サキュベイダー-EPISODE2- / LIPHLICH

サキュベイダー-EPISODE2-/LIPHLICH

1. サキュベイダー

2. 深海を泳ぐ微熱

3. マジックスクール

連続リリースの第二弾となるLIPHLICHのデジタルシングル。

前作同様、３曲を収録しています。

カウントダウンがひとつ進み、コアな部分に近づいていくLIPHLICHサウンド。

第二弾の時点で、既に彼らの真髄であるシアトリカルで濃厚な世界観は充満しており、ビギナーに衝撃を与えるだけのパンチ力は十分に備わっていました。

表題曲となる「サキュベイダー」は、ミュージカルの戯曲のような、かっちりと構築された様式美と、オーディエンスを意識した展開を両立させたナンバー。

ダークな雰囲気で突き進むかと思わせつつ、コミカルなパートも潜ませており、演奏時間以上に充実度を与えています。

突き放すかのように演じる要素と、ライブ感をもって楽しませる要素。

他のバンドにはあまり見られないアプローチではありますが、確かにヴィジュアル系バンドとしての矜持は詰め込まれているのだな、という発見もあり、それがLIPHLICHの王道にも通じるのだから面白いものですよね。

「深海を泳ぐ微熱」は、Dr.小林孝聡さんが作曲を担当。

スリリングなアレンジにゾクゾクさせられます。

どこかシティポップ的な雰囲気もあるけれど、Vo.久我新悟さんの独特なビブラート歌唱により、彼らの土俵に持ってきているところがさすが。

しっかりとシネマティックに演出されていました。

ストリングス系のシンセが入りそうなところで、ホーン風の音色に仕立てているのが新鮮。

セオリーに乗っかるだけでは満足しない彼らのスタンスが、こういう一節にも見受けられるのかと。

ラストの「マジックスクール」は、ここまでドラムに焦点があたったことがあっただろうか、と言わんばかりにドラムが主張する彼ら流のハードチューン。

ライブシーンを再現するかのような導入に、ラフなセッションから本編に繋がっていく演出なのかなと思ったら、そのままAメロがはじまって驚かされます。

攻撃性を帯びつつも、語り口はくだけていて、どちらにも転ばないバランスが、やはりどこか舞台演出的。

つくづく、LIPHLICHは表現すべきストーリーが立体的であるほど活きるバンドですよ。

当初はその音楽性により飛び道具的な印象もあった彼らですが、困難にぶち当たりながらも長くバンドを維持してきたことにより、完全に市民権を得た形。

LIPHLICHらしさが共通認識となった中で展開されるLIPHLICHらしい楽曲たちは、ここにきて高まった感のある創作意欲も相まって、ひとつ上のステージに昇華した感が。

アルバムの完成が待ち遠しくなる作品でした。

＜過去のLIPHLICHに関するレビュー＞

安眠妨害水族館