モモは、丸い髪の毛がチリチリとした天然パーマの、小さな女の子です。いつもはだしで、少し変わった服装をしています。
よく見ると、青色の大きめのジャケットを羽織り、継ぎ接ぎのある黄色いワンピースを着ています。どれも体に合っておらず、ぶかぶかの服に包まれているようです。
モモは、この世でたった一人と言っていいほどの“聞き上手”。
動物たちの声さえ聞き取れるほどで、人の話を本当に聞ける人が少ないなか、その存在は特別です。
相手の話を遮ってしまう人が多い現代にあって、モモの姿勢はまぶしく映ります。
絵はどれも美しく、眺めているだけで心に何かが触れるようでした。
文字からも深い情感があふれ、胸に響くものがあります。
モモの純粋な世界観がぎゅっと詰まった、目の保養にもなる一冊でした。
小さなモモがだれよりも得意だったのは、ほかの人の話を聞くことでした。
ほんとうによく話を聞ける人は、ごくわずかしかいません。
モモは、この世でたった一人と言ってもいいくらいの聞き上手でした。
自分の人生は失敗だ、無意味だ――そう思い込んでいる人がいたとします。
ところが、その人はモモに向かって話しているうちに、その考えがまちがっていたと気づくのです。
自分は唯一無二の存在であり、世界にとって特別に重要なのだと理解するのでした。
モモはそんなふうに、人の話を聞くことができたのです。
あるとき、小さな男の子が、鳴かなくなったカナリヤを連れてきました。
それはモモにとってむずかしい役目でした。
カナリヤが再びうれしそうに歌い始めるまで、モモは一週間まるごと、その声に耳をかたむけ続けました。
モモは、あらゆるものの話を聞きました。
いぬ、ねこ、こおろぎ、ひきがえる。
それどころか、雨の音や木々のあいだを通り抜ける風の声まで。
すべてのものが、それぞれのやり方でモモに語りかけたのでした。
著者紹介
ミヒャエル・エンデ
1929–1995。ドイツを代表する作家。国際的な賞を多数受賞。
『モモ』『はてしない物語』などの作品は50以上の言語に翻訳され、累計発行部数は世界で3500万部に達している。
シモーナ・チェッカレッリ
科学者として半生を過ごしたのち、子どものころの夢を叶えるために絵の道へ。
2016年以降、世界中の出版社のために子どもの本や大人の本の挿絵を手がける。
現在は夫と2人の子ども、3つの国籍、4つの言語とともにスイス在住。
松永美穂
翻訳家、早稲田大学文学学術院教授。
訳書にベルンハルト・シュリンク『朗読者』(毎日出版文化賞特別賞)、
カトリーン・シェーラー『ヨハンナの電車のたび』(日本絵本賞翻訳絵本賞)など多数。
【No1969】『モモ(絵本版)』ミヒャエル・エンデ/作、シモーナ・チェッカレッリ/絵、松永美穂/訳 光文社(2024/10)
