壊れたピアノとリビングデッド/MUCC
壊れたピアノとリビングデッド 3,240円 Amazon |
1. 壊れたピアノ
2. サイコ
3. アイリス
4. ヴァンパイア
5. In the shadows
6. 積想
7. 百合と翼
8. カウントダウン
9. Living Dead
MUCCの14thフルアルバム。
ミニアルバム「T.R.E.N.D.Y. -Paradise from 1997-」以来となるコンセプト作品となっています。
もともとは、アウトテイク集として制作を開始したもの。
ボツ曲をそのまま入れてもまとまらない、ということで、コンセプト要素が足されたとのことです。
テーマ的には"ホラー"、サウンド的には"鍵盤"が、そのコンセプトにあたるもの。
リリースツアーでも、過去曲を含めて鍵盤を組み込むとのことですが、だからといって、期間限定メンバーとしてキーボーディストの吉田トオル氏を迎えてしまうぶっ飛び方も、彼ららしいですね。
率直な印象としては、事前情報で想像していたほどの変化は感じなかったですね。
ラウドロックと歌謡曲をベースに、様々なジャンルをクロスオーバーしていくスタイルの延長線上。
鍵盤が入ったといってもスパイス的な使い方が多く、大幅にジャズに振り切れるとか、ピアノメインのバラードがあるというわけではなく、あくまでもラウドなバンドサウンドありきですので、良くも悪くも、あまり構えずに聴いて問題ないでしょう。
もっとも、アウトテイク集であることを踏まえれば、鍵盤のアレンジが入る前提での作曲工程ではなかったでしょうから、世に出すためにしっかりお化粧を整えた、ぐらいの感覚なのかもしれません。
言ってしまえば、これまで何も言わずにガラっと路線を変えたアルバムを発表してきた彼ら。
このぐらいの変化じゃ驚かないよ、というリスナーの耐性によるものの可能性は否定できませんが。
興味深いのは、とてもオールタイム感があるということ。
アウトテイク集と言えども、実はここ最近のデモ曲が中心となっているようで、古い曲でもせいぜい5年前。
それなのに、「In the shadows」は「是空」がリリースされた頃に見られたKORNライクなニューメタル仕様だったり、「カウントダウン」のパンクスタイルは「極彩」に入っていてもおかしくない。
「百合と翼」に至っては、歌謡曲路線が前に出た哀愁ロックで、初期の彼らのイメージを蘇らせる名曲。
変化を繰り返しているように見えるMUCCですが、アルバムのテーマに収まらないため表に出てこなかっただけで、あの頃から繋がっている楽曲も生まれていたのだな、と可視化された瞬間でした。
唯一、テーマが決まった後に歌詞が書かれたという「Living Dead」も、聴きごたえ十分。
5分弱と長尺な楽曲ではないものの、登場人物の視点の切り替わりをVo.逹瑯さんとGt.ミヤさんの歌い分けで表現するギミックにしても、感情を爆発させるサビの壮大さにしても、ドラマティックな演出が施されていて、長編の映画を見たような余韻を残します。
SE+8曲と、アルバムとしてはやや物足りないぐらいのボリュームなのですが、これが入ることによって充足感は満たされたはず。
「サイコ」から繋がる世界観を締めくくる、重要な位置づけになっていますよ。
今更、MUCCが大ハズシをすることも考えにくいですし、その意味では安心して楽しめる1枚。
ただし、ここまでくると、アウトトラック集にこだわることもなかったのかな、と思わないでもない。
鍵盤を入れることを前提にした書き下ろし楽曲で、コンセプトを最大限に突き詰めたらどうなっていたのだろう、と。
どうせだったら、キーボーディストの在籍期間中に、もう1枚オリジナルアルバムを仕上げてほしいと思ってしまうのは僕だけでしょうか。
<過去のMUCC(ムック)に関するレビュー>
T.R.E.N.D.Y. -Paradise from 1997-
THE END OF THE WORLD
シャングリラ
カルマ
6
COVER PARADE
鵬翼
朽木の灯
葬ラ謳
痛絶
アンティーク