朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~ -2ページ目

朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

 

精神科の現場を「怖い世界」としてではなく、そこで生きる人々の弱さと強さが交錯する場所として描いた一冊。

著者自身の揺らぎが、患者との距離の取り方や治療の核心に深い説得力を与えている。精神科医療のリアルを知りたい人にとって、静かだが重みのある読書体験になると思う。

 

精神疾患の世界は、知らなければ知らないままでも日常生活を送れてしまう。しかし、必要以上の恐怖や偏見を抱いたまま距離を置くと、実際の姿を見誤ってしまうことがある。

本書は、精神科とはどんな場所で、どんな人が精神疾患で苦しみ、現場ではどのように向き合っているのかを、精神科救急の最前線に立つ現役医師が率直に描いた記録である。

 

統合失調症、認知症、アルコール依存症、双極性障害、うつ病など、重篤な患者とのやりとりが中心に据えられ、精神科の「きれいごとではない」現実が淡々と、しかし誠実に綴られている。著者自身の過去や日常も織り込まれており、読み手は精神科医という職業の内側にある揺らぎや葛藤にも触れることができる。

 

精神科の診療は、生きづらさを抱えた人が目の前に現れ、その苦しみを受け止める世界だ。受け止めすぎれば自分が折れてしまうし、突き放せば治療にならない。その絶妙な距離感を保ちながら、夜間も救急も途切れず続く現場の大変さが強く伝わってきた。

 

著者自身がアルコール依存やマッチングアプリへの依存を経験したからこそ、「安心できる」「信頼できる」という治療の核心に説得力が宿っているように感じた。

 

〈202ページ 癒されるという体験〉 

どの依存症でも、最も重要な治療は「人とのつながり」を取り戻すことだという。自己評価が低く、自信を失い、人を信じられず孤独を深めていく。

その人に必要なのは、「安心できる場所」「信頼できる人間関係」を一緒に育み、人から癒される体験を重ねることなのだと語られている。

 

目次

まえがき 悪い知らせ

第1章 閉鎖病棟は戦場だ(住所は病院/4半世紀を見つめるレジェンド/只今、神と交信中:「悪霊がついております」ほか)

第2章 のがれのがれて精神科(医者がうつになりまして/同期の笑顔が消えた日/「逃げる」コマンド:精神科医になったワケ ほか)

第3章 診られる側も、診る側も(オソマ:深夜の食事は命取り/熱心な家族:「あなたには精神科医の資格がない」ほか)

第4章 正常ってなんですか?(妄想エンターテイメント/精神科医は統合失調症がお好き/発達障害は育て方のせい?:その子らしさってなんだ ほか)

あとがき 人の心がわかるようになりますか?

 

著者紹介

駒木 爽さん

1980年代生まれ。大学卒業後は外科医を志すも挫折し、精神科医へ転身。30代で離婚をきっかけに自身もアルコール依存を経験。現在は精神科救急病院に勤務し、救急の最前線であらゆる精神疾患と向き合う現役精神科医。

 

 

 

【No2050】精神科医おどおど日記 閉鎖病棟24時、本日当直、あらゆる精神疾患寝ずに診ます 駒木 爽 三五館シンシャ フォレスト出版(2026/06)

 

本書は、多くのデータと具体的事例をもとに、日本のインフラが直面する老朽化の現実を冷静に描き出し、高耐久化技術の導入や住民参加型の取り組みなど、将来に希望を持てる解決策を提示する内容でした。

 

記憶に残っているのは、八潮市の道路陥没事故や笹子トンネルの天井板崩落事故といった痛ましい事例です。地震大国である日本にとって、インフラの保全と老朽化対策はまさに喫緊の課題だと改めて感じました。

 

高度経済成長期の1960〜70年代に整備された道路橋、トンネル、上下水道管などは、すでに建設から50年以上が経過しています。鉄筋コンクリートは耐久性に優れるとされますが、塩害などによって劣化することを知り、驚きを覚えました。多くのインフラが「50年程度の耐久」を前提に造られており、今まさにその寿命に達しつつあるのです。

 

限られた予算の中で建設し、維持していくことの難しさは、文字にすると簡単でも、現場では極めて重い課題です。インフラは「造ること」以上に、「造った後をどう維持するか」が重要であり、修繕だけでなく、寿命を延ばすための補強も欠かせません。

 

これからのインフラは、建設段階から長寿命化を見据えた設計が求められます。メンテナンスに十分な予算を確保できず、老朽化によって大きな事故が起きることだけは、何としても避けてほしい――読後に残った一番の思いでした。

 

目次

はじめに 

第1章 日本のインフラはどうなっているのか?

第2章 インフラはどのように劣化するのか?

第3章 「良いインフラ」をどう造るか?

第4章 「今あるインフラ」を長持ちさせるには?

第5章 地域のインフラはみんなで守る

第6章 インフラの「残された課題」

おわりに

主要参考文献

 

 

著者等紹介

岩城一郎さん

1963年、東京都生まれ。日本大学工学部工学研究所長・土木工学科教授。博士(工学)。東北大学大学院修士課程修了後、首都高速道路公団、東北大学を経て現職。コンクリート構造物の高耐久化やインフラのメンテナンスを専門とし、地域住民との協働による「橋の歯磨きプロジェクト」に取り組む。元土木学会誌編集委員会委員長。土木学会論文賞・技術賞、インフラメンテナンス大賞国土交通大臣賞など受賞

選挙で投票先を選ぶ際には、できるだけ多様な意見に触れたいと私は思う。

そして、可能であれば自分で情報を集め、自分の頭で整理し、最終的な判断を自分自身で下したいと願っている。

 

近年、有権者が候補者の意見や情報を得る手段として、SNSの重要性が一段と増してきた。

特に、候補者への誹謗中傷やデマが拡散した2024年の兵庫県知事選挙や東京都知事選の頃から、その影響力の大きさがより明確になったと感じている。

 

SNSやネット掲示板では、情報や偽情報が連鎖的に広がる事例が少なくない。

その典型として、似た傾向の投稿ばかりが反響し、異なる意見が排除されていく「エコチェンバー現象」が挙げられる。

 

自分の好む情報や価値観だけに囲まれていると、異なる視点が見えにくくなる。

「自分の意見が正しく、他の人が間違っている」という認識が強化されてしまう。

さらに、検索機能やSNSのおすすめ機能によって、ユーザーが自分と似た情報ばかりに触れる「フィルターバブル」という状態も生まれる。

 

こうした現象に陥りやすいネット環境だからこそ、

選挙に関するリテラシーを一人ひとりが身につけることの必要性と健全性が、ますます重要になっているのではないかと感じている。

 

■ 目次

はじめに 2025年の都議選と参院選

第1章 2024年の選挙シーンを席巻したSNSの台頭

第2章 2024年の兵庫県知事選で広がった闇

第3章 「選挙の神様」藤川晋之助

第4章 「ネット選挙」黎明期と公職選挙法

第5章 偽・誤情報を選挙から排除するには

第6章 間違いだらけのネット戦略からAI活用へ

おわりに

 

■ 著者紹介

髙橋茂さん

ソーシャル・コーディネーター/ネット選挙コンサルタント。

株式会社VoiceJapan、株式会社世論社代表取締役。「選挙ドットコム」顧問。

1960年長野県上田市生まれ。

2000年の長野県知事選で、ネットを駆使して田中康夫氏を当選に導いたことを契機に、政治家のネット活用を支援する会社を創業。

2006年、選挙データベースサイト「ザ・選挙」を立ち上げる。

 

【No2048】「AI議員」が誕生する日 SNS選挙が政治を変える 髙橋 茂 集英社(2025/12)

日本は世界有数の地震多発国であり、地震そのものを避けることはできません。しかし、被害をできるだけ遠ざける工夫や、被害を最小限に抑える備えは確実にできます。本書は、家がなぜ倒壊するのか、どのようにすれば被災を避けられるのかを、建築の専門家がわかりやすく示した一冊でした。

 

著者が特に警鐘を鳴らすのは、高度成長期や戦後復興期に、東京オリンピック・大阪万博の需要に合わせて突貫工事で建てられた住宅です。これらは耐震性が十分でないものが多く、まずは耐震診断を受けることが重要だと強調されています。

 

耐震基準の変遷にも触れられており、

1981年の新耐震基準:震度5強〜6程度に耐えることを想定

2000年以降の基準:震度6強〜7でも倒壊しにくい構造へ

といった指標が示されます。宮城県沖地震や阪神・淡路大震災などの甚大な被害を契機に、基準が強化されてきた歴史がわかります。

 

また、家の倒壊だけでなく、揺れの後に起こる二次災害への備えも欠かせません。

感電ブレーカーの設置、ガラス飛散防止フィルム、家具の固定や配置の工夫など、予算が少ないものからでも始められる対策が多数紹介されており、「できることから一つずつ」という姿勢の大切さを感じました。

 

目次

はじめに 日本列島は「常に震えている」という現実

1 あなたの家は「何年」に建てられましたか?―「危ない家」が残り続ける社会の裏側

2 見た目と実例でわかる「倒れやすい家」―形・開口・屋根・地盤の危険信号

3 家の中で死なないために―家具転倒・ガラス破片・生き埋めのリスク

4 揺れの後に来る災厄―津波・余震・火災から命を守る

5 災害関連死を防ぐ「TBK」の知恵―避難所の雑魚寝はなぜ危険なのか

6 家だけでは助からない―道路・延焼・緑で考える街の防災

7 集合住宅はどこが危ないか―アパート・RC・高層マンションの地震リスク

8 徹底解剖!あの「マンガの家」は安全?―野原家、野比家、さくら家、磯野家までを耐震診断

9 地震対策と被災後の暮らしをつなぐ―耐震工事、連絡、備蓄、ペット、在宅避難の実践

あとがき 1%の備えが、あなたの大切な人の未来を守る

 

著者紹介

森山高至さん

一級建築士、建築エコノミスト。1965年岡山県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、齋藤裕建築研究所に勤務。独立後は戸建住宅から大型施設まで幅広い設計監理に携わる。さらに早稲田大学大学院政治経済学部で経済学を修め、建築と経済の両分野に精通した立場から自治体の街づくりや公共施設のコンサルティングを行う。難解な建築の話題を一般向けに解説する識者として、テレビ・ラジオでも活躍。

金融機関、景気と物価、為替や株価、働き方、投資、NISA・iDeCo、貯蓄、税金、保険、社会保障制度など、社会人として知っておきたい「お金と経済の基礎」が一冊に整理されている。

自分の生活や人生を考えるうえで、こうした基本的な知識を身につけておくことは、やはり大切だと感じた。

 

本書は、「お金について知りたい」「不安がある」という人に向けて、社会人の基本としての“お金のしくみ”をわかりやすく伝えることを目的としている。

仕事や技術、スポーツなど、他の分野にも通じる普遍的な論理として、まず基礎を理解し、興味が深まれば応用へ進むという姿勢の重要性を改めて考えさせられた。

 

目次

まえがき

1 金融と経済の基本を理解する お金ってどんなもの? 

お金はなぜ生まれたか/物々交換から貨幣・紙幣へ/お金の3つの役割/現金からデータの時代へ ほか

2 景気・物価・為替・株価を学ぶ お金の動きを予測する 

景気はお金の循環の状態を示す/経済指標から全体の傾向を読む ほか

3 働き方とライフプランを考える お金を稼ぐ、使う 

賃金を決める要因(インフレ率・企業業績・労働需要)/正規と非正規/個人事業主の働き方 ほか

4 投資と貯蓄でインフレに備える お金を増やす、貯める 

株式・債券・投資信託/「お金に働いてもらう」考え方/インフレ時代の資産形成 ほか

5 税金・年金・保険のルールを知る お金を納める、将来に備える 

税金は48種類/国税と地方税/消費税のしくみ ほか

さくいん

 

著者紹介

永濱利廣さん 

第一生命経済研究所首席エコノミスト。

経済統計・マクロ経済分析を専門とし、政府委員や大学講師なども務める。わかりやすい経済解説に定評がある。

 

【No2046】図解社会人の基本 お金のしくみがわかるおとな事典 金融・経済「超」入門 永濱利廣 講談社(2025/12)

地学・歴史・文化・信仰・暮らし・登山など、さまざまな角度から「富士山」という存在を立体的にとらえ、奥深い魅力をわかりやすく解説している一冊。

雄大で神秘的な姿は日本の象徴として親しまれてきたが、その背景には、自然環境だけでなく、人々の生活や精神文化にまで及ぶ豊かな物語が息づいている。

 

富士山は天気の変化を読み取る指標となり、地域のソウルフードや湧水文化を育み、祭礼や信仰の中心としても長く人々の暮らしに寄り添ってきた。

 

標高3776mという日本一の高さに加え、山そのものに付けられた「異名」の多さも日本一であるという。

不二・不尽・不士・布時・富士・不死・八葉山・芙蓉(芙蓉峰)・蓬莱山・富岳(富嶽)・四方山・養老山・仙人山など、異表記は150以上にのぼり、古来より多様なイメージで語られてきたことがうかがえる。

 

富士山を「知る・読む・歩く」ための総合ガイドとして充実している。

富士山を「知識」としてだけでなく、「文化」「暮らし」「信仰」「体験」として総合的に理解したい人にとって、手元に置いておきたい一冊だと感じた。

 

目次

はじめに

第1章 富士山の知られざるひみつ

第2章 地学で解き明かす富士山のすがた

第3章 富士山が生んだ歴史と文化

第4章 富士山と暮らす地域のまめ知識

第5章 富士山をめぐる信仰と伝説の世界

第6章 富士山がもっと楽しくなる見方・登り方

巻末付録 富士山についてもっと知りたい!

主要参考文献・ウェブサイト

 

監修/富士学会

富士山と、その関連地域を対象として、自然科学から芸術、歴史、宗教の人文科学までを広く網羅し、富士山にちなんだ教育や、噴火を想定した防災など、総合的な領域の研究を進めている。富士山の本質と全体像の探求、関連地域の環境保全、防災、活性化などを目的として、学術大会・討論会・講習会などの開催、会誌・図書などの出版、関連教育・文化活動への協力と支援などをおこなっている。

誰でも騙される可能性がある──本書はその前提から始まる。

フィッシング詐欺、偽警察官、投資、ロマンス、架空請求……詐欺師は「権威で構えを崩し、恐怖で焦らせ、秘密で孤立させ、共感で安心させる」。ゆさぶりと寄り添いを巧みに織り交ぜ、最終的には「自分で決めた」と思わせる形にまで持っていく。これが詐欺の基本形だという。

 

詐欺は未然に防げる犯罪。

少しの工夫や習慣、家族との共有があれば、自分と大切な人のお金と情報を守ることができる。詐欺師が狙うのは鍵のかかっていない家ではなく、油断している心と情報の隙。準備と仕組みを整えることで、騙されにくい状態をつくれる。

 

本書は専門知識がなくてもすぐに実践できる内容で、「知ること」が最大の防犯になると感じた。

SNSから連絡が来てLINEへ誘導する手口が多く、メールの全文をAIにコピペして詐欺かどうか確認する方法も紹介されている。

 

狙われやすくならないためには、詐欺師の“逆”を行動として選ぶことが大切だと強調されていた。

 

人に相談しない → 相談する

 

すぐに行動する → 時間をかけて判断する

 

秘密を守る → 秘密にしない

 

確認しない → 正しいか確認する

 

自分は大丈夫と思う → 自分も騙されるかもしれないと自覚する

 

身近なところに詐欺の芽が潜んでいることを改めて実感し、日常の中で「立ち止まる習慣」を持つことの大切さを教えてくれる一冊だった。

 

 

目次

はじめに 「自分は詐欺に遭わない」その油断が、いちばん危ない

第1章 詐欺師が狙うのは、あなたの”心のスキ” 

第2章 これだけは押さえておきたい!最新の手口ベスト8と、その”巧妙すぎる仕掛け” 

第3章 お金をかけずに備えよう--”梅・竹・松”フィッシング詐欺対策術 

第4章 ”知識”と”仕組み”で備える--詐欺対策この”松・竹・梅”プラン 

第5章 だまされない人になる--自分はもちろん、家族も守る5つの習慣 

付録 詐欺Q&A &緊急対応マニュアル

おわりに あなたと、あなたの大切な人の財産を守るために 今日から小さな一歩を踏み出そう

 

 

著者紹介

倭文浩樹さん

防犯・警備の専門家。JSS代表取締役会長として35年以上現場に携わり、人的警備の重要性を軸に警備体制の構築と人材育成に取り組む。侵入・盗難・トラブルなどの防犯実務に精通し、「現場にこそ答えがある」を信条に活動している。

【No2044】警備のプロが教える 詐欺対策の新常識 あなたのお金と情報が狙われている!? 倭文浩樹 きずな出版(2026/01)

地政学を学ぶことは、地理的条件を手がかりに政治・経済・軍事を読み解き、国際社会全体の構造を理解することにつながります。

本書で特に印象に残ったのは、地図の描き方が国際認識に影響を与えるという指摘です。メルカトル図法ではロシアが実際より大きく見え、その「巨大な国土」のイメージが大国としての演出に利用されてきたという話は興味深いものでした。逆にアフリカは小さく描かれすぎるため、潜在力が過小評価されてきたという指摘も印象的でした。

 

128ページの「平和はバランスから生まれる」という言葉には強く賛同します。

兵法の「遠交近攻」は、隣国よりも遠方の国のほうが利害が少なく対立しにくいという考え方です。中国とヨーロッパの関係を見ても、この原理がよく当てはまります。

 

国際社会の平和を保つためには、アメリカ・ロシア・中国といった大国間の力の均衡が欠かせません。歴史を振り返れば、力のバランスが崩れたときに戦争という大きな代償を払ってきたことがわかります。

 

例えば、ロシアによるウクライナ侵略時、アメリカのバイデン大統領は米軍派兵の可能性を否定しました。もし対応を曖昧にしていたら、ロシア側の計算を狂わせ、抑止力として働いた可能性もあります。

また、トランプ大統領が「中国が台湾に侵攻した場合、アメリカ軍がどう動くかは明かせない」と述べたことも、緊張を過度に高めないための「戦略的曖昧さ」と言えます。高市首相の明確な発言とは対照的で、外交姿勢の違いが見えてきます。

 

欧州連合(EU)では、各国首脳が頻繁に顔を合わせています。実際に会って話すことで誤解や対立を防ぎ、協調を維持しているのだと理解できます。日本も韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)とシャトル外交を重ねることで、同じようにトラブルの予防につながっています。

 

第二次世界大戦から80年以上が経ち、悲惨な経験を直接知る世代が少なくなっています。だからこそ、歴史から学ぶ姿勢をこれまで以上に意識的に持つ必要があると感じました。

 

目次

まえがき 地政学が重要になった世界

第1章 地球儀からの視点

(超大国アメリカは海を制するー内向き姿勢で高まる世界紛争のリスク/「ランドパワー」は革命におびえる―ロシアと中国が高圧的な理由/中国がしゃにむに欲しい「深い海」―核の大戦略で不可欠な南シナ海 ほか)

第2章 世界を動かすシステム

(責任果たさず「おいしいとこ取り」するアメリカ―トランプ関税から見える論理/アクターのアメリカとシアターの日本―トランプ氏が中国・ロシアに苦戦する理由/トランプ氏が突き進む紛争仲介ビジネス―揺らぐ超大国の外交力 ほか)

第3章 時がもたらす変化

(戦後「80年」という時間が極右勢力を後押しする―第2次大戦の教訓の風化/核武装は「安上がり」ではない―万能でない究極の兵器/戦争を欲する独裁者の事情―軍事的功績が左右する地政学リスク ほか)

あとがき

参考文献

 

著者紹介

田中孝幸さん

日本経済新聞社で政治・経済・国際分野を担当し、モスクワ支局員・ウィーン支局長などを歴任。40カ国以上で現場取材を重ね、政財界・軍関係者・文化人など幅広い人脈を築いてきた。ウクライナ戦争では現地から実態を報じ、2025年11月にはロシア政府から入国禁止の制裁対象に指定された。著書『13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海』で八重洲本大賞、ビジネス書グランプリ2023(リベラルアーツ部門賞)などを受賞。

スポーツの現場には、それぞれのものづくりが生み出した多彩な物語がある。こだわり抜かれた道具には、製作者や使用者の思いが圧縮されるように詰まっているのだと、あらためて感じた。

 

大谷翔平さんのバットは、アメリカの「チャンドラー」社製で約4万円。硬質で、扱うにはフィジカルと高度なテクニックが求められる。

 

カーリングのストーンは1個7万5千円。カーリング発祥地である英国スコットランド・アルサクレイグ島の花崗岩から作られ、弾力性があり欠けにくい性質と、水分を吸収しにくい性質の2種類が使われている。

 

大相撲で使われる、竹かご一山分の塩は3千円。家庭でもおなじみの伯方塩業「伯方の塩」が用いられ、にがりと水分をほどよく含み、粒が大きいため盛り塩にしやすく、指からこぼれにくい。

 

羽生結弦さんのスケート靴は24万円。極端に硬い靴ではなく、初日から足に馴染む柔らかく軽い靴を選び、そこから大きな結果を生み出してきた。

 

神宮球場のグラウンド整備に使われる「トンボ」――正式名称は「グラウンドレーキ」。価格は6千円。摩耗や腐食に強く、使い勝手がよく自立もできる道具を、森田アルミ工業が製作している。

 

こうした道具の背景を知ると、世の中は大企業だけで回っているわけではないと気づかされる。名前はあまり知られていなくても、優れた技術や感覚を持つ職人や工場があり、そうした人たちがスポーツの現場や社会を静かに支えているのだと教えられた。

 

目次

はじめに

第1章 打つ

第2章 投げる

第3章 握る

第4章 着ける

第5章 知らせる

第6章 集中させる

おわりに

 

著者紹介

熊崎 敬さん

1971年、岐阜県生まれ。サッカー専門誌編集者を経てスポーツライター。難民・移民フェス実行委員としても活動中。

 

【No2042】大谷のバットはいくら?スポーツを支える道具とひとびとの物語 熊崎 敬 柏書房(2025/11)

本書は、現代で言う刑事事件にあたる五つの事例を取り上げ、江戸時代にどのような過程を経て刑罰が決定されていったのかを読み解く一冊。

盗みや火付、奉公先の主人の妻から恋文を受け取った下男、寄場人足から脱走した無宿人、物の怪に憑りつかれ親を殺した兄弟、女によるゆすり・たかりなど、多様な事件が扱われている。

 

江戸時代の刑罰決定の仕組みについては、これまで盲点だった。

時代劇の影響で「残虐な刑罰が主で、自白を常に強要していた」というイメージを持っていたが、実際にはより慎重で多層的な手続きが存在していたことに驚かされる。

 

特に印象的だったのは、物の怪憑きに責任能力があるかどうかという判断。

現代の刑法39条「心神喪失者の行為は罰しない」に相当するお裁きが、江戸時代にも存在していた点は新鮮だった。

 

また、死罪などの重罪は町奉行や三奉行、目付・大目付の評定所だけでなく、老中まで上げて慎重に検討されていた。

上部の意見に対して下部が異論を申し立てることが許され、その判断が採用される場合もあったという。自由な議論を通じて運営されていた様子がうかがえる。

 

公事方御定書の影響を受けつつも、細部まで厳密に規定されていたわけではなく、各奉行は過去の判例を参照しながら妥当な判決を導き出そうとしていた。

自白だけに頼らず物証を重視するなど、客観的な吟味を心がけていた点も興味深い。

 

目次より

はじめに

第一章 盗みと火附―甚吉一件

第二章 叶わぬ恋と艶書の果てに―新助と「かめ」一件

第三章 処罰か福祉か―寄場人足・安五郎一件

第四章 「物の怪」と責任能力―定吉・伝七兄弟一件

第五章 女による犯罪―「いよ」一件

おわりに

あとがき ヴァーチャル御白洲顛末とその後

主要参考・引用文献

 

著者紹介

和仁かやさん

早稲田大学法学学術院教授。

東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。

神戸学院大学法学部、九州大学大学院法学研究院准教授などを経て、2018年より現職。

専門は近世日本法制史。