EPILOGUE 0 / LIPHLICH

EPILOGUE 0/LIPHLICH

DISC 1

1. introduction(SE)

2. 墜落艶歌

3. レイトショーマン〜遅すぎた人〜

4. 11月の雨

5. 慟哭の果て月の丘へ

6. crowned new days

7. バレンタイン

8. ソイレントフェイス

9. ロールダウン

10. 天使の声

11. 楽園

DISC 2

1. オディセイ

2. 正体不明

3. YA-PA-PA

4. サキュベイダー

5. 深海を泳ぐ微熱

6. マジックスクール

7. 魔旋律

8. オルペウス

9. 邪悪matter

10. 骨と皮膚

連続リリースの締めくくりとなったLIPHLICHの２枚組フルアルバム。

４ヵ月連続と謳われていたことを踏まえれば、本来は10月にリリース予定だったと思われる作品。

こだわった結果であろうか、その10月にはDISC1の「introduction」を除く10曲を先行配信するという形でノルマをクリアしつつ、パッケージ版は11月末に満を持して発表となりました。

DISC2は、既に発表されていたデジタルシングル３枚をまとめたもの、という意味合いが強いせいか、先行配信の対象には乗らなかった形ですが、CDには「骨と皮膚」がボーナストラックとして追加収録。

実質的に５カ月連続でのリリースを実現したと言えなくもありません。

オリジナルフルアルバムとしては前作にあたるのが、2017年の「CLUB FLEURET」。

メンバーチェンジを含めて、音源制作に体力を向けにくかったという要因はあるにせよ、それまでのリリースペースと比較して、随分とじっくり時間をかけたな、といったところ。

否が応でも期待をしてしまうのですが、だからといって合計21曲、２枚組の特大ボリュームで返してくれるとは。

もちろん、コンセプトから、サウンドから、現在のLIPHLICHを余すことなく表現すべく丁寧に練り込まれていて、曲数とクオリティが反比例するなんてこともなく。

曲数を積み上げるほど世界観が重厚になっていくという意味では、むしろそれは比例の関係と言えるのでしょう。

これだけボリュームがあると一口に音楽性を語ることは難しいものの、あえて言おう、シネマティックな久我ワールドが帰ってきたな、と。

作曲の割合として、Dr.小林孝聡さんのシェアが高まり、Gt.新井崇之さんも要所要所で手掛けていることを踏まえると、Vo.久我新悟さんらしさが強く出た、というと語弊を生むかもしれません。

しかしながら、負担が減った分、世界観の構築に意識が向けられたのか、小説１冊分、あるいは映画１本分の感情の起伏を作品の中に見ることができる濃厚さに、はじめてLIPHLICHに触れて衝撃を受けた、あの日の空気感を感じてしまうのは僕だけではないはず。

安易に"原点回帰"と言ってしまうのは気が引けるのですが、それで食指を伸ばしたくなるリスナーが増えるのであれば、何度でも言ってしまいます。

経験値を積み、技術的にもレベルアップした彼らがここに帰ってきたのであれば、それはもう最強なのですよ。

もっとも、こんなにもポップな楽曲がLIPHLICHから飛び出して、しかもアルバムの中締めという重要な役割を担うとは、と驚かされた「楽園」や、正当派のギターロックとも言える爽やかな疾走感を帯びた「骨と皮膚」など、小林さんの楽曲が、それまでのアルバム作品には見られなかったキャッチーさを生んでいるのも忘れてはいけないポイント。

シティポップ風の歌謡曲を彼ら風に昇華した「バレンタイン」や、派手なギタープレイで魅了する「YA-PA-PA」など、新井さんの楽曲もアクセントとして効いていて、久我節一辺倒ではないことがアルバムとしての完成度を高めているのも触れておかないとアンフェアですかね。

彼らが注ぎ込む要素も今や重要なファクターですので、この濃密さですべてを表現しようとしたとき、21曲の収録曲が必要だったというのも、案外、頷ける話だったりするのです。

惜しい点をどうにか挙げなければいけないのだとすると、Ba.竹田和彦さんの楽曲も聴いてみたかった、とだけ。

過去のバンドではメインコンポーザーだった実績もあるわけで、彼がLIPHLICHに馴染んだ今だからこそ、１曲ぐらい差し込む余地はあったのではないか、と思ってしまいます。

まぁ、それで本作にケチがつくわけでもなし。

名盤は名盤であり、これだけの作品を生み出しておきながら、まだLIPHLICHはもうひとつ進化の手段を隠しているのだぞ、と考えておくことにしましょうか。

＜過去のLIPHLICHに関するレビュー＞

魔旋律-EPISODE1-

サキュベイダー-EPISODE2-

オディセイ-EPISODE3-

SMELL STAR ～ケレン気関車外伝～

萬の夜に鳴くしゃれこうべ弐