珍豪ムチャ兵衛 | お宝映画・番組私的見聞録

珍豪ムチャ兵衛

「丸出だめ夫」「ロボタン」とくれば、もう一つ森田拳次の作品をというわけで「珍豪ムチャ兵衛」(71年)である。かなりマイナーな作品であり、自分も見た記憶はないが、このアニメが名前を残しているポイントが一つだけある。事実上最後のモノクロアニメという点だ。70年代に入ると、ほぼすべての番組はカラー化されており、そんな時に突如放映されたモノクロ作品だったのだ。これには事情があり、68年に制作されていたのだが、既にカラー化の波が押し寄せており、3年間オクラ入りすることになってしまったのである(「ウメ星デンカ」とか「どろろ」とか69年にもモノクロアニメはあったのだけれども)。で初放映も月~金の帯でされたという、まあひどい扱いの作品だったのだ。まあ当時我が家はまだ白黒テレビだったので関係なかったのだけれども。声の出演はバカボンのパパでお馴染みの雨森雅司、初代オバQの曽我町子、おしおきだべ~の滝口順平などである。

特に書くことなくなったので、作者の森田拳次について触れておく。当時快調にヒット作を飛ばしていた森田だが、68年の突如渡米する。一コマ漫画家への転身を考えており、その修行のためであった。そんなこともあり、これ以降の少年漫画家としての森田の作品は単行本化されていないのではないだろうか。71年に帰国したが、すぐに転身したわけではなく、少年キングに「さむらいカポネ」(73年)「3の3の3」(74年)などを連載している。(渡米中だった70年には少年ジャンプに「ほらふき一代」という作品を連載している。ちなみに本宮ひろ志の作品は「大ぼら一代」である。)一緒に連載されていた作品の顔ぶれを見ると読んだことがあるかもしれないのだが、全く印象にない。その後作品を目にすることもなく、もう消えてしまった漫画家とばかり思っていたのだが、ちゃんと一コマ漫画家として活躍していたのである。私が知らないだけであった。05年には日本漫画家協会賞で大賞を受賞しており、りっぱに現役なのであった。(この時同時受賞したのが吾妻ひでおの「失踪日記」である。)一コマ漫画の単行本も出ているようだが、まだ目にしたことはない。まあ結果的に転身は成功したと言っていいのだろう。