〔29〕ホームグラウンドお台場の壊滅 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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 輝二を加えた大輔一行は、森の小道を進む。木々に日差しがさえぎられるせいで、暗くなるのが早い。

「今日はこの辺で野宿しようぜ。俺、腹減ったよ」

「俺もー!」

 純平とブイモンの言葉で、今日の寝床が決まった。

 ちょうどよく開けた空き地があって、その中心でたき火をたく。輝二は一人旅をしてきたからか手際がよかった。赤い火が燃え盛る頃に、友樹とボコモンネーモンが野菜を抱えて帰ってくる。おなじみになってきた肉リンゴに、スープキャベツ。木の枝に刺してあぶると、香ばしいにおいがたちのぼってきた。

「デジタルワールドでの野宿も、こうやってのんびりしてると楽しいな」

 ブイモンに言われて、大輔は枝を削る手を止めた。

「そうだな。俺達の方だといつも日帰りだし。泊まり込みで行った時はデジモンカイザー探しで、楽しんでる暇なんてなかった」

「みんな、元気にしてるかな。テイルモンとか、アルマジモンとか」

「心配、してんだろうな、俺達の事」

 ふと思い出してしまって、二人とも黙り込んだ。この世界に来てからD-ターミナルは圏外だし、戻る方法も見つからない。数えてはいないが、もう一か月近く経つはずだ。

 一乗寺賢が行方不明になった時、テレビの向こうで彼の両親が泣いているのを見た。自分の家族や仲間もきっと、あんな風に……。


 と、大輔が思いにふけっている中。急に風が強くなり、たき火が大きく揺れた。友樹が帽子を吹き飛ばされ、わたわたと追いかけて捕まえる。同時に辺りが暗くなった。

 泉が空を見上げる。

「雲が出てきたわね」

「月が三つとも隠れちゃったよ」

 純平が少し不安そうに肩をすぼめる。

 どこからともなく音が聞こえてきた。ブイモンも大輔も原因を探して立ち上がり、辺りを見回す。

「川が流れてるのかな?」

「それとはちょっと違うような」

「あれ見て!」

 友樹の叫び声に、みんなが振り向いた。

 暗がりの中で、木の幹がいくつか光を放っていた。幹の中ほど、ちょうど大輔達の目の高さ辺りだけが光っている。謎の音もそこから聞こえていた。

「そうか、ここはテレビの森じゃ!」

「テレビ!?」

 大輔とブイモンの声が重なった。二人のいたデジタルワールドでは、テレビといえば人間世界とデジタルワールドをつなぐ機械だ。言われてみれば、この音もテレビの砂嵐にそっくりだ。映像は少しずつ鮮明になって、ビル街や飛行機を映し出す。

「俺の聞いた不思議な場所というのもこれか」

「きっとそうじゃ。テレビの森というのは人間世界を映し出すといわれ、大輔はん! 聞いとるんか!」

 輝二とボコモンの会話など耳にも入らなかった。木の幹を次々に見回り、知っている景色を探す。もしこことお台場がつながっているなら、仲間と連絡が取れるかもしれない。


「――さん!」

 砂嵐に混じって、声が聞こえた。どこか、聞き覚えのあるような。

「大輔さん!」

 声のする方へ向くと、テレビの向こうに人影が見えた。画面に身を乗り出しているらしいその顔は、大輔がよく知っていた。

「伊織!?」

 大輔は目を丸くしてその木に駆け寄った。その名前を聞いて、ブイモンも飛んでくる。

 幹に手を触れられるほど近づき、まじまじと見る。やはり、伊織に間違いなかった。

「伊織! 久しぶりだな!」

 大輔の声が弾む。割り込むように入ってきた黄色いデジモンを見て、ブイモンも喜びに飛び上がった。

「アルマジモンも! 元気だっ」

「おみゃーら、今までどこでなにしとったんぎゃ!」

 叩きつけるような大声。大輔達は思わず立ちすくんだ。温厚なアルマジモンからは考えられない剣幕だ。

 伊織の表情もいつになく厳しい。

「行方不明になって、みんな探してたんですよ!」

「あ、ご、ごめん……」

 思わず謝りながら、大輔は違和感を覚えていた。心配されているとは思っていたが、二人の反応はそれ以上だ。落ち着いて見ると二人とも土ぼこりまみれだ。伊織は少しやつれている。アルマジモンの体は傷だらけだった。新しい傷も古い傷もある。

「一体、何があったんだ」

 大輔が真剣になって聞くと、伊織達はようやく画面から体を離した。壁やロッカーが見える。学校の教室にいるらしい。

 伊織は疲れたように息を吐いてから、重い口を開いた。

「……大輔さんがいなくなった後、急に人間世界にデジモンが攻めてきたんです」

「デジモンが人間世界に!?」

「ひょっとして、デジモンカイザーがまた!?」

 ブイモンと大輔の言葉に、伊織が首を横に振る。

「違います。でも、僕達にも正体はよく分かりません。ただ、街を襲うデジモンはとても強くて……誰もかなわなかったんです」

 その口調に、大輔は嫌な予感がした。

「なあ伊織。太一先輩やヒカリちゃんは? 光子郎さん達は!?」

 伊織はうつむいた。肩が震えている。その腕にそっと手をやってから、アルマジモンが代わりに答えた。

「残ってるのは、おれ達だけだぎゃ。光子郎は最後まで一緒にいたけど、おととい伊織をかばって……」

「そんな……嘘だろ」

 大輔はよろめきそうになった。太一先輩が、みんなが? 自分のいないほんの一か月の間に?

「僕だって信じたくありません。でも……。これを見てください」

 伊織が手を伸ばしてきて、映像が揺れた。映像を映している機械を伊織が持ち上げたらしい。窓ガラスが割れ、荒れた教室が一瞬映る。窓の外に向いた所で、揺れは止まった。

「これが、今のお台場なんです」

 大輔は自分の目を疑った。

 教室から見えるはずの海は干上がり、草一本ない砂地をさらしていた。その中に打ち捨てられた船がいくつも転がっている。丸焦げになり原型を留めていない船もある。

 ビルは文字通り山のように積み重なった瓦礫と化し、陸を埋め尽くしている。ゆりかもめの高架は飴のようにねじ曲がっていた。

 道路沿いの植木はほとんどがなぎ倒され、辛うじて立っている木も立ち枯れて茶色の幹をさらしている。大輔の育った街に、もう人の気配は残っていなかった。

「僕達はまだ残っていた学校に逃げ込んだんです。光子郎さんが遺してくれたパソコンと、食べ物を少し抱えて。そうしたら、急に画面が光りだして」

 伊織が自分の方にパソコンの向きを戻した。泣きそうな顔で床にしゃがみ込む。

「大輔さん、生きているなら早く戻ってきてください。大輔さんがいたらって、みんなで何度も話してたんです。僕とアルマジモンだけじゃ、もうどうしたらいいのか分かりません」

「分かった。すぐにそっちに戻る!」

 大輔は反射的に返事をして、デジヴァイスを取り出した。惨状を見せつけられて、じっとしていられるわけがなかった。

「大輔、どこに行く気だよ!」

 振り向くと、純平達が見ていた。やりとりをずっと聞いていたらしい。

 大輔は一刻も早く戻りたい気持ちを抑えて、純平達と目を合わせた。

「上手く説明できなくて黙ってたんだけど、俺はこのデジタルワールドの人間じゃないんだ。っていうかその、俺が純平達と違うデジヴァイスを持ってるのは、別のデジタルワールドで手に入れたからなんだ」

「よく分からないよ。大輔さん、僕達を置いてっちゃうの?」

 友樹の戸惑った表情に、大輔は複雑な気持ちになった。

「ごめん。俺の仲間がピンチなんだ。すぐに戻ってやらないと。それが済んだら、またここに戻ってくるから!」

「守れないかもしれない約束ならするな」

 輝二の淡白な言葉に、大輔は眉を上げる。その顔をまっすぐ見て、輝二が続ける。

「俺達はスピリットを得て戦える。余計な心配はしないでお前は自分の世界に帰れ」

 つっけんどんな言い方だが、輝二なりの優しさだと大輔は感じた。口は悪いが性格は悪い奴じゃない。

「サンキュ。よしブイモン、帰るぞ!」

 大輔は画面に向き直り、デジヴァイスを向ける。

 テレビの光がひときわ大きくなり、二人を包み込んだ。



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題名が既にオチというか何というか。さらっとお台場滅ぼしてみた←

先日諸事情でお台場を訪れたのですが、景色を見ながら「ここが完膚なきまでに破壊されたらどうなるか」を考えていました。なんという危険人物(苦笑)