Fetish/Petit Brabancon
1. Don’t forget
2. 疑音
3. OBEY
4. Ruin of Existence
5. 主張に手を伸ばす修羅
6. 刻
7. come to a screaming halt
8. I kill myself
9. Pull the trigger
10. 非人間、独白に在らず
11. Isolated spiral
12. 無秩序は無口と謳う
13. 渇き
モンスターバンド・Petit Brabanconによる満を持してリリースされた1stアルバム。
DIR EN GREY、sukekiyoのVo.京と、L'Arc~en~CielのDr.yukihiroを中心に結成された彼ら。
MUCCのGt.ミヤさん、TokyoShoegazerのGt.antzさんのツインコンポーザーが音楽的な土台を作り、変幻自在の歌声を誇る京さんが紡ぐ世界観によって、その独自性を強固なものにしていくスタイル。
yukihiroさんとリズム体を組むのも、キャリアのあるTHENOVEMBERSのBa.高松浩史さんと、どこを取っても話題性にしかならないメンバー編成ですが、何より、このメンバーが集まってどんな音楽を奏でるのかが、まずは誰しも気になったことでしょう。
その意味では、まずは最大公約数的にまとめてみた、といったところなのかな。
例えばミヤさんの楽曲は、MUCCの膨大な守備範囲の中から、京さんに馴染みそうなラウドロックやミクスチャーを、今のテンションで再解釈したような印象。
yukihiroさんが作曲を手掛けた「come to a screaming halt」も、宇宙的なイメージをもたらすデジタル気質の浮遊感が特徴となっていて、いかにもなyukihiro節。
それぞれの得意分野を普段とは異なるメンバーで構築することで、どんな違いが生じるのかをメンバー自らが実験しているように感じるのです。
当然にして、1曲1曲のクオリティは非常に高く、アルバムとしての構成も美しい。
一方で、引き出しの多いメンバーが揃ったことも相まって、爆発的な化学反応よりも、収まりの良さに帰結している感もあって、大きすぎた期待に対して、それに勝るほどの刺激的な作品を作ろうというイデオロギーはなかったのかもしれません。
もっとも、各々の個性的すぎるほどの個性を十分にぶちまけている、という前提において、この洗練されたアルバムを完成出来たというのは、よくよく考えてみると恐ろしいことで。
ここからもうひとつ時計の針を進めようとしたときにどれほどの衝動性が生じるのか、伸びしろがある=楽しみが増えたという見方もできそうですね。
なお、本作は感覚的に世界観に浸ることを企図して、歌詞が掲載されていない仕様。
サブスク的に聴き流してしまえるかというとそんなことはなく、かえって深い部分まで理解してみたいと集中して聴いてしまうから、逆説的で面白い。
きっと聴けば聴くほどに発見がありそうで、まだまだ味わい尽くしたい1枚です。
<過去のPetit Brabanconに関するレビュー>