炎の青春
「進め!青春」(68年)終了から五カ月、東宝青春学園シリーズの第5弾となるのが「炎の青春」(69年)である。「進め!青春」同様に短期(全10回)で打ち切られ、再放送もほとんどされず、CSでの放送も今世紀に入ってからはない。加えて、浜畑賢吉は売れっ子役者になって行ったが、こちらの主演である東山敬司は早くに引退してしまったので、余計にマイナー感が強い。視聴が難しい番組ではあるが、これも最近になってネット上で見ることができた。
私立陽光学園3年C組の担任がベテラン和田先生(佐藤英夫)から、新任の猪木豪太郎(東山)に替わることが決定した。和田は女子バスケット部の顧問でもあったが、その主将で3Cの生徒でもある大村映子(梅田智子)は特に反発。高井教頭(平田昭彦)の意向が強く働いていると主張するが、クラス1の秀才である中本勇(水谷豊)は、それは関係なく授業中に他の科目をやっていた野村(池田忠男)を停学にしたしたことが大きく担任交替もやむなしというスタンスで、クラスも二つに割れていた。
その頃、学校に向かっていた豪太郎は学生のデモ隊に逆らって歩いてた所を機動隊に連行されてしまう。すぐに釈放されることになり、高井は少し先に同校に赴任した西村先生(柏木由紀子)を警察署まで迎えによこすのだった。
学園に辿り着くと映子を中心とした和田先生派の生徒から反発を受け、反対デモをされる始末。しかし、多少のことにはめげない豪太郎は敢えてバスケット部の顧問に就任するのだった。というのが第1話だ。
主演の東山敬司は東宝期待の新人で、実際はまだ20歳の大学生であった。だから、実際は生徒役の役者同い年だったり年下だったりしたわけだ。その生徒役だが、前述の梅田智子や徳永礼子、中沢治夫(剛達人)、大谷直、鍋谷孝喜などは前作「進め!青春」や「でっかい青春」から生徒役でお馴染みの顔ぶれだ。加えて新顔だったのが水谷豊。前年には手塚治虫の「バンパイヤ」(68年)で主役も演じていたが、まだ知名度は高くなかった。後藤ルミ子は後藤留美名義で「スペクトルマン」(71年)で4回だけ怪獣Gメンとして出演している。他に君島清美、沢宏美、藤本真智子など。
先生役に目を向けるとヒロイン役の柏木由紀子は当時21歳で東山より1歳上。平田昭彦は「進め!青春」の江島教頭と同じようなキャラクターを演じる。学園長(北沢彪)はどこか気弱で、事実上教頭が学園を牛耳っている。他に花岡先生(梅津栄)、富永先生(美川陽一郎)など。この二人は高井に豪太郎を警察まで迎えに行くように振られると「どうも警察は苦手でして」と断るのだが、美川と言えば当時は「七人の刑事」(63~69年)の小西刑事役でお馴染みだった。番組が終了したばかりの時である。そういえば、佐藤英夫も「七人の刑事」で南刑事を演じていた。
他に豪太郎の下宿先の主人である林伸介(名古屋章)、その長女良江(北川めぐみ)、ルミ子(徳永礼子)の姉・紅子(浜木綿子)、紅子の店の従業員(関口昭子)、赤木(中沢治夫)の父・伝助(森川信)、勇の父・中本医師(太宰久雄)などが出演している。梅田、徳永、関口は揃って東宝ニュータレント8期生である。他の同期に「スペクトルマン」でお馴染みの成川哲夫がいる。次回に続く。