岸田森の出演映画 その5 | お宝映画・番組私的見聞録

岸田森の出演映画 その5

今回も岸田森である。
72年の続きだが、「子連れ狼」シリーズの2本にどちらも敵役で出演。「子連れ狼」と言えば、テレビシリーズの萬屋錦之介のイメージが強いと思うが、映画版の拝一刀は若山富三郎である。大五郎役は富川晶宏。
「子連れ狼 三途の川の乳母車」は、映画版の第2作。一刀は小角(小林昭二)率いる黒鍬者や柳生鞘香(松尾嘉代)が送り込む別式女たち(鮎川いずみ、三島ゆり子、東三千、水原麻紀、笠原玲子、若山ゆかり等)を倒しところ、阿波藩より刺客の依頼を受ける。江戸へ護送される男を斬ってほしいという依頼だったが、そこには公儀護送人である左三兄弟が付いていた。その三兄弟が大木実、岸田森、新田昌玄である。
「子連れ狼 親の心子の心」は、映画版の第4作。一刀は尾張藩より雪(東三千、後に原田英子)という女を斬ることを依頼される。雪は「乞胸」という身分出身の別式女だが、妖術を操る狐塚円記(岸田森)との立ち合いに負け強姦されていた。その雪辱を晴らすために脱藩していたのである。雪が円記に勝ったのを見届けて一刀は彼女を斬る。もちろん、それだけではなく裏柳生軍団と一刀との死闘もあったりする。他の出演者は林与一、山村聰、小池朝雄、遠藤辰雄(太津朗)など。怪しい妖術使いというのは岸田に似合った役に感じる。
ところで、テレビシリーズ(73年)の第2話として放送されたのが「乞胸お雪」というサブタイなのだが、現在欠番扱いとなっており、再放送も74年を最後に一切なく、もちろんソフト化もない。CSなどで行われる放送でも全27話を全26話として、話数なども繰り上げられなかったことにされている。「乞胸」が現在では差別用語にあたるからというのが大きな理由のようだ。
73年に入るが、岸田が出演している映画でお蔵入りになってしまったのが「夕映えに明日は消えた」である。原作は笹沢佐俣で、主演は中村敦夫という「木枯し紋次郎」のコンビ。紋次郎が放送中の中、制作され勿論内容も紋次郎を意識したものとなっている。タイトルも紋次郎のサブタイにありそうな感じになっている。ストーリーは大雑把に言えば、中村演じる佐吉と原田芳雄率いる四兄弟との戦いということになるようだ。中村と原田は俳優座を一緒に退団した仲間。で、原田の弟役が岸田森や阿藤海である(もう一人は不明)。顔のつくりから言えば、原田よりも中村と兄弟というほうがしっくりくるけれども。他の出演者はテレサ野田、小野ひずる、内田朝雄、草野大悟、富川澈夫など。小野は「仮面ライダーV3」にヒロイン役で出演していた。余談だが、中村が主役の「おしどり右京捕物車」(74年)に岸田が敵役で登場した時に、その仲間を阿藤や富川が演じていた。富川は岸田と同じ「六月劇場」の出身ということもあり共演も多い。
本作が未公開となった原因については、主演の中村も「わからない」と言っている。プロデューサーだった藤本真澄が気に入らなかったから、という説は事実の一つではあろうが、他にも諸事情があったようだ。「映画論叢」という雑誌で、本作の打ち切り事情について追究した記事があるが、正確な結論は得られていない。ちなみに、後の77年に高知と尼崎でそれぞれ一週間だけ公開されているらしい。