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朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

魅力あふれる自然には、同時に多くの危険も潜んでいます。

例えば、毒のある球根を誤って食べないよう、家庭菜園と花壇は必ず場所を分けて育てること。これは「あり得る危険」として強く記憶に刻みました。

海では、高波や津波にさらわれる危険があります。足がつる、滑って転ぶ、満ち潮で岸に戻れなくなるなど、思わぬ事故につながる場面も少なくありません。

危険な場所や毒を持つ生物・植物、土砂災害の恐れがある場面には近づかないことが基本です。

そして「何が危険なのか」を一般的に知っておくことが、事故の可能性を減らす第一歩となります。これこそが、楽しく遊ぶための“転ばぬ先の杖”です。

 

本書は、山・川・海などアウトドアに潜む危険を豊富な図版とともに「最低限の知識」として解説しています。危険な場面に遭遇したときは、冷静さを失わないことが肝心です。

危険を避けるためには、事前に「起こり得る危険」を知り、想定しておくことが大切です。自然は魅力に満ちていますが、同時に危険も多い。その理解が、楽しい思い出を安全に刻むための鍵となります。

 

さまざまなアウトドアフィールドに潜む危険を知ることは、自分の危機察知能力を磨き、さらに研ぎ澄ますための有効な方法だと感じました。

 

目次(抜粋)

はじめに

この本の使い方

場面別危険インデックス

足がつる

一酸化炭素中毒

溺れる

火山ガス

火事になる

カセットボンベ爆発

風に阻まれる

滑落

カヤックの事故

危険な生物

寄生虫

靴の選択ミス・破損

クラックに落ちる

車のスタック

高山病

直火のたき火事故

食中毒

雪庇を踏み抜く ほか

おわりに

さくいん

著者紹介

 

大蔵喜福さん

1951年、長野県飯田市生まれ。

1979年、世界初のヒマラヤ三山縦走(ダウラギリ2~3~5峰)を達成。

1986年、厳冬期チョモランマ北壁に挑み、最高到達点記録8450mを樹立。

1990年から30年間、アラスカ大学デナリ(マッキンリー)気象観測プロジェクトに従事し、27回登頂。

カヌー冒険では、1978年瀬戸内海初横断、1981年黒部上廊下初下降、1987年朝鮮海峡横断などを達成。

著書『デナリ風の研究』で第3回秩父宮山岳賞を受賞。

 

 

【No1945】アウトドアの危険事典 キャンプ 登山・山歩き 川・海のレジャー 大蔵喜福監修 成美堂出版(2025/10)

山奥で発見された遺体は、顔が潰され、手首が切断され、歯が抜かれ、髪も切られていた――まるでホラーのような衝撃的な幕開けである。

崖下に遺棄された身元不明者の発見から事件は始まる。

死体の正体は誰なのか。

犯人は何者なのか。

その答えに至るまで、数々の要素が絡み合い、地道な捜査が積み重ねられていく。地方新聞に掲載された声掛け事案への警察対応を批判する投書、失踪した父を探す少年等々――こうした断片が少しずつ集まり、終盤で驚くべき真実へと収斂していく。畳み掛ける展開は圧巻であり、伏線と思われた細部が見事に組み合わさる瞬間には驚きと興奮を覚えた。

 

目次

六月二十九日 顔のない死体

六月三十日 小さな来訪者

七月一日 欠けていく月

七月二日 もつれた過去

七月三日 リストの名前

七月四日 死んでいた男

七月五日 破られた約束

七月六日 あるはずの光

 

著者略歴

櫻田智也さん

1977年北海道生まれ。埼玉大学大学院修士課程修了。2013年「サーチライトと誘蛾灯」で第10回ミステリーズ!新人賞を受賞。17年、同作を表題作とした連作短編集でデビュー。18年、収録作「火事と標本」が第71回日本推理作家協会賞候補。21年、『蝉かえる』で第74回日本推理作家協会賞および第21回本格ミステリ大賞を受賞。

不正と陰謀にまみれた悪徳銀行「箱根銀行」を、天才詐欺師で司法書士の東雲が鮮やかに追い詰めていく――痛快無比のエンターテインメント作品。

箱根銀行に勤める親友・燎原は、女性に貢ぐため二百億円を横領したと濡れ衣を着せられ、藪の中で自ら命を絶った。東雲はその無念を晴らすべく、銀行を壊滅させる計画に乗り出す。不動産や未公開株取引、燎原の妹・杏子と仕掛ける社内不倫報道など、次々と罠を張り巡らせていく。

粉飾決算の暴露など、展開があまりに鮮やかでスムーズに進むため、緊張感よりもむしろ一気に読み進めてしまった。もちろん、中山七里らしいどんでん返しも用意されており、意外な結末が最後まで飽きさせない。

近年の作品の中でも群を抜いてスッキリとした読後感があり、痛快さと面白さが際立つ一作だと感じた。シリーズ化されれば、さらに人気を集める予感がする。

 

目次

第一章 Money, Money, Money  

第二章 借金大王 

第三章 金持ちさんちの貧乏人 

第四章 あのカネを鳴らすのはあなた 

第五章 金もうけのために生まれたんじゃないぜ

 

著者紹介

中山七里さん

1961年、岐阜県生まれ。2009年「さよならドビュッシー」で第8回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、翌10年にデビュー。同作は映画化もされ、「岬洋介」シリーズとしてベストセラーとなる

著者は元NHKアナウンサー。

テレビ業界の凋落は、決して最近始まったことではありません。かつて新聞が「終わった」と言われたように、今や「テレビもオワコンではないか」と囁かれています。

先日、全国規模のテレビ局で多くのアナウンサーが退職したという話を耳にしました。

広告収入はネットの半分にまで落ち込み、若者の中には一日もテレビを見ない層が増えています。かつて就職人気ランキングの上位常連だったテレビ局も、今では100位圏外に沈んでいます。

 

著者は、衰退が止まらないテレビ業界をデータを駆使して分析し、現実と未来を客観的に描き出しています。

173ページより

「大まかな予想ではありますが、今から20年後には、テレビ番組をリアルタイムで視聴する人は3割程度にまで落ち込み、録画視聴やネット視聴を含めても、日常的に『テレビ番組』を見る人は国民の半数に満たなくなるのではないでしょうか。テレビは『テレビ番組を見るための機械』ではなく、『YouTubeやNetflixを大画面で楽しむための機械』になると思われます。」

 

さらに著者は、動画の「パーソナル化」という潮流を指摘します。

128ページより

「数社のテレビ局が何百万人に向けて番組を流す時代から、何百万、何千万の個人が番組を発信し、その中から自分に合ったものを選ぶ時代へと転換している。かつてはテレビ局だけが可能だった動画制作・配信も、今やスマホやPCで誰でも気軽にできるようになり、人々はテレビ局制作の番組よりも個人制作の動画を好んで見るようになっている。」

 

著者はテレビに対して前向きな提案も示しています。

テレビ局に蓄積された膨大なコンテンツを活用すべきだというのです。

134ページより

「過去に放送した番組やニュース映像、さらにはお蔵入りになった映像まで、あらゆるコンテンツを自由に視聴できるようにすれば、多くの視聴者を獲得できるのではないでしょうか。」

 

このままでは残酷な未来が待っています。

ネットでのパーソナライズされた世の中の流れを見据え、膨大な蓄積されたコンテンツを活用するなどの前向きな提案を受けて、現実的にどのように実行していけるのかが、テレビ業界がオワコンになるのかならないのかの今後の鍵となります。

187ページより

「テレビが言論の砦として存在し続けるのか、それとも恐竜のように完全に消滅してしまうのか。それは、テレビに向けられた不信や批判を払拭し、国民から『やはりテレビは必要だ』と思ってもらえるかどうかにかかっています。」

 

 

目次

はじめに

第一章 テレビ離れはここまで進んだ

第二章 落ち込む収入、広告はネットの半分に

第三章 就職人気ランキング100位から消滅

第四章 テレビへの信頼性はなぜ落ち込んだのか

第五章 テレビからネットへ、なぜ主役は交代したか

第六章 テレビに残された優位性はあるのか

第七章 テレビが終わる日

おわりに

 

 

著者等紹介

今道琢也さん

1975年大分県生まれ。99年、京都大学文学部(国語学国文専修)卒、NHK入局。十五年間アナウンサーとして勤務ののち2014年に独立し、インターネット上の文章指導専門塾「ウェブ小論文塾」を開講する

殺人事件などで注目を集める警視庁捜査一課に比べ、窃盗犯を相手にする捜査三課は地味な存在だ。

しかし、その現場を一目見ただけで手口を見抜き、ピッキングの痕跡から瞬時に真犯人を特定できるほどの目利きの力を持つのが、盗犯捜査を専門とするベテラン刑事「ハギさん」萩尾警部補である。

彼の弟子であり相棒の「お嬢」武田秋穂とともに、職人気質の鋭い観察眼で窃盗犯を追い詰めていく。

二人の姿に自然と物語へ引き込まれ、派手さはないが味わい深い刑事ドラマとなっていた。

 

目次

常習犯

消えたホトケ

職分

正当防衛

目撃者

粘土板

手口

 

著者紹介

今野 敏さん

1955年、北海道三笠市生まれ。上智大学在学中の1978年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。卒業後、レコード会社勤務を経て作家活動に入る。

2006年『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞、2008年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞を受賞。2017年には「隠蔽捜査」シリーズで吉川英治文庫賞を受賞。現在は「空手道今野塾」を主宰し、空手や棒術の指導も行っている。

命をもって罪を償うこともある。

だが、生き続けることで償う方が、より辛いことなのかもしれない。

 

ホテルには、さまざまなお客様が仮面を被ってやって来る。

383P

山岸尚美は続けた。

「心に仮面を持っていない人なんていません。時に被り、時に外す。そうして生きているんです。だからこそ人生は豊かで楽しいものになる。私はそう信じています」

「人生がね……」

女性ホテルマンの女神のような微笑みを見つめながら、浩介は思った。――これもまた仮面なのかもしれない、と。

 

ホテル・コルテシア東京で開催される『推理小説新人賞』受賞者にまつわる殺人事件容疑と、弁護士である浩介の父・新田克也が三十年前に担当した殺人事件裁判の被害者家族に関わる事案。

二つの事件が同時並行で進み、警察との連携のもと事実が次第に明らかになる。

現在進行形の事件と並行して描かれる浩介と父親との関わり。

仮面の下に隠された登場人物たちの過去が徐々に明かされていく。

 

警察を辞めてホテル・コルテシアの保安課長となった浩介と、ホテルマンとしての誇りを胸にお客様に接する尚美――「女神」と称される彼女との名コンビが、再び活躍し事件を解決へと導いていく。一日で一気読み必至の展開だった。

 

<目次>

プロローグ ほか

著者紹介

東野圭吾さん

1958年大阪府生まれ。大阪府立大学工学部卒業。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。

•1999年『秘密』で第52回日本推理作家協会賞

•2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞・第6回本格ミステリ大賞

•2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で第7回中央公論文芸賞

•2013年『夢幻花』で第26回柴田錬三郎賞

•2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞

•2019年 第1回野間出版文化賞

•2023年 第71回菊池寛賞

•2024年 第28回日本ミステリー文学大賞

多彩な作品を生み出し、その功績により2023年に紫綬褒章を受章。代表作に「マスカレード」シリーズをはじめ、『分身』『白夜行』『幻夜』『あなたが誰かを殺した』『クスノキの女神』『架空犯』など著書多数。

著者は大蔵省から財務省へと、半世紀にわたり25年間勤め上げた人物。

財務省の表と裏を知り尽くし、誰も正面から異を唱えられないほど「財務省OB最強キャラ」という印象を受ける。

竹中平蔵氏の懐刀として、また安倍晋三元総理のブレーンとしても知られる。

在職中は一度も論破されたことがなく、価値判断の議論には踏み込まず、白黒がつく論点だけを徹底的に議論する「すご男」。

客観的な根拠を駆使して説明するため、反論の余地を与えないのだ。

 

目次

はじめに 運命の悪戯で入省した私が財務省の裏を知り尽くす理由

第1章 私が見た財務官僚のホンネ

(「キャリア」と「ノンキャリア」のあいだの高い壁、財務省は本当に「秘密警察」なのか ほか)

第2章 「増税カルト」はなぜ生まれたのか

(増税カルトの「教祖」は宮澤洋一である、消費税にしかけられた財務官僚の罠 ほか)

第3章 トランプに勝てない「財務省主導外交」

(日本の官僚は「アメリカ」をどう見ているのか、アメリカ民主党と親和性の高い日本の官僚 ほか)

第4章 「財務省解体論」のファクトチェック

(小泉構造改革で格差は広がったのか、竹中平蔵は日本を衰退させた売国奴なのか ほか)

おわりに 「感情」ではなく「ファクト」がすべての問題を解決する

 

著者プロフィール

髙橋洋一さん

嘉悦大学教授、株式会社政策工房代表取締役会長。1955年東京都生まれ。

都立小石川高校(現・都立小石川中等教育学校)を経て、東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。

1980年に大蔵省(現・財務省)入省。理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)などを歴任。小泉内閣・第1次安倍内閣ではブレーンとして活躍。2008年退官。

その後、2020年10月から2021年5月まで内閣官房参与を務める。著書に、第17回山本七平賞を受賞した『さらば財務省!官僚すべてを敵にした男の告白』(講談社)などがある。

職場のメンタルヘルスには、次の4つのケアと3つの予防が大切です。

4つのケア

• 自分自身によるセルフケア

• 上司などによるラインケア

• 産業医や保健師など事業場内の産業保健スタッフによるケア

• 精神科医など事業場外資源によるケア

3つの予防

• メンタル不調を未然に防ぐ一次予防

• 早期発見と適切な治療を行う二次予防

• 職場復帰を円滑に支援する三次予防

これらは相互に作用し合い、従業員の健康を守るために欠かせない取り組みです。

 

現代社会では、精神的な疾患を抱える働き手が珍しくなくなっています。だからこそ、企業にはメンタルヘルスへの正しい理解と対応力が求められます。

人は病気になるために働いているのではなく、幸せになるために働いている――この視点を忘れてはなりません。

例えば、コロナ禍でリモートワークが広がり、社内のDXも進展しました。その一方で、変化についていけずに不安を抱える人もいます。

 

メンタルヘルス不調への知識が乏しく、どう対応すればよいか迷う方には、この本が大きな助けになるでしょう。

例えば、

• 心の疾患と治療法

• 事業場内での予防の仕方

• 産業医や保健師、衛生管理者など専門職との連携方法

• メンタル不調者への接し方・注意点

など、職場で直面するメンタルヘルスの基本と対応が体系的に学べる本でした。

 

目次

はじめに

職場メンタルヘルスの全体像

第1章 職場メンタルヘルスの基本ポイント

第2章 職場でみられる主な心の病

第3章 メンタルヘルス対策における4つのケアと3つの予防

第4章 心の病に関わる専門職

第5章 部下・周囲のメンタル不調に気づいたら

第6章 休職から復職までの対応の実際

第7章 ストレスチェック制度の基本知識

第8章 職場メンタルヘルスにおけるケーススタディ

巻末資料/索引  引用・参考文献/著者紹介

 

著者紹介

角田拓実さん

株式会社サンポチャート代表取締役。医師・産業医。

愛知医科大学医学部卒業後、大学院在学中に自身がメンタル不調を経験。復職後も生産性が上がらず退職を選択したことから、職場のメンタルヘルス不調防止に強い関心を持ち、産業医へ転向。

株式会社豊田自動織機で専属産業医として3,000人以上の従業員の健康管理に従事。現在は株式会社サンポチャート代表産業医として東海地方を中心に活動し、100を超える事業所でストレスチェックや面談を実施。累計5,000件以上の面談経験を持ち、事業者・従業員双方への支援に定評があります。

また、労働衛生コンサルタント学習コミュニティ「労コン突破塾プライムエッジ」を主宰し、500人を超える医師会員が参加。

保有資格:医師免許、博士(医学)、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント(保健衛生)、健康経営エキスパートアドバイザー。

 

【No1938】職場メンタルヘルスの基本と対応がよくわかる本 ストレスチェック、「全企業」で義務化へ!角田拓実 秀和システム新社(2025/10)

堂場瞬一の犯罪小説。

今回は、彼にとって少し異色に感じられる短編集だった。

 

罪がちりばめられていた。

最後に収められた「消えない目」が強く印象に残った。

けっして命の危険が迫るわけではない。

ただ、いつ終わるとも知れない監視の視線を、一生涯浴び続けることになる。

その想像だけで胸が押しつぶされるような重苦しさが広がる。

読者もまた、気が滅入るほどの真剣さに引き込まれていく。

これこそ、恐ろしい復讐の形だと思った。

そして物語は、読後の余韻を楽しむべきかのように、読者の想像を広げられる余白を残して終わっていった。

 

収録作品

• 褒められた男

• ある後悔

• バイアス

• 暗い復讐

• 連鎖反応

• 家業

• 推さない

• コンビ

• 神の手

• 再起の日

• 逆襲

• 消えない目

 

著者プロフィール

堂場瞬一さん

1963年茨城県生まれ。2000年、『8年』で小説すばる新人賞を受賞。

警察小説、スポーツ小説など幅広いジャンルで活躍し、多彩な作品を世に送り出している。

 

 

少子化の進行により、企業の中ではミドル層が増え、若手層が減少しています。さらに、パワハラ防止法や働き方改革関連法などの法整備によって若者を守る動きが広がり、コロナ禍を経てリモートワークが普及しました。通勤時間の削減や柔軟な働き方、多様性の尊重、職場環境の改善などにより、今の若者世代の「働く意識」は以前とは大きく変化しています。

 

私自身、新卒で就職したころ「最近の若者は…」と呼ばれたことを思い出します。少子化の時代にあって、若者への理解を少しでも深め、うまく接することができればと思い、この本を手に取りました。

 

「せっかく採用したのに、なぜすぐ辞めてしまうのか」「どうすれば長く働いてもらえるのか」。働き始めて間もない若者が3年目で退職していくのはなぜなのか――その答えを知りたかったのです。読んでみると、目から鱗が落ちるような事実がありました。

 

125P 若者の離職の実態

• 8割の若者が転職を視野に入れている

• 6割は「転職前提」で就職を考えている

• 3割は3年以内に辞めている

 

132P 働く「新・三種の神器」

1. リモートワーク:着替えも通勤も不要。PCの前に座ればすぐ仕事ができる

2. フリーアドレス:ロッカーに荷物を入れ、好きな席に座れる

3. 服装自由:ネクタイ不要、クールビズやワンマイルウェアでリラックス

 

39P 転職理由は複合的

若者が突然辞めるように見えても、実際は小さな不満が積み重なった結果です。

• きっかけは上司の一言や服装など些細なこと

• しかし本質は仕事内容、人間関係、待遇など複合的要因

• 転職先候補が見えると、今の会社の「粗探し」が始まり、理由を固めていく

• 人事部に伝える時点では、すでに翻意できないケースが多い

若者は不満を人事部に直接訴えることはほとんどなく、気まずさを避けて「転職でリセット」する道を選びます。そのため周囲が気づいたときには、すでに退職準備が整っているのです。

 

152P 若者とのコミュニケーション極意十ヶ条

1. 3年で転職する前提で接する:タイパを意識し、自己研鑽とキャリアデザインを尊重

2. アンコンシャスバイアスをなくす:性別などの偏見や先入観を排除

3. ホワイト企業の定義を再確認:有休100%消化、誕生日休暇などを導入

4. 上下関係をなくす:役職ではなく「さん付け」、ITは若手に教わる

5. 最初に全体像を説明する:仕事の意味や分担理由を丁寧に伝える

6. 口頭ではなく文字で伝える:リンクやテキストで明確に指示

7. ホウレンソウ不要:信じて任せ、相手が聞いてくるまで待つ

8. 断定しない:選択肢を提示し、本人に決めさせる

9. 昔話をしない:タイパ重視の若者には不要

10. 傾聴の極意は質問しないこと:自然に相手が話し出すのを待つ

 

 

この本を通じて、若者が辞める理由は「突然」ではなく、複合的な積み重ねの結果であることを理解しました。

極意十ヶ条を意識することで、若者との接し方を少しずつ変えていけるのではないかと感じました。

 

 

 

目次

はじめに 

第1章 人事部は知らない!若手が辞める本当の理由

第2章 職場の不協和音、ミドル層も悩んでいる

第3章 未曾有の強気社員が生まれた背景を考察する

第4章 若者との溝、最大の理由は「キャリア権」

第5章 去っていった若者はどこへ行ったのか?

第6章 誤解を生まない、齟齬を生まない、軋轢を生まない 若手とのコミュニケーション十ヵ条

第7章 人が辞めても困らない職場へ―働くことは幸せの追求

おわりに 

 

 

著者等紹介

上田晶美さん

株式会社ハナマルキャリア総合研究所代表取締役。1983年、早稲田大学教育学部卒業。同年流通企業に入社し、広報、人事教育などを経験。1993年、日本初のキャリアコンサルタントとして創業。大学生の就職、社会人の転職、主婦の再就職の支援に携わる。これまでに約2万人の相談を受けてきた。現在は100人の講師が登録する会社を経営しながら、「仕事の悩みをゼロにする」ことを目標に活動中。テレビ、ラジオにも出演多数。都内の大学で講師を務める。

 

 

【No1936】若者が去っていく職場 人事部は知らない!若者の離職の本音 上田晶美 草思社(2025/06)