萬の夜に鳴くしゃれこうべ 弐 / LIPHLICH | 安眠妨害水族館

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萬の夜に鳴くしゃれこうべ 弐/LIPHLICH

 

1. 萬の夜

2. 発明家A

3. MANIC PIXIE

4. 三原色ダダ

5. 聖俗街

6. 大計画

7. RACE

8. ウロボロス

9. アンドゥトロワ・ユーダイ

10. FLEURET

 

 

LIPHLICHのアコースティック・セルフカヴァーアルバム第二弾。

配信限定でのリリースとなりました。

 

コンセプトシングルである「ケレン気関車 弐」との同時リリース。

充電期間が長かった分、ハイペースでのリリースが続いている彼らですが、現在進行形での進化に加え、過去の楽曲のリメイクまで並行して行っていたとは驚きです。

シリーズものだけに、第一弾同様にフィジカル作品として手元に持っておきたかったというのも本音ですが、今のLIPHLICHのスピード感であれば、小回りの利くデジタル配信のほうがマッチしているのも事実なのでしょうね。

 

選曲としては、第一弾以降に発表された楽曲が中心になっているのかな。

ベストアルバムと呼ぶには大袈裟だけど、LIPHLICHを齧っていれば、何かしら知っている曲に当たる。

その程度には代表曲となりそうなラインナップが押さえられているのかと。

もっとも古い楽曲は2013年にリリースされた「MANIC PIXIE」ですが、これはマニアックどころかド定番であるわけで。

隠れた名曲の再発掘というより、聴き比べを前提としての面白さを追求しようとする思惑を感じますよ。

 

その中で、1曲目が新曲である「萬の夜」であるのがポイント。

第一弾での新曲であった「イーカロス」や「マラカイト」は終盤に収録されて、ボーナストラック的な位置づけとして捉えることも出来るのですが、1曲目から新曲が送り込まれたのであれば、さすがに"おまけ"とは言えません。

和の要素を強めた美メロに、雰囲気たっぷりの演奏。

これがトップに入ったことによって、アコースティック編成は、企画モノではなく、世界観を構築するための必然なったという感覚。

要するに、コンセプチュアルなオリジナルアルバムに昇華されたのです。

 

一口にアコースティックと言えども、手を変え、品を変え、一辺倒にはならない引き出しの多さを披露していくスタイルは前作から踏襲しているのですが、通して聴いたときの統一感にまで、本作ではこだわっている印象。

ともすれば、ラフな音、自然体な演奏、という方向に傾きがちなアコースティックアレンジ。

演出に演出を重ね、シアトリカルに攻めていくアプローチをとったことで、薄まるどころか、より濃厚なものとすることに成功。

例えば、LIPHLICH流の暴れ曲、「MANIC PIXIE」が、「萬の夜」、「発明家A」という流れの中で、お洒落で軽快なジャズアレンジに早変わり。

「ウロボロス」では、逆にデジタルエフェクトを強めにかけて、アコースティックという縛りにおいて、ここまで踏み込むか、という天邪鬼さを見せており、裏の裏をかこうとする姿勢が、結果的にバランサーにもなっているのですよ。

 

なお、「萬の夜」は、"ケレン気関車"シリーズとも繋がっている物語なのだとか。

アコースティック音源集 第一弾のタイトルを踏まえての楽曲化であるにも関わらず、それが現時点で展開中のニューストーリーと繋がってしまうのだから恐ろしい。

彼らは、いったいどこまで前の段階から準備していたのだろう、と頭が下がるばかりです。

 

ただのセルフカヴァーと侮るなかれ、今までとはまったく異なる顔で生まれ変わった楽曲たち。

タイトルだけを見て、聴いたことがあるから、と足踏みするのはもったいない作品ですな。

 

<過去のLIPHLICHに関するレビュー>

ケレン気関車 弐

三千世界

ケレン気関車

CLUB FLEURET

発明

幻想曲
DOUBLE FEATURE
蛇であれ 尾を喰らえ
7 Die Deo
SKAM LIFE
SEX PUPPET ROCK'N'DOLL
カルトなでしこ
萬の夜に鳴くしゃれこうべ
GRATEFUL NONSENSE
HURRAH HURRAY
フルコースは逆さから
マズロウマンション
MANIC PIXIE
SOMETHING WICKED COMES HERE AGAINST YOU
LOST ICON’S PRICE
Pink Parade Picture
月を食べたらおやすみよ
Ms.Luminous
6 Degrees of Separation
SOMETHING WICKED COMES HERE