朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~ -158ページ目

朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

 

「愛の反対は憎しみではない、無関心だ」

 

各部屋にはドアがなく、鍵を閉めることができない。

ただ薄いカーテンで仕切られているだけ。

互いの信頼関係で成り立つ共同生活。

 

「夜這いし放題よ」と耳打ちされた、訳ありの男女が住むシェアハウスでの人間模様が錯綜する物語。

 

でも、ずっとここに住み続けることができない。

 

233P

紫織はいった。

「人生なんて、そんな簡単にリセットできるもんじゃない。過去は、いつまで付いて回る。…罪を償うことはできても、過ちを犯した過去を消すことはできない」

 

法律上には罪を償っても世間の目は冷たいものなのかと思う。

 

罪を償ったあとその事情を知った上で、真剣に反省して更生したい人を受け入れることができる世の中があれば。そんな社会があればとよいのではないかと。

 

 

 

 

144P

この店の名前、「プラージュ」とは、フランス語で「海辺」という意味だ。

海と陸の境界。それは、常に揺らいでいる。

 

 

 

249P

「プラージュ」はフランス語で「海辺」。海と陸との境界線。曖昧に揺らぎ続ける。人と人との接点。男と女、善と悪、真実と嘘、愛と憎しみ。そして、罪と赦し。

私も、自分で気がついていた。

波打ち際に築いた城壁は、いつのまにか少しずつ、さざ波に浸食され始めていた。

 

海と陸との境界は、常い揺らいでいるから安定はしていない!

 

 

 

 <目次>

1 貴生の事情

2 記者の眼差

3 貴生の新居

4 美羽の居所

5 貴生の朝食

6 記者の追跡

7 貴生の就活

8 紫織の気持ち

9 貴生の挫折

10 記者の潜入

11 貴生の疑念

12 通彦の傷痕

13 貴生の手先

14 潤子の休息

15 貴生の困惑

16 美羽の迷走

17 貴生の空転

18 記者の葛藤

19 貴生の焦り

20 友樹の痛恨

21 貴生の死角

22 潤子の祈り

23 貴生の帰還

 

 

 

1969年東京都生まれ。「妖の華」でムー伝奇ノベル大賞優秀賞を受賞しデビュー。「アクセス」でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞。ほかの著書に「ストロベリーナイト」など。

 

 

 

 

 

357P

なんども繰り返したような夜が、また一つ、過ぎようとしている。

同じ夜は一つもないけれど、どの夜も、同じように愛おしい。

自分たちはみな、それぞれ罪を犯したけれども、一つとして同じ罪はないし、一人ひとり、みな違う人間だった。

明日は、また仕事がある。

二度と繰り返すことのない一日が、自分を待っている。

そんなことを最近、貴生は、とても尊いと感じるようになった。

例えば、服について。

具体的にはクローゼットのなかにある服について考えてみたい。

「物の豊かさよりも心の豊かさを」

どうすれば快適な暮らしが得られるのか。

さらにそれが続けられるのか。

心と体が満足できるような豊かさを……。

常に求め続けて目配せして。

 

 

「モノをなくすと新しいモノが入ってくる。」

分かっている人には、こう言っている意味がわかるのです。

 

残念ながら、ぼくの修業が足りずにまだその域には達していないから。

 

単にモノだけではなく、知識や経験など諸々の付随する事柄も入ってきますから。

 

 

 

結果的には、優雅で快適な空間と時間が生まれてくるとそう思うのです。

 

 

 

11P

本書では、私の失敗の経験と、服にたずさわる人たちに学んだ知識をもとに、服に振り回されず、長く楽しく服と付き合うノウハウをまとめました。

「たくさんあること=豊かなこと」ではありません。

持っている服を最大限に生かし、着ることと、暮らしを楽しむために、あなたのクローゼットも「引き算」してみませんか?

 

 

39P

大切なのは、

「服が多い少ないにかかわらず、そのすべてを活用し、きちんと管理ができていること」

そして、

「服が多い少ないにかかわらず、必要な服がきちんとあって、着ていく服に困らないこと」。

それができる人こそ、おしゃれに楽しめる人ではないでしょうか。

 

 

191P

服は暮らしと人生を楽しくしてくれる、大切な仲間です。住み心地のいいクローゼットを用意してあげて、一緒に気持ちよく暮らしていきましょう。

今、着ている服を、いつか思い出になる、大切な1着とするために―。

 

 

 <目次>

はじめに

1 クローゼットが「着られない服」だらけになる理由

2 ライフスタイルを知れば「必要な服」がわかる

3 クローゼットを引き算する

4 本当に「必要な服」の選び方

5 大好きな服と長く付き合うために

6 家族のクローゼットの片付け方

おわりに

 

 

 

 

 

1965年生まれ。出版社勤務を経てフリーランスに。“シンプルで質の高い暮らし”を軸に、幅広い執筆を行っている。二児の母親、主婦としてていねいに毎日を送りながら、ロングセラーとなる著書を数多く刊行。総合情報サイトAll About「シンプルライフ」のガイドとしても活躍中

著書に『持たない暮らし』『買わない習慣』(アスペクト)など多数。

最近、ものごとを少しずつ忘れがちになってきたことにじつは気づいています。

(動きが緩慢になってきたことや音が聞こえづらくなってきたこともあるかも()

 

だからできるだけ手帳などの紙に必要な用事を書くようにしています。

 

そうすると、頭では忘れていてもそれを見たら、はっ!と思い出すことができますね。

(見ても思い出せないこともありますが()

 

 

だんだんと少しずつ「老い」を実感する日々が増えてきました。

 

柴門ふみさんの旦那の弘兼さんも同じような状況下で、こんな気持ちになってきているのことを知って少し安心しました。

 

 

 

歳を重ねてくるとだれにでも「老い」になることを教えてくれた微笑ましく優しい本です。

 

 

ドラマとなったあの「東京ラブストーリー」で有名な柴門ふみさんとぼくとはある意味同世代かな!

 

 

彼女が書いた日々のささやかな題材や客観的なものごとの視点に共感することが多くてうれしい。

 

「老い」が愛おしくなるエッセイ集です。

 

 

 

 <目次>

一 老いては夫を従え

二 アジサイとアサガオ

三 青春返りの、ススメ

四 アナログ脱却のタイミング

五 身体に優しい服をもとめて

六 気持だけ少年・少女

ほか

 

 

 

1957年生まれ。徳島県出身。漫画家、エッセイスト。代表作に「あすなろ白書」「東京ラブストーリー」「同窓生」など。また、恋愛のエキスパートとして女性向けのエッセイ著書も多数。

 

 

 

 

9P

「私もそうよ。一日中掃除してるわ。これってつまり、歳とって我儘になったからなのよ」

「はあ?我儘?」

掃除することのどこが我儘なのかと私は聞いた。すると、

「若い頃って、多少雑然とした部屋でも我慢できたじゃない。その我慢ができなくなったってことが、ワガママなのよ」

彼女は言う。辛抱できずに、この世を<我が>の思うままにしたいと欲することが我儘なのだ、と。

 

 

 

 

 

27P

女性は人生の段階として、幼児期→思春(反抗)期→結婚・出産→道徳期→おばあさん(自分のことしか関心がない)となるような気がする。

要するに、一人の人間がずっと同じ人格であり続けるなんて不可能だ、ということなのだ。人は年代と共に、考え方も価値観も変化する。成長もあれば後退もある。

 

 

 

 

192P

しかし、メニューを決める段階で、

「お姑(かあ)さんは。何にしますか?」

息子の奥さんが私に聞いた。その時、戸惑いつつも嬉しい気分になった私が詠んだ一句。

お姑さん呼ぶ女あり星月夜

十年後に私がこの句を読み返したとき、入籍の夜の食事会をありありと思い出すことだろう。私は俳句に求めるのは、つまりこういうことなのだ。短い言葉に、瞬間の情景と気持ちを閉じ込めることが上手にできればそれでいい。

斎藤茂太さんは、ぼくのメンターともいうべき人のひとり。

モタさんの言葉は、こころにまっすぐずーんと響いてやってきます。

悩みの解決の道筋を示してくれます。

モタさんの言葉から、ヒントが得られました。

 

 

これからの将来どうしていけばよいかというとき。

人生の先輩たちが歩んだ道を辿れば歩きやすいものと考えます。

そうしたら、まずは彼らが書いた処世術を読めばよいのかと。

それを真似するのか、独自性で歩むのかなど、どうしていくのかは、最終的には自分で判断したい。

26P

圧倒的な力を持つ老いや死に対するわれわれのこころの準備を「悟り」という。悟りとは、長い修行の果てにたどり着く境地であろうが、「悟り」とまでいかなくても、日常生活の中で身辺整理によって、なるべく未練を残さない、こころ安らかな人生の幕引きを迎えられるように生きるということでもある。

 

 

総じて今まではテイク&テイクのように、人からいただくほうが多かったのです。

これからは、ギブ&ギブのようにぼくができることで人に何かしてあげられるひとになりたいなと。

61P

今度は自分が困っている若い人の役に立つ側に回るという気持ちといってもいいだろう。

そういうもろもろのものやこころの借りを返す側に回るということである。

若いうちは人生上の貸し借りがあってもいいと思う。だが、人生の折り返し点を過ぎたら、自分があげる側になってみてはどうかということである。

 

 

「一生勉強、終身現役でいたい」

だからモタさんの生き方を参考にしているのです。

100P

自分一人で生きているという思いよりも、こんな自分でも誰かの役に立っていると思うほうが、少しは気が楽になるものだ。

できれば、この気持ちを持ち続けたまま、あの世とやらに旅立ちたいと思う。それが「生涯現役」ということではないだろうか。

生きている間は、どんなに小さなことでも誰かのためになっているという気持ちを忘れないことが、生涯現役ということだ。

 

 

定年後などの仕事を辞めた後に、いきなり世の中から退場するのではなく、

趣味や仕事で関わっていたほうが健康で長生きに役立つことがわかります。

世の中に何かしら必要とされて役に立つことが生きがいにもつながります。

188P

大切なのは、何らかの方法で世の中と関わっていることだ。その関わりの中でこそ、自分はまだ必要とされている。見捨てられていないという実感を得られるものである。

誰かの何かの役に立つというのは、自分が世の中で必要とされている存在なのだということを確認する作業でもある。

 

 

 <目次>

プロローグ 人生に小さな「ケジメ」をつけてゆく

第1章 なぜ、「身辺整理」が必要か

第2章 こころの「ケジメ」はこうつける

第3章 「そのとき」を受け入れるために

第4章 晩年の生き方

エピローグ あの世にいくときもユーモアを

 

 

精神神経科・斎藤病院名誉院長として、悩める現代人の「心の安らぎコンサルタント」として、また、日本旅行作家協会会長、日本ペンクラブ名誉会長など多方面で活躍。2006年11月逝去

 

斎藤茂太さん―モタさんには、日々の疑問や悩みがあったときなど。

その答えのヒントをときどき問い合わせています。

 

 

少欲知足 欲を少なくして足ることを知る」すこしのもので満足すること。「少欲」は持っていないものをたくさん求めないこと。 「知足」は足るを知るという意味で、持っているもので満足すること。「欲少なくして足るを知る」とも読む。『大般涅槃経』出典

 

言葉として知っているけれども実践は難しい!

食欲、睡眠欲、物欲などいろいろな欲はあるものです。

特にお金はあっても困らないしもっともっと欲しいと思うのがふつうなのかな。

今あるもので満足することができないものかと思います。

 

例えば、私服に関しては―これ以上は要らないのではないかと。

週間の仕事着があれば、普段は私服を着ることが少ないから。

お休みぐらいにしか着ることがないので。

ある程度の服があればそれでよいではないかと思うときに。

そう思ったら、こんまりさん風に「ときめく」服だけを残して断捨離しましょう。

 

28P「少欲知足」

多くのことを望まず、いま自分の手にあるものをうまく利用して、自分が満足できるように工夫してみよう……そう考えて、実践してみてほしいのだ。

 

 

いつまでも学ぶ姿勢が前向きに生きることにつながります。

自分と方向性が似ている年が離れた友人ができて愉しく会話ができます。

今までわからなかったことや知らないことを学習することでワクワク、ドキドキする毎日を過ごすことができます。

さりげない生活のふとした目につくものから少しでも学ぼうとする意欲が沸いてきます。

こうしたことから脳や腸から快楽物質のセロトニンがたくさん分泌してきているように感じています。

 

 

84P

いつまでも若々しくいるためのヒケツのひとつは「学ぶ姿勢」を失わないことだ。

 

 

 

例えば、ある出来事が起きたときに、それは起きなければよかったと思うのか、

これ以上の悪いことが起きなくてよかったと考えるのか。

物事の捉え方のひとつで結果が違うということか。

 

 

157P「幸福とはなんなのか」

ひとついえることは、幸福とは自分でつくり出すものということだろう。人が幸せだと感じることが、必ずしも自分の幸せ感につながるとはかぎらない。

 

 

何かを「捨てる」ことによって、思わぬものが「入ってくる」という。

こういう境地には、まだ至っていませんが。

いつかなにかその意味がわかるようなひとになりたいものです。

 

190P

むしろ「得る」ことの幸せよりも、もう身についてしまった不要なものを「捨てる」ことで実現する幸せのほうが、大きいようにも思う。

心の中のガラクタを捨ててしまえば、身も心も軽くなり、もっと安らかに生きられるのではないか?その捨てる方法、その効果について考えたのは本書であるが、ぜひあなたの人生にプラスに作用してほしいものだ。

また、何かを「捨てる」ことによって、思わぬものが「入ってくる」ことも、人生にはよくある。そこからまた、新しい人生が動き出すのではないか、と思うのだ。

 

 <目次>

まえがき

第1章 「前向きな自分」になるために捨てる!

第2章 いい人間関係のために捨てるもの

第3章 「よき人生」のために何を捨てるか

第4章 「捨てる人」が大きく伸びる

第5章 何を捨てると、「日々安らか」か

第6章 「健康である」ために捨てるもの

第7章 「うつ」を避けるために捨てるもの

第8章 「自信を持つ」ために何を捨てるか

 

 

 

精神神経科・斎藤病院名誉院長として、悩める現代人の「心の安らぎコンサルタント」として、また、日本旅行作家協会会長、日本ペンクラブ名誉会員など多方面で活躍

 

ひとの一生って、はかないものだとは気づいているのだが。

 

例えば、この時代に生まれて生きている意味って。

例えば、自分という人物が足跡を残していくことで、過去から現在そして未来へ、DNAを通してバトンを渡し続けていく意味。

例えば、太く短い人生と長く生きることができるひととの違いはなになの。

 

それらの答えはなかなか出てこない。

 

明るい陽の当たる場所だけではなく、暗い日陰にも目を向けられることが大切。

当たり前の普通に過ごせる毎日が、実はとても幸せなこと。

ひとにとって、どうしても避けられない、避けてはいけないことは。

それは「死」。

生と死は表裏一体。

さっきまで生きていた人があの世に旅立ってしまうことは、小さいころからたくさんの死に接してきたからわかること。

 

毎日、死に向かって、少しずつ歩んでいるといっても過言じゃない。

「その日」に向かって、立ち止まって考えることが、ひとつの答えだと教えていただいた。

身近にある「死」について深く考えさせられる。

 

279P

「終末医療にかかわって、いつも思うんです。『その日』を見つめて最後の日々を過ごすひとは、じつは幸せなのかもしれない、って。自分の生きてきた意味や、死んでいく意味について、ちゃんと考えることができますよね、あとにのこされるひとのほうも、そうじゃないですか?」

「でも、どんなに考えても答えは出ないんですけどね」

(中略)

「考えることが答えなんだと、わたしは思ってます。死んでいくひとにとっても、あとに残されるひとにとっても」

 

交通事故などの突然の死では考える余裕がない。

頭や環境や周りの整理ができていない。

その点では、事前に準備ができるガンのような病気のほうが良いように思えるが。

 

実際には、その立場になってみないと、本当の意味がわからない。

相手の立場になって想像する・考えることはできる。

自分にとって『その日』を迎える前に、やりたいことややるべきことをしていきたい。

また、家族が『その日』を迎えるときまでに自分がやれることがないか、相手に伝えることがないか、お願いできることがないか等々。

 

自分の生きてきた意味や死んでいく意味について考えるために『その日』があることは幸せなことであろうか。

 

後で悔やまないためにまずは心の準備から。

 

 

 

ガンを取り巻く人の死を扱った短編集

 

すべての話が最後には繋がったので、とてもうれしい。

 

 

妻からのたった一言の手紙。

「忘れてもいいよ。」

ぼくならば、決して忘れることができない。

 

 

 <目次>

ひこうき雲   

朝日のあたる家

潮騒  

ヒア・カムズ・ザ・サン

その日のまえに  

その日  

その日のあとで

 

 

 

昭和38(1963)年、岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経て、フリーライターに。91年『ビフォア・ラン』で作家デビュー。99年『ナイフ』で第14回坪田譲治文学賞、『エイジ』で第12回山本周五郎賞を受賞。2001年『ビタミンF』で第124回直木賞受賞。ルポルタージュ、時評、評論など小説以外のジャンルでの執筆活動も高い評価を受けている

 

 

 

23P

うまく言葉にして伝えられないことは、だからこそずっと手つかずのまま、思い出話の中ですり減らされずに、記憶にくっきりと残っているものなのかもしれない。

 

 

 

 

179P

あとになってから気づく。あとにならなければわからないことが、たくさんある。

各駅停車しか停まらない相模新町での暮らしが、好きだったとは言わない。けれど、かけがえのないたいせつなものだったのだ。とは認める。もう取り戻すことができなってなってから、やっとわかる。

 

 

 

215-216P

日常というのは強いものだと、和美が病気になってから知った。毎日の暮らしというのは、悲しさや悔しさを通り越して、あきれてしまうほどあたりまえのものなのだと―うまい言い方が見つからないまま、思い知らされた。

「ラスト20ページ、世界は一変する」という帯にひかれて手に取りました。

 

ほんとうに「聖母」なの!?

終わりまでを読まないと、その意味が分からないようです。」

 

母親は、子どもに対し愛情が深くどこまでも一途であろうとするものなのか。

子どもにどこまでも愚かになれるのものではないような気がするのだが……。

 

 

「薫」と「薫を溺愛する保奈美」、「事件を捜査している坂口刑事と女性刑事の谷崎」、「高校生の真琴」

それぞれのつながりには、そういうことだったのか!と驚かされます。

 

すでに読んだところに戻って確認しながら読み返したくなる衝動に駆られました。

 

やられたな感あり。

 

なかなか面白いイヤミス。

 

 

 

早稲田大学第一文学部卒。ロヨラ・メリマウント大学院にて、映画・TV製作修士号取得。「雪の花」で第3回Yahoo!JAPAN文学賞を受賞。他の著書に「暗黒女子」など

 

 

 

 

5P

暖かな布団の中で、薫を抱きしめる。

両手に力を籠めれば、このまま折れてしまいそうなほど、まだ頼りない幼い体。薄いまぶたには幾筋もの血管が青く透けて見える。血色のよい頬。顔を覆う細い産毛。少し開いた唇の間から、小さな歯がのぞいている。そのどれもが、保奈美にとっては愛おしい。胸が、苦しくなるほど。

保奈美は四十六歳。今三歳の薫が生まれたのは、四十三歳の時だった。まさかその年齢で、薫を胸に抱くことになるとは思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

262P

母に抱かれた薫が、真琴に手を伸ばしてくる。

「いいよ、おいで」

真琴は、両腕で薫を抱きとめた。愛しい重みが、ここにある。

二人の母親は、薫を真ん中にして、まるで合わせ鏡のように、慈愛に満ちた神々しい微笑を浮かべて向かい合っていた。

玄関先で、チャイムが鳴る。

全てから解放された真琴はとても神聖な気持ちで、薫を抱きしめたまま、客人を迎えるためにドアへ向かった。

「少年A」

重たい澱のような空気が漂っています。

こころの準備が必要かと。

とても他人ごとには思えません。

子を持つ親ならば読みながら悩むべきかもしれません。

問題に向き合う勇気が問われるのです。

 

離婚して別れた妻が引き取った息子の翼が死体遺棄容疑で逮捕されます。

主人公の吉永が関わって、彼の生活が目まぐるしく変化していきます。

 

自分がこの加害者の立場だったらどうするだろうか!

また反対に被害者の立場だったらどうするだろうか。

 

そう逡巡していると、あまりにも前に読み進めることができません。

途中でため息をついて、本を読む手を止めるほどに重い描写がありました。

ぼくは、仕方がなく途中で読むのを止めてしまいましたが……。

 

連れて行ってくれる世界には、面白くて楽しいところばかりではありません。

 

暗く重たい世界もあります。

 

そのときに何を考えるのか、どのように行動していくべきかなどと。

 

いろいろと想定すべきよい機会を得たと考えればよいと僕は思うのです。

 

 

 

◎1969年兵庫県明石市生まれ。駒澤大学高等学校卒業。2005年「天使のナイフ」で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。ほかの著書に『アノニマス・コール』『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』などの夏目シリーズ、『友罪』、『神の子』などがある。

 

 

 

34P

「別に警察のかたからひどいことをされているなどとは考えていません。ただ、あの子が今どんな様子でいるのかがどうしても知りたいんです」

翼の表情から、これは現実ではないと思わせてくれる何かを見つけ出したい一心だった。

ああ、これもドラマ化されてしまいました。

「あなたは、常々言っていました。字とは、人生そのものであると。」

もしこんな代書屋があったならば。

ぼくはなにを彼女に頼むだろうか。

依頼人に成り代わって、送付先へ気持ちを忖度して手紙を書くというお仕事です。

 

ラブレター、絶縁状、天国からの手紙……。

鎌倉で代書屋を営む鳩子の元には、今日も風変わりな依頼が舞い込みます。

 

伝えられなかった大切な人への想いなどを依頼人に代わって書いて相手に届けます。

 

 

 

 <目次>

  

   65

   131

   197

 

 

 

 

作家。デビュー作『食堂かたつむり』が、大ベストセラーとなる。同書は、2011年にイタリアのバンカレッラ賞、2013年にフランスのウジェニー・ブラジエ小説賞を受賞

ほかの著書に「サーカスの夜に」、エッセイに「これだけで、幸せ」など

 

 

 

19P

当時のことを思い出しながら、居住まいをただして墨を磨り始めた。

もう、硯から水がこぼれることもない。墨を寝かして磨る癖も、なくなった。

墨を磨る作業には鎮静効果があるというけれど、私は久しぶりに、意識が薄れていくような心地よい感覚を体全体で味わっていた。

眠くなるのではない。自分の意識が、どこか深くて暗くて底のない場所へ、ゆっくりと後ろ向きに埋没していくのだ。あと一歩で、恍惚の境地に達しそうだった。

 

 

134P

今日だけは、誰のためでもなく、自分自身の文字を書くのだ。代書仕事は、いろいろな人の心や体になりきって文字を綴る。自分で自分をほめるのもなんだけど、様々な人の字に憑依するのも、上手にできるようになった。けれど、ふと立ち止まって考えると、私は私自身の文字をまだ知らない。まるで私の体を流れる血のように、私そのものであるような、どこを切っても私のDNAがあふれ出すような、そういう自分の分身のような文字には出会えていなかった。

先代には、確かにそれがあったと思う。私が台所に貼られた先代の書き残した標語を剥がせないのは、そこに先代がいるからだ。文字の軌跡には、いまだに先代の息吹が刻まれている。

出演者たちの陰陽と喜怒哀楽を巧みに霧のなかに包みこませてくれています。

 

桜木さんが紡ぎだすちょっと暗くてもの重苦しく悲しい書きぶりが好き。

 

三姉妹の力強さと男たちとの駆け引きにハートが掴まれます。

 

この情景のなかに自分が入り込んでしまいます。

 

魅惑的な女性に出会ったときのように、読後も三姉妹の行く末が気になって仕方がありません。

 

 

◎1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第八二回オール讀物新人賞を受賞。07年、初の短編集『氷平線』が新聞書評等で絶賛される。13年、『LOVE LESS』で第一九回島清恋愛文学賞を受賞。同年『ホテルローヤル』で第一四九回直木三十五賞を受賞

 

 

8P

男たちが海の上や陸で繰り広げられる世界の裏話のほとんどは花街に集まってくる。いいところばかり吸い尽くして出涸らしを捨てる人間。出涸らしを拾い集めてさらに絞り尽くす人間、土地の男はさまざまだ。捨てるばかりになった出涸らしを畳に撒いて埃を吸わせる者がでてくるころには、茶葉も自分の存在理由に満足するという「不思議なおまけ」がついてくる。花街の女は、そんな人間たちの境目をいっとき曖昧にするのが仕事だった。

「おふたりとも、珠生の名前など忘れてしまったかと思いました」珠生が極上のさわりを披露すると、三浦が上機嫌で厭味を返す。

「まだけつの青い娘っこのくせに、いったいどこでそんな節回しを覚えたんだ」

 

 

 

143P

自分はなぜこの街から出なかったのか。珠生は痺れる頭で考えた末、近くにいなくては遠さも確認できないほど薄い縁だったことに気づいた。この不条理は、生まれ育った街に流れる「血」であった。それ以上でも以下でもない。街はそれぞれひとつの臓器のように、智鶴や相羽、珠生をその身に捉えて放さないのだ。

なんの縁か、珠生は自分がたまたま相羽が妻として据える気になった女だったことも、海や空や土といったものと同じ、自然のなりゆきに思えてくる。代わりはいくらでもいるのだろう。そう思うと、なにかしら気が楽になった。

 

 

258P

女房という言葉をためらうのが、負い目なのか遠慮なのかわからない。

珠生はたとう紙に包んだ着物をスミの方へとずらし、不意の納得に心臓を掴まれた。

自分は惚れた男がどんどん大きくなってゆくのを見ているのがただ嬉しかったのだ。男の横に、誰がいてもよかった。うまく騙してくれさえすればいい。

言葉にならぬ安堵も抱え腕前に両手をついた。

「相羽のこと、よろしく頼みます」

珠生には、海峡の要塞で果たすべき役目があった。

スミの目からほろほろと大粒の涙がこぼれ落ちた。拭うこともせず、珠生を見上げている。珠生はひとつ頷いた。同時に、産む苦しみと産めぬ苦しみにどんな違いがあるのかを未だ正体を見せようとしない神、あるいは悪魔に問うた。