢治夫(剛達人)、大谷直、鍋谷孝喜などは前作「進め!青春」や「でっかい青春」から生徒役でお馴染みの顔ぶれだ。加えて新顔だったのが水谷豊。前年には手塚治虫の「バンパイヤ」(68年)で主役も演じていたが、まだ知名度は高くなかった。後藤ルミ子後藤留美名義で「スペクトルマン」(71年)で4回だけ怪獣Gメンとして出演している。他に君島清美、沢宏美、藤本真智子など。
先生役に目を向けるとヒロイン役の柏木由紀子は当時21歳で東山より1歳上。平田昭彦は「進め!青春」の江島教頭と同じようなキャラクターを演じる。学園長(北沢彪)はどこか気弱で、事実上教頭が学園を牛耳っている。他に花岡先生(梅津栄)、富永先生美川陽一郎)など。この二人は高井に豪太郎を警察まで迎えに行くように振られると「どうも警察は苦手でして」と断るのだが、美川と言えば当時は「七人の刑事」(63~69年)の小西刑事役でお馴染みだった。番組が終了したばかりの時である。そういえば、佐藤英夫も「七人の刑事」で南刑事を演じていた。
他に豪太郎の下宿先の主人である林伸介名古屋章)、その長女良江北川めぐみ)、ルミ子(徳永礼子)の姉・紅子浜木綿子)、紅子の店の従業員(関口昭子)、赤木(中沢治夫)の父・伝助森川信)、勇の父・中本医師太宰久雄)などが出演している。梅田、徳永、関口は揃って東宝ニュータレント8期生である。他の同期に「スペクトルマン」でお馴染みの成川哲夫がいる。次回に続く。

進め!青春 その2

前回に続いて「進め!青春」(68年)である。
今回はまず生徒役について紹介する。高木浜畑賢吉)が担任の2年C組にはサッカー部員が多く集まっている。野呂大谷直)、吉野鍋谷孝喜)、劇中で名前が出てこない赤塚真人、マネージャーである亜矢子徳永礼子)、タマ子夏純子)などである。他には新聞部員の由美水沢有美)、麗子田坂都)、優等生で高木にも否定的な片桐大沢健三郎)、早苗高橋厚子)といった顔ぶれだ。
女生徒役は東宝ニュータレント出身者が多い。水沢有美は5期、高橋厚子は6期、徳永礼子(後にれい子)は8期である。しかし、一番若いのは水沢(当時17歳)で、合格した時は14歳だったことになる。6歳から子役として活動しており、小学生の時に「ロック物語」(63年)にレギュラー出演。本名は小沢有美だが、水沢と誤表記され、そのまま芸名にしてしまったとのだという。
水沢と大谷直、赤塚真人、そして剛達人(中沢治夫)は、「でっかい青春」でも生徒役で出演していた。水沢は「青春とはなんだ」「これが青春だ」にも生徒役で出演している。鍋谷孝喜は、東宝の青春ドラマよりは森田健作主演の松竹の一連の青春ドラマで生徒役を演じている印象が強い。田坂都も両方に出演している。
夏純子は2話までは本名の坂本道子名義である。18歳で若松プロの「犯された白衣」「続日本暴行暗黒史」(67年)に出演。翌68年に東映の「喜劇競馬必勝法 一発勝負」に出演といったキャリアでの本作出演であった。その後、東宝や大映の映画にも出演。70年8月から日活の専属となったが、翌年には日活のロマンポルノ路線への転向により、今度は松竹へ移籍している。
本作での高木、片桐、河野亀井光代)といった役名は「飛び出せ青春」(72年)でも使われることになる。ちなみに、高木は石橋正次、片桐は本作にも出演の剛達人、河野は主演となる村野武範に受け継がれる。
さて「進め!青春」は、わずか11回での打ち切りとなったわけだが、最終話はちゃんと最終話らしくなっている。メインゲストは柴田昌宏で、過去3作全てに生徒役としてレギュラー出演していた。知っている人も多いだろうが父が潮万太郎、姉が弓恵子、弟が柴田侊彦だ。今回は高三の優等生である近松という役だが、当時28歳である。ストーリーは近松の東城大(漢字は適当)推薦入学が決定。一方サッカー部は一部リーグ昇格が西山高校部員大半の食あたりによって不戦勝によって決まろうとしていた。部員は喜ぶが高木はそれを断り、試合に勝って堂々と昇格しようと訴える。それを、通りがかった近松が聞いていた。木村剛達人)に、「不戦勝と推薦入学とどう違うんだ」と言われたこともあり、プライドの高い彼は推薦を断り試験を受けて臨もうとするのだった。江島教頭平田昭彦)は高木に「近松がもじ受験に失敗したら、責任をとれ」と迫る。高木のサッカー部への発言であり、近松に直接言ったわけではないのだが、発言は事実なので言い訳はしなかった。結果、近松は東城大受験に失敗。高木も辞職することになる。というような話で、もちろんラストはめでたしめでたしとなるが、ちゃんと最終話っぽい。
まあ番組自体は打ち切りになってしまったが、浜畑賢吉は一気に売れっ子役者になっていくのである。

進め!青春

月も替わったので、いきなりだが青春ドラマである。短期間で終わってしまったため、ある意味幻のドラマと化している「進め!青春」(68年)である。
「青春とはなんだ」「これが青春だ」「でっかい青春」に続く、東宝青春学園シリーズの第4弾である。夏木陽介、竜雷太による前3作は大成功を収めたが、二人が演じたスーパーマン教師ではなく、生徒共に成長する新米教師を描いていこうと、当時は「劇団四季」に在籍しておりまだ無名だった浜畑賢吉が主役に抜擢された。番組スタート直後に26歳になり、主題歌もミュージカルの舞台をこなす彼が声高らかに歌っている。前3作はモノクロであったが、本作はテレビ映画としては初めて16ミリカラーで撮影された、ある意味記念すべき作品だったのである。
しかし、スタートした時期が悪かった。メキシコオリンピック開催時期に重なってしまったため視聴率があまり伸びず、早々と打ち切りが決まったのだという。68年10月後半にスタートし、年内いっぱいで終了したので、全11回という短さである。そのためか、再放送もほとんどされず、ソフト化もされていない。
CS放送がスタートしてまもなくファミリー劇場で放送されたようだが、自分が加入してから一度もされていない。25年は経つのだが、そのファミ劇も、個人的にはほぼ見る番組がないチャンネルになってしまった。そんなわけで、自分も一度も見たことのない番組の一つだったわけだが、先ごろネット上で見ることができたのである。
浜畑が演じるのは私立日東高校の新米社会科教師・高木進。同校の卒業生でもあり第1話の時点で既に赴任はしている。実家暮らしで、家族は父・勝之進宮口精二)、母・はな賀原夏子)、妹・純田中美恵子)がいる。勝之進と日東高の校長・戸川東野英治郎)は友人でもある。江島教頭平田昭彦)は、同校の理事でもあり、人事の決定権を持つという人物。しかし、戸川は江島にへーこらしているわけではない。江島も戸川を上司として扱っている。同僚の教師として登場するのは数学のベテラン美川先生大塚道子)、ヒロイン役である英語の河野真知子先生亀井光代)くらいである。また保健室勤務の養護教員が熊木愛子岡田可愛)で、真知子と愛子は基本的に高木の味方で、江島教頭は最大の敵ということになる。岡田可愛は「青春とはなんだ」の第1話から「でっかい青春」の最終話まで全121話全てに出演していた。当時まだ20歳になりたてで、女生徒役でも不思議はないが、前作で既に生徒役ではなかったので、この形になったのだろう。本作も全話に出演し計132話皆勤賞となった。これは自立して生活していたので、1本でも休むと給与に響くからということらしい。実際は出番がなくても監督に頼み込んで出演させてもらっていたという。
初回、高木は着ていく服のがなくなり学生服で登校するはめになる。登校中に絡むのがサッカー部キャプテンの木村剛達人=当時・中沢治夫)だ(高木が顔を隠しているのでわからない)。剛達人が生徒役で登場したのは前作「でっかい青春」の後期からである。この「進め!青春」の時は19歳だったので、生徒役が似合っていたが、3年後の「飛び出せ青春」(72年)でも生徒役だったのは周知であろう(高校5年生だが)。本作でも高木の受け持つ2年ではなく、3年の役なので、授業のシーンにはいない。次回に続く。

風雲真田城

もう一つだけ、山崎プロ関連の作品を。前回の「孫悟空西へ行く」が終了後に作られたのが「風雲真田城」(64~65年)である。放送時間は日曜夜6時半であり、時系列が前後してわかり憎いかもしれないが「バックナンバー333」(65~66年)の前番組にあたる。
本作は山崎プロ単独ではなく、朝日放送も製作に加わっている。主役の真田幸村を演じるのは往年のスター高田浩吉である。歌う映画スター第1号として戦前より活躍。あの鶴田浩二の師匠にあたる人物であり、「田」と「浩」の字は高田から貰ったものである。高田の次女が高田美和だ。
60年、50歳目前にして松竹を退社し、第二東映(61年はニュー東映)に移籍する。そこでも主演スターではあったが、そもそもが作品を倍にすれば売り上げも倍になるはず、という子供のような発想で誕生したのが第二東映であり、当然人も倍にしなければばらなくなり質の低下を招き、人気の低下をも招いた。そして時代劇が斜陽となりニュー東映は廃止、東映の中心は任侠映画へとシフトしていった。その中心スターが高倉健であり、自分の弟子であった鶴田浩二という皮肉だった。
そのような背景から、この64年辺りから活動の中心を舞台・テレビに移したところだったのである。それにしても、よく山崎プロ辺りが往年の大スターを呼べたものである。本人もよく出演する気になったなと思ってしまう。
さて他の出演者だが、判明しているところでは高田夕紀夫霧隠才蔵)、江田嶋隆猿飛佐助)、尾上鯉之助三好晴海入道)、千早健真田大助)、谷口勉穴山小助)、丸凡太海野六郎)、加地昌美戸隠薫)等である。他の真田十勇士が登場するかどうかは不明だ。高田夕紀夫は高田という苗字から想像つくと思うが、浩吉の息子である。主題歌は浩吉の歌う「風雲真田城の歌」だが、夕紀夫の歌う「霧隠才蔵の歌」もクレジットされており、挿入歌で使われているのかもしれない。高田夕紀夫の役者としての活動は本作と他二本くらいで、基本的には浩吉の裏方だったようだ。
佐助役の江田嶋隆はここで紹介した「孫悟空西へ行く」「無敵わんぱく」「バックナンバー333」の全てにその名がクレジットされている山崎プロ御用達のような役者である。所属だった可能性もある。60年代にその活動は集中しているようで、正直顔がわからないのだが、佐助役は二枚目と相場が決っているので、そうなのだろう。尾上鯉之助、丸凡太は「孫悟空~」から引き続きの出演。丸凡太は猪八戒役だっただけあって、太目で丸顔のようで、古川ロックに近い感じか。この人は東京ぼん太世志凡太の陰に隠れてしまったのかもしれない。加地昌美演じる薫はくノ一で、本作のオリジナルのようだ。網タイツ姿だったらしい。他にもゲストか準レギュラーか不明だが伊達政宗役で近衛十四郎が出演していたらしい。
スタッフでは監督の一人に船床定男の名が見られる。「月光仮面」「隠密剣士」「マグマ大使」等で知られる監督である。またバラエティ番組の「風雲たけし城」というタイトルは本作から来ているという話だ。
最後に山崎プロがらみの作品が、一切ソフト化や再放送されないのは、寄せられた情報によるとプロダクション倒産後にフィルムが散逸してしまった、つまり様々な人の下に渡ったからということらしい。

孫悟空西へ行く

再び山崎プロダクション絡みの作品になるのだが、その山﨑プロが単独で制作したらしいのが「孫悟空西へ行く」(64年)である。
タイトル通り「西遊記」の実写版だが、映画ではエノケンの時代から実写西遊記はあるのだが、テレビの方ではどうだろうか。堺正章主演の「西遊記」(78~80年)がまだ、イメージに強いかもしれない。そこから遡ること15年、例によって再放送もソフト化もされておらず、自分も最近まで知らなかったのが「孫悟空西へ行く」なのだ。
やはり例によってOPのみ見ることができたが、躍動する孫悟空に扮するのは尾上鯉之助である。名前通り歌舞伎役者出身だが、その世界ではあまりパッとしない存在だった。ある時分に従姉妹である東千代之介に誘われ東映入りを決める。そのタイミングで伏見扇太郎が病に倒れ、ピンチヒッターで鯉之助が「さけぶ雷鳥」(57年)の主演に起用されたのである。57年は東映娯楽版と呼ばれる少年向け時代劇8本で主役となるが、あまり人気を得られず、すぐに脇に回ることになったのである。当時は細身だったが、次第に太り出し悪役を演じるまでになったのである。実際に「素浪人月影兵庫」の初期(65年)に武芸者揃いの5兄弟の長男を演じたりしていた。ずっと年上の千葉敏郎宍戸大全を差し置いてだが、特に違和感はなかった。その辺りなので、ちょっと太めの孫悟空という感じである。
ちなみに、伏見扇太郎も映画で孫悟空を演じている一人だ。他に坂東好太郎三木のり平などが演じている。
他のキャストだが、上田寛沙悟浄)、丸凡太猪八戒)、林雄太郎三蔵法師)というもの。誰やねんという感じだと思うが、上田に関しては「特別機動捜査隊」にゲストで見たことがある。林に関しては他の出演情報は見つからない。ナレーターは何故か中村玉緒が起用され、兄である中村扇雀(坂田藤十郎)がゲストで出演したこともあるようだ。その林の正体は15年後に明らかになる。実は中村鴈治郎の隠し子だったとうものだ。つまり扇雀や玉緒は腹違いの兄弟だったというわけだ(彼らの本名は林)。当時の日刊スポーツに舞台の父を撮り続けている45歳のカメラマンと書かれていた。そしてこの「孫悟空西へ行く」がクローズアップされていたのである。何故15年も経ってなのかと考えると、丁度前述の堺正章の「西遊記」が放送されていた時期だったからではないだろうか。
悟空や沙悟浄、猪八戒のメイクは京劇風といった感じ。OPは男性コーラスグループが歌っているのだが、作者ヤタイトル、誰が歌っているかも不詳となっている。ダークダックスデュークエイセス辺りだと聞く人が聞けば判りそうなのでボニージャックス、サニートーンズあたりか。もちろん、名も知らぬ合唱隊の可能性もあったりするが。、
YouTubeには、OPからサブタイが出るところまで挙がっているのだが、そのサブタイが「第14話 怪獣モンスラー」となっている。どんな怪獣が興味深いが見ることはできないだろう。