2025年回顧録
年末なので、恒例の回顧録である。と言っても今年亡くなった有名人を挙げて行くだけなのだが。カッコつき数字が没年齢である。
まずは俳優部門。露口茂(93)は、やはり「太陽にほえろ」の山さんのイメージ。まあ約14年も演じていれば、そうなってしまうだろう。俳優座養成所の7期生で、同期は田中邦衛、山本学、井川比佐志、藤巻潤、藤岡重慶、水野久美、大山のぶ代、富士真奈美など。60年に劇団俳優小劇場の旗揚げに参加した。95年を最後に表舞台に現れることはなかった。前述の俳優小劇場の同じ旗揚げメンバーで、露口とは「木曽街道いそぎ旅」(73年)で共に主演を演じたのが山口崇(88)である。本名は岑芳と書いて「たかよし」と読む。主演ドラマも多いが、「大岡越前」で徳川吉宗役を30年近く演じており、そのイメージが強いのではないだろうか。露口とは古くからの付き合いであったが、奇しくも同じ今年の4月に亡くなっている。
下條アトム(78)と言えば、やはりその名前(本名)が話題になるが、父・正巳によって名付けられたもので、「鉄腕アトム」から来ているものではない(連載前であった)。少年時代に実在するアトム君として手塚治虫と対面したことがあるという。高校卒業後に父の所属する劇団民藝の俳優教室に通い出したが、生意気過ぎてクビになったという。その劇団民藝に所属しながら、日活映画作品に顔を出していたのが吉行和子(90)である。兄が作家の吉行淳之介であることは知られていたと思うが、実母の美容家・あぐりがモデルとなったNHKの連続テレビ小説「あぐり」が放送されたことで、父のエイスケを含め、一家揃って有名人になった気がする。結婚歴はあるが、4年ほどで離婚し、以降はずっと独身であった。
民藝と言えば、日活だが吉永小百合、松原智恵子と共に三人娘と言われていたのが和泉雅子(77)である。10歳で劇団若草に入団し、その後金語楼劇団へ。NHKの「ジェスチャー」に柳家金語楼に随伴した際に共演の水の江滝子にスカウトされ、14歳で日活入りすることになった。小学生の頃から南極越冬隊への憧れがあり、83年にドキュメンタリー番組のレポーターとして南極に同行。それをきっかけに北極点への挑戦を思い立ち、以降は冒険家として活動するようになった。寒さに耐えられるよう皮下脂肪をつけるため、自ら美人女優であることを辞め、太っていったのである。今世紀に入ってからは女優として活動することはあまりなかった。
大映で美人女優として活動したのが藤村志保(86)である。和泉が日活入りした翌年に「破戒」でデビューしている。23歳という遅いデビューであった。「破戒」と言えば島崎藤村であり、芸名はここから来ている(志保は役名)。本名は薄操(すすきみさお)と言い逆に芸名っぽい。「若親分千両肌」(67年)では、前述の山口崇と共演。本作の監督である池広一夫(95)も今年亡くなっている。
その藤村と「二人日和」(05年)で夫婦役を演じたのが栗塚旭(88)である。「新選組血風録」(65年)の土方歳三役で人気になり、以後「用心棒」シリーズなど70年代初頭までは多くの時代劇で主演を演じた。個人的にはこの人が主演ではなくなってから時代劇を見るようになり、仕事量を減らしたこともあったのかリアルタイムで栗塚を見たことがほぼほぼなかった。「暴れん坊将軍」にセミレギュラーで出演していたようだが、王道な時代劇はあまり見ないこともあり、既に引退したのかと思っていたくらいである。
そして仲代達矢(92)。有名なエピソードだが、「七人の侍」(54年)にセリフもない歩いている侍の役で出演した際、何度もNGを出され、有名になっても黒澤映画には絶対に出ないと誓ったという。その後すぐに頭角を表し、「人間の条件」シリーズ(59~61年)では主演に抜擢されるまでになった。そして黒沢映画「用心棒」(61年)のオファーは予定通りきっぱり断った。しかし、直接黒澤に説得され出演を決めている。黒澤が当時の事を覚えていたことも決め手になったようだ。90歳を超えても精力的に活動していたが、11月に帰らぬ人となった。
他に川辺久造(92)、芦屋小雁(91)、沢竜二(89)、中山麻理(77)、中島ゆたか(73)など。ベテラン勢ばかりだが、その中では遠野なぎこ(45)の若さが目立っている。それぞれに合掌。
想い出づくり。
今回も山田太一作品から「想い出づくり。」(81年)である。「モーニング娘。」のように末尾に「。」がつくのが特徴だ。サブタイにも毎回「。」がつく。
前回の「午後の旅立ち」は全く知らなかったが、こちらの方は当時、結構話題にもなっていたのでリアルタイムで多少覗いたかもしれない。しっかりと見てはいないけれども。当時の裏番組は「北の国から」だったのだが、意外にも視聴率的にはこちらが上だったという。「北の国から」は半年間だったので、こちらが終わった後、しり上がりに視聴率が伸びていったようだ。
山田ドラマらしく全14話で、何故かいつもぴったり1クール13話ではない。つい先週くらいまで、BSの方で放送されていたようだ。
概要だが結婚適齢期(24歳)を迎えた3人の女性が「想い出」をつくろうとするドラマで、主演は森昌子(佐伯のぶ代)、田中裕子(池谷香織)、古手川祐子(吉川久美子)だ。ただ実年齢は森23歳、田中26歳、古手川22歳と微妙にずれていた。森昌子は、中三トリオと言われた山口百恵、桜田淳子に比べると女優業のイメージは薄いが、これ以前にも「おはなちゃん繁盛記」(78年)など主演ドラマもあったりする。
それぞれの両親が登場し、お相手となる男も登場する。森昌子演じるのぶ代の両親が前田武彦(佐伯賢作)、坂本スミ子(佐伯静子)、縁談相手が加藤健一(中野二郎)だ。田中裕子演じる香織の両親が佐藤慶(池谷信吾)、佐々木すみ江(池谷由起子)、お相手が矢島健一(岡崎勇)だ。古手川祐子演じる久美子の両親が児玉清(吉川武)、谷口香(吉川優子)で、久美子を追っかけるのが柴田恭兵(根本典夫)である。三人の出会いのきっかけを作るのがこの典夫で、彼が道行く人に無差別に声をかけている。「アンケートに応じてくれない?お礼にカメラあげるから。この引き換え券もって新宿西口の会社へあとで来て」という具合である。三人もこれに応じて新宿の一室に集まってしまうのだ。今だったら、まず「怪しい」と警戒する人がほとんどだろうが、当時だと疑うこともなく誘いにのってしまう人も多かった気がする。
柴田恭兵が息の長い役者になるとは当時は想像できなかった。本作では前述のように古手川を追っかけ回すのだが、そこに元彼女という国枝妙子が現れる。妙子を演じるのは田中美佐、つまり田中美佐子である。デビュー当時は美佐だったのだ。彼女はTBSがやっていた緑山私塾にいて、そこからのデビューということになる。本作には18名の緑山私塾生が出演しているらしいが、彼女以外はよくわからない。妙子は久美子に「典夫に近づかないでほしい」と訴えるが久美子は「典夫など相手にしていない」と言い切る。しかし、結局典夫と付き合い始めてしまうのだった。つまり柴田恭兵を田中美佐子と古手川祐子で捕り合うことになるのだ。田中美佐子はいきなりの大役だが、翌年には映画「ダイヤモンドは傷つかない」で主演の抜擢されている。
のぶ代は二郎と結納まですませるが、あれこれ命令する二郎に腹を立て婚約を解消したいとまで言い出す。二郎役の加藤健一はこの前年に加藤健一事務所を設立。事務所と言っても劇団である。専ら舞台の人であり、ドラマや映画出演はそれほど多くない。
他の出演者だが、平田満、深江章喜、根津甚八、浜村純、福士秀樹、三崎千恵子など。
森昌子は森進一、古手川祐子は田中健、田中美佐子は深沢邦之(TAKE2)とそれぞれ結婚するが、いずれも現在は離婚し、再婚はしていないようだ。田中裕子のみ沢田研二との夫婦生活は続いているようである。
午後の旅立ち
大河の1年が終わり、休む間もなく次に山田太一が取りくんだのは「午後の旅立ち」(81年)である。放送枠は「月曜劇場」で、79年までは「ポーラ名作劇場」名義だった枠である。山田ドラマらしく全14話。
個人的には、全く知らないドラマで、おそらくだが、あまり再放送もされていないのではないだろうか。これも推測だが、飛行機事故が絡んでいる話なので、85年の日航機墜落事故などもあり、再放送がしづらい一面もあるのかも。
主人公となる矢島家。京子(若尾文子)は専業主婦で、て夫の精一(藤田まこと)は、ロイヤル・アメリカン航空のベテランパイロットだ。結婚して20年を迎え、大学生の息子・慎一(西田浩)がいる。慎一の恋人が佐伯和美(星野真弓)で、京子の友人として登場するのが高見美保(白川由美)だ。
平凡な日々を送っていたが、精一が起こした航空機事故がきっかけで一家に突然の不幸が訪れる、とあらすじにはある。この書き方だと機体の故障とかではなく、操縦ミスが原因と思われる事故のようである。事故機の機長ということで、本人は亡くなっていてもどういった人物であったかとか、好奇の目にさらされ、残された家族も多くのマスコミから取材攻勢を受けたりすることになる。
その取材する側として登場するフリーの雑誌記者が佐原誠(三浦友和)である。その母親が伊佐子(津島恵子)で夫は既になく、いつも誠の機嫌を窺っている。誠の恋人が外務省に勤務する野口里子(星野知子)で、誠を起用している週刊誌の編集者が栗山良介(津川雅彦)である。誠が矢島家を取材するうちに、精一が不倫していたことを突きとめる。その相手が井沢未樹子(佐藤友美)だ。他にレギュラーとして名が挙がっているのがスナックのマスター(柳生博)や横田老人(藤原釜足)など。
若尾文子は当時47歳。山田ドラマは初登場のようである。大映の看板女優であったが、大映倒産後はテレビを中心に活動している。数多くのドラマに出演しているのだが、個人的には見事に自分の見ないジャンルばかりで、めったにお目にかからない女優なのである。藤田まことも同じ47歳。彼も山田ドラマは初のようだ。若尾との共演は珍しいかと思ったが、実は過去にも夫婦役での共演があったのである。山田のライバル的存在である倉本聰脚本のドラマ「あなただけ今晩は」(75年)がそれである。今回の「午後の旅立ち」では、藤田の事故死で始まるが、「あなただけ今晩は」は若尾の急死で始まるらしい。
息子役の西田浩については詳細は不明だが、その彼女星野真弓についてはこの時代(80~81年)のみ出演記録があるので、短期間で引退したのではないだろうか。「太陽にほえろ」「西部警察」「Gメン75」といったアクションドラマへのゲスト出演が多かったようだ。
ゲスト出演者だが、佐藤陽子、平泉征、名古屋章、浜村純、沼田爆、山口果林、香坂みゆき、天田俊明、根岸明美、吉田次昭、高城淳一、伊東四朗、リチャード・クレイダーマンなど。クレイダーマンは10~11話に登場するらしいが、本作の主題曲である「午後の旅立ち」は彼の曲で、番組側から製作を依頼したものなのである
獅子の時代 その2
引き続き、「獅子の時代」(80年)である。
菅原文太扮する平沼銑次は樺戸集治監を脱走した後、秩父事件に関わる。ちなみに、秩父事件とは1884年埼玉県秩父郡の農民と士族が政府に対して負債の延納、雑税の減少などを求めて起こした武装蜂起事件である。隣接する群馬県・長野県の町村にも波及し、数千人規模の一大騒動となった。ここで登場するのが秩父困民党で、その総理が田代栄助(志村喬)で、メンバーが雄太(三上寛)、六助(植田峻)、坂田(三上真一郎)など。以前も書いたが植田峻の母は加藤剛の姉である。つまり植田にとって加藤は叔父にあたるのだ(年齢差は5歳)。
今回は、加藤剛扮する苅谷嘉顕に関する大雑把なあらすじから。薩摩の大先輩である大久保利通(鶴田浩二)に能力を買われ、新政府の官僚として働く。民主国家建設の理想に燃える嘉顕は、独自の憲法草案を作るが認められず、次第に孤立して…。
嘉顕に関わる人物としては、家族以外では薩摩藩士・植村信吾(高田大三)、同・尾関平吉(岡本信人)、長州藩士・大槻信春(三田村邦彦)、北海道開拓使庁・岡田書記官(村上不二夫)、久保書記官(倉石一旺)、畳屋の平吉(佐野浅夫)、その女房・さく(野村昭子)などがいる。
ここまでは架空の人物を紹介してきたが、前述の大久保利通のように実在した人物も大勢登場する。
幕臣では、高松凌雲(尾上菊五郎)、榎本武揚(新克利)、向山隼人正(渥美国泰)、田辺太一(石田太郎)、渋沢栄一(角野卓造)など。水戸藩からは徳川昭武(中村幸二)。昭武は15代将軍徳川慶喜の異母弟にあたる。中村幸二は後の中村橋之助で、現在の中村芝翫(八代目)である。会津藩では、松平容保(片岡秀太郎)、山川大蔵(倉石功)など。山川は会津藩最年少の家老で、ダイゾウではなくオオクラと読む(本名は浩)。郡上藩では朝比奈茂吉(目黒祐樹)。薩摩藩では岩下左次衛門(神山繫)、伊地知正治(田口計)。岩下はパリ万博の使節団長。
ここまでは聞きなれない名前も結構あるが、明治新政府の顔ぶれはお馴染みだろう。西郷隆盛(中村富十郎)、江藤新平(細川俊之)、伊藤博文(根津甚八)、森有礼(中山仁)、板垣退助(村野武範)、山県有朋(江角英)、上田良貞(待田京介)、園田安賢(遠藤征慈)など。他にも前回名前を挙げた瑞穂屋卯三郎(児玉清)も実在した人物で、本名は清水卯三郎である。幕末から明治にかけての志士、集議院議員である雲井龍雄(風間杜夫)がサブタイになっている回もある。本名は小島守善という。前述の秩父困民党総理・田辺栄助も実在の人物だが、捕縛された後に死刑判決を受けている。
他にも脇役として出演しているのは、笠智衆、荒井注、役所広司、柳谷寛、伊佐山ひろ子、柳沢慎吾、玉川伊佐夫、谷村昌彦、高木均、石丸謙二郎、田中美佐子、高原駿雄などがいる。
ここからネタバレだが、最終話に大日本帝国憲法発布の日、嘉顕の友人でもあった森有礼が刺殺される。まもなくしてその犯人・西野文太郎は嘉顕の前に現れ、一礼すると彼の腹部目がけて刃物を突き出した。
一方で秩父事件の場面。松本英吉(丹波哲郎)は警官に斬られて死亡。軍も出動し、突破しようとした伊河(村井国夫)はあえなく射殺。そして銑次は…。
死んだのか生きているのかは謎のまま終わるのである。森有礼が西野に殺害されたのは事実だが、他はみんな架空の人物。ゆえにこういった終わり方も可能だったのだろう。ちなみに、山田太一は大河はもうやりたくないと話していたそうだが、実際二度と大河を書くことはなかったのである。
獅子の時代
今回は山田太一が唯一書いたNHK大河ドラマ「獅子の時代」(80年)である。通常の大河と異なるのは主人公が架空の人物であること。また、原作もなく山田のオリジナル作品であるというところだ。
会津藩の下級武士である平沼銑次と薩摩藩郷士の苅谷嘉顕を主人公とし、明治維新の勝者側となる嘉顕と敗者側の銑次が幕末から明治を生き抜く様を描いている。銑次役は菅原文太、嘉顕役は加藤剛という平素では、まず共演しなさそうな二人が配された。文太は当初「絶対に出ない」とオファーを断ったそうだ。彼も高倉健や小林旭同様にテレビ出演が少ない「映画スター」である。特に70年代後半からは「トラック野郎」シリーズなどが好調で、今更テレビなど出る必要もないと思っても不思議はない。そこをプロデューサーの近藤晋が「誰もわからない人物」を主人公に「これまでの史実とは違うものをやる」とコンセプトを説明すると興味を示して出演の運びとなったのである。
文太の希望もあって、屋外ロケが多用された。序盤でパリ万国博覧会に参加する銑次と嘉顕を描く場面では、実際にパリでロケが行われている。実際の列車に扮装した俳優たちを乗せて下車させ、現代の一般客がいる中を歩く形で撮影されたが、その一般客たちは彼らにほとんど注意を払わなかったという。
大河ドラマと言えば、基本的に一年の長丁場であり、出演者も多い。文太と加藤剛の他、ヒロイン役となるのが芸者「もん」こと小比木美津役の大原麗子である。瑞穂屋卯三郎(児玉清)に連れられてパリ万博に来ていたが、パリの街でフランス人に連れ去られそうになったところを銑次と嘉顕に助けられるのだ。
平沼家の人びとは、父・助右ヱ門(加藤嘉)、母・もえ(佐々木すみえ)、長男・亨(横内正)、亨の妻・玲(香野百合子)、三男・鉱造(永島敏行)、長女・千代(大竹しのぶ)、亨と玲の娘・保子(熊谷美由紀)、伯母・松子(浦部粂子)である。千代は後に嘉顕と結婚する。また、鉱造は卯三郎の姪である龍子(岸本加世子)と結婚する。苅谷家の人びとは、父・宗行(千秋実)、母・和哥(沢村貞子)、兄・巳代治(近藤洋介)、巳代治の妻・菊子(藤真利子)。菊子はかつて嘉顕と恋仲だった。小比木家の人びとは、父・錠一(鈴木瑞穂)、母・津留(喜多道枝)、弟・恭平(市村正親)など。
帰国した二人を待っていたのは戊辰戦争だった。故郷に戻った銑次は、会津落城の後箱館戦争に従軍するが敗者となり、明治維新後は東京で人力車夫に。その後、内務卿・大久保利通暗殺の謀議に加わった濡れ衣を着せられ、北海道の樺戸集治監に送られるが脱獄。やがて自由民権運動に身を投じる。
銑次と深く関わるのが、弥太郎(金田賢一)、伊河泉太郎(村井国夫)。弥太郎は銑次と共に人力車夫として働き平沼家の人びととも関わって行く。伊河はパリ万博に参加した水戸藩士で、銑次と意気投合し最後まで行動を共にする。樺戸集治監で知り合うのが、松本英吉(丹波哲郎)や浦川譲助(誠直也)である。囚人仲間に住田(日下武史)や五郎(高岡健二)など刑事役イメージの強い役者が並ぶ。対して看守は内山看守長(小松方正)、田川看守(岩尾正隆)、岡浦看守(東野英心)など。文太と丹波と言えば新東宝仲間だが、東映のイメージが強い。この北海道編では甚助(大滝秀治)、益実柳蔵(汐路章)、源太(生井健夫)なども登場する。
ちなみに、樺戸集治監は今で言うと樺戸郡月形町に存在していた。今は月形刑務所があるのだが、集治監の流れをくんだものではない。東京・中野刑務所の廃止・移転により新設されたものである。つまり、刑務所を受け入れた町ということになるのだろう。
沿線地図
今回も山田太一の原作・脚本ドラマから「沿線地図」(79年)である。
「岸辺のアルバム」で出演が予定されていたというが、実現に至らなかった岸惠子が出演したドラマである。パリに在住していた為、4カ月のスケジュールをとって来日した。加えて岸と同い年(当時47歳)である河内桃子も出演。共に大ベテランであるが、岸は松竹、河内は東宝→俳優座ということもあり、おそらくこれが初共演と思われる。「岸辺のアルバム」と同じ全15話だ。
本作には藤森家と松本家という二組の家族が登場する。藤森家は茂夫(河原崎長一郎)と妻の麻子(岸惠子)に娘の道子(真行寺君枝)の三人。松本家は誠治(児玉清)と妻の季子(河内桃子)に息子の志郎(広岡瞬)、そして送付の謹造(笠智衆)の四人である。藤森家は電気店を営んでいるが、松本家は田園都市線沿線に住むエリート銀行員の家庭だ。
志郎は東大合格確実と言われている優等生だが、内向的で根暗な高3生である。そんな彼を電車の中で見かけ興味を持ったというのが道子である。道子も優等生ではあったが、目標といえるものがなかった。二人はやがて恋に落ち、優等生の道を外れ始める。そして二人は家を出て同棲を始め、高校も中退してしまう。二組の夫婦は慌てて二人を捜し出すが、敷かれたレールからはみ出さない意味を問われても答えることができないのだった、というのがストーリー。映画スター出身の両親役の役者たちをしり目に若い二人が話の中心となるようだ。
広岡瞬は当時20歳で、本作がデビュー作であった。本名は山田だが「広岡」は前年にヤクルト・スワローズを優勝に導いた広岡監督に肖ってのものらしい。真行寺君枝は当時19歳。16歳で資生堂のキャンペーンモデルに抜擢されコピーの「ゆれる、まなざし」で話題となる。高校卒業後は女優に転身。78年の「必殺からくり人・富嶽百景殺し旅」で病気降板した高橋洋子の代役としてレギュラー出演。本作はその次の出演作となるようだ。
松本夫婦を演じる児玉清と河内桃子は共に東宝ニューフェイス出身だが、河内が東宝を退社した58年に入れ替わるような形で児玉が入社している。河内が退社したのは演技の勉強をし直すためで、俳優座養成所8期生として入所。同期に山崎努や水野久美がいた。児玉は同じ東宝女優の北川町子と結婚したが、河内と北川は57年の東宝サンパウロ支社開設の為、共にブラジル入りしたという縁がある。ちなみに、あまりイメージはなかったのだが、河内は170cmの長身である。児玉も178㎝あるので、バランスをとったということだろうか。
ネタバレを含むストーリー展開だが、道子は妊娠し、産むべきかどうかを悩む。季子は誠治への不満から茂夫と一度だけの関係を持ってしまう。それを知った麻子はショックを受けるが誠治は信じない。そして、最終話だが突然、謹造が自殺してしまう。とまあ、ドロドロな関係が繰り広げられるようだ。
他の出演者だが、岡本信人、新井康弘、三崎千恵子、野村昭子、風間杜夫、楠トシエなどで、ゲストとしては垂水悟郎、穂積隆信、茅島成美、矢崎滋、中野誠也、北村和夫、岸田森などである。
その後の広岡瞬だが、いつの間にかその名を聞かなくなったと思っていたが、90年に石野真子と結婚。石野真子と言えば、長渕剛との離婚歴もあるのだが、こちらも96年に破局。広岡はこれを機に芸能界を引退し、飲食店の経営などに携わっている。
岸辺のアルバム
今回は、「男たちの旅路」同様に山田太一ドラマではかなり有名であろう「岸辺のアルバム」(77年)である。
原作は本人の新聞小説で「東京新聞」や「北海道新聞」などで連載されていたそうだ。当時だとまだ実家にいて、「北海道新聞」を採っていたはずだが全く記憶にない。まあ新聞小説を読む習慣はなかったけれども。
「岸辺のアルバム」と言えば、最終話の堤防が決壊して家が流されて行くシーンが有名だと思うが、よく考えたら自分もそのクライマックス以外のストーリーをほとんど知らなかったことに気づいた。74年に起きた多摩川の水害で19軒の家が流されたが、家もそうだが家族のアルバムも流されたこともショックだという被災者の話を山田が聞き、そこから物語の発想が生まれたという。全15話と山田作品はこのくらいの話数が多い。
主人公となる田島一家は一見平凡な四人家族。父・謙作(杉浦直樹)は会社員、母・則子(八千草薫)は専業主婦、長女・律子(中田喜子)は大学生、長男・繁(国広富之)は高校生である。国広は当時24歳だが、これがデビュー作となるようだ。姉役の中田喜子は同い年である。
昼間、則子が一人でいる時に無言電話がかかってくるようになる。やがて会話をするようになり、二人で喫茶店で密会することになる。その男・北川(竹脇無我)は「易のホームで見かけて話がしたいと思っていた」という。密会を重ねるうち二人はホテルへ行き、一線を越えてしまうのだった。いかにも真面目そうで、浮気などしなさそうな八千草と竹脇というのが逆にインパクトがあるかも。
同時期に繁はハンバーガー店の篠崎雅江(風吹ジュン)に誘惑され、律子は帰国子女の丘敏子(山口いづみ)の家に入り浸り、謙作は部下の秋山絢子(沢田雅美)から告白され、家族全員が家に寄り付かなくなる。
繁は則子が北川とホテルに入るのを偶然目撃してしまい、学校から家に電話をかけるようになる。律子は敏子から紹介された留学生のチャーリーと付き合うが、騙されて他の留学生にレイプされてしまう。それを繁に打ち明ける。さらに繁は絢子から謙作が東南アジア女性の人身売買に関わっていることを聞かされる。つまり、家族全員の秘密を知ってしまったのである。苦悩した繁は大学受験にも失敗し浪人生となる。そして、雅江からは受験を失敗させるために近づいたと告白される。実は田島一家が住む家は篠崎家が入居する予定だったが、父親の工場が倒産して買えなくなったのだという。田島一家には何の責任もないが「復讐」のターゲットにされてしまったのだった。風吹ジュンは当時25歳。74年に歌手デビューしているが、ホステス時代を隠すために2歳サバ読んでいたことがバレてスキャンダルとなったりした。当時はこんなに息の長い女優になるとは想像もできなかった。そう言えば、八千草薫とは「阿修羅のごとく」(79年)では姉妹の役を演じている。
則子は北川と会うのを辞めたが、律子は37歳の堀(津川雅彦)を結婚相手と紹介し、謙作は激怒する。当初は竹脇と津川の役は逆だったという。津川が浮気相手で竹脇が結婚相手だと、とても普通なキャスティングだからなのかスケジュールの都合なのかは不明だけれども。則子役も当初は岸惠子が予定されていたというが、堀川プロデューサーの反対により八千草になったという。
男たちの旅路 その4
もう飽きたかもしれないが、「男たちの旅路」である。今回はあまりストーリーには触れないで行こうかと思っている。
79年に放送された第4部の2話「影の領域」からである。吉岡(鶴田浩二)は警備会社に復帰。ただし、本人の希望で司令補ではなく一般警備員としてである。そして、根室から共にやって来た尾島信次(清水健太郎)、信子(岸本加世子)兄妹も一緒の警備会社に就職した。信次は配属された港の倉庫警備で上司の磯田士長(梅宮辰夫)の不正を目撃してしまう。しかし、磯田は金を一切受け取っておらず、あくまでも会社の為だと主張する(契約を切られないようにする為)。それを知った吉岡は「悪いことは悪い」と対立する。
鶴田と梅宮は東映での任侠映画や戦記物で共演の経験はある。しかし、基本的には鶴田は硬派な男の世界を描いたものが中心。一方の梅宮は「夜の帝王シリーズ」だの「不良番長シリーズ」だの軟派で女を追いかけまわすような絶対に鶴田が出演しないような映画が中心だった。ただでさえ鶴田には敵も多く、二人の相性がいいわけはないのである。吉岡は磯田に殴られるのだが、「殴りたいだろうと思ってな」と信次や鮫島(柴俊夫)にニヤリ。復帰後どこか輝きを失なっていた吉岡だったが徐々に復活していく。
そして第3話「車輪の一歩」。当時もドラマでは扱いにくいテーマだったと思うが果敢に踏み込んでいく。尾島兄妹が警備しているビル入り口にいた数人の車椅子青年を移動させたことをきっかに毎日のように彼らが現れるようになる(全部で六人)。それを知った吉岡も彼等と関わっていき、導きだした彼等への助言は「迷惑をかけることを恐れてはいけない」というものであった。
車椅子の青年を演じるのが京本政樹、斎藤洋介、古尾谷雅人、水上功治などで、紅一点の車椅子女性が斉藤とも子、その母親が赤木春恵だ。京本正樹は当時20歳で、本作がドラマデビュー作とウィキペディアではなっている。ただ、放送時期では、レギュラーだった天知茂主演「江戸の牙」の方が早かったはずである。斎藤洋介は当時28歳だったが、こちらも本作がデビューとなっている。それまでは、三宅裕司率いる劇団SETの一員として活動していたようだ。小倉久寛、寺脇康文、岸谷五朗辺りはSETのメンバーだったのは知っているが、斎藤は知らなかった。SET(スーパーエキセントリックシアター)と名付けたのも斎藤だそうだ。
古尾谷雅人は当時22歳。デビュー作は日活ロマンポルノ「女教師」(77年)で、当時20歳だったが役は不良中学生。実はこの映画見たことがあるが、あんな中学生はいない(見た目)、と思ってしまった。デカいし(188cm)。「ヒポクラテスたち」(80年)では主役の医大生を演じ、前述の斎藤洋介とは本作でも共演している。ちなみにキャンディ-ズを解散した伊藤蘭の復帰作でもある。03年に自ら命を絶ったのが唐突に感じたが、身内からすれば思い当たることは多かったらしい。作品を選ぶようになりながら、出たい作品には出られない(過去の病気によりあまり長時間の撮影に耐えられない)などのジレンマがあったらしい。
水上功治はミスタースリムカンパニー出身で、山田作品である「ふぞろいの林檎たち」では主人公たちと敵対するチャラい大学生を演じた。いかにも嫌な奴そうだが、実際に現場での素行に悪評が高かったので、仕事が減り引退に追い込まれたらしい。斉藤とも子は87年に28歳上の芦屋小雁と結婚し、世間を驚かせた。この関係は長く続いたのかと思っていたが95年には離婚している。しかも小雁は翌年、30歳下の女性と結婚したそうだ。
とまあ、ドラマには関係ないことばかり書いたが、当時は無名だったが今見ると中々なメンバーが揃っていたのがわかるであろう。
男たちの旅路 その3
引き続き「男たちの旅路」である。今回は第3部(77年)の第3話「別離」から。
杉本(水谷豊)は悦子(桃井かおり)との結婚を考えるようになるが、彼女にはぐらかされてしまう。そこで、杉本は吉岡(鶴田浩二)に悦子の気持ちを確かめて欲しいと頼むのだった。吉岡は悦子と会食をするが、杉本のことは断ってくださいとそっけない。二人は吉岡の部屋へ。そして、悦子に自分が好きなのは吉岡であることや、自分が病気(再生不良性貧血)であることを告げられる。「泊めて」という彼女を追い返そうとする吉岡だったが、彼女がふらついているのを見て、そのまま泊めてやるのだった。そこから、一転し吉岡は悦子を一人で看病する生活に入って行くのだった。親子のような年齢差のある男に惚れるなど信じられなかった杉本は吉岡の不在を狙って悦子に会うが追い返されてしまう。悔し紛れに杉本は吉岡の悪い噂を流したりするが、鮫島(柴俊夫)に殴られたりする。
そうこうしているうちに悦子の容態は悪化。「良くなったら一緒になろう」という吉岡に「ついに言わせた」とほほ笑む悦子だったが…。思わず大号泣のシーンではないだろうか。悦子の葬儀が終わった後、吉岡のアパートはものけの殻であった。吉岡は誰にも告げず姿を消したのであった。
それから、丸二年。第4部は79年11月に放送された。その第1話は「流氷」。
相変わらず吉岡は行方不明のままだったが、小田社長(池部良)の下に吉岡からのハガキが届いていた。その消印は北海道の根室であった。小田はそれを頼りに杉本に吉岡を探しに行くように命じた。傷心時の一人旅は北へ向かうと相場が決っている。
第2部では釧路が登場したが、根室はさらにその先、日本最東端の街である。札幌以外の北海道の街は人口減少傾向にあり、根室も放送当時は4万人以上いたらしいが、現在は2万2千人程度らしい。
冒頭に水谷豊が乗っているのは根室本線だと思われるが、水谷自身も生まれはその根室本線沿いの芦別市なのである。と言っても根室までは400㎞以上あるのだが。
根室の街をあてもなく探しているうちに地元の青年・尾島信次(清水健太郎)、その妹信子(岸本加世子)と知り合う。やっとのことで吉岡と再会するが「俺は帰らんぞ」と言い張る。ずっと吉岡に説教され続けてきた杉本だったが、今回は逆に吉岡を説教(説得)するのである。「いいことばっかり言っていなくなっちゃっていいんですか。俺は50代の人間には責任があると思うね」名場面である。翌日、帰りの列車の中には吉岡の姿があった。信次も「ここにいてはだめだ」とそのまま家を飛び出してきた。それを見た信子も「私も行く」と尾島兄妹もくっついてきたのである。大家族らしく二人くらいいなくなっても平気なようだ。
苦労して吉岡を連れ戻した杉本だったが、出演はこの回まで。「これ以上、ベタネタするのも嫌だから」と書置き一つで姿を消してしまうのである。勿論、売れっ子になっていた水谷豊のスケジュールの都合もあったのだろう。でも吉岡と杉本のエピソードは決着がついたということで、新キャラの登場となったのだろう。
男たちの旅路 その2
前回に続き「男たちの旅路」である。今回はその第2部(77年)からである。多分リアルタイムで見たはずなのだが、2話などはほぼ記憶になかった。
第1話「廃車置場」から、柴俊夫演じる鮫島壮十郎が登場。鮫島は常識人ではあるが、当初はトラブルメーカーでもあった。「勤務地を選ばせてほしい。でなければ不採用で結構です」と要望してきたのである。鶴田浩二演じる吉岡は逆にそれが気に入り社長らに採用を進言する。しかし、それは他の社員の不満を招いてしまう。
第2話「冬の樹」では、本作の音楽を担当するゴダイゴが登場。と言ってもセリフとかがあるわけではなく警備されるロックグループとして出てくるのだ。出待ちをするファンが殺到し、警備員たちも抑えきれず、女子高生美子(竹井みどり)が脳震盪で倒れてしまう。彼女を家まで送り届ける吉岡だったが、その父親(滝田裕介)に娘が倒れたのは警備会社のせいだと非難される。後日。改めて謝罪に訪れる吉岡だったが、「私が親なら娘さんを叱る。甘やかしているのが悪い」と言い返し、先方の怒りを増幅させる結果となってしまう。会社は体裁のため、吉岡を10日間の停職とするが、美子が彼の許を訪れる。他のゲストは川口敦子、草野大悟など。池部良演じる小田社長の吉岡への信頼は厚く、停職処分も厳正なものではない。
第3話「釧路まで」では、美術展で展示されるクメール王朝の石像に爆破予告が届く。警備会社は開催地である北海道にはフェリーでの輸送を選択し、吉岡、鮫島、杉本(水谷豊)が、警備にあたる。同僚の悦子(桃井かおり)と聖子(五十嵐淳子)は、杉本に誘われ一般客として乗船していた。怪しい人物は見当たらなかったが、爆破予告犯(長塚京三)は聖子を人質にして悦子を脅し、彼女らの部屋に潜んでいた。個人的にこのエピソードから、はっきりと見ていた記憶がある。ちなみに現在は釧路までのフェリーはなく、関東から北海道だと大洗→苫小牧のみだそうだ。犯人役の長塚京三は74年デビューということで、当時はあまり知られていない存在だったと思われる。パリ大学に6年間留学していたという経歴がある。船長役は田崎潤だが、田崎がやると軍艦のように思えてしまう。
続く第3部は約1年後だと思っていたのだが、約9カ月後の77年11月に放送されていた。その第1話が77年度の芸術祭大賞を受賞した「シルバーシート」である。
ゲストではそれほど大物が登場していなかった本作だが、今回の顔ぶれが凄い。志村喬、笠智衆、加藤嘉、藤原釜足、殿山泰司という大ベテラン揃い。殿山は当時62歳だが、他の四人は72~73歳である。鶴田浩二が「まだ若い」などと言われてしまうのだ。彼等は老人ホーム仲間だが、その院長役は佐々木孝丸。設定上は彼等より若いということになりそうだが、佐々木は当時79歳で、19世紀の生まれだ。佐々木の娘婿は千秋実だ。
杉本と悦子が羽田空港の警備にあたっていると、そのロビーにいつも現れるのが志村演じる本木だった。警備員たちは彼を煙たがり避けていたが、ある日本木はその場で急死。後ろめたさを感じた杉本と悦子は本木が暮らしていた老人ホームに弔問に訪れるが、四人の同居人の酒盛りに巻き込まれる。後日、その四人の老人たちは倉庫にある都電の1両を占拠して立てこもるという事件を起こす。
警察に通報する前に吉岡が彼らの説得にあたってみるのだが…。「あなたの20年後ですよ」と言われる吉岡。実際に鶴田浩二としても志村、笠、加藤、藤原は約20歳上なのである。
この回だったか悦子が「体調が悪い」というようなことを言っていたが、これが次々回の伏線となる。他に村上不二夫、草薙幸二郎、金内喜久夫、鶴田忍なども出演している。