【No.352】その日のまえに 重松清 文藝春秋(2005/08) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

ひとの一生って、はかないものだとは気づいているのだが。

 

例えば、この時代に生まれて生きている意味って。

例えば、自分という人物が足跡を残していくことで、過去から現在そして未来へ、DNAを通してバトンを渡し続けていく意味。

例えば、太く短い人生と長く生きることができるひととの違いはなになの。

 

それらの答えはなかなか出てこない。

 

明るい陽の当たる場所だけではなく、暗い日陰にも目を向けられることが大切。

当たり前の普通に過ごせる毎日が、実はとても幸せなこと。

ひとにとって、どうしても避けられない、避けてはいけないことは。

それは「死」。

生と死は表裏一体。

さっきまで生きていた人があの世に旅立ってしまうことは、小さいころからたくさんの死に接してきたからわかること。

 

毎日、死に向かって、少しずつ歩んでいるといっても過言じゃない。

「その日」に向かって、立ち止まって考えることが、ひとつの答えだと教えていただいた。

身近にある「死」について深く考えさせられる。

 

279P

「終末医療にかかわって、いつも思うんです。『その日』を見つめて最後の日々を過ごすひとは、じつは幸せなのかもしれない、って。自分の生きてきた意味や、死んでいく意味について、ちゃんと考えることができますよね、あとにのこされるひとのほうも、そうじゃないですか?」

「でも、どんなに考えても答えは出ないんですけどね」

(中略)

「考えることが答えなんだと、わたしは思ってます。死んでいくひとにとっても、あとに残されるひとにとっても」

 

交通事故などの突然の死では考える余裕がない。

頭や環境や周りの整理ができていない。

その点では、事前に準備ができるガンのような病気のほうが良いように思えるが。

 

実際には、その立場になってみないと、本当の意味がわからない。

相手の立場になって想像する・考えることはできる。

自分にとって『その日』を迎える前に、やりたいことややるべきことをしていきたい。

また、家族が『その日』を迎えるときまでに自分がやれることがないか、相手に伝えることがないか、お願いできることがないか等々。

 

自分の生きてきた意味や死んでいく意味について考えるために『その日』があることは幸せなことであろうか。

 

後で悔やまないためにまずは心の準備から。

 

 

 

ガンを取り巻く人の死を扱った短編集

 

すべての話が最後には繋がったので、とてもうれしい。

 

 

妻からのたった一言の手紙。

「忘れてもいいよ。」

ぼくならば、決して忘れることができない。

 

 

 <目次>

ひこうき雲   

朝日のあたる家

潮騒  

ヒア・カムズ・ザ・サン

その日のまえに  

その日  

その日のあとで

 

 

 

昭和38(1963)年、岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経て、フリーライターに。91年『ビフォア・ラン』で作家デビュー。99年『ナイフ』で第14回坪田譲治文学賞、『エイジ』で第12回山本周五郎賞を受賞。2001年『ビタミンF』で第124回直木賞受賞。ルポルタージュ、時評、評論など小説以外のジャンルでの執筆活動も高い評価を受けている

 

 

 

23P

うまく言葉にして伝えられないことは、だからこそずっと手つかずのまま、思い出話の中ですり減らされずに、記憶にくっきりと残っているものなのかもしれない。

 

 

 

 

179P

あとになってから気づく。あとにならなければわからないことが、たくさんある。

各駅停車しか停まらない相模新町での暮らしが、好きだったとは言わない。けれど、かけがえのないたいせつなものだったのだ。とは認める。もう取り戻すことができなってなってから、やっとわかる。

 

 

 

215-216P

日常というのは強いものだと、和美が病気になってから知った。毎日の暮らしというのは、悲しさや悔しさを通り越して、あきれてしまうほどあたりまえのものなのだと―うまい言い方が見つからないまま、思い知らされた。