公務員に効くビジネス書 vol.13 稼ぐまちが地方を変える/木下斉著 | 公務員 島田正樹 〜仕事と私事と志事と〜

公務員 島田正樹 〜仕事と私事と志事と〜

仕事も家族・友人との私事も楽しみながら、魂を燃やして挑む“志事”で社会を変えていきたい! 地方公務員として働きながら、NPO活動、講演、執筆、ワークショップデザイナーなどに取り組む“公務員ポートフォリオワーカー”として活動しています。



稼ぐまちが地方を変える―誰も言わなかった10の鉄則 (NHK出版新書 460)



公務員目線で仕事や課外活動など様々な場面で“効く”本を、
島田の自分勝手な観点からご紹介する
「公務員に効くビジネス書」。


第13弾は、地域活性化やまちづくりの仕事に携わっている人なら
一度は聞いたことがあるであろう
AIAの木下斉さんの
『稼ぐまちが地方を変える』。


木下斉さんと言えば、アンチ補助金政策、
地域活性化の失敗事例集『墓標シリーズ』で知られ、
正直、この界隈の行政マンとしては耳が痛い発言が多い御仁です。



しかし、そんな声にもキチンと向き合わなければ!

といった殊勝な気持ちで手に取ったのではなくて、
たまたま研修の課題図書になったので読むことになったのです。



私なりに著者の考えを読み解くと、
ポイントは以下のとおり。


覚悟を持った仲間とだけで創める
小さく、自立できる大きさと内容から創める
逆算思考で実施する事業の規模を考える



覚悟を持った仲間とだけチームを組めば、
全員が必死になって事業を成功させてようと努力しますし、
ある意味、成功のためなら手段を選ばない
時には自腹を切ってでも、必要なタスクを処理することも。

逆に覚悟を持っていない人も入ってきてしまうと、
結局、今の自分にできることしかやらない
だから、事業を進めるのに必要なタスクのはずなのに、
誰もフォローしなくて「お見合いの内野フライ」が発生してしまう。

それで悔しい想いをするのは、
覚悟を持たずに参加している人ではなくて、
覚悟を持って事業に挑んでいる人だけです。


そして、小さく創める
これは、新しく何かを創める時には、
地域の活性化や街づくりに限らない原理原則

覚悟を持った仲間と組んで、
まずはそのチームが自らの責任で成し得るコトを成す。
その成功を見える化することで、
より多くの仲間を巻き込むことができるようになり、
扱える事業の範囲や量も一回り大きくできる

逆に、イキナリ大きなところから創めようとすると、
実績が最初に掲げた目標に届かない、
理想としていたようなカタチで事業ができない、
その結果、覚悟を持っていたはずの仲間も離れていく、
そしてチームが出来る事業の範囲も量もシュリンクしていく。


そして、3点目の逆算思考は、
主に事業の採算性の考え方なのですが、
この考え方で有名なのが紫波町の『オガールプロジェクト』

公民連携で施設を整備する計画において、
どんなテナントがどのくらいの賃料でどのくらいの数が入居するのか、
それを予め営業によって把握し、テナントが決まったことにより
得られる収益が決まり、その収益に基づいて
施設にかけられる維持コストやイニシャルコストをはじき出す


だから、金融機関からも事業の採算性を認められ融資を引き出し、
その償却期間も、その後の収益の計画も事業開始前に明確になる。

もちろん、補助金が無くなったとたんに
事業を継続できなくなった、なんていう事態にも陥らない。


木下氏の掲げる『鉄則』は、実はもっと多岐にわたるのですが、
私が個人的に重要かなと思った彼の考え方はこの3つ。


この3つの考え方を大切にして、
本当に必要なところに、無理のない範囲で活用するならば、
(木下氏は反対するかもしれませんが)
補助金だって交付金だって、まちをよくするのに役立てられる。

それは補助金制度そのものの功罪は確かにあるものの、
使い手がどのように考えて、どのように使うのかによって
薬にも毒にもなり得るということ。

名医は劇薬でも適切に“薬”として
患者の治療に有効に活用することが出来ますよね。



最後に、本書の中の木下氏の言葉から、
行政マンとして心に留めて置きたいくだりをご紹介します。

「行政はダメだ」と言いながら、
自分たちがそれに取って代わろうなどとは考えません。
行政に「そんな仕事はやめろ。あとは俺たちがやる」
なんてことを提案する人は、まだまだ希少な存在です。
しかし、これからのまちづくりに求められるのは、
市民「参加」ではなく、市民が自ら実行することです。
(P181)


これは、市民にこそ奮起を促したいという思いの言葉ですが、

それでは、この言葉を後ろ盾にして、
私たち行政マンは市民にがんばってもらおう!と考えればいいのか。


それは組織としての市役所はそう考えるかもしれませんが、
私はそのために必要な、行政マン個人の姿勢があると思います。


それは、仕事以外の時間は、私たち行政マンも市民であるということ。


自分が住む市区町村の役所に勤めていてもそうでなくても、
家に帰れば誰もが住んでいる自治体の市民です。

仕事において市民の自主的な行動を理想と掲げるのであれば、
自分が市民である場所、立場においては、
その理想を自ら体現するべきなのではないでしょうか。


仕事において、市民はもっと自ら動くべき、と考えるなら、
住んでいる場所において市民である自分は、どうあるべきか。

とても考えさせられます。



皆さんは如何お考えでしょうか。



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1月31日 vol.12  新しい道徳/北野武著
7月23日 
vol.11  読んだら忘れない読書術/樺沢紫苑著
7月 6日 vol.10  人事よ、ススメ!/中原淳編著
6月29日
 vol.9  アイスブレイク入門/今村光章著
5月10日 
vol.8  それでも社長になりました!/日本経済新聞社編
4月11日 vol.7  働く人のためのキャリア・デザイン/金井壽宏
3月23日 vol.6  自分らしいキャリアのつくり方/高橋俊介
3月19日 vol.5  7つの習慣/スティーブン・R・コヴィー
3月17日 vol.4  KP法 シンプルに伝える紙芝居プレゼンテーション/川嶋直
3月 6日 vol.3  35歳の教科書/藤原和博
3月 5日 vol.2  人を動かす/D・カーネギー
2月15日 vol.1  京セラフィロソフィ/稲盛和夫