朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

調査報道は社会を変える力を持つ。

本書は、戦後から2025年頃までに行われた数々の調査報道の中から、社会を動かした事例を取り上げ、その軌跡をたどる内容である。

 

著者は「ジャーナリズムとは報じられたくないことを報じることだ。それ以外は広報に過ぎない」と述べる。

 

公的機関の発表をそのまま伝える「発表報道」と異なり、隠された事実を取材し明るみに出す営みこそが「調査報道」である。

 

ウォーターゲート事件、リクルート事件、医学部入試の不正など、報道がなければ真実が表に出なかった可能性が高い事例は多い。

 

近年では、福岡県議会の正副議長選挙をめぐる現金授受問題が世間を騒がせている。現金を受け取っていないと主張する側と、封筒で渡したと語る側が対立し、事実は依然として不透明なままだ。どちらかが虚偽を述べているのか、あるいは別の構図があるのか。

 

こうした状況でこそ、報道機関が粘り強く取材し、膿を出す役割が期待されていると感じる。

 

これまでの調査報道の実績を振り返ると、ジャーナリストは国民が知りたい事実を掘り起こし、権力や組織の説明を鵜呑みにしない冷静な視点を提供してきた。

 

発表だけに依存せず、多角的に事実を検証するという点で、調査報道は民主社会に不可欠な営みだと改めて思わされる。

 

 

■ 目次

はじめに

第1章 日本初の潜入型調査報道 敗戦直後の岡山で[1945~]

第2章 調査報道のゆりかご時代 1950年代の挑戦[1950~]

第3章 高度成長期の矛盾 調査報道で明るみに出す[1960~]

第4章 1970年代の調査報道 黄金時代へ[1970~]

第5章 調査報道の黄金期 権力中枢に迫る[1980~]

第6章 社会の矛盾を映し出す数々の調査報道 繁栄の裏側で[1980~]

第7章 1990年代の調査報道 多様な展開の一方で「壁」も[1990~]

第8章 それでも社会は変えられる 調査報道の挑戦は続く[2000~]

第9章 「公文書の改ざん・廃棄、非開示」と調査報道[2000~]

おわりに

戦後80年 社会を動かした150の調査報道

 

 

■ 著者紹介

高田昌幸 さん

ジャーナリスト/東京都市大学教授。

北海道新聞・高知新聞で調査報道に携わり、北海道庁公費乱用問題や北海道警察裏金問題の取材で新聞協会賞・菊池寛賞などを受賞。現在は調査報道グループ「フロントラインプレス」代表。

 

学生時代から身近に触れてきたクラシック音楽のなかでも、私は特にピアノが好きです。繊細な響きから過激な音まで、幅広い表現を生み出すピアノの音色を聴いていると、心がすっと整っていきます。

 

クラシックの名曲は、数百年前から現代まで受け継がれてきました。演奏家、指揮者、観客──その場にいるすべての人の心をつなぎ、感情を揺さぶる力を持つことこそ、クラシック音楽の最大の魅力だと思います。長い時を経てもなお残り続けていること自体が驚きであり、「よいものだからこそ廃れない」という事実に、人間の叡智の結晶を感じます。

 

本書では、たとえば

『クラシック音楽の「クラシック」ってどういう意味?』

⇒ラテン語で「最上級」を表す言葉。

 

『なぜ音をドレミと呼ぶのか?』

⇒11世紀のイタリアの音楽教師で修道士グィード・ダレッツォが、学習を効率化するために考案した。

 

『クラシック音楽の本当の面白さってどこにありますか?』

⇒聴く、演奏する、作曲する、背景を知る、学ぶなど、個々がそれぞれの面白さを見つけられる点にある。

 

といった、普段なんとなく気になっている「100の疑問」に対し、著者が指揮者ならではの豊富な経験をもとに一問一答形式で答え、その後に丁寧な解説を加えていきます。

わかりやすく、読み心地も軽やかで、たいへん興味深く読み終えました。数々の疑問が氷解し、今後演奏を聴くときの視点が豊かになる一冊でした。

 

 

目次

はじめに 

第1章 クラシック・音楽の謎?おしえて!(クラシック音楽の「クラシック」ってどういう意味?なぜ音をドレミと呼ぶのですか? ほか)

第2章 オーケストラ・演奏の謎?おしえて!(オーケストラの配置は誰が決めているのでしょうか?オーケストラの楽器の並び方って時代や国によって異なるの? ほか)

第3章 コンサートの謎?おしえて!(コンサートのプログラムはどうやって決めているのでしょうか?なぜ日本では客席側から見て、左側から出入りするのでしょうか? ほか)

第4章 指揮者の謎?おしえて!(指揮者の名前はどういう種類があって、どのように違うのでしょうか?指揮棒は色は決まっていますか?また、形や長さ、重さに違いはありますか? ほか)

第5章 作曲家・曲の謎?おしえて!(交響曲のタイトルで、○長調とか○短調とありますが、どういった理由でつけられるのですか?今のような五線譜はいつごろから使われているのですか? ほか)

コラム

参考文献

人名索引

あとがき

 

 

 

著者等紹介

曽我大介さん

指揮者・作曲家。桐朋学園大学、ウィーン音楽大学等でB.ハイティンク、G.シノーポリ、I.ムーシン、U.ラーヨビッチ、小澤征爾、田中雅彦、I.ケプテア、森正の諸氏に学び、1989年ルーマニア国立音楽院在学中にルーマニアでデビュー。ブザンソン、コンドラシンの二大指揮者コンクールでの優勝を始め、数多くのコンクールで上位入賞。以降日本、ヨーロッパ、南米を中心に世界各地に客演。ルーマニア・ブラショフ・オペラで《椿姫》やモーツァルトのダ・ポンテ三部作を指揮するなど活躍を続ける。世界各地の音楽祭出演や講習会の講師、コンクール審査員、作曲家としても活躍中。ルーマニア・ブラショフ市とブラジル・ロンドリーナ市名誉市民

 

 

【No2059】おしえて!そがさんここが知りたいクラシック100の謎 マエストロ曽我大介の快“答”乱麻 曽我大介 音楽之友社(2025/12)

13歳向けの入門書ではあるが、大人が読んでも国際情勢の基礎を押さえるきっかけになる一冊だと感じた。

 

著者は、いま世界で起きている出来事を「そもそも論」から丁寧に振り返り、日本にどのような影響が及ぶのか、そして日本がどのような方向性を取るべきかを、読者が自分で考えられるよう道筋を示してくれる。入門書でありながら、示唆に富んだ良書だと思う。

 

■ 心に残った言葉

初めに、島根さんが日頃から励まされているという言葉が紹介されていた。

 

「勉強の苦しみは一瞬だが、勉強しなかった苦しみは一生続く。努力するのはつらいけど、努力をしない人生は果たして楽なのか。努力で人生は拓ける。努力は人を強くし、人生を自由にしてくれる。」

 

司法試験と外交官試験を同時に目指し、自分を鼓舞しながら勉強した経験談とともに語られており、胸に深く響いた。

 

■ 国と個人は違うという実感

中国や韓国など近隣国の友人がいる経験から、著者が述べる次の指摘には強く共感した。

 

国と個人は違う。 

国に対して複雑な感情があっても、個人として向き合えば分かり合えることがあり、仲良くなることもある。

 

■ 最新の国際情勢を踏まえた示唆

外交官としての経験をもとに、多面的で現実的な視点が示されている。理想論に偏らず、堅実な姿勢が一貫していた。特に参考になった点を整理すると次の通り。

 

・日本の一人当たり国防費は約5万円。アメリカとの同盟により抑止力が保たれ、諸外国より低く済んでいる。日本は地政学的にアメリカにとって重要な位置にある。

 

・トランプ大統領再選の背景には、アメリカ社会が多様性を重視しすぎた反動があるという指摘。関税引き上げは最終的にアメリカの消費者の負担となる。

 

・中国の都市戸籍と農村戸籍が生む格差。固定資産税や相続税がないため富の再分配が進まず、経済の立て直しに苦心している。外国企業の受け入れには体制維持への不安がある。

 

・香港の自由が急速に失われた現状。「今日の香港は明日の台湾になるのか」という問いかけが重い。

 

・アメリカの「戦略的曖昧さ」。台湾を守るとも守らないとも言わない姿勢。台湾人の多くは現状維持を望んでいる。

 

・半導体は「現代の石油」。大量の水と安定した電力が必要で、TSMCが世界トップ。

 

・南シナ海問題。核兵器を深い海に隠し、原子力潜水艦で位置を不明にする戦略的価値。

 

・ウクライナ侵攻の背景には、不凍港の確保とNATO拡大阻止という地政学的要因がある。

 

・日本が学ぶべき点として、同盟国の支援が来るまで自国を守り耐えられる力を持つ必要性。

 

・パレスチナ問題は宗教対立ではなく、「土地を誰が住むのか」という根源的な争い。

 

■ 民主主義と自由の脆さ

著者が強調していた部分で、特に共感した箇所がある。

 

民主主義も自由も、思っている以上に脆い。自分たちの力で守らなければ、あっという間に奪われかねない。

完璧でなくとも、民主的で自由な国に住みたい。自分の意見を自由に言いたいし、自分の力で決められないことに支配されたくない。

次の世代にもそうあってほしい。そのために世界の動きに関心を持ち、自由な日本を守っていくことが私たちの使命だ。

 

 

国際情勢を学ぶことが、単なる知識ではなく「自分たちの自由を守るための視点」につながるのだと改めて感じた。

 

 

目次

はじめに

第1章 高校チュータイのコギャルが司法試験に合格して外交官になった話

第2章 日本の安全は5万円で買えるのか

第3章 「またトラ」のアメリカとどう向き合うか

第4章 中国はどこに向かっているのか

第5章 香港は終わったのか

第6章 今こそ知っておきたい台湾のこと

第7章 「半導体」を制するものは世界を制する

第8章 深海からのぞく国際情勢  ──なぜ中国は南シナ海にこだわるのか。なぜロシアは北方領土を返さないのか──

第9章 北朝鮮は何を恐れ、何を守ろうとしているのか

第10章 K-POPには映し出されない韓国の実像

第11章 10分でわかるウクライナ戦争

第12章 パレスチナ問題やシリア問題のそもそも

第13章 「モテ期」インドの光と影

第14章 ヨーロッパで台頭する「極右」とは何なのか

おわりに

参考文献

 

 

著者等紹介

島根玲子さん

1984年埼玉県生まれ。高校時代に2度の留年と2度の中退を経験。一念発起して大検を取得後、青山学院大学文学部に進学。早稲田大学法科大学院を経て、2010年に司法試験および国家公務員1種試験に合格。2011年に外務省入省後、スペイン駐在を経て、中南米外交やアジア外交に携わる。外交官として働く傍ら、国際情勢やキャリア設計についての講演活動も行う。

 

【No2058】13歳からの国際情勢―高校チュータイ外交官が世界のニュースを「そもそも」解説 島根玲子 扶桑社(2025/05)

三菱銀行人質強殺事件の犯人・梅川昭美をモデルにしたフィクションである。

物語は、花川清史の母カヨと内縁の妻亜紀という二人の女性の視点を軸に、新聞記者の近藤と部下の海原が清史の犯行に至る背景を少しずつ炙り出していく構成になっていた。

 

清史は警官2人と行員2人を射殺し、説得に駆けつけた母との会話を拒絶した。

母は事前に美容院で身なりを整え、息子の前に立とうとしていたという描写がある。

「あの母親と息子はそっくりやで。他人の惨(いた)みには無頓着で、いま自分がどう見えるかばかり気にしよる」

この言葉が、二人の関係の根深さを象徴しているように思えた。

 

家族からの影響だけでなく、広島での生い立ち、高度経済成長期の貧しさ、DVのある家庭環境など、時代と社会のゆがみが清史の内側に積み重なっていく。

「犯罪いうんは個々の暗いところに根ざしながら、実のところ時代と社会のゆがみが生んどるんやないか」

この一節が、作品全体のテーマを静かに支えていた。

 

十五歳で強盗殺人を起こし、十五年後に再び大きな事件を起こす清史。

亜紀は彼の内側にある渇きを何度も見たという。

「他人が納得するかどうかやない、わしが満足するかどうなんや」

この言葉に、彼の生き方の鍵があるように感じた。

 

母カヨの語りは乾いていて、感情の在処がわからない。

「たったひとりの味方じゃ言うて、あの子の自由を奪っとたのはわしじゃ」

その告白は、母子の関係がどれほど歪んだ形で続いてきたかを示していた。

 

聞いたことをすべて文章にすれば、花川カヨの一生こそが「事件」だったのではないか。

母の生き方、息子の焦りと自棄、時代の影──それらが絡まり合い、清史の人生を押し流していったように思えた。

 

 

著者紹介

桜木紫乃さん

1965年北海道釧路市生まれ。

2002年「雪虫」でオール讀物新人賞受賞。

2013年『ラブレス』で島清恋愛文学賞、同年『ホテルローヤル』で直木賞受賞。

2020年『家族じまい』で中央公論文芸賞受賞。

なかなかいつもとは違う変化があり、読み応えのある一冊でした。

哲学者と僧侶の二人が、それぞれの立場から悩みに向き合い、解決のヒントを示してくれる本です。

 

人は誰しも、口に出さないだけで多くの悩みを抱えているもの。その悩みは、生老病死、少子高齢化、グローバル化、タイパ・コスパ重視の社会、SNSやAIの進展など、さまざまな領域に広がっています。

 

もちろん、悩みが解決できれば一番よいのですが、まずは少しでも軽減できればいい。悩みを受け止め、心が癒される視点に出会いたい。そんなとき、哲学と仏教という異なるアプローチからの言葉は、緒につくヒントを与えてくれます。

 

仏教は東洋思想として「苦しみとは何か」を探求し、そこから解放される生き方を目指す営み。

哲学は西洋思想として、常識を超えて考えることで物事の本質を探究する営み。

 

アプローチは異なりますが、共通点も多く、表現は違っても意味は同じところに行き着く場面がたびたびあります。

 

■印象に残った箇所

「どうすればやりたいことが見つかるか?」(哲学)

→ 魂が喜ぶまで、発信し続ける。 

10年以上続けている読書ブログの更新が、まさにこの言葉に当てはまると感じました。

 

「どうすれば楽しく生きられるか?」(哲学)

→ 初めて、かつ最後かもしれないと思え。 

イベントや講演会など非日常の場では、「この時間をできるだけ面白くできないか、楽しめないか、有意義にできないか」と思いながら参加しています。この考え方をさらに深めたいと思いました。

 

「好きな人を忘れられず辛いです」(仏教)

→ 別れがあれば、出会いもある。 

経験上、会わなくなる人とは自然と離れていきますし、行動していればまた新しい出会いが必ず訪れるものです。

 

哲学と仏教は、歴史に裏打ちされた人類の叡智です。悩みの解決だけでなく、日々の問題に向き合う際にも大きな助けとなります。大切なのは、知識として知るだけでなく、その意味を考え続け、たとえ小さくても行動してみること。

 

物理的・技術的な即効薬ではなく、じわっとあとから効いてくる薬のように、心を安心させてくれる視点の転換を求めているのだと感じました。

 

目次

はじめに 今、哲学と仏教が求められるわけ

回答者紹介 小川仁志 大來尚順

 

【悩み1】哲学や仏教を勉強したら、何がわかるの?

 《哲学の答え》より善く生きるための「ものの見方」がわかる

 《仏教の答え》「苦しみ」をどう解決すればいいかわかる

 

【悩み2】哲学や仏教は、何の役に立つの?

 《哲学の答え》自分の意識を変えることで、現実が変わる

 《仏教の答え》仏教は、一般的な悩みには役に立たない

 

【悩み3】哲学や仏教に向いてるのって、どんな人?

 《哲学の答え》驚いたり感動したりしやすい人が向いている

 《仏教の答え》挫折経験が多い人に向いている

 

【悩み4】どうすれば、やりたいことが見つかる?

 《哲学の答え》魂が喜ぶまで、発信し続ける

 《仏教の答え》自分への問いかけを持ち続ける

 

【悩み5】共感力のある人間らしい生き方って?

 《哲学の答え》あまり求めすぎないほうがいい

 《仏教の答え》無理に共感する必要はない

 

【悩み6】どうすれば楽しく生きられる?

 《哲学の答え》初めて、かつ最後かもしれないと思え

 《仏教の答え》自分というものに囚われすぎないこと

 

【悩み7】どうしたら自分の壁を越えられる?

 《哲学の答え》ちょっとずつ改善していくと、最後は正解になる

 《仏教の答え》自分と向き合い弱音を吐き出せば、前向きになれる

 

【悩み8】受け入れ合うって、どういうこと?

 《哲学の答え》自分の中に、自分と他者を橋渡しする私をつくる

 《仏教の答え》受け入れるよりも、認め合うことが大切

 

【悩み9】人付き合いは必要ですか?

 《哲学の答え》孤独でも人生は楽しめる

 《仏教の答え》仏教は孤独を否定せず、推奨している

 

【悩み10】彼氏とか面倒くさいけど、恋愛はしたい

 《哲学の答え》恋愛したいなら、恋愛なんてしなくていい

 《仏教の答え》今は自分磨きをして、ご縁を待とう

 

【悩み11】好きな人を忘れられずツライです

 《哲学の答え》新しい方向へ進むには、自分との和解が必要

 《仏教の答え》別れがあれば、出会いもある

 

あとがき

 

著者等紹介

小川仁志さん

哲学者・山口大学国際総合科学部教授。1970年京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。商社マン、フリーター、公務員を経た異色の経歴。市民のための「哲学カフェ」を開催するなど哲学の普及に努めている。NHK・Eテレ「世界の哲学者に人生相談」や「ロッチと子羊」で指南役を務めた

大來尚順さん

僧侶・著述家。1982年山口県生まれ。龍谷大学文学部卒業、米国カリフォルニア州にある神学大学院連合へ進学し、修士課程修了。その後、ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や書物の翻訳も手掛け、執筆、講演、メディアなど活動の場を幅広く持つ。2019年、龍谷大学奨励賞を受賞

 

【No2056】その悩み、哲学者とお坊さんはこう答える 小川仁志 大來尚順 法藏館(2025/11)

脳の構造によって人間の心や考えが生じていること、その仕組みの一部が紹介されていた。

脳科学の視点をもとに人に接することができれば、仕事や恋愛を含めた人の行動を理解しやすくなり、自分の人生をより豊かにできると感じた。

「人ってこういうものなのだな」と、言葉に含蓄があり、人はなぜそう考え、行動するのかを脳科学から解説した一冊。

 

● 印象に残った箇所(一部)

48ページ 誰かのために一生懸命尽くす人は、それによって自分の幸せを得ている 

他者を愛しいと感じたり、その人の幸せを願ったりするとき、幸福感を生み出すオキシトシンやベータエンドルフィンが分泌される。

看護師など、人のために自分を犠牲にして働く人は、周囲から見ると「どうしてそんなにできるのだろう」と不思議に思われるが、実際には高揚感や幸福感に包まれ、想像以上に幸せなのだ。

 

50ページ 歴史小説を読む人は、歴史そのものではなく“アイデア”を学んでいる 

偉大な仕事を成し遂げた人がどんなことを考え、どんなアイデアで問題解決に向かっていたのかを学んでいる。

経営者に歴史小説好きが多いのには理由がある。

 

132ページ 人間関係で傷ついたときは、無理に忘れようとしないことが大切 

きちんと向き合ったほうが、きちんと消化できる。

友だちに話を聞いてもらうなど、言語化することで心がずいぶん楽になる。

 

146ページ 成功者を真似するより、「面白い」と感じた人を真似する 

自分の頭で「どの人が面白いか」を考えなければ、その段階で負けなのだ。

面白いと感じた人の方法は、自分に合っている。

 

目次

はじめに

第1章 「あの人」の頭のなかを読み解く

第2章 脳科学でわかる「危険な人」のサイン

第3章 人間関係の問題はこうやって解決する

第4章 脳がわかれば、人がわかる

 

【著者紹介】

中野信子さん

東京都生まれ。脳科学者、医学博士。東日本国際大学特任教授、京都芸術大学客員教授、森美術館理事。2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。脳や心理学をテーマに研究や執筆活動を精力的に行う。

「賢者は歴史に学ぶ」という言葉には深くうなずかされる。

昭和は激動の時代であり、日本人はその荒波を力強く生き抜いてきた。昭和百年を迎える今、当時の出来事を「経済」の視点から通史として読み解くことで、令和の日本が学ぶべきことが浮かび上がってくる。

 

円高、貿易摩擦、財政・金融政策など、現代にも通じる課題は多い。特に、過去に失敗した事例から「同じ轍を踏まないために何を学ぶか」という姿勢が重要だと感じた。

恐慌やバブルは形を変えて繰り返し訪れる。だからこそ、「どのような原因で発生し、その時の人々がどう対応したのか」を知ることが、未来への備えになる。

 

本書は、日本経済の復活に向けて、昭和の経験を経済の視点から振り返り、令和への提言を行っている。

その中でも印象的だったのが「新ジャポニズム」という概念である。

 

新ジャポニズムと令和の日本

(20ページ、261ページより)

インバウンドの増加に象徴されるように、世界から日本への注目が高まっている。日本のモノづくり技術への再評価に加え、アニメ、文化、安全でおいしい食、自然や歴史、コンビニの「かわいい」文化、そしておもてなしや礼儀・マナー、丁寧できめ細かいサービスなど、ソフト面でも日本の魅力が広く認識されている。

 

いわば「日本ブーム」と呼べる現象であり、幅広い経済効果を生んでいる。

ハード(製品の品質・技術力)とソフト(文化・サービス)の両面で日本人気が高まっていることが、令和の日本経済復活の原動力になるという指摘は、確かに説得力がある。

 

目次

序章 激動の昭和から学ぶ

第一章 恐慌で始まった昭和

第二章 戦争の時代

第三章 戦後復興―「奇跡の復活」

第四章 高度経済成長―元気だったあの頃

第五章 高度成長の終焉―試練の時代

第六章 バブルへの道

終章 令和の日本経済復活に向けて

参考文献

 

著者紹介

岡田晃さん

1947年大阪市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本経済新聞社を経てテレビ東京へ。米国現地法人社長、理事・解説委員長などを歴任し、経済番組キャスターとしても活躍。退職後は大阪経済大学で教授職を務め、現在は特命教授。経済評論家として幅広く発信している。

天下を取った秀吉に対しても、どこか判官びいきのような感情があるのかもしれない。

豊臣家は長く続かず、徳川によって滅亡させられた。敗者や不遇な人、弱い立場に置かれた人に対して、道理を問わずに同情し、応援したくなる気持ちが湧いてくる。

 

本書は、藤吉郎の立身出世から、織田軍での戦い(山﨑の戦いなど)、清須会議を経て小田原攻めに至る天下統一の道、そして秀長の死後の晩年まで――豊臣秀吉を中心とした豊臣家の栄枯盛衰をたどる一冊である。

太閤・豊臣秀吉や弟の秀長、豊臣家にまつわる伝承と史実を、最新の知見に基づいて丁寧に書き分けて紹介している。

 

監修の柴裕之さんは、NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の時代考証者でもある。

最近の大河ドラマでは、本能寺の変、決死の中国大返し、山﨑の戦いが描かれたところで、この本を副読本として手元に置きながら視聴すると理解が深まると思う。

逐条解説の形式なので、各々の出来事や事件の内容・意味がとても理解しやすい。

 

目次

はじめに 豊臣秀吉と太閤伝説

1章 立身出世を果たす藤吉郎~生誕から金ヶ崎の戦いまで

2章 織田軍での戦いの日々~姉川合戦から山崎の戦いまで

3章 天下統一への道~清須会議から小田原の陣まで

4章 天下人となった秀吉の晩年~秀長の死から往生まで

5章 豊臣一族・家臣団のその後

 

[コラム]

秀吉は本当に猿に似ていたのか?

秀吉の女好きは本当だった?

希代のプロモーターだった秀吉

神になった秀吉

 

[巻末]

豊臣秀吉関連年表

豊臣秀吉 主な合戦一覧

豊臣秀吉 歴代の居城

主な参考文献

 

著者等紹介

柴裕之さん

東洋大学・駒澤大学非常勤講師。1973年生まれ。東洋大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。NHK大河ドラマ「どうする家康」「豊臣兄弟!」の時代考証を担当。

 

【No2053】太閤記解剖図鑑 豊臣秀吉の虚像と実像がマルわかり 監修/柴 裕之 エクスナレッジ(2025/11)

 

歴史は面白い。

日本の城にまつわる疑問を、豊富なイラストでわかりやすく解説してくれる一冊だった。これを読めば、歴史番組を見ているときも、実際に城を訪れたときも、構造や意味がすっと腑に落ちて、城への親しみがぐっと増してくる。

 

日本の城と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、城郭考古学者の千田嘉博さんだ。テレビ番組でも城の魅力を丁寧に語り、竪堀や堀切などを説明するときの眼差しの強さ、目の輝きが印象的で、こちらまで楽しくなる。城跡を歩きながら段差のようにしか見えない場所に歴史的な意味を見いだす姿は、見ていて胸が躍る。

 

今回の著者・小和田泰経さんは、歴史学者として著名な小和田哲男さんのご子息である。親子ともに城郭研究に携わっておられることを知り、どのようなお城談義をされているのか想像がふくらむ。泰経さんの著書を通じて、これからも城郭研究の歩みを応援したいと思った。

 

■今回、特に興味を抱いた点・印象に残った箇所

 

弘前城などは四神相応や鬼門除けを意識して築城されている。 

 青龍・白虎・朱雀・玄武という思想が城の配置に生かされているのは興味深い。

 

石垣を見ると築かれた時代がわかる。 

 野面積 → 打込接 → 切込接へと進化し、隙間がなく洗練されていく様子がよくわかる。

 

名古屋城の鯱は雌雄一対で、水を噴いて火難から守る「火除けの神」。

 

外壁の違いに時代性が表れる。 

 安土桃山時代は木板+漆の黒い外壁、江戸時代は土壁を漆喰で覆った白い外壁。耐久性は低いが火災に強い。

 

天守は物見だけでなく「最後の砦」。 

 城主が籠るための空間でもある。

 

城は常に籠城の準備をしていた。 

 犬山城の天守には畳が敷かれ、姫路城には槍や鉄砲が架けられていた。米蔵には約3か月分の兵糧、煙硝蔵は爆発を避けるため城内の端に石造りで設けられていた。

 

落城のかたち。 

 最後は天守に火を放ち自害して落城するか、領土の割譲など降伏勧告に応じて開城する(城主は責任を負い自害が一般的)。

 

目次

はじめに

序章 小和田流 城の楽しみ方七か条

1章 城の縄張~どこに何を配置した?

2章 城の土木工事~こだわりぬかれた堀と石垣

3章 城の建物~天守のしくみ、城のしくみ

4章 城と戦~城の攻め方・守り方

5章 城と人々の暮らし~御殿・城下町のしくみ

6章 日本の城の歴史~古代から現代まで

巻末 名城一覧、日本の城ミニ用語集

 

著者紹介

小和田泰経さん 

歴史学者・小和田哲男氏のご子息。

1972年東京都生まれ。國學院大學大学院文学研究科博士課程後期退学。専門は日本中世史。日本城郭協会理事、静岡英和学院大学講師、早稲田大学エクステンションセンター講師ほか。戦国武将・城郭・甲冑・刀剣に詳しい。

本書は、幸せに生きるための「お金の減らし方」を提案する一冊である。

人生の選択肢を広げ、心の安心を得るためには、必ずしも“DIE WITH ZERO”を目指す必要はない!?

 

著者は、

・50代までに投資資産をつくる

・60代はお金を使いつつ資産を増やす

・70代以降は資産寿命を延ばしながら取り崩す

という段階的なお金との付き合い方を示している。

 

人は幸せになるために生きている。他人と比べず、自分にとっての幸せを探すこと。

「あとでしておけばよかった」と後悔しないために、今しかできないことを大切にしたい。

 

たとえば、

家族との旅行、旧友との食事、自分の趣味を楽しむ時間。

お金は貯めるだけでなく、健康、人間関係、経験や思い出(家族)にこそ使うべきだと感じた。必要なときに使えるよう、「生きたお金の使い方」をしていきたい。一方で、将来のための備えを怠らないことも重要である。

 

また、老化を防ぎ健康に留意できる、収入が得られる、知識や能力を活かせる、仲間が得られる、社会貢献ができる――こうした理由から、60代以降は働くほうが幸福度が高いという。仕事そのものの面白さや、世の中に貢献している実感が、幸せにつながる人は多い。

 

著者の「幸福の最大化を目指す人生」に共感した。

50代以降、体力や仕事のパフォーマンスの低下を感じるようになったが、経済的なゆとりもでき、好きな仕事を好きな時間だけすればよいと思えるようになった。時間とお金を使い、幸福の最大化を目指す人生にしたい。

この言葉は、今の自分にも重なる部分がある。

 

目次

はじめに

プロローグ

第1章 取り崩す前に押さえておきたいお金の話

第2章 お金がたくさんあれば幸せになれる?

第3章 資産ゼロを目指す投資戦略とお金の減らし方

第4章 自分に合った商品が見つかるおすすめ金融資産

第5章 知っておきたい定年後のお金と働き方

第6章 幸せになるための老後のお金

おわりに

 

著者紹介

頼藤太希さん 

(株)Money&You代表。資産運用や家計の情報発信を行い、著書多数。

高山一恵さん 

(株)Money&You取締役。ファイナンシャルプランナーとして家計・投資の相談や発信を続ける。

 

【No2051】50代から考える お金の減らし方―幸福の最大化を目指す 須藤太希 高山一恵 成美堂出版(2025/04)