朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

2025年、名古屋市の小学校教諭の逮捕をきっかけに明らかになった教員グループによる校内盗撮事件。児童・生徒の姿を学校内で撮影し、その画像をSNSのグループチャットで共有していた事実は、教育現場への信頼を大きく揺るがしました。

さらに近年は、教員だけでなく、児童・生徒同士による盗撮も増加し、男子が男子を対象とするケースも報じられるなど、従来のイメージとは異なる広がりを見せています。

 

盗撮が起こる「環境」と「心理」にも焦点が当てられています。読み進める中で、行為者の内面ばかりが肥大化し、被害者の感情や尊厳への想像力が完全に欠落していることに改めて気づかされました。

性について正面から学ぶ機会が乏しいまま大人になった世代が多いことも、こうした想像力の欠如につながっているのではないかと感じました。

 

■印象に残った箇所と考えたこと

51P 緊張と緊張の緩和 

 実行直前の高い緊張と、実行後の安堵・達成感。その落差が「快感」として脳に刻まれ、日常のストレスから一時的に逃れられる錯覚を生む。

 この構造は、依存症のメカニズムと非常に似ており、盗撮が「自己使用のための行為」ではなく「盗撮のための盗撮」へと変質していく過程がよく理解できました。

 

89P 優越感と支配感 

 盗撮は「気づかれずに日記を盗み見る行為」に近いとあります。

 相手に知られずに画像を保存することで、日常では得られない優越感や支配感を感じてしまう。

 この“支配の錯覚”こそが、被害者の尊厳を深く傷つける本質だと思いました。

 

164P 性教育の欠如 

 現在の子育て世代(30〜50代)は、性について体系的に学ぶ機会がほとんどありませんでした。

 「嫌よ嫌よも好きのうち」など、偏った価値観が娯楽の中で刷り込まれ、他者の意思や尊厳を軽視する態度につながってしまう。

 性教育は「知識」ではなく「人間の尊厳を理解する学び」であることを再確認しました。

 

146P 環境が犯罪を起こす 

 性加害が起きる条件として

 1. 加害したいと思う人がいる

 2. 被害者となる人がその場にいる

    3.周囲から見つからずに加害できる環境がある

 この「3」を取り除くことが最も効果的であるという指摘は、学校の構造や制度設計の重要性を示しています。

 「入りやすく、見えない」ではなく「入りにくく、見えやすい」環境づくり。

 公衆トイレの設計や学校の動線など、具体的な改善の方向性が示されており、行政や学校現場が取り組むべき課題が明確でした。

 

■補足:読後に感じたこと

今回の読書を通じて、盗撮という行為を「性の問題」としてだけでなく、

・環境設計

・教育の不足

・ストレスと依存

・尊厳への想像力の欠如 

といった複数の要因が絡み合う社会問題として捉える必要性を強く感じました。

 

特に、被害者の視点が置き去りにされがちな点は、性暴力全般に共通する構造です。

「相手がどう感じるか」を想像する力は、知識だけでは育たず、日常の対話や教育の積み重ねが不可欠だと思います。

 

また、学校という本来は安全であるべき場所で起きていることに、深い危機感を覚えました。

子どもを「被害者にも加害者にもさせない」ためには、包括的性教育と環境整備の両輪が必要であり、社会全体で取り組むべき課題だと感じます。

 

●目次

はじめに 

第1章 学校での盗撮が急増している

第2章 盗撮する教師の歪んだ「自己正当化」

【対談1】中学受験塾元講師A 有名塾の教え子を盗撮した講師の「本音」

第3章 子どもが子どもを盗撮する理由

第4章 盗撮された子どもの絶望と深い傷

【対談2】永守すみれ(ネットパトロール団体代表) AIも悪用されるデジタル性暴力の恐怖

第5章 子どもを被害者にも加害者にもしない「包括的性教育」

【対談3】末冨芳(教育行政学者) 学校が校内盗撮を防ぐための制度とは何か

第6章 なぜ盗撮した教師を「治療」するのか

第7章 もしも子どもが学校で盗撮したら

おわりに 

主要参考文献

 

●著者略歴

斉藤章佳さん

加害者臨床家。精神保健福祉士・社会福祉士。西川口榎本クリニック副院長。1979年生まれ。あらゆる依存症の臨床に携わり、現在までに3500名以上の性犯罪者の地域トリートメントに関わる

 

二人分のごはんとみそ汁が、四人掛けのテーブルの上にそっと置かれている。

母と娘がコンロの前で並び、楽しげに料理をしている。娘がほほえみながら手を動かす後ろ姿の表紙から、物語全体を包むやさしさと温もりが自然と伝わってきた。

 

飯盛敦子(55)、村松陽愛乃(27)、鈴木寿子(65)、高木花絵(48)、海原多美(41)、みなみまどか(?)。

年齢も境遇も異なる6人の女性の日常が、台所を中心に巧みに描かれていく。気負わず読み進められ、読み終えたあとにはふわりと幸せが残った。

 

物語は、深夜30分ドラマ『台所のあるところ』のハッシュタグを軸に、登場人物たちの人生がゆるやかにつながっていく構成。

それぞれの女性が抱える事情は台所から始まり、台所でほどけ、台所で誰かとつながっていく。

 

台所では、人は素直になれるのだろうか。

食べることは生きることに直結し、台所はその人の人生そのものを映し出す場所なのだと感じた。

 

どんな材料を選び、何を誰のために作り、できた料理を誰と食べるのか。

日々の暮らしがつまった大切な場所で、自分らしく、家族との空間を守っていきたい――そんな思いが自然と胸に残る。

 

なかでも印象的だったのは、「冷凍庫冷蔵庫合わせて五台」で描かれる島の話。

「内藤」と「鈴木」姓の人しか住んでいない小さな島で、互いに反目し合い、他姓とは口も利かない風習がある。そこに嫁いだ女性の物語は、恐ろしさと現実味が入り混じり、土地柄が人の生き方を左右することを強く感じさせた。

 

252ページの言葉。 

「自分に与えられている運命の中で、よりよいと思える道を探しつつ、その中で生きていかなくてはならない。」

人はそれぞれの場所で、一生懸命に生きている。

この一文が、本書のテーマをもっとも端的に示しているように思えた。

 

■目次

ままならないキッチン、ままならない人生

半殺し

冷凍庫冷蔵庫合わせて五台

毎日、揚げもの

犬のご飯、私のご飯

鎌倉の家

 

■著者紹介

原田ひ香さん 

1970年神奈川県生まれ。「リトルプリンセス2号」で第34回NHK公募ラジオドラマ最優秀作。

2007年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞。

しばらく前、Netflixで戸田恵梨香主演の『地獄に堕ちるわよ』がよく目につき、細木数子氏への興味が再燃した。

本書は、著者が細木氏の来歴を丹念に調査し積み上げたノンフィクションである。演歌歌手など他者からの搾取、暴力団との関係性を利用した金銭獲得など、知らなかった実像が次々と明らかになり、彼女への印象は大きく塗り替えられた。

 

「あんた死ぬわよ」「地獄に堕ちる」

「占い師が人を威圧し、いたずらに不安感や恐怖心を与えていいわけがない」

この指摘には、たしかに頷けるところがある。

 

細木氏は渋谷の青線地帯に生まれ、愛人と本妻が同居する家庭環境で育った。年齢を三歳詐称しながら銀座・赤坂の夜の世界でのし上がり、暴力団幹部との深い関係を背景に、島倉千代子氏、安岡正篤氏の歴代首相の相談役までも取り込み、「世界一の占い師」としてテレビや出版で巨万の富を築いた。

週刊誌の連載「細木数子 魔女の履歴書」が掲載されると訴訟を起こし、その後テレビ番組から降板した。

 

「ズバリ言うわよ!」「幸せって何だっけ」など、テレビで彼女を見かけた時期があったが、暴力団とのトラブルか何かで突然姿を消した印象が残っている。近年は動向がわからなかったが、令和3年に亡くなっていたことを本書で知った。

 

読み進める際には、18ページの「細木数子の人物相関図」をときどき参照した。

 

■印象に残った箇所

20P

占いは将来を言い当ててこそ値打ちがある。自信ありげに占うだけでは足りず、内容と正確性が問われる。細木数子の占いの的中率が総じて低レベルにあることは、大半の読者や視聴者が承知している。ある雑誌は、細木の占い的中率は34%、外れ率は64%と算出している。

 

26P

細木が時代と寝た女であることはたしかである。

 

162P

細木が体質として持つ低俗性は特徴がある。下品さ、金権主義、事大主義、教養や常識のなさ、はすっぱな物言い、勝ち組志向、弱い者いじめ、自己省察の欠如、没論理性など。

 

■目次

+α文庫版のためのまえがき

序章 時代の「寵児」なのか?

第一章 妻妾同居の家に生まれて

第二章 色と欲の「同行二人」

第三章 小金井一家・堀尾昌志との深く永い契り

第四章 他人のふんどしで占い師・細木の土俵入り

第五章 島倉千代子というカモネギが来た

第六章 歴代首相の指南役・安岡正篤をたぶらかす

第七章 細木を使うテレビ局の無残な無定見

第八章 「神水から墓石まで」の細木商法

第九章 墓地が炙り出す「最愛の男」

終章 低俗な時代を謳歌する女ヤクザ

付記「反論と訴訟」という墓穴

あとがき

細木和子の歴史

解説 溝口敦が燻り出す「女ヤクザ」の生育感 鈴木エイト

 

■著者紹介

溝口敦さん

ノンフィクション作家・ジャーナリスト。1942年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。出版社勤務を経てフリーに。『食肉の帝王』で第25回講談社ノンフィクション賞受賞。

アガワさんのように、人に愛され、豊かに、幸せに、そして素敵に年輪を重ねていきたい──本書を読みながら、そんな思いが自然と湧いてきた。

 

とくに「第4章 友だちはかくあるべし」には、僕自身の気持ちを代弁してくれる言葉が多く、深く共感した。

 

■174ページ 会う頻度は関係ない

仕事場で知り合い、同じ目標を追いかけた時代を過ごした友だち。

今は頻繁に会うわけではないけれど、ふと「元気かな」と気になったり、困っていれば助けたいと思ったりする。

そんなふうに心のどこかに留めている人は、やはり友だちなのだと、あらためて気づかされる。

 

■179ページ 「友だちになりたい」という直感

「鶴瓶の家族に乾杯」で偶然声をかけたチーちゃん。

年に一、二度しか会わないのに、気づけば大切な友だちになっていた。

大雨や猛暑のときに「大丈夫?」とLINEを送ったり、用事もないのにメールをしたり──その距離感がまるで小学校の同級生のようで、読んでいて胸が温かくなった。

 

■184ページ 自分を見直すバロメーター

友だちに対して「得になるか」「いつか仕事につながるか」といった下心を持つと、フェアな関係はたちまち崩れる。

金銭の貸し借りもしない。

損得のない関係であるかぎり、会う頻度や年齢差に関係なく、その人は自分にとって大事な友だちである──この言葉が強く胸に刺さった。

 

目次

まえがき

第1章 今日が幸せならば、それでよし

第2章 七十にして始める

第3章 老いてゆくカラダ

第4章 友だちはかくあるべし

第5章 最期に向けて

 

著者紹介

阿川佐和子さん(1953年、東京都生まれ) 

エッセイスト・作家。テレビキャスターとして活躍後、エッセイや小説で多数の受賞歴を持つ。

『聞く力』がミリオンセラーとなり、幅広い世代から支持されている。

 

著者は、「副作用のある薬に頼るより、ラーメンを美味しく食べて栄養をつけるほうが、結果として元気に長生きできる」と語る。

不足しがちな たんぱく質・脂質・カロリーをしっかり摂ることが、免疫力・血管のしなやかさ・活動のエネルギーを支える。病気になりにくい体は、食事によって内側からつくられるという。

 

また、健康診断の基準値は「大勢の平均」であり、画一的な目安に自分を合わせる必要はない。多少数値が外れていても、日々の生活の質が保たれ、自分の体がどう感じているかのほうが大切だと指摘する。

 

現代の日本人にとって本当に怖いのは、摂りすぎではなく「節制しすぎ」による低栄養だという。

過度な食事制限や粗食は、筋肉量の低下やフレイルを招き、心身を弱らせてしまう。

 

■ラーメンとの付き合い方(著者からのアドバイス)

・脂肪燃焼やたんぱく質の合成が高まる 昼に食べるのが原則

・ラーメン単体でなく、チャーシュー・卵・野菜などのトッピング、チャーハンや餃子などのサイドメニューを加えると、栄養が補え、糖質の吸収もゆるやかになる。

・食後に歩くことで、インスリンの代わりに血糖値の上昇を抑えられる。

 

■「美味しさ」と「生きる力」

人生100年時代、ただ長く生きるだけでは意味がない。

ラーメンには、チャーシュー、メンマ、キクラゲ、卵、野菜、もやし、脂、スープ…と多様な食材があり、五感を刺激しながら楽しめる。

美味しいと思える幸福感は、何にも替えがたい。

 

食べることは楽しい行為であり、どう生きるかは自分で決めるもの。

人はいつか必ず死ぬ。だからこそ、好きなものを我慢し続け、健康診断の数値だけを気にして縮こまって生きる100年より、

美味しいものを笑顔で食べ、頭も体も心も元気に動き続ける人生のほうが価値があると、著者は強調する。

 

罪悪感はコルチゾールを増やし、老化を早める。ストレスこそ体を弱らせる最大の敵だ。

ラーメンに限らず、「適度な我慢」はむしろ健康を損なうことがある。

ぼく自身も、著者のこの考え方に深く共感した。

 

■目次

はじめに

人気ラーメンスタイル別 栄養成分比較表

第1章 「ラーメン=不健康」の常識を疑う

第2章 「減塩・減脂」信仰のワナ―最新エビデンスで見る塩分・脂質の事実

第3章 糖質制限ブームの落とし穴

第4章 美味しさの神経科学―なぜラーメンは私たちの脳と心を満たすのか

第5章 和田秀樹流「罪悪感ゼロ」ラーメン実践ガイド

おわりに 

参考文献

 

■著者紹介

和田秀樹さん

精神科医 

1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。

東大病院精神神経科助手、米国メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。老年精神科医として30年以上高齢者医療に従事。

 

 

橋、ガッセキ、コブラ、スフィンクス、真珠貝、鳩、うさぎ、トカゲ、キャット&カウ、下向きの犬、シャバーサナなど、この本で紹介されているポーズは、どれも経験したことがあるものばかりだった。そのため、リラックス、自律神経の調整、安眠、疲労回復といった効果の説明がすっと入ってきて、行為と効果が自然につながった。

ただ動くのではなく、「なぜそれをするのか」を理解して実践する意味を改めて感じた。

 

股関節は硬いので、完璧には動かせない。

それでも、心地よいところまでで十分とする。

習慣として続けてきたことで、以前より体が動きやすくなった変化を確かに感じている。

 

椅子でも、マットでも、立位でもできるヨガ。

そのとき、自分の体や心がどう感じているのか。

いまの自分を静かに見つめる時間。

自分のために確保した貴重な時間。

自分をいたわる時間。

ヨガは、自分を大切にするための最高のセルフケアだと思う。

 

日頃は忙しく、呼吸が浅くなりがちだ。

胸式呼吸になってしまうからこそ、ゆったりとラクになれる時間が必要になる。

こわばった体をゆるめ、疲れやすさを手放し、いつか転倒などの怪我を防ぐためにも関節の可動域を広げていきたい。

 

自分を責めない。人と比べない。そのままの自分でよい。

今日はどんな気分なのか。本当は何を望んでいるのか。イライラしてしまうのはなぜなのか。

内側の声に耳を傾ける大切さを知る。

 

丹田からの呼吸は、深くリラックスできる呼吸法。

「マインドフルネス」とは、呼吸と感覚を大切にし、ただ“いまここ”に意識を向けること。

この繰り返しが、心と体をやわらかく整え、健やかな暮らしを静かに調和させてくれるのだと思う。

 

●目次

はじめに

動けないほど疲れ切ったあなたへ

体が硬い人ほどヨガが向いている

心がざわついたら体を感じてみる

上手な呼吸が体をラクにする

 

第1章 寝たままヨガ 

〔背中がバキバキに疲れていたら〕簡単な魚のポーズ

〔体全体が疲れていたら〕仰向けの三日月のポーズ ほか

 

第2章 座ったままヨガ 

〔疲れにくい体へ〕股関節ほぐし

〔ぽっこりお腹の解消に〕座位のねじりポーズ ほか

 

第3章 動きのあるヨガ 

〔全身の疲れをサクッと取るなら〕伸びて前に倒す

〔眠くてぼんやりするとき〕左右にでんでんだいこ ほか

 

第4章 心のヨガ 

快も不快も、あっていい

そのままのあなたで大丈夫

今、ここを丁寧に味わう

手放すことで見えてくるもの

習慣化のコツ

朝にするヨガ

 

おわりに

 

●著者紹介

鈴木陽子さん 

1976年鹿児島県生まれ。2005年より東京でヨガ指導を開始。

「今の自分に気づくこと」を重視するクリパルヨガを学び、2008年に教師養成コース修了。現在は福岡を拠点に、平日毎朝の「朝ヨガオンライン」を継続配信している。

米国クリパルセンター公認ヨガ教師(RYT200)。

 

【No2094】1分、私をいたわるヨガ 40代以降の疲れにくい体をつくる 鈴木陽子 エムディエヌコーポレーション(2025/06)

介護ロボット、オンラインサロン、シニア向けのテレビ番組や映画、情報、商品──。

シニアが求めるものを、求めている人にきちんと届けていくこと。それが同世代の暮らしを豊かにし、ひいては社会全体を動かす力になるという視点が印象的だった。

 

著者は、シニア世代が自分の欲求を満たし、贅沢を楽しむことこそ日本経済への大きな貢献になると語る。

「消費者として世の中のサービスや商品を変えていく力を持っているのは、実はシニア世代である」という指摘は、これまでの“節約・我慢”のイメージを軽やかに裏返す。

 

健康が一番大切であることは前提としてある。

お金は使ってこそ意味がある。稼いだ分だけ、好きなことに使い、人生を豊かにする。 

楽しいことをしたい、美味しいものを食べたい、おしゃれをしたい、素敵な場所に行きたい、面白い仲間がほしい、恋がしたい──。

こうした欲を「年齢を理由に」抑え込むのではなく、やってみたいことを素直にやることが、老後を楽しく幸せに過ごす秘訣だと述べられている。

 

最終的には、

「自分はどう生きたいか」「何を大事にしたいか」を自分の頭で考え、自分の判断で選ぶ。 

「自分の人生は自分のもの」という感覚を取り戻すことが、“楽園”と思える老後を実現するための土台になる──そのメッセージが心に残った。

 

■目次

はじめに

第1章 「常識」知らずな私の幸せすぎる毎日

第2章 「何も遺さない」と決めて豊かに老いる

第3章 シニアが笑えば日本経済は回る

第4章 シニアの楽園が潰されないために

第5章 第2の人生を「楽園」にしよう

 

■著者紹介

和田秀樹さん 

1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。幸齢党党首。

東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は「和田秀樹 こころと体のクリニック」院長。

30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わる、高齢者専門の精神科医。

ミステリーでは、犯人や悪人が登場人物の中にいることが鉄則だ。しかし物語の終盤になって突然現れた人物が「じつは犯人でした」という展開は、あり得ないし面白みに欠ける。

主人公と関係のある人物、つまり身近な誰かが悪人であるほうが物語としては魅力的だと思いながら読み進めたが、それが本当に当てはまるかどうかは最終盤まで確定できなかった。

 

本作は『方舟』と同じく、極限状況のクローズドサークルもの。

読み終えてから冒頭を振り返ると、伏線の張り方とその回収の見事さに唸らされた。

閉鎖的な環境が人間の精神に与える影響は大きく、極限状態の中で理性が少しずつ崩れていく様子がリアルで、人間の怖さを改めて考えさせられる。

 

40ページには「楽園」の平面図が掲載されている。

母屋、物置小屋、畑などの位置関係を把握するため、読み進める中で何度も参照することになった。

 

物語の概要 ✦

亡き両親から不動産を譲り受けた迫田康之は、失踪した賃借人・海原早苗の遺留品整理の際、群馬の山奥にある謎の物件の存在を知る。

切り立った岩壁に囲まれたその場所は「楽園」と呼ばれていた。

 

恋人の沙織とともに探索に向かった康之は、殺人・恐喝致傷・放火などの罪を犯した六人の“住人”――小田島悟郎、矢林慎吾、三國聡、芹澤涼平、山田貞義、宮野佳子――に拿捕されてしまう。

 

脱出の条件は、「誰か一人を殺さなければならない」。

 

主人公の逡巡 ✦

康之の心の揺らぎがもっともよく表れているのが、133ページの一節だ。

 

僕は時折自分の心の奥に手を差し入れて、そこにある安全装置を撫で回した。(中略)

人を殺したくない。あまりにも当然の感情を、僕は何度も反芻する。(中略)

しかし、本当にその解除方法を知らないままでいいのか?

「楽園」に閉じ込められた今、それは当然の備えではないのか?

 

「安全装置」という比喩が印象的で、人間が持つ倫理観の脆さと危うさが静かに浮かび上がる。

極限状況に置かれたとき、理性はどこまで保たれるのか――本作の核心がここにあるように感じた。

 

目次 ✦

プロローグ

1 旅行

2 楽園

3 事件

4 練習

5 失楽

 

著者紹介 ✦

夕木春央さん

2019年「絞首商会の後継人」で第60回メフィスト賞受賞。同年『絞首商會』でデビュー。『方舟』で「週刊文春ミステリーベスト10国内部門」「MRC大賞2022」を受賞。

55億円が消えた。その“理由”だけが、まだ見えない。 

地面師たちは互いを欺きながら生きている──その現実が、ページの奥から滲み出す。

 

積水ハウス事件の主犯とされた男が「自分も騙された」と訴えるところから始まる本書は、

地面師同士の複雑な思惑と嘘が絡み合う“闇の構造”を描いている。

 

ただ、読み進めてまず感じたのは圧倒的な読みにくさだった。

登場人物は多く、仮名・偽名・本名が入り乱れ、結婚や改名で名前が変わる者もいる。

事件に関わる物件も多岐にわたり、時系列も複雑で、誰がどの立場で何をしたのかが掴みにくい。

積水ハウス事件の相関図を何度も読み返すことになったし、55億円の行方も結局は霧の中のままだ。

 

しかし、この「わかりにくさ」こそが、地面師事件の本質なのだと思う。

関係者それぞれが「自分も騙された」と主張し、嘘と真実が入り組む。

地面師同士ですら一枚岩ではなく、互いを利用し、欺き合い、思惑が交錯する。

信頼を前提とするはずの不動産取引の場で、信頼そのものが崩壊している現実が静かに突きつけられる。

 

興味深かったのは、積水ハウス側の内部事情だ。

契約前に“なりすまし犯が干支を言い間違える”という決定的な違和感があったにもかかわらず、

それを見逃してしまった背景には、社長と会長の確執、

「登記を進めて成果を出したい」という組織の力学があったという指摘。

もしこれが事件の遠因だったとしたら──誰が最も得をしたのかを考えると背筋が冷える。

 

Netflixドラマ『地面師たち』で描かれた世界の“その後”を追う本作は、

エンタメのような整理された構図とはまったく異なる、

奇妙で不可思議で、どこまでも混沌とした現実を見せてくる。

 

「事実は小説より奇なり」とはまさにこのことだろう。

 

読みやすい本ではない。

だが、地面師という存在がどれほど複雑な地下茎でつながり、

互いを欺きながら生き残りをかけて動いているのか──

その“闇の構造”を知るには、避けて通れない一冊だと感じた。       

目次

序章 カミンスカスからの手紙、消えたキーパーソン、解明も解決もできていない

第一部 積水ハウス事件「主犯」の告白(残された謎を追え、ラスボスの正体、カネはどこに消えた?)

第二部 未解決地面師事件の「その後」(新橋「白骨遺体」事件の闇、汚されて戻らぬ土地、アパホテル「一二億詐欺」事件の真相)

終章

積水ハウスの社内権力抗争、詐欺と気付いていた可能性、複雑に絡み合う謎、詐欺師と詐欺師の騙し合い

 

著者等紹介

森 功さん

1961年、福岡県生まれ。ノンフィクション作家。岡山大学文学部卒業後、伊勢新聞社、「週刊新潮」編集部などを経て、2003年に独立。2008年、2009年に二年連続で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を受賞。2018年に『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞受賞

 

文化のバロメーターとして、書店は街に欠かせない存在だ。

本屋さんを愛する五人の作家が、本屋という空間のぬくもりや、そこに流れる時間の心地よさを伝えてくれる五つの物語を紡いでいる。ページを開くと、思わず「いまから本屋さんに行きたい」と思わせるような、やわらかな気持ちが広がる。

 

豪華な顔ぶれの作家名を眺めているだけで、それぞれの作風が自然と頭に浮かぶ。きっとサスペンスや警察ものではなく、人が傷つくような酷い行為も出てこないだろう。安心して身を委ねられる、静かであたたかなドラマが描かれているのだろうと想像してしまう。

 

本屋さんにまつわる言葉の数々が印象に残った。どれも、本屋という場所をそっと覗き込むような、すてきな一節だった。

 

●9ページ「続きは書店で」

悩み事は口にした瞬間に、もう半分ほど軽くなる。

知らない相手だからこそ、素直に思いを話せることもある。

占いは「隠す」ものではなく、むしろサービス業に近い。

だからこそ、楽しい空間でやりたい──そんな気づきが語られていた。

 

●39ページ

大きな変化はそうそう起きないし、望んでもいない。

それでも、本がやってくる。その小さな出来事が、暮らしにそよ風を吹かせる。

それだけで、ありきたりな毎日が少し愛しくなる。

 

●140ページ「手に取って見てみろよ」

比べて、確かめて、ゆっくり自分の好きなものを選んでほしい。

ほら、手に取って見てみろよ──その言葉のやさしい誘いが、胸に残る。

 

●206ページ「見晴らし書店の一日」

本屋とは不思議なものだ。

どれだけ本を手に入れても、お腹は満たされないし、暖も涼も取れない。

それでも、街に一軒も本屋がなかったら、きっとさびしく、物足りなく感じるだろう。

生活に必須ではないものを売っているようでいて、

心の窓を開き、見晴らしのいい風景を眺めるためには欠かせないものを扱っている──

そんな本屋の本質が静かに語られていた。

 

●213ページ

本屋では、さまざまな人の趣味嗜好がふと見える瞬間がある。

けれど、踏み込まず、ただ受け流す。

どんな本を毎日買おうが、犯罪ではないし、かまわない。

どんな仕事をして、どんな暮らしを送っているのか、少し想像するくらいだ。

本を媒介に、お客さまと直接・間接に交流できる。

そのことが、本屋の仕事を好きだと思わせてくれる──そんな言葉が印象に残った。

 

 

 

目次

続きは書店で 瀬尾まいこ

歌うように生きて 一穂ミチ

手に取って見てみろよ

小鳥たち 凪良ゆう

見晴らし書店の一日 三浦しをん

 

 

著者等紹介

凪良ゆうさん

滋賀県生まれ。『流浪の月』『汝、星のごとく』

瀬尾まいこさん

大阪府生まれ。『そして、バトンは渡された』『強運の持ち主』

坂木司さん

東京都生まれ。『ワーキング・ホリデー』『和菓子のアン』

一穂ミチさん

大阪府生まれ。『ツミデミック』『スモールワールズ』

三浦しをんさん

東京都生まれ。『まほろ駅前多田便利軒』『舟を編む』

 

【No2090】本屋さんのある街で 凪良ゆう、瀬尾まいこ、坂木司、一穂ミチ、三浦しをん 文藝春秋(2026/05)