金メダルへのターン
順番としては「コートにかける青春」の次あたりにやればよかったのだが、女性スポ根ものから「金メダルへのターン!」(70~71年)である。制作は「コートにかける青春」や「フィニッシュを決めろ」と同じ東宝である。
割合に有名なドラマだと思うが、よく考えたら個人的には見たことがなかった。まあ、水泳でオリンピック(ミュンヘン)を目指す少女の物語である。
簡単なあらすじだが、主人公の千葉鮎子(梅田智子)は、母よしえ(三ツ矢歌子)と二人暮らしだが、明るい性格の将来を期待される水泳少女だった。しかし、ある日ボートで転覆事故に遭い、黒木進介(水谷邦久)に助けられるのだが、水恐怖症になってしまう。進介はやはり有望な水泳選手であり、その指導で彼女は恐怖症を克服し、オリンピックを目指すことになる。最大のライバルがスイミングクラブの速水四郎会長(小泉博)の娘である理恵(青木英美)だった。しかし彼女は病気で腹部を手術し選手生命を絶たれてしまう。その後、速水とよしえは何故か再婚することになり、理恵と鮎子は姉妹になってしまい、名前も速水鮎子に変わる。ちなみに鮎子が妹だ。理恵は鮎子に協力するようになり、水島コーチ(前田吟)の指導のもと、鮎子は頭角を表していくのであった。
ヒロインの梅田智子は東宝ニュータレント8期生で、当時18歳。東宝テレビ部に所属し、「炎の青春」(69年)では、生徒の中でも中心的存在だったバスケ部主将を演じていた。水泳は得意だったので、他の出演者が顔の見えない場面では吹き替えだったが、彼女は吹き替えなしで演じていたという。
青木英美は当時17歳。姉役だが実際は1歳下である。ミスヤングインターナショナル世界大会に日本代表として出場したことを機に東宝テレビ部に所属。その4か月後に始まったのが本作だったのである。彼女は「飛び出せ青春」(72年)で人気を得るが、人気を二分した大田黒久美(当時は美波)や地味な女生徒約だった小椋寛子も出演している。
水谷邦久と言えば「レインボーマン」(72年)だが、本作が初レギュラーだったようだ。水谷も学生時代に水泳部に所属していたようで、そこからの抜擢かもしれない。本作には「レインボーマン」で共演することになるメンバーも多い。小泉博は父親役だし、全日本監督役の長沢大、同コーチ役の塩沢とき、役柄は不明だが同じ回に出たらしい平田昭彦と「死ね死ね団」の面々が顔を揃えている。ちなみに、平田昭彦は三ツ矢歌子の義弟になる(年齢は平田が9歳上だが)。もう一人、大河役の多田きみ子とは藤山律子のことである。彼女も「レインボーマン」では女幹部だ。
本作はタイトル通り「ターン」が見どころだが、鮎子の「飛び魚ターン」を筆頭に、ライバルである聖園泉(森田敏子)の「渦巻ターン」、海門政美(吉田未来)の「無呼吸泳法」、有田陽子(服部妙子)の「風車ピッチ泳法」、日向勝子(夏海千佳子)の「ロケットターン」などが登場する。この中では服部妙子は現在も活動中で、夏海千佳子も82年頃までは活動していたようだ。「特別機動捜査隊」によくゲストで出ていた印象がある。可能かづ子名義でピンク映画などにも出演していた。