【No.351】聖母 秋吉理香子 双葉社(2015/09) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

「ラスト20ページ、世界は一変する」という帯にひかれて手に取りました。

 

ほんとうに「聖母」なの!?

終わりまでを読まないと、その意味が分からないようです。」

 

母親は、子どもに対し愛情が深くどこまでも一途であろうとするものなのか。

子どもにどこまでも愚かになれるのものではないような気がするのだが……。

 

 

「薫」と「薫を溺愛する保奈美」、「事件を捜査している坂口刑事と女性刑事の谷崎」、「高校生の真琴」

それぞれのつながりには、そういうことだったのか!と驚かされます。

 

すでに読んだところに戻って確認しながら読み返したくなる衝動に駆られました。

 

やられたな感あり。

 

なかなか面白いイヤミス。

 

 

 

早稲田大学第一文学部卒。ロヨラ・メリマウント大学院にて、映画・TV製作修士号取得。「雪の花」で第3回Yahoo!JAPAN文学賞を受賞。他の著書に「暗黒女子」など

 

 

 

 

5P

暖かな布団の中で、薫を抱きしめる。

両手に力を籠めれば、このまま折れてしまいそうなほど、まだ頼りない幼い体。薄いまぶたには幾筋もの血管が青く透けて見える。血色のよい頬。顔を覆う細い産毛。少し開いた唇の間から、小さな歯がのぞいている。そのどれもが、保奈美にとっては愛おしい。胸が、苦しくなるほど。

保奈美は四十六歳。今三歳の薫が生まれたのは、四十三歳の時だった。まさかその年齢で、薫を胸に抱くことになるとは思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

262P

母に抱かれた薫が、真琴に手を伸ばしてくる。

「いいよ、おいで」

真琴は、両腕で薫を抱きとめた。愛しい重みが、ここにある。

二人の母親は、薫を真ん中にして、まるで合わせ鏡のように、慈愛に満ちた神々しい微笑を浮かべて向かい合っていた。

玄関先で、チャイムが鳴る。

全てから解放された真琴はとても神聖な気持ちで、薫を抱きしめたまま、客人を迎えるためにドアへ向かった。