星の瞳をもつ男 | お宝映画・番組私的見聞録

星の瞳をもつ男

日活映画が続くが、今回は高橋英樹である。高橋英樹と言えば「男の紋章」(63年)を始めとした日活任侠映画のスターというイメージだが、今回はその路線に行く前の青春アクション映画「星の瞳をもつ男」(62年)である。
高橋英樹は高校在学中に第5期日活ニューフェイスに合格し、61年に17歳でデビューしている。同期となるのが中尾彬、竜崎勝(高島史旭)などだが竜崎は数本端役で出演した後に退社し、俳優座養成所へ。中尾は当時の雑誌では合格者に名前がなかったが、後に編入されたらしい。
翌62年に赤木圭一郎の急死に伴い「激流に生きる男」の主演に抜擢される。そこから主役スターの道を歩くことになり、その三か月後に公開されたのが「星の瞳をもつ男」である。高橋は当時18歳で、ヒロインの吉永小百合が17歳、山内賢が弟役だが実際は高橋と同じ18歳で誕生日も山内の方が早いのである。
高橋英樹吉永小百合にあまり共演のイメージがないが、前述の「激流に生きる男」がこのコンビだし、翌63年の「伊豆の踊り子」もこのコンビである。ただ、高橋が任侠路線に行ってからは共演が減り、結果としてデビュー初期の頃に集中している形となったのである。
本作では、高橋演じる榊英司が刑務所から出所してきた所から始まるので、英司の設定年齢は22歳以上ということになると思う(刑期は約2年で少年院ではないので)。実際18歳には見えず大人っぽくて23~24という感じであろうか。英司は元々働いていた自動車工場の娘である冴子吉永)と再会し、またそこで働くことになる。一方、英司が傷害事件を起こすきっかけとなった弟の光郎山内)は人気歌手榊ミツオとなっていた。その恋人がジャズ喫茶などで歌う歌手の峰かおり田代みどり)である。英司は偶然、音楽事務所の社長千紗吉行和子)に見いだされ、光郎と同じ歌手の道を歩むことになる。英司の人気は光郎を越えるようになり、兄弟間にしこりが生まれるようになる。
というような話なのでアクション映画なのだが、主題歌挿入歌合わせて8曲ある歌謡映画だったりするのだ。山内は歌唱に定評があり、後に日活バンド「ヤングアンドフレッシュ」のボーカルも務めるくらいなので3曲、田代みどり(当時14歳)は元々歌手なので2曲、高橋も主役なので2曲披露している。ちなみにこれは3万を超える応募作品から選ばれたもの。高橋が歌っているイメージがあまりないと思うが、初期の頃は結構歌っており、ヘタというわけではない(うまいとも言えないが)。意外なのは吉永小百合で、ヒロインの時はだいたい歌っているイメージだが、今回は高橋の伴奏者に徹しており歌うことはない。
他の出演者だが、北村和夫、深江章喜、杉狂児、賀原夏子、富田仲次郎、高城淳一、土方弘、中村是好など。深江章喜とは、高橋がテレビ時代劇の主役スターとなってからも「ぶらり信兵衛道場破り」「桃太郎侍」などでも共演が続くことになる。
ネタバレになるが、本作のラストで英司とミツオは和解し、めだたしめでたしとなるのだが、二人のステージ上でのやり取りにはみんな驚くのではないか。普通なら二人で見事な歌唱を披露して拍手喝采で終わりそうなものだが、二人で食料品(そばめん、パン、小麦粉、卵など)のぶつけ合いを始めるのである。現代なら食べ物を粗末にするなと抗議殺到となるところだが、20世紀の時点ではコントなどでよくやっていたことだ。にしても、本作では唐突過ぎて驚いてしまうのである。ちなみに兄弟デュエットのタイトルは「兄弟仔豚」という。