忍びの者
品川隆二が「月影兵庫」の焼津の半次に抜擢されたのは、元々近衛十四郎と映画での共演が多かったからというわけではない。簡単にいえば、スケジュールが空いていたからということのようだ。直前までやっていたドラマが「忍びの者」(64年)で、東映京都プロの第1回作品なのである。しかも品川は主役の石川五右衛門の役である。五右衛門といえば大泥棒というイメージだが、若い人は「ルパン三世」から剣の達人と思われているかもしれない。ここではタイトル通り伊賀の忍びである。半次をやった後でこの役をやったとしたら、とても違和感があったに違いない。しかし、一般的には「忍びの者」といえば、市川雷蔵主演の映画の方を思い出す人が多いかもしれない。私もテレビ版のほうは見たことがない。映画版の方は大映の作品であり、この時期はまだシリーズが続いていた時期である。しかし主役は石川五右衛門から霧隠才蔵に替わっており、それを狙って東映が石川五右衛門版をスタートさせたのかもしれない。共演は里見浩太朗、山城新伍、栗塚旭と東映テレビ時代劇の主演スターが並んでいた。
この番組では火あぶりのシーンで立川さゆりが足に1ヶ月の火傷を負うという事故があった。足とはいえ、若い女優にとっては大変ショックな出来事であったと思うが、彼女は松川純子と名を替え、その後も女優を続けている。円谷プロの「怪奇大作戦」で京都を舞台にした23話「呪いの壺」にも出演している。ちなみに彼女は東映ニューフェースの9期生。一期上に「赤影」の坂口祐三郎や藤江リカ、一期下に小林稔持や「キカイダー01」の池田駿介がいるが、9期生には無名の人ばかりが並ぶ(私が知らんだけかもしれんが)。しかし一番出世したのは松川純子で間違いないと思う。
素浪人天下太平
「月影兵庫」「花山大吉」とくれば「天下太平」である。「花山大吉」終了から約2年を経てスタートした素浪人シリーズ第3弾が「素浪人天下太平」(73年)である。勿論主役はもうすぐ還暦の近衛十四郎だが、今回は半次こと品川隆二は登場せず、相棒として起用されたのは仮面ライダー2号として人気を得ていた佐々木剛で、もう一人女性レギュラーとして加茂さくらが加わった。当時の評判は不明だが、半年で終了し、その翌週から「いただき勘兵衛」が始まったところを見ると、さほど人気を得られなかったのではないかと思われる。まあ品川の穴も大きかったのだろうが、よく考えてみるとこの頃既に「必殺シリーズ」や「木枯らし紋次郎」といったアウトロー的な時代劇が人気を得ており、素浪人シリーズのような明朗快活なもう古臭いという感覚だったのかもしれない。実際、素浪人シリーズは60年代の番組というイメージが自分にはあり、「天下太平」が「必殺」や「紋次郎」より後に始まった番組だったが意外に感じてしまった。当時小学生ながら時代劇を見ていた自分だが、素浪人シリーズはリアルタイムでは見ていなかったと記憶している。
話は変わるが、品川隆二の本名は俳優名鑑などでは「奥村潔」となっているが、前項で紹介した「品川隆二と近衛十四郎~」の中で、それが間違いであることがわかった。「奥村」ではなく「奥秋」だそうである。長年訂正されないままだったのであろうか。一見珍しい苗字だが、全国に500件近くある意外と存在する苗字のようだ。どうでもいい話だけれども。
素浪人花山大吉
今日、本屋へ行ったら「品川隆二と近衛十四郎 近衛十四郎と品川隆二」という長いタイトルの本が発売されていて驚いた。そんなことは全く知らずに「素浪人シリーズ」の話題を取り上げようとは、タイミングが良いのか悪いのか。本の内容は品川隆二へのインタビューで構成されている。もうすぐ74歳だが、まだまだ元気なようだ。まあ高いので買わなかったが、元々今日ここに書こうと思っていた内容とその本の内容がだぶってしまったりするのは、大目に見ていただきたい。
「月影兵庫」とくれば次は「花山大吉」である。兵庫が終わった翌週である69年1月から間髪入れずに始まっている。月影が終了したのは原作者である南条範夫がクレームをつけたからだとよく言われているようだが、これは多少ニュアンスが違っているようだ。番組内容がどんどん原作から離れていってるのに、原作料をもらっているのが我慢できなくなったということらしい。それで原作者を降ろしてもらうことになり、タイトルを変えざるを得なくなったということのようだ。「月影兵庫」の方が南条にとっては得だったわけなので、その辺は作家精神というやつだろうか。「花山大吉」は兵庫と別れた直後に兵庫と瓜二つの浪人と半次が出会うという、とても強引な始まり方でスタートする。嫌いな物(蜘蛛)、好きな物(オカラ)の設定が変わったくらいで、後はi特に月影とは変わらない。ただ半次は全作よりもっと喋るようになり、コメディ色はさらに強まったようだ。番組の終盤、近衛は糖尿病が悪化し、撮影もきつい状態だったらしい。品川は近衛のその時の演技が一番よかったと語っている。番組は丁度2年で終了し、近衛は闘病生活を送ることになる。素浪人シリーズの復活は73年のことである。
素浪人月影兵庫
先日よりCS東映チャンネルで、近衛十四郎の素浪人シリーズの第1弾である「素浪人月影兵庫」が始まった。素浪人シリーズは四作品あるが、個人的に見ていたのはおそらく「花山大吉」や「いただき勘兵衛」だったようで、「月影兵庫」を見るのは多分初めてだと思う。これには第1シリーズ(65年10月~66年4月)と第2シリーズ(67年1月~68年12月)が存在していたのも初耳で、今放映されているのは貴重な第1シリーズである。近衛の相棒といえば、品川隆二扮する焼津の半次だが、当初からその掛け合いはあるのだが、それほどコメディぽかったわけではない。というより、この第1シリーズにかぎって言えば、かなりシリアスな路線だったといえるようだ。もともと品川は二枚目路線の人なのだが、半次を見たあとで二枚目な品川を見るととても違和感を感じてしまう。品川も半次みたいな役ばかり来るようになったということもあり、決して好きな役ではなかったと語っている。
さて、第7話「赤鞘だけが知っていた」が個人的に面白かったので紹介したい。これは簡単にいえば、兵庫が武芸者揃いの五兄弟に勝負を挑まれ死闘の末、彼らを倒すというものだが、その五兄弟の顔ぶれが、尾上鯉之助、千葉敏郎、堀田真三、宍戸大全、大里健太郎(役柄上の兄弟順)というもので、名の知られた面々が並んでいる。千葉敏郎は以前にも書いたが腕の立つ浪人をやらせれば、右に出るものはいないと勝手に思っている役者で、ここでも剣の達人だ。宍戸大全は役者としてよりスタッフとして名を見かけることが多い、スタントの人である。必殺シリーズでは「特技」という肩書きでその名を連ねていた。今回は手裏剣担当。尾上鯉之助と大里健太郎は59年の映画「里見八犬傳」で、八剣士のメンバーとして里見浩太郎や伏見扇太郎とその名を連ねていた役者だ。尾上などは主演映画も製作されたのだが、さほど人気を得られず脇にまわり、この頃(四年ほどしかたっていないが)には太ってしまい悪役を演じるようになっていた。そして堀田真三(当時は脇中昭夫)だが、この時はデビュー直後で当時まだ20歳だったはずだが三男坊の役である。ドスの利いた声は当時からで、妙に貫禄がある。ちなみに千葉は38歳、年下役の宍戸は35歳、尾上は32歳、大里は不明だがおそらく尾上と同じくらい。つまり堀田だけ10歳以上離れていた新人役者だったのだが、ベテランたちに混じっていても違和感はなかった。ラストの四兄弟との死闘(大里は冒頭で斬られている)も、中々迫力があり長兄役の尾上が最後の相手となるだろうと思いきや、一番に斬られるという展開も意表をついていた。
60年代のテレビ時代劇をさほど面白いと思ったことはなかったのだが、このシリーズはある意味70年代の時代劇っぽくて(逆か?)好みである。
10人の目撃者
黒いパトカー
続けて高松英郎が出演していたドラマからのネタだが、「黒いパトカー」(61年)というドラマが存在する。当然見たことはないし、資料もないのだが、タイトルどおり刑事物で、警視庁の特務刑事の活躍を描いた物語らしい。主演は高松の他は友田輝、伊東光一、深川きよみとなっている。友田輝は聞きなれない名前だと思うが、「隠密剣士」で敵忍者の頭目役で出ていたのを見たことがあるくらいだ。そこで友田輝について調べてみると、59年に大映からデビューし、60年には「拳銃の掟」で主演に抜擢されている。その時の敵役は根上淳や高松英郎である。同年の「犯罪6号地」でも刑事役で高松と共演、しかし翌61年からは脇役にまわっており、62年には大映京都に行っていた時期があるようで、その時に「隠密剣士」にも出演したのかもしれない。ちなみに「黒いパトカー」の監督は「隠密剣士」でも監督を務めた船床定男である。この62年に大映を退社して、そのまま姿を消 してしまったようだ。つまり約3年のみ活躍した役者なのである。そのため成年月日や出身地などが不明らしいが、俳優座で山崎努や山本耕一の同期だったらしいので、そのへんの年齢(35年、36年生まれ)だったと思われる。しかし、主役まで務めた役者がこれほど、あっさり消えるとは彼の身に何が起こったのであろうか。
虎の子作戦(テレビ版)・ミスターシャネル
高松英郎の出演した60年代初期のテレビドラマに、「虎の子作戦」(63年)というのがあった。これは以前ここで取り上げた映画のテレビ版である。というより、このドラマが好評だったので映画化されたとうのが正しいのかも知れない。これは五人の潜入捜査官のお話だが、映画版のキャストをおさらいすると、宍戸錠、小高雄二、山田吾一、垂水悟郎、桂小金治だったが、テレビ版の方は高松英郎、天知茂、若原雅夫、そしておそらく遠藤太津朗、河上一夫という面々だと思われる。と思われると書いたのは、このテレビ版についての資料が皆無だからである。テレビドラマデータベースに並んでいる出演者の名前をレギュラーだと勝手に判断したので、当然違うかもしれない。若原雅夫は戦前か ら新興キネマなどで活躍していたベテラン、遠藤太津朗は「銭型平次」の万七役がお馴染み、河上一夫は詳しくはわからないが「仮面の忍者赤影」でゲスト出演していたのを見たことがある。
当然、誰がどの役に対応しているのかもわからないのだが、天知茂は映画で小高雄二が演じたシャネルを演じていたことだけは判明している。天知のこの役は好評だったようで、このドラマの続編ともいえる「ミスターシャネル」(65年)という番組が作られたほどである。出演は天知茂、若原雅夫に加えて、二本柳寛、人見きよし、富士真奈美、水島道太郎、そして新東宝時代よく共演していた三原葉子などが出ていたようだ。個人的にはどちらも全く初耳の番組であった。
黒の試走車
植木等が亡くなった。ネット上の書き込みなどを見るとこれでクレージーキャッツで存命なのは谷啓だけ?などというのが結構見られたが、実際は谷啓(75歳)の他にも、犬塚弘(78歳)、桜井センリ(83歳)も存命である。今、世間では夏川純の年齢サバよみが話題になっているが、植木等も当初は1歳だけ若く発表していた。しかし、桜井センリは6歳、ドリフターズの荒井注、高木ブーも6歳サバよんでいたのだから、3歳くらいなら可愛いものである。 で、今回はクレージーの話題かというと、そういうわけではない(他にもやる人が多いだろうし)。
ここ一月の間に有名俳優が次々と亡くなっている。鈴木ヒロミツ、高松英郎、船越英二といった面々だ。高松と船越は同じ大映現代劇部門の出身である。船越は大映ニューフェースの2期生、高松は5期生である。しかし、この二人の共演というのは意外と少ない。詳しく調べてはいないが、パッと出てくるのが「黒の試走車」(62年)くらいである。原作は梶山季之の小説で、実際に読んだことはないが、タイトルだけなら小学生の頃から知っていたと記憶している。自動車メーカーを舞台にした産業スパイ物だが、主演は田宮二郎で、スパイを調査する役で、その上司役が高松英郎、情報を流したつまりスパイが船越英二と、さすがにみんな重要な役どころである。しかし大映のスターといえば、市川雷蔵、勝新太郎、根上淳、菅原謙次、川口浩そしてここに挙げた田宮、船越、高松とみんな故人となってしまった。とりあえず合掌。
高校さすらい派
もう一つモリケン映画を、ということで今回は「高校さすらい派」(70年)である。やはり森田健作といえばガクランのイメージが強いが、今まで紹介した映画では不思議とガクラン姿はなかった。まあ20歳は過ぎていたので当然といえば当然だが、この作品ではお馴染みともいえる高校生の役だ。で彼の同級生を演じるのが当時27歳の山本紀彦、当時24歳の武原英子である。まあ全員若く見えるタイプではあるが、武原英子などはこの翌年には以前取り上げた「クラスメート」では教師を演じているのだ。まあ以前から書いている通り、この時代は20代後半の高校生など(もちろん役者の実年齢の話)珍しくはなかったのである。この作品で武原は血友病という設定がある。「加山雄三のブラックジャック」では、血友病を扱った回が欠番扱いになっているようだが、表現方法によっては封印されてしまうこともある設定なのだ。ビデオ化もされているようなので、その点は大丈夫なのだろう。他の出演者は吉沢京子、佐藤友美、神田隆、そして内田朝雄、佐野浅夫のアサオコンビはこの高校の校長、教頭を演じている。
この映画の原作は滝沢解、芳谷圭児による漫画で、もちろん見たことはないが少年サンデーに連載されていたらしい。芳谷といえば「高校生無頼控」とか「ぶれいボーイ」とか「カニバケツ」とか青年誌マンガのイメージが強いが、「ワル」とか「男組」とかの路線であろうか、まあ少年誌に青年向けの作品が載っていても珍しくは無かった。単行本を調べてみると「高校さすらい派・フジオプロ作品集」となっている。芳谷はフジオプロの出身だったのだろうか。いずれにしろレアな物であることは間違いない。