2016年も終わりである。在宅医療カレッジには、昨年度から参加しているが、今回のテーマも大変興味深い。「超高齢社会を明るい未来にするための10人の提言」だ。
豪華なパネリストの方々からの提言は、今後の超高齢社会、大介護時代をどうするかを考える上で大変参考になった。
司会は、在宅医療カレッジ主催、医療法人社団 悠翔会 理事長の佐々木淳 さん。
3つのザブテーマに添って進められた。
1.医療と介護の課題とこれからのカタチ
西村周三さんより、6つのキーワードを頂いた。
①ケアの継続性
②ターミナルケア
③多世代共生
④住まいかた
⑤多機能
⑥地域(マクロからお隣へ)
秋山正子さんより、3つのキーワード
①つながる…どの人とどのように繋がっているか?
②支える…自分の力を取り戻すこと、重装備なしで終末期を支える
病院と自宅、施設を自由にいったり来たりできること。
③作り出す…多彩な立場で、身近な例で
宇都宮宏子さんより
訪問看護でみえてきた看護
・退院支援と退院調整
・退院支援は意思決定手段
・暮らしの場へ戻る準備
・セルフケア能力を発揮させる
・end of life期をどのように迎えるか?
加藤忠相さんより
「ケアとは環境を整えること」
困っている人を困っていない状態にすること。手続き記憶は体に残っている。本人が主体的に動くように、環境をつくる。
専門という枠に囚われない、はみ出した関係性が大事。
第1部のまとめ
医療と介護の課題
介護と医療の関係性はどうあるべきか?
医療と介護は必要に応じて、行ったり来たりできる、柔軟な関係性が求められている。なぜ、スムーズな関係ができていないのか?それぞれの施設や病院での縛りがあるからではないのか?
ひとつ気になった点がある。終末期に在宅から病院へ、または施設から病院へいったら戻って来れないという話である。病院から戻って来れるように、家族は奪還しなければならないという。なぜ、このような痛ましいことが起きているのか?
次の第2部のテーマになる。
第2部 施設から病院へ
小川利久さんより
施設のあり方について
施設は看取りまで考えたうえで、介護度が軽減すれば、社会福祉として地域に貢献する仕組みをつくる、ソーシャルインパクトの考え方が重要だ。
下河原忠道さんより
施設では、本人の心を動かすことを主眼とし、自分から社会へ心を開く仕掛けをしている。
浅川澄一さんより
サービスつき高齢者住宅について
サービスつき高齢者住宅には、拠点型、分散型などがある。高島平団地では、空部屋を利用した、分散型サービスつき高齢者住宅を実施している。分散型が許されるのは、サービス提供者は500m以内にいる条件を満たしているからだ。
サービスつき高齢者住宅の良い点は、介護、医療、診療、生活がまとまっている点である。必要に応じて行き来できる点である。
第2部 まとめ
施設という生活の場
住まいと住まい方を考えることで、医療との関わり方も変わる。
施設も在宅もそうであるが、介護家族のケアも重要である。住まい方には、家族を支える仕組みが必要である。居場所、社会サービスの利用、気楽な相談場所、気楽なケアなど。
第3部 地域とは何か?
夕張市の医師、森田洋之さんより
夕張市は過疎化が大幅に進んでいる。医療費もかけられない。2007年に171床あったベッドが1床しかない。高齢者は48%。
ところが、医療設備や人がいないにも関わらず、救急搬送は激減し、死亡率に変化はない。なぜか?住民の意識が変化したこと。つまり、終末期医療の考え方が変わったことが大きい。病院がなくてもできること、在宅でもできることへの気づきが大きい。つまり、市民の意識改革ということになる。
名古屋 桑名市の取り組み
田中謙一さんより
ポイントは規範的統合にあるということ。
市民と自立支援にむけて
1 施設機能の地域展開
利用者への認知度を高める
2 身近な地域資源の見える化から創出へ
地域住民の憩いの場、通いの場(総合事業として)
3 多職種協働によるケアマネジメントの充実
地域ケア会議、地域応援会議
第3部まとめ
地域包括ケアを考えるとき、医療だけでは完結できない。在宅での支える医療を充実させること。終末期医療をいかに人間らしく見送ることができるかも重要である。
樹木希林さんの言っていたことば「生きるも日常、死んでいくのも日常」
高齢者ケアの3原則
浅川さんより
①自己決定権の尊重(本人の意思)
②残存能力の活用(自助努力)
③生活の継続性(そのままの暮らし)
老人福祉法の第1章、総則、第3条には、老人の社会参加を言っている。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S38/S38HO133.html
自立支援と生活支援を地域でするべきだ。
自立支援は何のためにするのか?
生活者として、自分自身の人生を考えたたうえでの規範的統合ではないか?
介護家族のケアのあり方
家族はどこで、誰が、どのような暮らしをしているか知る必要がある。
サービスつき高齢者住宅の活用(介護疲れの避難としても)、介護専門職から家族へのケアを教育することも大事かもしれない。
最後に在宅医療カレッジの校長、町さんより
大介護時代を地域のチャンスへ
地域をつくるのが介護の力
地域のつながりの場は、生活の延長線上にある。かつての病院神話を捨て、普通の暮らしができる環境を整える。不必要な治療から必要なケアへ
感想
超高齢社会の医療を考えてみて、何も特別ではないことに気づいた。医療技術だけを追いかける時代は終わった。日常生活の終焉に死があることに気づけば、自然なことかもしれない。在宅医療は、その手伝いをしているにすぎない。在宅医療は、その地域のなかで、住民、コミュニティが機能することで活性化する。夕張市の例が物語っている。それぞれの地域、自分のフィールドでつながりをもちながら、社会参加していきたい。老人福祉法には、社会参加と労働が書かれていたことに、初めて気づいた。改めて見直したい。