岸田森の出演映画 その6 | お宝映画・番組私的見聞録

岸田森の出演映画 その6

もう1回だけ、岸田森である。
73年、テレビでは円谷プロの特撮ドラマ「ファイヤーマン」にSAFの水島副隊長としてレギュラー出演。劇中で副隊長とは呼ばれていなかった気もするが、ポジション的に二番手なことは間違いない。ここでは隊長役の睦五朗と公私ともに親しくなったようである。
74年の主な映画出演としてはまず「ゴジラ対メカゴジラ」。岸田はゴジラシリーズ初出演である。よりコミカルで子供向けになっていたゴジラシリーズだが、本作では若干の軌道修正が入り、子役俳優が登場しない。
主演は大門正明で、その弟役に青山一也で、ヒロイン役は田島令子だ。大門は「ファイヤーマン」の主役候補に挙がっていたという(実際は誠直也)。青山は東宝製作の特撮「流星人間ゾーン」(73年)の主役である。ちなみに、76年には引退し、家業である海苔専門店を継いだという。田島は71年に松竹から映画デビュー。普通に顔出しも多いのだが、「地上最強の美女バイオニック・ジェミー」の主演声優としても知られ、声優イメージも強い。
本作は沖縄が舞台で田島の役名は金城冴子という。「キンジョウ」でも「カネシロ」でもなく「カナグスク」と読む。また国頭那美(クニガミナミ)という沖縄民謡の歌い手をベルベラ・リーンという人が演じている。ベルベラは本作のみ使用した名前でその正体は台湾人歌手・鄭秀英。当時はプロフィールが公開されておらず、長らく謎の人物として扱われていたようだ。
こうした若手に加え、平田昭彦、小泉博、佐原健二といった東宝特撮映画の常連俳優も出演している。「ファイヤーマン」からも岸田と睦が出演。共に謎めいた人物の役だが、岸田の正体はインターポールの捜査官に対し、睦はブラックホール第三惑星人という宇宙人の地球征服司令官を、その部下を岸田とは文学座の同期で親友である草野大悟が演じている。ちなみに、草野の妻は田島和子で令子ではない。
「血を吸う薔薇」は、血を吸うシリーズの3作目。前作「血を吸う眼」から3年が経過していたが、東宝側の都合などにより一度立ち消えになった企画が再始動した形である。舞台は長野の奥地にある女子短大。
主演は黒沢年男だが、見た目の男臭さとは裏腹にホラーが大の苦手だという。その為、出演を渋っていたのだが、完成品をみないこと等を条件に引き受けたという。他の出演者は望月真理子、太田美緒、麻里ともえ(阿川泰子)、佐々木勝彦、田中邦衛、伊藤雄之助などで吸血鬼は前作に引き続き岸田が担当した。短大の学長夫妻こそが、吸血鬼なのだが学長夫人役は桂木美加。「帰ってきたウルトラマン」でMATの紅一点、丘隊員を演じていた人である。学長夫人などというと年配の人を想像してしまうが、桂木は当時25歳であった。ちなみに桂木は本作の後「ウルトラマンレオ」にゲスト出演をしたのを最後に芸能界から姿を消している。共演していた団次郎も「恐らく結婚されて、引退したのでは」とはっきりとは知らないようだった。
この74年、岸田はテレビではあの「傷だらけの天使」にレギュラー出演。説明不要かと思うが、主演は萩原健一、共演は水谷豊、岸田今日子。従姉妹である岸田今日子との共演はあまりない。ほぼ同時に時代劇「斬り抜ける」がスタートしているが、こちらにも岸田はレギュラー出演。主演は近藤正臣、和泉雅子で他に佐藤慶、火野正平など。「傷だらけ」の亨役は当初、火野正平が予定されていたというのは有名な話だが、この「斬り抜ける」等の出演でスケジュールがとれなくなった為である。岸田森は両方にレギュラー出演していたぞ、というのは考えてはいけない。